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В стали и в огне - Курск видел девушку 鋼鉄と炎の中で ~少女の見たクルスク~ EP2

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あっという間に数日が経った……。

その数日のうちに、私は曹長達と共に攻守問わず数々の戦闘に参加。
ある時は、敵の補給部隊を攻撃し、またある時は、私達が占領した地域を奪還するべく攻撃を仕掛けてきたドイツ軍を迎え撃つ等、僅か数日の間に10を超える戦闘をこなしたわ。
その中では、本気で死を覚悟した戦闘もあったわね……。特にスツーカに襲撃された時なんかは、自分が生きてるのか、死んでいるのかさえ分からなくなった程よ……。
だけど、人間よく出来たもので、私も実戦初日こそ、泣くわ、漏らすは、嘔吐するわ、だったけど、こんな激しい戦いに身を置かれるうちに、私も自然とこの異常な状況に慣れきってしまっていたわ……。

その事に気付いた時、それと同時に”もう自分が普通の少女じゃ無くなっている”と言う事を痛感したわね……。
勿論、その事に最初こそショックを受けていたけど、直ぐにそんな事はどうでも良くなったわ……。だって、もう引き返せないんだもの……。
私だけじゃない、この戦争に従事している全ての女性兵士が女を捨てて、戦っている。今更、男女なんて物は関係ないわよ……。
ただ一人でも多くのファシストを殺す事だけが、今の私達に求められている事なのだから……。

そう頭の中で思う一方、そんな私の胸の内には、数日前に曹長に言われた事が気に留まっていた……。

あれから数日、戦闘の合間や休憩、睡眠の際に考えてはいたけど、未だにその答えは見つかってない……。
そりゃもちろん、曹長も言っていた様に「簡単に見つかる物じゃない」と言う事ぐらいは、分かっているつもりよ……。
だけど、「このままだと、一生見つからないんじゃないか?」という不安からか、どうしても焦ってしまうのよね……。
全く……。我ながら、どうしたら良い物か……。

そんな焦りにも似た胸の内を抱えつつ、迎えた今日、私達に下された命令は「前線の左側面から迂回しつつ、敵の防衛線を突破し、最終目標である砲兵陣地を攻撃し、殲滅せよ」と言った物だった。
どうやら、少し前にこの砲撃陣地から、司令部に向けての砲撃が行われたらしく、指揮官数人に死傷者が出て、後退せざるを得ない状況になった為、それを受けての作戦らしい。

この命令を最初聞いたとき、曹長が「かなり厳しいな……」と呟いていた。
確かに曹長の言う通り、攻撃の最終目標である砲兵陣地は、敵の前線の奥深くに配置され、距離にして3キロはある場所から、我々に向けて砲撃を行っている。
この状況からして、砲撃陣地に配備されているのは、相当な射程と威力を有する重砲だと思われ、更にそれだけの射程と威力を有するのであれば、ドイツ軍にとっても重要な攻撃の要である事は間違いなく、それ故に砲兵陣地の前には、いくつもの強固な防衛線が引かれているはず……。
それを突破して、後方にある砲兵陣地を攻撃すると言うのは、ギャンブルにも等しく、下手したら砲兵陣地まで辿り着くことが出来ずに全滅する可能性も十二分にあり得る。

無論、司令部だって、そのことを十二分に理解しており、この攻撃に参加する戦力として、私達の隊だけではなく、他の戦車隊や戦車跨乗隊を多数動員しており、その中には、KV-1重戦車やレンドリースでソ連に供与されたイギリス製の”チェールチリ歩兵戦車(※Черчилль)”や、アメリカ製の”M3グラント中戦車(※Грант)”と言った優秀な外国製戦車を装備した精鋭の親衛戦車連隊の姿もあった。

また必要に応じては、航空機戦力も投入する事も司令部は決定しており、既に2個戦闘機小隊及び1個攻撃機小隊が出撃準備を整えているそうだ。

だが、それらの精鋭と戦力をもってしても、この作戦が成功するかどうかは怪しい所があるのが現状だろう……。

しかし、命令である以上、軍人である私達は命令を遂行せねばならない。
戦争である以上、勝ち目のないギャンブルにおいてでも、勝たねばならない……今はその様な時代だ。
(この戦いで、死ぬかもしれないわね……)
私や曹長達だけではなく、この作戦に参加する全ての兵士達が頭の中で、ふとそんな考えながらも、司令部から告げられた攻撃開始時刻に備え、私達は急ピッチで戦闘準備を進めていく。

