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В стали и в огне - Курск видел девушку 鋼鉄と炎の中で ~少女の見たクルスク~ EP3

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  3. В стали и в огне - Курск видел девушку 鋼鉄と炎の中で ~少女の見たクルスク~ EP3
履帯の修理を終えた私は状態を確認し、走行及び戦闘に支障が無い事を確認し、大声で曹長に報告する。
「曹長!履帯の修理が完了しました!!戦闘可能です!!!」
「分かった!もうすぐ煙幕が切れるぞ!!二人とも、直ぐに戦車に乗り込め!!!」
「「了解!!」」
私とコヴァーリ軍曹は、曹長に対し、そう復唱を返しつつ、手にしたハンマーをそこら辺に放り投げつつ、履帯にセットした金具やジャッキを荒々しく外し、ハンマーと同じ様にそこら辺に放り投げると、滑り込む様に戦車へと乗り込んでいく。
そうして、私とコヴァーリ軍曹が丁度、戦車に乗り込んだタイミングで、煙幕弾の煙幕が切れ、当たりの視界が段々を開けてくるが、それよりも先に曹長が声を張り上げて、指示を飛ばす。
「伍長、後退して、煙幕の中から出ろ!状況を把握する!!」
「了解っ!!」
曹長の指示に対し、そう返しつつ、私はギアをバックに入れ、アクセルを踏み込み、戦車を後退させ、煙幕の中から抜け出す。
そうして、一気に視界が開けた瞬間、曹長は素早く戦車長ハッチを開け、周囲の状況を確認し、大声で車内にいる私達に指示を飛ばす。
「総員、3時方向に敵戦車3台と随伴歩兵多数!攻撃用意!!伍長、3時方向に戦車の正面を向けろ!!!」
「了解っ!」
曹長の指示に対し、そう返しつつ、私は左の操縦桿を引き、左の履帯を固定すると三度、アクセルを踏み込んで一気に戦車の方向を転換する。
それと同時に車内に戻った曹長が照準器のハンドルに手を掛けつつ、続け様にバートル軍曹に指示を飛ばす。
「バートル軍曹、弾種変更!徹甲弾を装填しろ!!」
「了解です!」
バートル軍曹は、曹長の指示にそう言いながら、砲尾を操作し、砲の中に装填されていた榴弾を引き抜く。
続けざまに素早く床下弾薬庫から、徹甲弾を取り出すなり、勢い良く装填機に装填しつつ、次弾の徹甲弾を取り出しながら、曹長に報告する。
「装填完了です!」
「よし……、やるぞ!」
バートル軍曹の報告に対し、曹長は照準器を覗き込みつつ、そう言い放つと続け様に私に向け、こう言い放つ。
「伍長、戦車停止!」
「了解!」
そう言いながら、私が戦車を停車させた瞬間、戦車の上に載っていた砂ぼこり等が一斉に停車の際の惰性で動き、ザッ!と砂煙を上げる中、曹長は睨みつける様に照準器越しに前方を覗き込んでいく。
私も曹長と同じ様に目の前にある操縦主用の覗き窓から、前方の様子を確認する。


すると、私の目に飛び込んできたのは、2台のⅣ号戦車と1台の豹戦車が友軍の戦車たちと交戦する様子だ。
どうやら、もう既に4台のも友軍戦車が、この戦車達に撃破されたらしく、原型を留めない程に壊れ、真っ赤な炎を吹き出していた。
そんな鉄の墓標と化した友軍戦車の合間を縫う様に、一台のM3グラントが後退しつつ、新型の豹戦車を砲撃するが、凄まじい金属音と共にその砲撃は弾かれてしまった。
それに対する豹戦車の戦車長は「当然!」と言わんばかりに余裕の表情で、目の前のM3グラントを見つめると、こう叫ぶ。
『Feuer!(※撃て!)』
瞬間、豹戦車の75㎜砲が砲声と共に火を噴き、徹甲弾をグラントにお見舞いする。
逆にそのお見舞いを喰らったグラントは成す術もなく、凄まじい金属音と共に正面装甲を易々と撃ち抜かれ、動きを止めたかと思った次の瞬間には、上の砲塔を勢いよく吹き飛ばしつつ、大爆発した。
「クッソ!またやられたぞ!!」
「なんて性能だ!!」
「こりゃ相手にするのは、骨が折れますね……」
その様子を見た、曹長を除いた私達3人があーだこーだと言う中、曹長は冷静にこう言い放つ。
「全員、落ち着け!幸いにも奴らは俺の存在には、まだ気づいてないみたいだ。一気に奇襲し、奴らを倒し、奴らにやられた同志達の仇を取るぞ!良いな!?」
「「「了解っ!!!」」」
曹長の言葉に対し、私達が威勢よく復唱を返すと、曹長は「よし……」と呟きつつ、照準器を握りしめなおし、トリガーに指を掛けつつ、こう言い放つ。
「まずは一番後ろにいるⅣ号から、仕留める……。伍長、俺が撃ったら直ぐに移動開始、奴らの後方に回り込め」
「了解です」
「よし……、始めるぞ……!」
私の返事に対し、そう言いながら、曹長は照準器を睨みつけ、前方約800メートルの所にある少し小高い場所を走行しているⅣ号戦車に照準を定めていく……、そして……。
「喰らえ!」
そう言いつつ、曹長がトリガーを引いた瞬間、車内に凄まじい爆音が鳴り響き、勢いよく砲尾が後退し、車内に空薬莢を吐き出していく。
同時に砲口から、勢いよく放たれた徹甲弾は狙っていたⅣ号戦車の土手っ腹に見事命中!
凄まじい轟音と共に車外用具をまき散らしつつ、停車したかと思った瞬間には、中の弾薬に誘爆したのか、轟音と共に真っ赤な炎を全てのハッチ等から噴き出しつつ、勢い良く炎上する。
その次の瞬間には、先のグラントと同じ様に凄まじい爆音と共に大爆発し、砲塔を上に吹き飛ばしたのだった。
「命中!撃破を確認!!行け、伍長!!!」
「了解っ!!」
バートル軍曹が次弾を装填する中、曹長が叫ぶ!
その叫び声を聞きつつ、私は先程の指示に従い、一気にアクセルを踏み込み、戦車を走らせ、ドイツ軍戦車隊の後方へと回り込む!


