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鋼鉄のトラとまな板の殴りこみ!?

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アランとかのん達が学校で行われた戦車戦で勝利を収めた数日後……。
深夜の片田舎の町をステージに活躍する暴走族達の前に一人の少女が立ち塞がっていた。
「クラァ、そこのガキ!!天下の公道で何をボサっとしてるんじゃ!!」
「ひき殺されてぇのか!?そうじゃなけば、サッサと退かんかチビィッ!!」
車やバイクのエンジン音と共にパラリラ、パラリラとラッパの音を高鳴らせながら、暴走族の一人が「チビ」と叫んだ瞬間だった。
その言葉を向けられた少女は口に咥え、舐めていた棒付きキャンディーを「ちゅぽん!!」と言う音と共に口から出すなり、暴走族に向け憎憎しい声でこう言い放った。

「何か言ったか?暴走族|《くず》が!?」

この言葉を合図として、暴走族達に一斉銃撃が襲い掛かる。
「あ、あぁぁっ!!」
「め、目がぁ!!目がああぁっ!!」
この銃撃にやられた暴走族達が各自逃げ惑う中、少女はゆっくりと上げた手を振りかざす。
それを合図に深夜の沈黙を切り裂く様な88ミリ砲の砲声が鳴り響き、暴走族のリーダーが乗る改造車が爆音と共に宙を舞う。
「うあぁぁっ!!」
「ば、化け物だ……。に、逃げろぉぉっ!!」
この余りにも一方的な仕打ちに対し、暴走族たちは逃げるだけしか出来ない。
この様子を見ながら、一人の少年が少女に向けて話しかける。
「流石にやり過ぎじゃないか?」
「ふんっ!!」
少年の問い掛けに対し、少女はそう鼻で88ミリ砲の砲声の発生源である”タイガー戦車”をバックにこう言い放つ。
「蹂躙してやる……、私をチビと言った奴は……、皆揃って蹂躙してやる!!」
「はぁ……」
少女の返したこの言葉に対し、少年は”ヤグアル2 対戦車車両”に腰掛けながら溜め息を付くのであった……。





……

………



そんな深夜の騒動が繰り広げられた数日後の昼下がり。
俺とかのん達は共に戦車で放課後の帰り道をのんびりとしながら、川沿いを進んでいた。
そんな中、マリコがパンターを操縦しながら、こう言い放つ。
『そう言えば、つい先日、ここの近所で戦車による暴走族狩りがあったそうよー。正直言って弾の無駄遣い以外の何者でも無いけどね』
『えぇ~、暴走族狩りぃ!?あれって天然記念物じゃないの?』
「とんだ天然記念物過ぎるだろ……」
かのんの言葉に対し、俺は思わずそう突っ込んでしまった。
つーか、暴走族が天然記念物だったら”警○24時”に出てくる暴走族は一体なんなんだよ?
あれも天然記念物だったら、日本人は1000年先を進んでいるぜ。
ちなみに余談だが、アメリカにも日本の警○24時に当たる番組があってな、アメリカに居た頃はよーく見ていた。
日本警察とアメリカ警察じゃあ、扱う事件のスケールのでかさとか、展開が比較にならない程に半端無いんだよなー……。
そうアメリカ在住時代の思い出を思い返しながら、パットンに揺られていると車内の砲手席に座るタカオが手で仰ぎつつ、不満げな表情でこう呟く。
『ねぇ、そんな事より何処かに自販機でも無いの?もう暑くて、暑くて死んでしまいそうよ……』
『戦車乗りに猛暑は付き物でしょ……』
『そうだけど……、これじゃホイル焼きになってしまうわよ……』
タカオと同じ様に正一がパットンの車内で教科書で仰ぎつつ、彼女のボヤキにそう返したときだった。
ふと、見上げた俺の視界には道路の小脇に立つ小さな駄菓子屋が入ってきた。
ロー○ンやフ○ミリー○ートみたいなコンビニの様な品揃えは期待出来ないが、タカオのボヤキを止めさせる事の出来る品物ぐらいはあるだろう。
そう思った俺は無線機のスイッチを入れ、かのんに話しかける。
「かのん、ちょっと駄菓子屋によって良いか?うちの砲手様が駄々こねてる」
『誰が駄々こねてるよ!!』
『タカオさん、落ち着いて……』
俺の言葉に「暑い」とぼやいていた筈のタカオがバックに「クワッ!!」と言う文字が見えそうな勢いでブチ切れ、それを無線機越しにエリーが止める。
そんなタカオの顔を見ていると無線機よりかのんの返事が返ってくる。
『うん、いいよ。私もアイス買いたいしね』
「OK、決まりだな。エリー、駄菓子屋行くぞ」
『了解』
かのんの返事を聞いた俺は、一言そう言葉を返すとエリーに対し、駄菓子屋に向けての前進指示を出す。
この指示を元にエリーはパットンを駄菓子屋に向けて、ゆっくりと走らせ、かのん達のパンターもそれに続くのだった。