そして、迎えた攻撃開始時刻……。

『総員、攻撃開始せよ!!』
「「「「Ураааааааа!!」」」」

指揮官の攻撃開始の合図と共に、数日前と同じ様に戦車の装甲越しにでも聞こえてくる兵士達の雄たけびを聞きつつ、私は戦車を走らせるのだった……。





……

………



攻撃開始から、数時間後……。
私達は運よくと言うべきか、数々のドイツ軍の強固な防衛線を何とか突破し、最終攻撃目標である砲兵陣地の手前にまで、やって来た。


そして、今は最後の攻撃に備え、弾薬や燃料の補給、戦車の損傷した箇所の応急修理に点検と言った各種作業を急ピッチで進めている所であり、私はコヴァーリ軍曹、バートル軍曹と共に弾薬や燃料の補給を行っていた。
「コヴァーリ軍曹、そのドラム缶も頼みます!」
私はそう呟きながら、手回し式の燃料ポンプを回し、戦車に燃料を給油しながら、コヴァーリ軍曹に次のドラム缶を持ってくるようにお願いする。
そのお願いに対し、コヴァーリ軍曹は「ったく!」と呟きつつ、燃料の入ったドラム缶を転がしつつ、こう言い放つ。
「まったく人使いの荒い、伍長様だな!っていうか、クッソ重いんだよ!!」
ドラム缶を転がしつつ、最初に私とあった時と同じ様に悪態を付くコヴァーリ軍曹に対し、私は給油を続けながら、こう言い放つ。
「あ~……コヴァーリ軍曹殿。先の戦闘で『火炎放射器の燃料が無い!』とか、叫んで、慌ててましたよね?」
「あー、確かにそうだったな!」
そう私がコヴァーリ軍曹の戦闘中における”珍行動”の事を言うと、近くで同軸機銃の弾薬の補給作業を行っていたバートル軍曹も茶化す様に言う物だから、コヴァーリ軍曹は顔を真っ赤にして、こう言い放つ。
「う、うるせぇ!バカヤロー!!だって、いきなり燃料切れちまったんだぞ!!!慌てるのは当たり前じゃないか!!!!」
「アンタが無駄にゴー、ゴーと焼くから、切れるんだろ?」
「う、うるせぇ!補給のナパームはどうしたんだ!?」
「今、コヴァーリ軍曹が転がしているドラム缶の中身が、それですよ」
この私の発言に対し、「アッ!?エッ!?ハッ!?」と変な声を上げて驚くコヴァーリ軍曹。
そんなコヴァーリ軍曹を見て、私とバートル軍曹が笑っていると、攻撃指揮官の元に顔を出していた曹長が戻ってきた。


曹長は戻ってきて、私達の顔を見るなり、こう聞いてくる。
「お前ら、補給と点検は済んだか?」
「はい、燃料は満タンです。戦車も火炎放射器も」
「弾薬も補給OKです!!」
「通信機の調子もバッチリですぞ、曹長!いつでも、行けますぜ!!」
この私達の報告を聞いた後、曹長は「よし!」と呟きながら、こう続けた。
「5分後に最終攻撃目標である砲兵陣地に突撃する!今日、最後の戦いになるぞ!!全員、気合入れてけ!!!」
「「「了解っ!!」」」
「よし……、戦車搭乗!!」
そう気合を入れた後、私達は一斉に滑り込む様にして、戦車へと乗り込んでいく。
「伍長」
「曹長……」
その直前、曹長は私を呼び止めた後、こう言い放つ。
「お前も大分兵士の顔らしくなってきたな、伍長。どうだ、あれから見つけられたか?」
「……正直に言いますと、まだ見つけられてません」
曹長に問いに対し、素直にそう答えた私に対し、曹長は優しくこう言い放つ。
「気にするな、伍長。簡単に見つけられる物じゃないんだ。ゆっくり探せばいい」
「……はい」
私が曹長の言葉に対し、ゆっくりと答えると、曹長は私の肩を軽くたたきながら、こう言い放つ。
「そのためにも、必ず生きて帰るぞ!分かったな!?」
「……了解っ!!」
私はそう一言、曹長に返した後、滑り込む様に戦車の操縦主席に座り込むと、エンジンを始動させる。
『全兵士に告ぐ!いよいよ最終攻撃目標だ!!我々の力を奴らに見せつけろ!!!総員、戦闘を開始せよ!!!!』
「行くぞ!戦車、前へ!!」
「了解っ!!」
攻撃指揮官の発した攻撃開始の合図を受けて、曹長が私に対し、前進の指示を出す。
それを受け、私は操縦桿を前に倒すと同時にアクセルを踏み込み、戦車を走らせた。


同時に周りにいる友軍の戦車達も一斉に走り出し、ドイツ軍の砲兵陣地に向け、一気に進撃を開始……最後の攻撃が始まったのだ!