勿論、ドイツ軍側も、この攻撃に一瞬浮足だった物のすぐさま、反撃体制を整え、反撃を開始する。
『Es ist ein feindlicher Panzer in Richtung drei Uhr!(※3時方向に敵戦車だ!)』
『Ich werde mich beeilen! Hör auf!Anti-Auto-Soldaten gehen an die Front!(※突っ込んでくるぞ!阻止しろ!対戦車兵は前へ!)』
私達の突撃に対し、随伴歩兵の指揮官がそう叫びつつ、パンツァーファウスト等を持った兵士を前に出すなか、直ぐ側にいたⅣ号と豹戦車の戦車長も同様に指示を飛ばす。
『Ziel, 3 Uhr Richtung! Es ist T-34!!(※目標、3時方向!T-34だ!!)』
『Anti-Auto-Kampf bereit!(※対戦車戦闘用意!)』
ドイツ軍戦車の戦車長達は、冷静にそう言いながら、砲塔を私達の方に向け、攻撃しようとしてくるが、それよりも先に曹長が叫んだ!
「伍長、随伴歩兵共に突っ込め!」
「了解っ!!」
曹長にそう言われるや否や、私は操縦桿を倒し、戦車を随伴歩兵達の方に向けると、一気にアクセルを踏み込み、戦車を加速させ、随伴歩兵達に突っ込んでいく……その様子は、まさに”獲物を捕らえようとする肉食動物”そのものだ。
そんな肉食動物と化した戦車に狙われた”哀れな獲物”と化したドイツ兵達は、様々な行動をとる。
『Komm, komm her!(※こっ、こっちに来るぞ!)』
『Laufen Sie nicht. Kampf!(※逃げるな!応戦しろ!!)』
『Raus hier! Du Sohn einer Hündin!(※この野郎!くたばれ!!)』
ある者は逃げようとし、ある者は、その逃げようとする兵に対し、叫び、ある者は叫びながら、手持ちの銃等を撃ちまくってくる。
そんなドイツ兵達の銃撃が激しく装甲を叩き、車内凄まじい金属音を立てる中、パンツァーファウストを持ったドイツ兵が私達の戦車に向け、パンツァーファウストを撃ってくるが、それをジグザグ走行で回避しつつ、一気に距離を詰める。
そうして、ある程度、ドイツ兵達との距離を詰めると曹長がコヴァーリ軍曹に対し、こう言い放つ。
「コヴァーリ!焼き尽くせ!!」
「了解!!」
曹長に対し、そう返しながら、コヴァーリ軍曹は火炎放射器のトリガーを引き、轟音と共に火炎放射をドイツ兵達に浴びせていく。
この火炎放射を浴びたドイツ兵達は、凄まじい悲鳴を上げつつ、蜘蛛の子を散らす様に離散していく中、私達はドイツ兵達の集団のど真ん中を突っ切る様に走行する。
その間、次々とドイツ兵を跳ね飛ばし、履帯で轢き、その血で覗き窓のガラスを真っ赤に染めつつ、私は戦車をジグザグ走行させ、飛んでくるドイツ軍戦車の砲撃を交わしつつ、更にドイツ軍戦車の後方に回り込んでいく。