……

………



そうしてやって来た駄菓子屋。
本当に年老いたおばあちゃんが一人で経営している「田舎の駄菓子屋」と言ったコジンマリとした小店だ。
まぁ……、アメリカ生まれの俺とエリーにとって日本の駄菓子は珍しいったら、ありゃしない物ばっかりだ。
「きな粉ボー」、「トロッコヨーグル」、「チョコ・ゴルフクラブ」なんて、最初見たときはエリーと共に「「なんじゃこりゃ?」」って感じだったもんな……。
「おばあちゃん、こんちはー」
「はい、こんにちは」
そう狭い店内に、これまた所狭しと並べられた駄菓子の数々を見てそう思い返す側でかのん達が店のおばあちゃんに挨拶をしながら、何を買うか検討していた。
その側でタカオは真っ先にアイスボックスを死に物狂いな表情であさぐると、1本のアイスバーを手に取るなり、直ぐにお買い上げである。
「コレ頂戴!!」
「はい、60円ね」
にこやかな笑顔でおばあちゃんが値段を言うのに対し、タカオはこれまた死にそうな表情で小銭を渡すと同時にアイスバーにしゃぶり付く。
うーん……、この同好会の中で「一番女子力が無い」ってランク付けしたら、間違いなくコイツが最下位だろうなぁー……。
まさに「残念美人」とは、この彼女の事を示す言葉で間違いないな……。
「何よ?」
「別に……」
そう思いながらタカオを見つめていた俺に対し、当の本人が頭に疑問符を浮かべながら問い掛けてきたので、俺が全力で無視した時だった。

ブロロロロロロロ……。

突如として、俺のパットンや、かのん達のパンターとは全く違う戦車のエンジン音(※2台分)が聞えてくる。
へぇ……、珍しいな。俺やかのん、この前のヤンキー達以外に戦車に乗る奴がこの辺に居たのか。
聞えてきた戦車のエンジン音を前にそう思っていた時だった。
その戦車の主……、戦車長と思われる少年と少女が俺達のいる駄菓子屋へとやって来た。
「お邪魔しまーす」
「……」
そう少年が一人挨拶しながら、門を開ける側で少女が不機嫌そうな表情を浮かべている。
因みにこの二人の格好だが、少年の方は東西冷戦期の西ドイツ軍戦車部隊の戦闘服を思わせる格好で、髪は茶髪。
少女の方は、かなりの低身長で髪は金髪。ゴスロリ風に改造されているが、ベースは間違いなくナチスドイツ軍戦車部隊のパンツァージャケットだ。
っていうか、この格好の奴は今まで見た事ないな……、この町以外の者か……。
そうだとしたら、こりゃまた珍しい……。こんな何も無い田舎に何の用があって来たんだろう?


ふと、胸の内でそう思いながら少年と少女をふと見つめていた時だった。
「ねぇ……」
少女がペロペロキャンディーを舐めながら、俺とかのんに向け、こう問い掛けて来る。
「表にあるパンターとパットンって、アンタ達の戦車?」
「そうだが?」
「右に同じく」
そう俺とかのんが揃って少女に対し、言葉を返した瞬間。
少女はとても信じられない様な様子でこう言い放つ。
「嘘でしょ?あんの古くっさいパンターと、パットンでT-55とPT-76を?嘘でしょ……、このデカパイ?」
「何よ、このチビすけ!!デカパイ言うーな!!」
「チビって言うな、このデカパイ女!!何を食ったら、こんなメロンが育つのよ!?」
「あっ……、ちょ……、やめっ……、なにするだぁーっ!!」
かのんの発言に切れた少女はかのんの胸になる”豊満なメロン”を揉み倒す。
この少女の行動にかのん……、若干ながら……、感じてないか?(※性的な意味で)
んで、この少女の行動に対し、かのんがカチンと来た様子で返す側で少年が少女を止める様にこう言い放つ。
「いい加減しろ、ハイパー。お前は礼儀って物を知らないのか?」
「何よ、|大田原《おおたわら》?何を今更、良い子ぶってんの?」
「俺は人として、当たり前の事を言っているだけだ」
とまぁ……、こんな感じで少年と少女は俺とかのんを差し置いて軽く口喧嘩を始めだす。
いやぁー、本当にこいつら一体なんなんだろう?