そんな私達の攻撃を迎え撃つ、ドイツ軍も負けじと、最後の抵抗をしてくる。
『Machen Sie keinen Schritt zurück. Zeigen Sie Ivan seinen Willen als Soldat der 3. Kaiserlichen Armee!(※一歩も引くな!イワンどもに第3帝国軍兵士としての意地を見せろ!!)』
ドイツ軍側の指揮官はそう叫びつつ、腰のホルスターから引き抜いた、ワルサーを撃ちまくり、突撃してくる私達を迎え撃つ。
それと同時に他のドイツ軍兵士達も一斉にライフルや機関銃、パンツァーファウスト、対戦車砲を撃ち、ありったけの手りゅう弾を投げつけるなどして、激しく応戦してくる。
「グアッ!」
「ギャッ!!」
「ワッ!!」
それらの攻撃によって、|私達《戦車》の周りに展開していた跨乗兵達が次々に倒れる中、私は必死になって戦車を操縦していた。
その間にも、ドイツ軍の迎撃は止む事無く続き、戦車の装甲に銃弾や砲弾の破片が当たり、ガンガン!と車内に耳障りな金属音が絶え間なく車内に鳴り響く中、主砲用の照準器をのぞき込んでいた曹長が叫ぶ。
「1時の方向にファシストの対空機関砲!戦車、停止!!」
「了解っ!」
そう復唱を返しつつ、私は素早くブレーキを踏み込みつつ、操縦桿を手前に引いて、戦車を停止させると間髪入れずに曹長が主砲を操作し、照準を対空機関砲に定めていく。
対する対空機関砲も負けじと、私達の方に照準を向けると間髪入れずに発砲し、機関砲弾を浴びせてくる。
この攻撃によって、ガン!ガン!ガン!と車内にけたたましい金属音が鳴り響き、戦車全体が激しく揺れるが、それに動じる事無く、主砲の照準を機関砲に定めた曹長は主砲のトリガーを引く。
瞬間、凄まじい砲声と共に砲尾が後退し、金色の空薬莢が車内に吐き出されると同時に、砲口から飛び出した砲弾が機関砲に命中。轟音と共に機関砲を破壊し、同時にそれを操作していたドイツ兵達を吹き飛ばした。
「対空砲沈黙、確認!バートル、次弾装填しろ!!」
「了解っ!!」
大声で叫ぶように曹長が出した指示に従い、バートル軍曹が次弾を素早く装填する傍で、曹長はコヴァーリ軍曹に対し手も、大声で指示を飛ばす。
「コヴァーリ!司令部に伝えろ!!対空砲は潰したから、戦闘機をよこせって!!!」
この曹長の指示に対して、コヴァーリ軍曹は「えぇ!?」と驚いた声を上げながら、曹長に問う。
「何でですか?敵機なんて、居ないですよ!?」
「感だ!」
コヴァーリ軍曹の問いに漠然とそう返す曹長に対し、コヴァーリ軍曹は再び「えーっ!?」と驚いたような声を上げ、何か言おうとするが、それよりも先に曹長の方が口を開いた。
「今日の俺の感は冴えに冴えてるんだ!それで良いだろ!!」
「あー、もう!無駄骨になって、司令部や空軍の連中に怒られる羽目になっても俺は知りませんからね!!」
コヴァーリ軍曹は、そう言うと「もうヤケクソ!」と言わんばかりに荒々しく無線機を操作し、司令部に繋ぐと大声で航空支援を要請する。

そんなコヴァーリ軍曹を横目で見ながら、戦車を走らせていた私だが、ふと銃声や砲声、戦車のエンジン音とは違う「Vooooooo!!」と言う音が”上空から”聞こえてきた。
「ツッ!?」
その瞬間、何かを悟った私が戦車の操縦主用ハッチを開け、身を乗り出す様にして、空を見上げた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、此方を狙い、まるで獲物に狙いを定めた鷲の様に突っ込んでくる2機の”Ju 88”軽爆撃機の機影だった。

(マズイ!)

機影を見た瞬間、直感的にそう思った私は勢いよく操縦主用をハッチを閉めると同時にアクセルを全力で踏み込み、戦車を走らせた。
その次の瞬間、上空のJu 88は私達の戦車に向けて、機銃掃射してきたかと思えば、1発の爆弾を落としていくのが見えた。

「来ます!!」

私がそう叫んだ瞬間、落とされた爆弾が爆発。凄まじい爆音と衝撃波が私達の戦車に襲い掛かってくる。
「うおっ!」
「だあああっ!?」
「うわっ!!」
「ッツ!!」
その爆音と衝撃波に私達が車内で身を堪える中、もう1機のJu 88が同じ様に爆撃を行い、私達の近くにいた友軍のM3グラントを撃破していく。
「ウワッ!ウワアアアアッ!!」
「熱い!熱いいいっ!!」
撃破されたグラントからは、火だるまになった乗員が外に飛び出し、悶えていたが、やがて動かなくなり、地面へと崩れ落ちていった……。
そんな乗員達の最後を見ながら、曹長は「クソっ!」とボヤキつつ、ハッチを開けて、外に上半身を出しつつ、上空を見上げた後、大声でこう叫ぶ。
「まだ来るぞ!伍長、戦車をジグザグ走行させるんだ!!俺の合図で操縦桿を切れ!!!」
「了解っ!」
曹長の指示にそう返しながら、私が思いっきりアクセルを踏み込み、戦車を走らせる間にも、Ju 88は私達を狙って、攻撃を仕掛けてくる。
そんなJu 88に視線を向けながら、曹長は大声で叫んで指示を飛ばす。
「伍長、右だ!」
「了解っ!!」
私はそう言って左の操縦桿を手前に引き、左の履帯をロックし、戦車を右に向けると、また素早く左の操縦桿を倒し、戦車を直進させる。
暫く戦車を直進させると、曹長がまた大声で叫ぶ。
「次は左だ、伍長!」
「はいっ!!」
大声でそう言いながら、今度は右の操縦桿を手前に倒し、右の履帯をロックし、戦車を左向けると、先程と同じ様に右の操縦桿を倒し、戦車を直進させる……。
こんな感じでジグザグ走行して、何とかJu 88の爆撃をやり過ごすが、Ju 88の方も私達の事を諦めきれない様子で、私達の乗る戦車に機銃掃射した後、上昇し、高度を稼ぐと上空を旋回して、また私達を狙って降下してくる。
「クソっ!キリがねぇぞ!!」
「|アンタ《コヴァーリ》の意見に同意するのは癪だが、ホントだぜ!」
「なんか私達、やらかしましたかね!?」
「知らん!」
止む事無く続く爆撃を前に曹長を除いた、私達3人が叫ぶ様にそう言う中、上空を見ていた曹長がこう言い放つ。
「お前ら、落ち着け!べっぴんさんがおいでなすったぞ!!」
曹長がそう叫んだ瞬間、上空のJu 88に無数の銃撃が浴びせられ、Ju 88は轟音と共に爆発し、地面へと落ちていく。
それと同時に上空を友軍のYak-9戦闘機が通過していった。恐らくこの通過した戦闘機がやってくれたのだろう……。
「おう、ありがとうよー!!」
上空を通過する戦闘機に対し、そう礼を言いながら、曹長は車内に戻ると私達に向け、こう言い放つ。
「よーし、うるさいハエはいなくなった!これで心置きなく暴れられるぞ、お前ら!!」
「「「了解っ!!」」」
そう3人で曹長に復唱しながら、私達は戦闘を続行していくのだった。