こうして、随伴歩兵を蹴散らしつつ、ある程度、後方に回り込んだ後、曹長が叫んだ。
「伍長、戦車停止!」
「了解っ!!」
そう言って私が再びブレーキを踏み込み、戦車を停車させると同時に、曹長が2台目のⅣ号戦車に狙いを定めるなり、トリガーを引き、主砲を発射。
放たれた砲弾は2台目のⅣ号戦車の足回りに命中し、炸裂し、転輪や履帯をまき散らして停車するが、まだ戦闘可能な様で、此方に砲塔を向けてくる。
『Eile! Drehen Sie den Turm! Es wird getan werden!!(※急げ!砲塔を回すんだ!やられるぞ!!)』
Ⅳ号戦車の戦車長がそう叫びつつ、此方の方を見つめてくる中、車内では曹長が大声でバートル軍曹に対し、叫んでいた。
「バートル!装填まだか!?」
「今やってます!!」
曹長の呼びかけに、そう返しつつ、次弾を装填し、主砲の安全装置を解除したバートル軍曹が叫ぶ。
「装填ヨシ!」
「喰らえっ!!」
そう言って曹長がトリガーを引いた瞬間、再び主砲が轟音と共に火を噴き、Ⅳ号戦車に徹甲弾を撃ち込む。
撃ち込まれたⅣ号戦車は、再び凄まじい金属音を上げ、装甲の破片をまき散らしたかと思った瞬間には、凄まじい勢いで炎に包まれていく。
『Flucht, Flucht!(※脱出、脱出しろ!)』
『Springen Sie aus dem Tank!(※戦車から、飛び降りろ!)』
私達にやられたⅣ号戦車の乗員達は、ドイツ語でそう叫びつつ、戦車から飛び降りていく。
その様子を見ながら、コヴァーリ軍曹が曹長に問い掛ける。
「曹長、奴らに火炎放射を浴びせますか!?」
「構うな、コヴァーリ!それよりも相手にしなきゃならん奴がいる!!」
「豹戦車ですか!?」
「そうだ!」
曹長がコヴァーリ軍曹の言葉に対し、そう返した瞬間だった。

私達のすぐ近くにドイツ軍の戦車砲弾が着弾し、凄まじい爆音と共に破片と衝撃波とまき散らしながら、炸裂する。

それに身を構えつつ、私が覗き窓を覗き込むと、そこには豹戦車の砲口が私達の方に狙いを定めている姿だった。
「っ!!」
それを見た瞬間、私は咄嗟に曹長が指示を出すよりも先にギアをバックに入れるや否や、アクセルを踏み込んで、戦車を後退させた瞬間、豹戦車の砲口が火を噴き、私達の近くに至近弾を撃ち込んできたのだ!
至近弾の炸裂と同時に再び襲ってくる衝撃波と破片が装甲を激しく叩き、戦車を激しく揺らす中、近くにあった撃破されたKV-1戦車の陰に戦車を隠しつつ、私達は曹長達に対し、話しかける。
「全員、大丈夫ですか!?」
「おう、無事だぞ!助かったぞ、伍長!!」
後ろを振り返りつつ、安否を呼び掛ける私に対し、親指を立てつつ、笑顔で返すバートル軍曹。
それと同時に隣にいたコヴァーリ軍曹が、私の肩を叩きながら、こう言い放つ。
「お前、やるじゃねぇか!良く気付いたな!?」
興奮しながら、そう言い放つコヴァーリ軍曹に対し、私が冷静に「どうも!」と返すと、続け様に曹長が私に向けて、こう言い放つ。
「伍長……、腕を上げたな……、よくやったぞ」
「お褒め頂き、光栄であります」
曹長に対し、軽く笑いながら、私が敬礼すると、曹長はハッチを開けて外の様子を確認しつつ、こう続けた。
「あの豹戦車、俺達がⅣ号を2台血祭りに上げたから警戒しているな……。あぁ……、生き残りの随伴歩兵にパンツァーファウストを持たせて、こっちに向かわせていやがる……」
「探りを入れに来ているって事ですか?」
「あぁ、そんな所だろう……」
そう言って外の様子を確認した曹長が車内に戻ると同時に外からは、遠いながらも、ドイツ軍兵士達の声が聞こえてくる。
『Seien Sie vorsichtig und suchen Sie es! Sie befinden sich in der Nähe von hier!!(※気を付けて探せ!この付近にいるはずだ!!)』
『Sie sind es, die zwei dieser Panzer zerstören! Seien Sie nicht vorsichtig!!(※奴らは此方の戦車を2台撃破しているやり手だぞ!気を抜くな!!)』
『Wenn Sie es finden, achten Sie darauf, es zu töten! Wenn Sie es beenden, ist es definitiv eine Medaille!(※見つけたら、必ず仕留めるんだ!仕留めたら、勲章間違いなしだぞ!!)』
その様な事を言いつつ、私達の事を捜索するドイツ兵達の声が段々と近付いてくる中、私達は車内で簡単に話し合う。
「良いか、お前達。豹戦車を仕留める事だけを考えろ!雑魚はかまうな!!」
「でも、あの豹戦車の乗員も結構な腕してますよ……?」
曹長の言葉に対し、バートル軍曹が心配する様にそう言い放つと、コヴァーリ軍曹が「はっ!」と挑発するような声で、こう続ける。
「なぁに!その方が面白れぇ!!奴らに俺らの腕前を思い知らせてやろうぜ!!!」
「その前にやられなければの話ですけどね……」
挑発する様に、妙に自信満々で言い放つコヴァーリ軍曹を咎める様に私がそう言い放つ中、曹長がこう言い放つ。
「そう言うな、伍長。いずれにせよ、あの豹戦車には、俺達が持てる全ての技術を発揮しないといけない奴だ。全力で行くぞ、お前ら!」
「「「了解っ!!」」」
曹長の呼びかけに対し、私達が声を張り上げて復唱するのを聞き、曹長は続けざまに作戦を伝える。
「よし、伍長!俺の合図で残骸から、戦車を出せ。出した後は、そのまま10時砲口に向けて、前進し、俺の合図で方向転換しろ!!」
「了解です!」
「コヴァーリ、お前は常に随伴歩兵の動きに目を見張れ!こちらを狙う奴が居れば、容赦なく火炎放射してやれ!!」
「了解でさぁ!!」
「バートル、弾薬庫から多めに徹甲弾を出して、傍において置くんだ。今からは、1秒でも早く、1発多く撃ち込む事が勝利のカギになるぞ!!」
「了解です!」
私達が曹長の指示に対し、そう返しつつ、曹長の出す指示を確認すると、素早く戦闘態勢を整えていく。