そう思いながら、少女と少年をジーっと見つめていると、少女の方はリセットするかの様に「ふんっ!!」と鼻息をつき、側にあったペロペロキャンディーを全て抱え、おばあちゃんにキャンディー代を渡すなり、俺とかのんの方を振り返ると少女は高らかにこう宣言するのだった。
「とにかく……、もう誰にもチビなんていわせないわ……、H・ユーゲント戦車倶楽部部長、Y・陽子・ハイパー!!貴方達、野良中戦車同好会に試合を申し込むわ!!」
そう高らかに宣言した少女……、もといハイパーに対して若干呆れた様な口調で少年(※確か大田原だったか?)が問い掛ける。
「それって、俺も参加しないといけないのか?」
「当たり前でしょ!!」
この大田原の問い掛けに対し、ハイパーが頭に碇マークを浮かべながら荒々しく返すと、それを受けた大田原は「はぁー……」と深く溜め息を付くとハイパーと同じ様に、こう高らかと宣言する。
「H・ユーゲント戦車倶楽部服部長、大田原・B・スコルツィー!!右に同じく、野良中戦車同好会に試合を申し込む!!」
「「「「「!!!」」」」」
「ふふ……、それなら……」
とまぁ……、この唐突過ぎる宣戦布告を前に俺達が揃って唖然としている側で、この一連のやり取りを聞いていた店のおばあちゃんが何故か不敵な笑みを浮かべるとハイパーと大田原に対し、こう告げるのだった。
「裏の川原を使うといーさー」
「Oh,Danek!!|《あら、ありがとう》行くわよ」
「はいよ……、ご協力に感謝します」
そうおばあちゃんの提案を喜んで受けていたハイパーが、礼を言いながら駄菓子屋を出ると、続く様に大田原もおばあちゃんに礼を述べながら、店を出る。


この二人の背中を見つめながら、後を追う様に店を出た俺達。
そんな俺達の視界には、”トンでもない光景”が広がっていた。
何故なら、そこには「第二次世界大戦における最強のドイツ軍戦車」と名高い「タイガー戦車」と東西冷戦期に西ドイツ軍やベルギー軍で使用された「戦車史上、最後の駆逐戦車」である「ヤグアル1ミサイル駆逐戦車」があったからだ。
「た、タイガー!!それにヤグアルも!?」
この2台にマリコが度肝を抜かれた様子で驚愕していた。
それも無理も無い話……と言うか、状況なのは間違いないな……。
現にタイガー戦車は、強力な88mm砲を主砲として搭載し、全ての連合軍戦車を一方的に撃破する事が可能であり、その分厚い装甲は逆に連合軍戦車の砲撃を全て跳ね返す程に強固なものだ。
こんな性能を持ったタイガーは第二次世界大戦中にヨーロッパで戦った全ての連合軍兵士を恐怖のどん底に叩き落した「最強のドイツ軍戦車」と言っても過言ではない名戦車と言える存在だ。
そして、ヤグアル2の方は東西冷戦期の西ドイツ軍が強力なソ連軍機甲師団を向かい撃つべく開発した、戦車史における最後の戦車駆逐戦車である「カノーネン・パンツァー」を改修した駆逐戦車だ。
最大の特徴は、主武装として搭載している「TWO対戦車ミサイル」だ。
このTWO対戦車ミサイルは、「世界で最も使用されている対戦車ミサイル」と言わしめる程の傑作対戦車ミサイルだ。
1972年のベトナム戦争において、UH-1ヘリコプターの対戦車ミサイルとして始めて実戦に使用されて以降、数々の戦争や紛争で敵の戦車や装甲車を一瞬で鉄屑に変えてきた「恐るべき対戦車ミサイル」と言っても間違いでは無いだろう。
そんな恐るべきTWO対戦車ミサイルをヤグアルは発射可能であり、大真面目に命中すれば第二次世界大戦中の戦車であるかのん達のパンターは愚か、戦後第1世代戦車である俺達のパットンすら木っ端微塵に吹き飛ばされるのは確実と言える……。
「……」
「これは……、トンでもない強敵だな……」
「そうね……」
そう胸の内で思いながら、俺とかのん、マリコの3人が真剣な表情でそう呟くと側に居たタカオが「え~っ?」とアイスキャンディーを舐めながら、こう言い放つ。
「こっちの|デカイ方《タイガー》は兎も角……、こっちの|平べったい戦車《ヤグアル》なんて……、もう殆ど、板じゃない!!」
「もういっそ、まな板にでもする?」
そうタカオの言い張った言葉に対し、軽く笑いながら正一がジョーク交じりにそう返した瞬間。
マリコの中で何かピーンと来たらしく、少し前にテレビで放送していた迷言(?)混じりにこう言い放つのだった。
「確かに……、この戦車、まな板にし……、まな板にしようぜ、まな板に!!まな板にしたら?かなり、まな板だよコレ!!」
「人の戦車をまな板、まな板言うなぁぁぁー!!そういうテメェらの戦車だって、アナログ全盛期の化石同然だ!!」
とまぁ、どこぞの無人島を開拓している副業がアイドル達のリーダーの様にまな板、まな板連発していたマリコに対して、大田原は完全にお冠だ。
でも、まぁ……、自分の戦車をまな板呼ばわりされちゃ切れたくもなるだろうな……。