こうして暫く戦闘を繰り広げていると、遂に私達は砲兵陣地への最深部へと辿り着く。
最終攻撃目標と言う事もあって、私達の視界に入るのは、大量の攻撃目標であるドイツ軍の重砲とドイツ兵達の姿だ。
そんな大量の攻撃目標を前にして、曹長が照準器越しに大声で叫ぶ。
「凄いぞ、全周目標だ。コヴァーリ!奴らのハーフトラックに火炎放射器を喰らわせて、やれ!!伍長、戦車を止めるな!!!ひたすら、前進しろ!!!!」
「了解っ!」
「了解ですぜ、曹長!!」
曹長の指示に従い、私が戦車のアクセルを踏み込み、戦車をひたすら前進させる傍で、コヴァーリ軍曹は火炎放射器のトリガーを引き、目の前で荷台にドイツ兵を載せて、走っていた、ドイツ軍の8トンハーフトラックに火炎放射を浴びせ、ハーフトラックを文字通りの意味で”火の車”にする。
こうして、火の車になったハーフトラックからは、火だるまになったドイツ兵達が飛び降りていくのと同時に、火だるまになったドライバーが逃げる間もなく絶命した為、コントロールを失い、暫く暴走する様に走った後、そこら辺に積み上げてあった木箱や土嚢を滅茶苦茶に倒しながら、激しく横転していく。
その様子を私は戦車覗き窓越しに見つつ、前進し、最終的には、その火だるまになったハーフトラックをバキバキ!と踏みつぶしつつ、乗り越え、さらに前進していく。
そうして、暫く前進した後、曹長が再び大声で叫んだ。
「伍長、戦車停止!」
「了解!」
この指示に従い、私が戦車を停車させると、素早く曹長が照準器を操作し、照準を定めていく。
今度の獲物は2時の方向にあるドイツ軍の重砲……17cm K 18だ。
『Ich ziele auf ein schweres Geschütz! Raus hier!(※重砲を狙ってるぞ!早く仕留めろ!!)』
『Es ist eine Anti-Panzer-Kanone! Drehen Sie die Panzerabwehrpistole!(※対戦車砲だ!対戦車砲を回せ!!)』
私達が重砲に狙いを定めている事に気付いたドイツ軍の下士官がそう叫びつつ、MP40を撃ちまくる傍では、別の下士官が対戦車砲を持ってくるように指示を飛ばす。
その指示に従い、ドイツ軍の数人の対戦車砲兵が5 cm PaK 38対戦車砲を操作し、私達に照準を定めてくる。
火炎放射器のトリガーに指を掛けつつ、除き窓から外をのぞき込んでいたコヴァーリ軍曹がそれに気づき、主砲用照準器を操作していた曹長に対し、大声で叫ぶ。
「曹長、狙われてますぜ!」
「分かってる、コヴァーリ!伍長、俺が射撃したら直ぐに戦車を後退させろ!!」
「了解!」
まるでアメリカ製の西部劇で見た様な早撃ちだ。私達が重砲を仕留めるのが先か、それとも先にドイツ軍の対戦車砲が私達を仕留めるのか……。
そんな並々ならぬ緊張感が車内を走る中、砲塔旋回装置を操作しつつ、照準器を覗き込んでいた曹長が叫ぶ。
「貰った!」
「後退します!!」
そう言いながら、曹長が主砲のトリガーを引き発砲する同時に、私はギアをバックにれ、アクセルを一気に踏み込み、戦車を全速後退させる。
それと同時に此方を狙っていたドイツ軍の対戦車砲も同時に発砲!
T-34の主砲と対戦車砲から、放たれた2発の砲弾が同時に一直線にたがいに狙いを定めた目標に飛んでいく!

そして、数秒後。こちらの放った砲弾が重砲を破壊するのと同時に、ドイツの対戦車砲が放った砲弾が私達の近くに着弾、轟音と共に炸裂した。
「きゃっ!」
「うおっ!!」
「がっ!?」
「ツアッ!!!」
対戦車砲弾の炸裂に伴う、凄まじい爆音と衝撃波が戦車の中に私達に容赦なく襲い掛かる中、私達の戦車はグルリ!と激しく左に回転する形にて、停車。

(この感覚は……履帯をやられた!?)