装填主のバートル軍曹は床面の弾薬庫から、徹甲弾を出せるだけ、出して、素早い装填に備えると1発の砲弾を抱え、踏ん張る。
火炎放射器射手のコヴァーリ軍曹は火炎放射器の燃料の残りを確認すると、火炎放射器を構える。
操縦主の私は燃料やラジエーターの残量を確認し、走行に関する状態を把握し、これからの攻撃に備える。
そして、曹長は「ふぅ……」と息を吐きつつ、改めて主砲用照準器を握りなおす。

こうして、戦闘態勢を整えた私達は声を張り上げて、自分達の準備が良い事を報告する。
「次弾装填、準備良し!」
「火炎放射器、準備良し!」
「操縦系統、燃料当に異常なし!!」
私達3人の報告を聞き、曹長は「よし……」と呟いた後、息を軽く吸うと大声で叫んだ。
「始めるぞ!!」
「「「了解!!!」」」
その言葉に対し、私達が大声で返事を返すのを聞き、曹長はこう続けた。
「伍長!戦車、最大速度にて前進!!此処から、2時の方向に向けて進め!!!」
「了解っ!!」
この指示に対し、私はそう返すと一気にギアを最大速度に入れ、アクセルを踏み込みんだ。
瞬間、500馬力の4ストロークV型12気筒水冷ディーゼルエンジンが、獣の唸り声の様な音を立て、排気口から真っ黒い煙を吐き出し、ガクン!と揺れたかと思った次の瞬間には、戦車が物凄い勢いで走り出し、隠れていたKV-1の残骸から飛び出したのだ!

無論、この様子を近くにいたドイツ兵達が目撃し、持っていた銃器を発砲しつつ、大声で叫び、他の兵士達に私達の発見を伝える。
『Er ist hier. Ich werde dich töten!!(※居たぞ!仕留めるんだ!!)』
『Anti-Auto-Soldaten! Hier lang!!(※対戦車兵!こっちだ!!)』
私達の乗る戦車を発見したドイツ兵達がライフル銃や短機関銃等で、次々と銃撃を加えたり、手りゅう弾を投げ込んでくる中、集まった対戦車兵達が持つパンツァー・ファウストが火を噴き、放たれた対戦車ロケット弾が次々と私達の戦車に向けて、飛んでくる!!
「っ!!」
その発砲炎を覗き窓越しに見ながら、私は素早く左右の操縦桿を操作して、ジグザグ走行したり、急ブレーキを踏んで減速したり、逆にアクセルを加速したりして、何とか飛んでくるロケット弾を回避する。
同時に曹長が照準器越しにドイツ兵達の姿を捉えると、間髪入れずにDT機関銃のトリガーを引き、発砲。7.62x54mmR弾の銃声を車内に鳴り響かせつつ、ドイツ兵達に銃弾を浴びせていく。
この銃撃を浴び、何人かのパンツァー・シュレックを持った対戦車兵が地面に崩れ落ちる中、別の方向から来たドイツ兵達も、私達の戦車を仕留めるべく攻撃を加えてくる。
そんなドイツ兵達の銃撃によって鳴り響く凄まじい金属音が車内に木霊する中、私は覗き窓越しにドイツ兵達の姿を確認し、隣にいたコヴァーリ軍曹に大声でそのことを伝える。
「コヴァーリ軍曹、11時の方向にドイツ兵です!」
「っしゃ!任せろぉ!!」
私の報告に対し、コヴァーリ軍曹はそう言いながら、火炎放射器をドイツ兵達に向けると、トリガーを引き、ドイツ兵達に火炎放射を浴びせていく。
この火炎放射をモロに喰らった数人のドイツ兵が地面を転げつつ、何とか火を消そうとしたりするが、それよりも先に私の操縦する戦車が急接近で迫り、勢いそのままに”ドイツ兵達を履帯で踏みつぶしていく”。
瞬間、『ボキッ!グチャ!!バキバキィイィッ!!』とクルスク戦の初日に聞いた、”あの音”と全く同じ音が車内に鳴り響くが、私は初日とは違って動じる事無く、そのまま操縦を続け、火炎放射を回避したドイツ兵達に向け、戦車を突っ込ませるように操縦していく、ドイツ兵達はクモの子を散らす様に離散していく。


