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静かなるひと時……

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  3. 静かなるひと時……
501航空団に着任して、約数週間が経った……。
最近は余りネウロイが出現しないと言う事もあってか、穏やかな時間がこの501には流れている。
始めは俺が唯一の男性戦闘員と言う事もあり、女性だらけのこの部隊には多少なりとも戸惑いがあった。
こう言う状況を確か……、扶桑国と言うか……、極東方面の言葉とかで「緑一点」とか言うんだっけ?
まぁ、何にせよ思った以上に居心地は良いかもしれない。
だが……、この居心地の良さに逆に俺は馴染めていない所がある……。
少し前まで、仲間達と共に野原に張った野ざらしのテントや崩壊した家屋で寝ていた時の方が長かった為だろうか?
今、この日記を書いているベッドのフカフカの感触……、俺には何だか受け入れにくい……。
まぁ……、コレはウィッチ以前に少女であるミーナ中佐達の要望が反映された形なのだろう。
確かに……、「いざ実戦!!」と言った時には、命を掛けてネウロイと戦う彼女達がつかの間の急速にて英気を養う為に用意されたのだろう。
一ヶ月戦い続けて、約3日の休暇があるか無いかのウィザードとは大違いだな……。
まぁ、航空部隊と地上部隊では何もかも違う為だろうだがな……。
そんな考えが俺の脳内を時折、ふと駆け巡る。
だが……、何で俺が今、この時、この501に居て、部下達は死ななければならなかったのか?
その答えはまだ見つかりそうも無い……。 By.ウィーラ・マッカダムス





……

………



そう日記を書き綴った俺は一息つきながら、座っている椅子の背もたれに凭れ掛る。
「うぅーん……」
それと同時に疲労感が湧いてくる。
つい先程、”ミーナ中佐”、”ハルトマン中尉”と共にカールスラント空軍から出向してきた”バルクホルン大尉”率いる部隊との訓練を行った為だろうか?
かなり激しいドッグファイトが連続して繰り広げられ、合間に息を整える事も出来ない様な訓練だったからな……。
まぁ……、本家本元のウィッチ達は常にあの様な訓練を行っているのだろう。
ネウロイとの空中戦に関しては、一番の後輩である俺が文句を言える立場じゃないよな……。
だからこそ、後輩として文句1つ言わずに訓練を受けて実力を身に付ける事が大事なんだろうな……。
椅子に凭れながら、そう思っていた時だった。
「あ……」
俺はふと訓練の後にバルクホルン大尉の指示を思い出していた。
それは「少し休んだら、お前宛の銃火器を一通り整理しておけ」と言う物だ。
今、現在の501の倉庫には俺宛にOSS並びに技術科のアリシア少佐等が送ってきた、かなりの数の銃火器が無造作……って程でも無いが、ゴッチャゴッチャと置かれている。
その一覧としては、俺がメインで使っているトンプスンM1928を始め、狙撃&ライフルグレネード発射用のM1ガーンド、近接戦闘用のマンチェスターM1897と言った手持ちの銃火器を始め、50口径のM2ブローニング銃機関銃と言った重機関銃、変わった物としてM2火炎放射器や梱包爆薬等だ。
因みにM2火炎放射器がある理由だが、一部のネウロイの装甲に火炎放射を行う事によって装甲が脆くなるタイプのネウロイが居る事が判明した為に配備されているのだが……。
どう考えても、完全に捨て身の特攻以外の何者でも無いだろうな……。
まぁ、こんな攻撃を行わない限り撃破出来ないネウロイが居るが為の配備だからな……、何故だか無性に悲しくなってくるな……。
ふとそんな考えが胸の内から湧いてくる中、俺は倉庫に向かうべく座っていたベッドから腰を上げようとした瞬間だった。
「よっ、ウィーラー」
部屋のドアがガチャリと開いたと思った矢先に入ってきたのは、俺と同じリベリオン出身のウィッチである”シャーロット・イェーガー大尉”だ。
部隊に在籍するウィッチ達の中で”一番のナイスバディ”の彼女は「同じリベリオン出身で、階級も大尉」と言う事を理由にやたらと絡んでくる……。
現に……、今の彼女の手には2本のコーラの瓶と栓抜きが握られている。


ったく……ミーナ中佐から、「交流はいいけど、男女恋愛は禁止よ」って散々釘を刺されているって言うのに……、学習しない野朗だな……。
なぉ、言っておくがこの501において俺や整備員と言った男性陣とウィッチの女性陣との恋愛は、ミーナ中佐によって禁止されている。
だから、基本的に俺とシャーリーを始めとするウィッチ達の関係で許されるのは「友人」まで……、俗に言う「友人以上、恋人未満」すら認められていない訳だ……。
どうやら、これはミーナ中佐の過去の経験から来る物らしいが……詳しくは教えてもらっていない。
まぁ……、何かしら大きな出来事があったのだろう……、303高地での俺と同じ様に……。
因みにだが、303高地における俺の”一連の活躍”をココに所属するウィッチ達は全員知っている。
それと同時に、303高地における一連の活躍に関して触れる事はミーナ中佐によって原則禁止。
コレは俺の事を気遣ってくれとの事……、少なからず気が楽からありがたい所だ……。