停車すると同時に、訓練校で習った履帯が切れた時の感覚と同じ感覚を感じた私は声を大にして、曹長達に伝える。
「曹長、右の履帯をやられました!」
「クソっ!バートル、次弾を装填しろ!!」
私の報告に対し、悪態を付きながら、バートル軍曹に次弾の装填を指示しつつ、曹長は主砲用の照準器をのぞき込んだ。
そして、私達を攻撃してきた対戦車砲を見つけると、曹長は間髪入れずに主砲を発射し、私達を攻撃してきた対戦車砲を木っ端みじんに粉砕する。
「糞どもがっ!」
照準器越しに対戦車砲が木っ端みじんになるのを見た曹長は、そう呟きながら、私に聞いてくる。
「伍長、移動は出来ないんだよな!?」
「無理です!」
この私の報告に対して、曹長が「クソっ!!」と悪態を付く中、コヴァーリ軍曹とバートル軍曹は曹長に対して、こう言い放つ。
「曹長、脱出して下車戦闘に移りましょう!!」
「コヴァーリの言う通りです!このままでは、良い的です!!」
「………」
コヴァーリ軍曹とバートル軍曹は、そう言って曹長に戦車からの脱出及び下車戦闘に移行する事を提案。
この提案に対して、曹長が指を顔に当てながら、どうするべきか検討するなか、再び私達の近くに砲弾が着弾し、轟音と共に炸裂し、私達を激しく揺さぶっていく。
「キャアアッ!」
「ぬおっ!?」
「なんだぁ!?」
「っ!!」
私達が車内で激しく揺さぶられる中、曹長はハッチを開けて、車外の状況を確認する。

「っ、あれは!!」

そして、ある物の存在を確認した曹長は珍しく緊張した様な声で車内に戻ると、大声で私達にこう告げる。
「10時方向に敵戦車隊!数は8両、四号と三号の数が多いが、一台は新型の”豹戦車”だ!随伴歩兵も引き連れていやがる!!」
「えぇっ!?」
「豹戦車って、そんなバカな!?」
「曹長、何かの間違いじゃないんですか!?」
私達は曹長の報告を信じる事が出来ず、驚きながら、曹長に確認を取る。

だって、そうよ。豹戦車の存在自体は、訓練学校で知ったはいたし、ここ数日作戦の合間に聞いた噂で「豹戦車らしき新型戦車を見た」と言うのがあったけど、実際に遭遇するなんて、予想外だわ!
それに訓練学校に居た時に聞いた話では、「新型の豹戦車は私達のT-34やKV-1を易々と撃破できる性能を有している」と言う事ではあったけど「新型であるが故に数は少なく、戦場で相手にするファシスト共の戦車は旧式のⅢ号戦車か、Ⅳ号戦車、それか突撃砲(※Samokhodnaya Ustanovka)であり、我々の相手たるものではない!」と言われ来たんだから……。
だけど、そんな滅多に遭遇しないはずの新型の豹戦車が此処にいるって……本当にどういう事よ!?

そんな考えが頭の中をグルグルと駆け巡る中、曹長は声を荒げながら、私達の問いにこう返す。
「俺だって、嘘だと思いたいよ!だが、目の前にいるんだよ!!クソっ、最悪だ!!!」
曹長がそう悪態を付いた瞬間、私達の戦車に無数の銃撃が浴びせられる。
如何やら、私達の戦車が擱座状態にある為、そこから私達が脱出した所を狙い撃つつもりなのだろう……。

(そうだとしたら、脱出も出来ないわね……)

そんな考えが頭を過ぎる中、近くにいた友軍のT-34やKV-1重戦車やM3グラント達が一斉に豹戦車を含めたドイツ軍戦車隊と交戦に突入する。
彼らは精鋭の親衛戦車連隊の戦車兵と言う事もあり、新型の豹戦車を前にしても、冷静に対処し、砲撃を行う。
そんな親衛戦車連隊の戦車との交戦によって、Ⅲ号及びⅣ号戦車が1台ずつ撃破されるが、ドイツ軍側も精鋭なのだろう……。
目の前で、味方の戦車が爆発炎上するの見ながらも、動じる事無く、冷静に此方の方に照準を定めると一斉に発砲。
その瞬間、一斉にこちら側の戦車3台が瞬く間に撃破され、オレンジ色の炎に包まれた。
特にとあるKV-1に至っては、新型の豹戦車の砲撃をモロに喰らった為のか、その重装甲を生かす間もなく一瞬で爆発し、砲塔を上に吹き飛ばしていた。
「ウワアアッ!!」
「逃げろ!外に出るんだ!!」
そんな炎上するKV-1の傍で、別のやられたT-34の乗員が必死になって車内から、業火と黒煙を吹き出す戦車から、這い出て脱出しようと試みるが、そんな乗員達に向け、豹戦車を始めとするドイツ軍戦車の同軸機銃が容赦ない銃撃を浴びせ、次々と乗員をハチの巣にしていく。
辛うじて、車外に脱出する事が出来た乗員もドイツ軍戦車に随伴する歩兵たちの持つ銃火器によって、次々と撃たれ、絶命していく。