戦車長用の覗き窓越しに、それを確認しながら、曹長がこう言い放つ。
「いいぞ!随伴歩兵を蹴散らした!!伍長、このまま直進しろ!!!豹戦車の所に向かうぞ!!!!」
「残りの随伴歩兵は、どうするんですか?」
そう言い放つ曹長に対し、次弾を構えながら、問い掛けるバートル軍曹に対し、曹長は「ほっとけ!」と言うと続けざまに、こう言い放つ。
「そろそろ後続の機械化歩兵部隊が来るはずだ!残りの随伴歩兵は奴らに任せろ!!俺達は豹戦車の事だけ、考えてれば良い!!!」
曹長が声を大にして、そう言った瞬間、私達の近くに至近弾が着弾し、凄まじい爆音と衝撃波が戦車を激しく揺らす中、外の様子を確認した曹長が大声で叫んだ。
「居たぞ!豹戦車だ!!こっちを狙ってる!!!伍長、ジグザグ走行だ!!!!」
「了解っ!!」
私がそう言って、曹長の指示通り、操縦桿を操作し、戦車をジグザグ走行させる。
そんな私達を狙っている豹戦車の戦車長が、砲塔ハッチから顔を出しつつ、大声でクルーに対し、指示を飛ばす。
『Sie Sohn eines. Ziel besser!! Sie sind Asse!!! Lassen Sie sie nicht in die Nähe kommen!!!! Sie werden es in einer langen Entfernung tun müssen!!!!!(※馬鹿野郎!もっと良く狙うんだ!!奴らはエースだ!!!近づけさせるな!!!!ロングレンジで仕留めるんだ!!!!!)』
『Möchten Sie den Tank zurückziehen!?(※戦車後退しますか!?)』
『Es ist natürlich! Du Sohn einer Hündin!(※当たり前だ!馬鹿野郎!!)』
豹戦車の戦車長は操縦主に対し、そう叫びながら、戦車を後退させつつ、出来るだけ正面装甲を向ける様な動きを取る。
その動きを照準器越しに見ながら、曹長が呟く。
「ほう、基本通りの戦い方だ」
曹長がそう一言言った瞬間、豹戦車の主砲が火を噴き、75㎜砲弾を私達目掛けて、撃ち込んでくる。
「伍長、左だ!!」
「ッ!!」
75㎜砲の砲声と共に聞こえてた曹長の指示に従い、私が操縦桿を操作し、戦車を左の方に寄せた瞬間だった。
豹戦車の放った砲弾が目の前に着弾し、地面を激しく抉り、土やら草やらを撒き上げつつ、炸裂。
そうして巻き上がった土やら、草やらを戦車全体に被りながらも、私の操縦する戦車は猛スピードで、600……、550……、500……と、豹戦車との距離を詰めていく。
「いいぞ、伍長!このまま、距離を詰め……ッツ!?」
段々と距離が縮まっていくのを照準器越しに見ていた曹長が突然、息を飲んだ。
その並々ならぬ気配に傍で砲弾を抱えていたバートル軍曹が話しかける。
「どうしたんですか、曹長!?」
「マズイ!奴ら、逆に突っ込んでくるぞ!!間合いを詰めて、撃たせないようにするつもりだ!!!伍長、戦車停止だ!!!!」
「りょ、了解っ!!」
曹長のこの指示を受け、私が急ブレーキを踏み込み、戦車を停車させつつ、覗き窓から外の様子を確認すると、そこには猛スピードで私達を目掛け、突っ込んでくる豹戦車の姿が。

その姿は、まさに獲物に狙いを定めた豹そのものだ。

そんな豹戦車は私達に体当たり攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。一気に速度を上げて、間合いを詰めるなり、猛スピードで突っ込んでくる。
主砲用照準器で、その様子を見た曹長が大声で叫んだ。
「体当たりしてくるぞ!全員、衝撃に備えろ!!」
「っ!!」
「グッ!!」
「クッソ!!!」
その曹長の言葉を受け、私達が操縦桿や火炎放射器、砲塔内の用具箱等にしがみ付き、衝撃に備えた瞬間、猛スピードで突っ込んできた豹戦車と激しく激突。
凄まじい金属音が鳴り響き、今までの至近弾による衝撃波等とは比べ物にならない、地震の様な凄まじい衝撃が車内にいる私達を激しく揺らす。
その凄まじい衝撃に私達が成す術もなく揺さぶられる中、私達に体当たりしてきた豹戦車は体当たりの勢いそのまま、私達の戦車を押し退ける様に進んでいく。
どうやら、このまま距離を取り、砲撃に適した距離で私達を砲撃するつもりなのだろう。

(そうはいかせないわよ!!)