因みに、まな板は英語で「 Chopping board 」だ。

んでもって、自身の搭乗車両を「まな板」呼ばわりされた大田原が完全に切れた表情でマリコを見つめる側で、ハイパーは再び「フンッ!!」と鼻に掛けた笑い声を上げるとタイガーにゆっくりと他のクルーの手も借りつつ乗り込んでいく。
「怖かったら、拒否しても構わないわよ……、だけど……、その際は『関東最強の戦車乗り』は私達が頂いていくから宜しくね。行くわよ、大田原」
「はぁ……、はぁ……、了解……」
とまぁ、マリコに対して全力で切れていた為か、息を切らして肩で息をしていた大田原がハイパーに続く様にヤグアルに乗り込む。
そして、それを確認したハイパーが操縦主に前進指示を出してタイガーを走らせると、続く様に大田原もヤグアルを前進させる。
「「「「「……」」」」」
この2台の戦車が走り去る様子を俺とかのん達は揃って呆然と見つめていた……。
いやぁー……、マジで久々に直面したトンでもない自体だったなー……。
それもまさか、まさかの「道場破り(?)」と言うあり得ない形式の……。
走り去っていく2台の戦車のバックを見つめながら、俺が胸の内でそう思っているとマリコが「ふぅん……」と多少疲れた様子で鼻息を付き、かのんにこう言う。
「それで……、かのん、アラン、どうする?滅多にお相手できない強敵なのは間違いないけど……」
そう少なからず戸惑い混じりにマリコがかのんと俺に問い合わせてきたときだった。
「……マリコ」
俺の側に居たかのんがゆっくりとマリコの名を呼ぶと、こう言葉を続けた。
「あのハイパーって子……、『関東最強』って言ってた……、私の夢と同じ事を……、だから……、今、すっごいワクワクしているの!!」
「ふふっ……、上等!!」
かのんが嬉しそうにそう言い放った瞬間、マリコも不敵な笑みを浮かべながら彼女の参戦表明を受け入れる。
あー、あー、あー……、この状態のかのんはテコでも、ジャッキでも、動かないぞぉー……。
そうキラキラ状態になったかのんを見て、俺がそう思っている側でエリー達も揃って、かのんの様子を見ながら、こうボヤく。
「あー、あー、かのんさん、何かに突入してしまいましたよ……」
「はぁ……、何でアイツは事ある度に全面倒臭い事に首を突っ込むのよ……」
「まぁ、それが彼女らしさって言うのかな?」
そう3人が揃って会話を交わす中、かのんは相変わらずのキラキラ状態でこう言い放つ。
「皆、行くよ!!」
「俺達も強制参加かよ……」
「当たり前でしょ!!」
このかのんの発言に対し、思わず「はぁ~……」と深い溜め息を俺達は付きながら、パンターに乗り込むかのん達の後に続く様に、パットンに乗り込むのであった……。