その光景を覗き窓越しに見ていた、コヴァーリ軍曹が「信じられない!」と言わんばかりの口調で、こう言い放つ。
「嘘だろ、重戦車のKV-1が一撃で!?」
「クソっ!これじゃ下手に外に脱出しようものなら、一瞬で全滅しちまうぞ!!」
KV-1が瞬く間に撃破されるのを見て、驚愕するコヴァーリ軍曹の傍で、次々と撃ち倒されていくT-34と乗員たちの姿を目の当たりにし、バートル軍曹が珍しく感情をむき出しにして、成す術もない自分達の状況に憤っていた。
そんな二人の様子を見ながら、曹長も流石に弱り切った様子で、こう呟く。
「どうしようもないって、言うのかよ……クソっ!」
「………」
そう言って戦車の砲塔壁を殴りつける曹長を見ながら、私は”とある考え”が思い浮かぶと、曹長に話しかける。
「曹長、煙幕弾はありますか?」
「煙幕弾?ある事は、あるぞ」
私の問いに対し、砲塔内の手りゅう弾置きから、発煙弾を取り出しながら、こう続ける。
「伍長、煙幕を焚いて脱出するっていうのか?正直言って、今は狙われているから、煙幕を張っても脱出するのは厳しいぞ」
「はい、その通りです」
「じゃあ、何で……」
「煙幕を使うのは脱出する為じゃありません」
「えっ、じゃあ……」
そう言って曹長が私の発言に対し、疑問を呈するよりも先に私はこう答えた。

「今から、私が車外に出て戦車の履帯を修理します。ですから、その間のカモフラージュ用です」

そう……これが私の”考え”だ。

今現在、私達の戦車は履帯を破壊され、擱座状態にある。
本来、この状況に陥った場合、戦車を捨てて脱出するのが一番無難な選択だろう。
だが、今はドイツ軍の戦車隊による猛攻撃が行われ、脱出する事さえ、至難の業と化してしまってている。
だとすれば、この戦車の中にいる事が一番安全な方法だと思われるが、先に述べた様に、今現在、この戦車は擱座している状態であり、今やこの戦車は唯の”デカい鉄の塊”と化している。
そうである以上は、遅かれ、早かれ、敵戦車の砲撃なり、肉薄してきた敵の歩兵が投げ込んでくる爆薬で吹っ飛ばされ、4人揃って仲良く戦死者リスト入り確定だろう……。

それだけは、絶対に回避しなければならないわ!!

その為にも、今考えられる一番有効な回避手段として、この戦車を履帯を修理し、行動可能にした上で戦闘に復帰するのが、一番ベストな選択肢だろう……。
無論、修理の際には、銃砲弾が激しく飛び交う戦場の中、体1つで一枚何十キロもある鉄の塊である履帯を修理しないといけないのだから、相当な重労働であり、更には敵に攻撃を受け、戦死する可能性も十二分にあり得る。
またもし仮に無事に履帯を修理でき、戦闘に復帰できたとしても、相手のドイツ軍戦車隊の中には、此方の戦車の性能を遥かに上回る豹戦車が居る以上、撃破されるの可能性も十二分にある訳なので、どちらにせよ、崩落寸前の危険な橋を渡る行為だ。

だが、今の私達に言える事は「生きて帰る為には、今、此処で戦う以外の選択肢は残されていない」と言う事であり、その為には、やるしかないのだ。その覚悟を私は決めていた……。

無論、そんな私の覚悟など知る由もない曹長達は必死になって止めてくる。
「無茶だ!危険すぎるぞ、伍長!!」
「死ぬつもりかよ!?」
「止せ!無駄死にするつもりか!?」
そう言って私の事を心配し、必死に私を止めようとする曹長達。
数日前に出会った時には、みんな揃って「女が戦場で戦えるか!」とか、「国に帰った方が良い」みたいな感じで、私を戦力外扱いしていたのに、今では皆揃って私の事を心配してくれている……。

(あぁ……、私も仲間として認めてもらえたんだな……)

そんな今の状況からすれば、余りにも的外れな感情が胸の中でわいてくる中、私は気を引き締めて、曹長達にこう告げた。
「では、どうするんですか?このままでは、いずれドイツ軍の戦車に砲撃され、撃破されるか、肉薄してきた歩兵に爆薬を投げ込まれて、爆死する事になりますよ?そんな展開、私は御免です」
「だが……」
「今の私達が選べる選択肢は、それしかないんです!曹長!!」
「………」
私の決死の懇願に対し、何と返せば良いのか分からない様な表情を浮かべる曹長。
まぁ、我ながら、なかなかギャンブルな事を言っているとは思うわよ……だけど、今は危険な賭けと分かったうえで、あえて賭けに出るべきよ!
胸の内にそんな熱い物を抱えた私が「曹長!」と言って、曹長に決断を求める中、コヴァーリ軍曹がこう言い放つ。
「だけどよ、伍長……。履帯の修理って言うのは、俺達の様な男3人でも、骨が折れる様な作業だぞ。女手一つで出来る様な軟な物じゃないぞ!」
「そうだ、伍長。せめて、俺がコヴァーリが手伝った方だ……」
「いえ、軍曹達は車内に残って援護をお願いします」
そう私の事を心配し、修理を手伝おうするコヴァーリ軍曹とバートル軍曹に対し、私はそう言って、彼らの手伝いを拒否すると、更にこう続けた。
「履帯の修理に関しては、1人でも履帯の修理が出来る様に訓練学校で訓練を受けています!それに今、ドイツ軍の攻撃を受けたら、堪った物じゃありません!!ですので、軍曹達は車内に残って援護及び、接近してくるドイツ軍を近づけさせない様にしてください!!!」
「「………」」
私がそう言い放つと、軍曹達も曹長と同じ様に私に対して、何といえば良いのか、分からないらしく、黙り込んでしまう……。