覗き窓越しに、私達から離れていこうとする豹戦車を見つつ、私はまだ揺れている感覚を必死にこらえつつ、一気にアクセルを踏み込み、正面装甲を豹戦車に向ける様な形で戦車を動かすと大声で、隣にいるコヴァーリ軍曹に対し、叫んだ。
「コヴァーリ軍曹、火炎放射を!!」
「えっ!?」
「早く!豹戦車に火炎放射してください!!」
「おっ、おう!!」
私の呼びかけに戸惑いながらも、コヴァーリ軍曹は火炎放射器を構え、豹戦車に火炎放射器の砲口を向けるなり、一気にトリガーを引き、火炎放射を行う。
その火炎放射は見事、豹戦車に当たり、豹戦車は一瞬にして炎に包まれる。
当然ながら、豹戦車は火炎放射器による火炎放射程度で撃破出来る程、軟な戦車では無い。現に今、豹戦車は全体を炎に包まれながらも、走り続けている。
だが、この火炎放射による炎のせいで、暫くは照準を定め難いはず……、それが私の狙いだ。
現に豹戦車のクルー達は戦車全体を包む炎のせいで、私達の姿がよく見えないのか、混乱している様子だ。
『Gunner! Können Sie den T-34 sehen!?(※砲手!T-34は見えるか!?)』
『Nein, es ist nicht gut! Ich kann es wegen der Flammen überhaupt nicht sehen!!(※ダメです!炎で全く見えません!!)』
『Sie. Pilot, führen Sie den Tank! Löschen Sie das Feuer mit dem Wind!!!(※クソっ!操縦主、戦車を走らせろ!!風で火を消すんだ!!!)』
『jawohl!(※了解!)』
そう言って私達と距離を取るように走っていく豹戦車を見ながら、私は曹長に対して、叫ぶ。
「曹長、今です!」
そう私が絶好の攻撃のタイミングである事を曹長に伝えるが、曹長が苦虫を食い潰した様な表情でこう返してくる。
「ダメだ!さっきの体当たりで、旋回装置をやられた!!狙いを定められん!!!」
「そんな!?手動旋回装置は!?」
「そっちもダメだ!クッソォォッ!!」
この絶好のチャンスと言う時に限って、主砲の旋回装置を破壊されたという曹長の言葉に私は驚愕した。

だって、そうでしょう……本当に今撃てば、確実に豹戦車を撃破できるタイミングだっていうのに!!
このまま、みすみす豹戦車を逃すっていうの!?そんな事は絶対にゴメンよ!!

そんなやり場の無い怒りにも近い感情が胸の家で湧いてくる中、私の頭の中に”1つの考え”が浮かんだ。

(そうよ!この方法なら……!!)

頭の中に思い浮かぶや否や、私はその考えを曹長に伝えた。
「曹長!私が戦車の車体を動かしますので、それで狙いを定めてください!!」
そう私が大声で提案した瞬間、曹長は驚いた様な声でこう言い放つ。
「無茶だ、伍長!ミリ単位での操縦になるぞ!!」
「じゃあ、みすみすと豹戦車を逃がすんですか!?同志達を殺していった張本人を!!」
「………」
私の言葉に返す言葉の無い曹長。そんな曹長に対し、私は続け様にこう言い放つ。
「イチかバチかです!やるしかないんです、曹長!!」
「「………」」
コヴァーリ軍曹とバートル軍曹が、私と曹長を見つめる中、私が曹長に詰め寄ると曹長は少し考えた後、私に向けて、こう言い放つ。
「……出来るのか、伍長?」
「……はい、出来ます!」
曹長の問いかけに、そう力強くうなずきながら、答えると曹長は短く「……分かった」と呟いた後、こう続けた。
「頼むぞ、伍長!」
「了解っ!!」
そう私が曹長の言葉に対し、力強く返すのを聞き、曹長は続けざまにコヴァーリ軍曹とバートル軍曹に対して、こう告げる。
「コヴァーリとバートルは、バックアップを頼む!」
「了解です、曹長!!」
「任せてくださせぇ!!」
曹長の言葉にコヴァーリ軍曹とバートル軍曹は、私と同じ様に力強く言葉を返す。
そんな私達の言葉を聞いた曹長は「……よし!」と呟きながら、主砲用照準器を握りしめながら、こう言い放つ。
「豹戦車との最終決戦だ……、行くぞ!!」
「「「了解っ!!」」」
曹長の言葉に私達は力強く復唱を返しつつ、最後の戦いを挑むのだった……。


そんな私達と対峙する豹戦車の搭乗員達も懸命の走行に加え、身を挺して消火器による消火を行い、何とか私達の火炎放射による火災を消火していた。
『Tanklänge, ich löschte das Feuer!!(※戦車長、消火しました!)』
『gut! Überprüfen Sie, ob es irgendwelche Anomalien in jedem Teil gibt!!(※よし!各部に異常が無いか、確認しろ!!)』
『Keine Anomalie in der Hauptpistole, Sicht, Turm schwenken!(※主砲及び照準器、砲塔旋回装置に異常なし!)』
『Im Motor usw. gibt es keine Anomalie! Es ist möglich zu laufen! !(※エンジン等にも、異常なし!走行可能です!!)』
『Zustimmung! Danke an den Bastard, der es verbrannt hat, lasst uns gehen!!(※了解!燃やしてくれた野郎にお礼参りだ、行くぞ!!)』
『『『『jawohl!(※了解!)』』』』
戦車全体を纏っていた炎のせいで、黒焦げになりながらも、未だに戦闘可能な豹戦車のクルー達は、私達に一矢報いるべく再び戦闘態勢を取る。
そんな豹戦車に対し、私達は損傷し、砲塔を回せなくなったT-34で挑む。
どう考えても、この圧倒的な不利な戦いに挑む私達を支えるのは、もはや意地その物と言っても良いだろう……。
そんな維持だけで、戦う私達は覗き窓越しに豹戦車を見つめつつ、状況の把握兼作戦会議を行う。
「伍長!砲塔は現在、1時の方向で固まっている!!左側を走るんだ!!!」
「了解。曹長、仰角は取れますか!?」
「何とかな。だが、砲塔が回せない以上、お前の操縦が頼りだ……分かってるな!?」
「了解、全力を尽くします!!」
そんな作戦会議とは名ばかり……、いや……、「名ばかり」と言う言葉すら程遠い|杜撰《ずさん》な打ち合わせを曹長と交わしながら、私は豹戦車に向けて、戦車を突っ込ませていく。