そう思う俺の側で、シャーリーは俺の座っているベッドに腰掛けると「ほい」と言いながら、コーラを俺に手渡す。
同時に持っていた栓抜きでコーラの栓を開けると、グイッと一機の喉にコーラを流し込む。
「くっ~~!!やっぱりキンキンに冷えたコーラは上手いなぁ~!!」
「お前、そんな事を言ってる場合かよ……」
コーラを飲むなり、実に上手そうに言い放つシャーリーに対して俺は間髪要れずに突っ込んだ。
さっきも言った様に501では恋愛禁止だ……、この光景がもしミーナ中佐やバルクホルン大尉にでもバレたりしたら……。
最悪の場合は部隊追放か、二人揃って便所掃除2ヶ月とか何らかの罰則は避けられないだろう……。
胸の内でそう思いながら、突っ込んだ俺に対してシャーリーは特に気にも留めない様子で笑いながら、こう言い放つ。
「大丈夫、大丈夫!!この程度の事なんて、バレやしないって!!」
「そういう油断が後で取り返しの付かないミスに繋がるんだぞ……」
「お前もバルクホルンの奴並に硬いねぇ~……、そんな考えばっかりじゃ早死にするぞぉ~」
どっちがだよ……と、笑いながら言い放ったシャーリーの言葉に対して思わずそんな言葉が口から飛び出しそうになる。
だが、コレを言い放つと何だか面倒な事に首を突っ込む事になりそうな気がしたので俺はグッと堪える事にした。
同時に俺もシャーリーから栓抜きを借りると、一気にコーラの栓を開けて一気に喉の奥へとコーラを流し込む。
まるで、先程の言葉が逆流して口から豪快に吹き出すの防ぐ為の様に。
「おぉ~、良い飲みっぷりぃ~!!」
「お前、暇人か?」
そんな俺の様子を見て、シャーリーは更に茶化す様に笑いながらそう言い放つ。
コイツ、本当に暇だから構って欲しくて俺の所にコーラを手土産にやってきたのか?
だとしたら……、言葉滅茶苦茶悪いが……、正直……、ウザイってとこだな……。
っていうか……、もうこんな時間か……。


シャーリーの茶化す様な笑顔を見て、俺はそう思いながら背伸びをする。
それで背中の筋肉や関節が一気に伸びるのを感じながら、俺はゆっくりとベッドから立ち上がる。
先程言った、倉庫にある俺宛に配備された銃火器を整理する為にだ。
そんな俺を見て、事情を知らないシャーリーは頭に疑問符を浮かべながら問い掛けて来る。
「ウィーラー、何処に行くんだ?」
「あぁ、ちょっと倉庫に行って銃火器の整理をな……」
そう俺が言葉を返した瞬間、シャーリーは「えぇ~っ?」と不満げな表情を浮かべると続け様にこう言い放つ。
「良いじゃん、そんな事しなくて。どうせバルクホルンの指示だろう?あんな奴の指示なんて無視しちゃえよ~」
「お前、小学生かよ……、お前が原因で怒られるなんて、俺は真っ平ごめんだぞ……、それとも何だ?お前が俺の変わりに怒られるってか?」
「それは無い」
「じゃあ、黙ってろよ……」
マジでなんなんだ……、コイツは……、精神年齢相当低いんじゃないのか?
シャーリーの悪びれた様子の無い笑顔と共に帰った来た返事を前にそんな考えが沸いてくる中、俺は”強行突破”に近い感じで部屋から出ようとした時だった。
突然、ガシッ!!とシャーリーが俺を部屋から出さない為に腕を掴んできた。
「お、おい、シャーリー!?」
「ふふ~ん、部屋から出たければ私を倒してから行くんだな~♪」
「何処の漫画のボスだ!?良いから、離せって!!」
「駄目よ~、駄目、駄目!!」
もはや近所の子供か、飼っているペットの犬か猫と遊ぶかの様な態度を取るシャーリーを振り切ろうと俺が悪戦苦闘していた時だった。

突如として、「ウゥゥゥゥ~!!」とネウロイ襲撃を知らせるサイレンが大音量で基地中に鳴り響く。

このサイレンを聞くなり、俺とシャーリーは二人揃って我に返って、こう言葉を交わす。
「緊急出動だ!!」
「分かってるって!!」
それと同時に俺とシャーリーは勢いよく部屋から飛び出すと大急ぎで、ストライカーの駐機する格納庫へと全力ダッシュで向かうのだった……。