そんな中、曹長が私の方に真剣な表情で顔を向けると、ゆっくりを口を開き、こう言い放つ。
「……伍長、本当にやれるんだな?」
「……はい!」
真剣な表情で聞いてくる曹長に対し、私も今までになく真剣な表情で返事を返すと、曹長は「ハァ……」と深く息を吐いた後、覚悟を決めた様に「よし!」と呟きながら、こう言い放つ。
「分かった……、伍長……、お前に俺達の命を託す!頼むぞ!!俺達も全力で援護するから、お前も全力を尽くせ!!!分かったな!?」
「はっ!全力を尽くします!!」
そう私がハッキリとした声で返すと、曹長は「よし!」と呟きながら、今度はコヴァーリ軍曹とバートル軍曹に向け、こう言い放つ。
「お前らも今の聞いたな!?」
「勿論ですぜ、曹長!」
「ハッ、聞いております!!」
「だったら、やる事は分かっているな!?さっさと戦闘配置だ!!」
「「了解っ!!」」
曹長の指示に対し、そう威勢よく復唱を返したコヴァーリ軍曹とバートル軍曹が己の持ち場に付く中、私は車内に置いてあったPPSh-71短機関銃を背負い、右手には車内に置いてあった簡易修理用の工具箱、左手には発煙弾を持ち、履帯の修理の準備を整える。
そして、全ての準備が整うと私は曹長達に向け、こう言い放つ。
「曹長、準備出来ました」
「よし……。下の脱出口から、車外に出たら、煙幕を焚居て、修理を行え。周囲の警戒を決して怠るなよ!!」
「了解です!」
そう言って私は脱出口の解放レバーに手を掛けつつ、曹長達に向け、改めてこう言い放つ。
「じゃあ、援護をお願いします!」
「あぁ!」
「任せろっての!!」
「頼むぞ!!」
私の言葉に対し、そう力強く返す曹長達の言葉を聞きつつ、私は「ふぅ~……」と呼吸を整える様に息を吐くと、目をカッ!と大きく見開きつつ、叫ぶ。
「行きます!!」
私は一言言うと同時に脱出口解放レバーを倒す。瞬間、バコン!と言う金属音と共に車体下部にある脱出口が勢いよく開く。
それと確認した私は、開いた脱出口から、滑り込む様にして、車外へと出ると、匍匐前進の体系で手に持っていて発煙弾のピンを抜き、戦車の前後に転がす様に投げた。
数秒後、発煙弾から、勢いよく白煙が吐き出され、辺り一面が真っ白な煙に包まれるを確認した私は素早く戦車の下から、這い出るなり、工具を片手に破損している履帯の元へと向かう。

発煙弾の白煙で周囲の様子は、よく見えない物の辺り一面に銃声や爆音、それに戦車のエンジン、履帯音が鳴り響き、未だにこの周辺で激しい戦闘が繰り広げられている事が容易に想像できた。

(早く修理しなければ……!!)

否が応でも、耳に飛び込んでくる激しい戦闘音を聞きつつ、私は破損している履帯を確認する。
破損していたのは車体左側、一番前にある誘導輪の部分の履帯で、真ん中から、履帯をピンを折られる形で上下2つに千切れる様な形で切断されていた
更にわかりやすく言えば、細長い付箋紙を真ん中の部分で引き裂いた様な感じだ。
不幸中の幸いと言った所か、転輪には、大きな損傷は見られない様子であり、履帯を修復すれば、直ぐにでも走行可能な状態だ。
どうやら、先程の対戦車砲の放った至近弾の破片や衝撃波で履帯同士を繋ぐ履帯ピンが折れたのだろう。いずれにせよ、損傷として比較的軽微な物だ。
(これなら直ぐに治せるわ……!!)
比較的、簡易な損傷である事に内心、ホッとしたのも一瞬だ。

『Haben Sie keine Angst. Vorankommen!! Holen Sie sie aus der Position!(※怯むな、突撃しろ!奴らを陣地から追い出せ!!)』

と言うドイツ兵の叫び声と共に近くから、銃声が聞こえてくる。どうやら、近くにドイツ兵がいるらしい。
(急がないと!!)
敵が近くに居ると言う事実を前に、私は否が応でも高鳴る緊張感を必死に抑えつつ、履帯の修理作業を始める。
同時に車内にいる曹長達も、その事に気付いたのか、曹長達は砲塔を右へ、左へと回転させつつ、同軸機銃を「これでもか!」と言わんばかりに撃ちまくり、近くにいるであろうドイツ兵を牽制する。