対する豹戦車の搭乗員達は私達の戦車の姿を視界に捉えるなり、素早く主砲を此方に向けてくるなり、すかさず発砲。砲声と共に75㎜砲弾を撃ち込んでくる。
「ッツ!!」
その撃ち込まれた砲弾を、私は今までと同じ様に戦車を左右にジグザグ走行させて、回避すると同時に曹長がコヴァーリ軍曹に対して、指示を飛ばす。
「コヴァーリ、豹戦車の手前に火炎放射!」
「了解っ!!」
この曹長の指示を受けたコヴァーリ軍曹は三度、火炎放射器のトリガーを引き、火炎放射を発射。
放たれた火炎放射は轟音と共に豹戦車の近くにある草原に落下するなり、一気に草原を火の海に変えていく。
その様子を豹戦車の砲手が主砲用照準器越しに見ながら、こう言い放つ。
『Was macht er? Was tun sie, um das Gras zu verbrennen?(※何だ?なんで奴ら、草なんか燃やしているんだ?)』
『……Sicherlich(※……まさか)』
私達のこの行動に理解が出来ず、主砲用照準器を覗き込みながら、怪訝に呟く砲手の傍で、同じ様にキューポラの覗き窓から、見ていた戦車長は何かを気付いた様に大声で叫んだ。
『Sei vorsichtig! Das ist geblendet!! Sie werden sich beeilen!!!(※気を付けろ!これは目くらましだ!!奴ら、突っ込んでくるぞ!!!)』
私達の狙いに気付いた豹戦車の戦車長が、そう叫び、他の搭乗員たちに注意を促すが、それよりも先に私達の戦車が炎を中を突っ切った!!
「見えた、豹戦車だ!伍長、さっき言ったように奴の左側を回る様に走れ!!奴の懐に飛び込むんだ!!!」
「了解っ!」
炎の中を突っ切った勢いそのままに、懐に飛び込むが如く、豹戦車に急接近した私達の戦車は唯一、主砲の狙いを定める事の出来る左側をグルグルと、まるでメリーゴーランドの様に回り始める。
「合った!!」
その間、曹長は主砲用照準器を覗き込み、激しく揺れる車内で照準器越しに照準が合うなり、間髪入れずに主砲のトリガーを引く。
瞬間、轟音と共に主砲を発射されるが、発射された砲弾は凄まじい金属音と共に豹戦車の砲塔左横の傾斜装甲に弾かれ、明後日の方向に飛んでいく。


それと入れ替わる様に私達に狙いを定めた、豹戦車が発砲!75㎜砲弾が凄まじい勢いで飛んでくるなり、此方に命中!!
何とか正面の傾斜装甲で弾く事が出来たが、凄まじい衝撃が私達を揺さぶる。
「ヅッッ!!」
「ヌオアァッ!!」
「グッ!!」
その凄まじい衝撃に車内に居る全員が身を堪える中、曹長が大声で叫ぶ。
「怯むな!怯んだら、負けだ!!」
凄まじい衝撃で意識が朦朧になりそうな私達の意識をはっきりさせる様に、そう叫んだ曹長は続け様にバートル軍曹に向け、こう言い放つ。
「バートル!モタモタするな!!装填、装填しろぉ!!!」
曹長の罵声交じりの指示に対し、バートル軍曹は「了解っ!!」を叫ぶように復唱を返しつつ、次弾を装填するなり、声を張り上げる。
「装填良し!」
このバートル軍曹の報告に、曹長は「おしっ!」と言いながら、再び照準器を覗き込み、照準を定めると三度、トリガーを引き、主砲を発砲する。
だが、この砲撃も豹戦車の車体左側面に命中する物の角度が悪い事に加え、豹戦車の傾斜装甲によって弾かれてしまう。
「クソ、なんて硬さだ!!」
(ん!?)
バートル軍曹が再び次弾を装填する中、その様子を照準器越しに見ていた曹長が悪態づく様にそう言い放つ中、操縦主用の覗き窓から、豹戦車を見ていた私は”ある事”に気付いた。

それは”豹戦車の主砲の防循の形”だ。豹戦車の主砲の防循は、なだらかな半円形……いわゆる”カマボコ型”であり、突起となる部分が無い……。
だとすれば、防盾の下部に砲撃を浴びせれば、跳弾した砲弾が下に滑る形で、装甲の薄い車体操縦主席側の上部装甲を撃ち抜けるのでは、無いか?

そんな考えが咄嗟に頭の中に浮かんだ私は、大声で曹長にそのことを伝える。
「曹長!豹戦車の防循の形状的に、防循の下部に砲弾を撃ち込めば、その砲弾が滑って車体上部装甲を抜けるのでは!?」
「っ!?」
この私の提案に驚きつつも、照準器越しに豹戦車の防循を確認した、曹長は「……なるほど」と呟区と、私に向けて、こう言い放つ。
「よし、伍長!その手で行くぞ!!俺が合図したら、後退し、ブレーキだ!!!」
「了解っ!!」
私はそう復唱を返しながら、戦車を豹戦車の主砲側へと走らせていく。
無論、主砲側に戦車を走らせるというのは、此方から相手の照準に飛び込んでいくのも同然であり、下手すれば一瞬で此方が撃破されかねない危険な行為だ。

だから、絶対にミスは許されない……!!