そんな中で、私は、まず戦車の上にある大型工具箱から、手押し式のジャッキと下に敷く盤木、履帯修理用の金具を取り出す。
取り出した盤木を地面に置き、切れた履帯に修理用の金具をセットし、それを更にジャッキにはめ込む様にして、セットする。
そうするや否や、私はジャッキのレバーを上下に上げ下げし、ジャッキを上昇させ、下の履帯を切れた上の履帯の近くにまで持っていく。
次に私は繋ぎの煙幕弾を投げ、煙幕を張りつつ、別の金具を切断された上下の履帯の真ん中に引っ掛ける様にして、セット。
その続け様に車内から持ってきた工具箱を開け、中から、履帯同士を繋ぐ為の部品である”履帯ピン”を取り出し、履帯の両側にセットする。

(後はハンマーで叩いて、履帯ピンを填めれば、修理完了ね!)

そんな事を思いつつ、工具箱から、ハンマーを手に取った瞬間だった!
『Es ist Ivan!(※イワンだ!)』
『Tu es!!(※やっちまえ!!)』
「っ!!!!!」

突然、煙幕の中から出てきたドイツ兵2名を遭遇、私はとっさにハンマーを投げ捨て、背負っていたPPSh-71短機関銃を手に取るや否や、ドイツ兵に向け、トリガーを引く。
その瞬間、凄まじい連射音と共に勢いよくチャンバーから、金色の薬莢が吐き出されると同時に、銃口から凄まじいマズルフラッシュと共に銃弾が勢い良く放たれ、その銃弾は私に向かってきた2名のドイツ兵を目掛け飛んでいき、見事命中する。
そうして、二人のドイツ兵がほぼ同時に地面に崩れ落ちたかと思った瞬間だった。

そのすぐ隣から、別のドイツ兵が手にナイフを構えつつ、叫びながら、私に飛び掛かって来たのだ!
『Dieses kleine Mädchen!(※この小娘が!)』
「っ!」
咄嗟に私はPPShの銃口を向けるが、それよりも先に私はそのドイツ兵に押し倒されてしまった!!
「ッツ……!グッ……!この……ッ!!!」
『Sterben!!(※死ねぇ!!)』
私はPPShを横にして、何とかこのドイツ兵の攻撃をやり過ごそうとするが、そのドイツ兵は私を遥かに上回る体系で、そこからくる馬鹿力で私にナイフを突き刺そうとしてくる。
「ッツ……!ッウウッ……!!」
「Stirb, stirb nicht!(※死ね、死ねぇ!)」
(もうダメ……、力が……っ!!)
その馬鹿力で段々と私の喉元に近づいてくるナイフを前に、もう私が覚悟を決めた瞬間だった。
「このクソ、ファシストがぁっ!!」
「Gua!(※グアッ!)」
と言う、凄まじい罵倒と共に目の前にいたドイツ兵が勢いよく吹っ飛んでいった。
それと同時に次々と銃声が鳴り響き、吹っ飛んでいったドイツ兵がハチの巣にされ、体中から血を吹き出しながら、崩れ落ち、最後は眉間に銃弾を一発撃ちこまれ、絶命する。

「はぁ……、はぁ……、はぁ……(一体、何が?)」

この光景を前に荒い息を整えつつ、何が起きたか分からず呆然としていた時だった。
「おい、伍長!大丈夫か!?」
「コヴァーリ軍曹……?」
突然、話しかけられ私が声の掛けられた方に顔を向けると、そこには、銃口から白煙の上がるPPS短機関銃を片手に跪くコヴァーリ軍曹の姿が。
私は荒ぶる呼吸を半場、無理やり、整えつつ、コヴァーリ軍曹に返事を返す。
「は、はい……。何とか……」
「よし……、曹長!伍長は無事です!!」
「そうか!」
(えっ?)
この声に私が驚きつつ、コヴァーリ軍曹が顔を向ける方に同じ様に顔を向けると、そこに居たのは、戦車の砲塔ハッチから、銃口から白煙を上げるトカレフ拳銃を片手に私達の方を見つめる曹長と、同じく銃口から白煙を上げるモーゼル拳銃を片手に周囲を警戒するバートル軍曹の姿であった。
そんな曹長は間髪入れずに私に問い掛けてくる。
「伍長、修理はどこまで進んだ!?」
そう言って修理状況を問う曹長に対し、私はハンマーを拾いつつ、こう報告する。
「後は履帯ピンをセットすれば、完了です!曹長!!」
「よし!コヴァーリ、手伝ってやれ!!」
「了解しました、曹長!やるぞ、伍長!!」
「はい!!」
そう言って私はコヴァーリ軍曹と共に、修理における最後の作業である履帯ピンを打ち込んでいく作業を行っていく。
「これで、良いのか!?」
「もう少し打ち込んでください!!」
まるで板に釘を打つかの様に、履帯ピンをハンマーで打ち込んでいくコヴァーリ軍曹に対し、指示を飛ばしつつ、私は全力でハンマーを振りかざし、履帯ピンを打ち込んでいく……そして、一心不乱にハンマーを振りかざした末、遂に”履帯の修理が完了”したのだ!

(さぁ……、今度は私達の番よ!!)

修理を終えた履帯を前に、私の胸の内にその様な考えが湧いて来るのだった……。