そんな危険な状況を前に、心臓が破裂しそうな程、激しく鼓動を撃つのを感じつつ、私は戦車を豹戦車の前面へと走らせていく。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……!!」
激しく心臓が脈打ち、全身を血液が物凄いスピードで駆け巡り、荒ぶる呼吸を懸命に抑える中、私達と対峙する豹戦車のクルーも緊張感に満ちた声を張り上げていた。
『Ich komme herum! Turm drehen, beeilen!!(※回り込んでくるぞ!砲塔旋回、急げ!!)』
『Jawohl! (※了解!)』
豹戦車の戦車長は、そう声を張り上げる中、豹戦車の砲手は私達の戦車に懸命に砲塔を回し、私達に狙いを定めようとしてくる。
そんな様子を豹戦車を見ながら、コヴァーリ軍曹とバートル軍曹が興奮した様子で叫ぶ。
「補足されてるぞ!」
「曹長!撃ちましょう!!今撃たないと、やられます!!!」
「……まだだ!」
此方の方に向く豹戦車を砲口を前に、興奮した様子で叫ぶバートル軍曹と共に、コヴァーリ軍曹が早く曹長に撃つように進言するが、曹長は主砲用照準器のトリガーを握りしめつつ、冷静にコヴァーリ軍曹に対して返しながら、鬼の形相で照準器の先に映る豹戦車を見つめた後、大声で私に向けて、叫んだ。
「伍長、後退用意!俺の合図で後退しろ!!」
「了解っ!!」
私はこの指示を受けるなり、素早くギアに手を掛けながら、合図を待つ……。
そして、豹戦車の前を通り過ぎようとした瞬間、曹長が叫んだ。
「今だ!後退しろ!!」
「ツッ!!」
曹長の合図に対し、もう声にならない声を上げながら、私はアクセルを踏み込んだまま、一気に手に掛けたギアをバックに入れた。
瞬間、ギアボックスから、「ギャ~!」と言う悲鳴にも似た様な異様な金属音と共に火花が飛び散ったかと思った瞬間、ギアがバックに入り、私達の戦車は勢いよくバックを開始する。
そうして、勢いよく後退する戦車の中で、照準器越しに豹戦車と睨みあい、照準を定めていた曹長が大声で叫んだ。
「停車!」
「ッヅ!!!」
その曹長の叫びを聞いた私は、すかさずブレーキを踏み込み、戦車を急停車。
同時に一気にGに引っ張られる形で、体が座席に食い込むの感じた瞬間、曹長が今までとは比べ物にならない大声で叫んだ。

「此処だ!」

そう叫びながら、曹長は間髪入れずにトリガーを引き、主砲を発射!
車内に76㎜砲の砲声が鳴り響くと同時に、勢いよく主砲の駐退機が後退し、砲尾から、金色の輝く熱された空薬莢が勢いよく吐き出され、車内に転がっていく。
そして、砲声と共に主砲から放たれた76㎜砲弾は、勢いよく豹戦車の防循下部に命中!
凄まじい金属音と共に着弾したかと思った次の瞬間には、防循を滑る様にして、勢いよく跳弾し、車体前部の操縦主・通信主席側の上部装甲を撃ち抜く形で炸裂する!!

その炸裂をモロに喰らった豹戦車の車内では、阿鼻叫喚の地獄絵図ともいえる光景が広がった。
まず操縦主と通信主が即死。更に車内に飛び散った破片で装填主も共に負傷し、天を裂くような悲鳴を上げる。
『Ah ah!!(※ああああ!!)』
『Der Pilot und der kommunizierende Meister werden im Kampf getötet!(※操縦主と通信主が戦死しました!!)』
負傷し、血まみれになりながら悲鳴を上げる装填主の傍で、砲手が冷静に状況を把握し、操縦主と通信主が戦死した事を戦車長に報告する。
その報告を聞き、戦車長は『Scheisse!(※クソっ!)』と声を荒げ、砲塔内の壁を殴りつけながら、叫ぶ。
『Oh mein Gott. Holt ihn hier raus! Du wirst ihn töten!!!(※クソォォッ!奴を仕留めろ!!仕留めるんだ!!!)』
『Jawohl! (※了解!)』
怒りに満ちた戦車長の叫びに対し、砲手も叫ぶように復唱を返すと、砲塔を回し、最後の抵抗を試みる。


そんな最後の抵抗を試みる豹戦車を見ながら、私達も戦車の中で絶叫していた。
「装填!装填しろ!!」
「バートル、さっさと弾を込めろ!!」
次弾装填を指示する曹長と共に、コヴァーリ軍曹が急かす様にバートル軍曹に対して、叫ぶ中、当のバートル軍曹は「分かってる!」と声を荒げつつ、次弾を装填。
ガチャン!と言う音と共に主砲の閉鎖機が閉まるのを確認しながら、大声で叫ぶ。
「装填完了!」
「おーしっ!!」
バートル軍曹の報告を聞いた曹長は、すかさず主砲を再び発砲し、砲声と共に再び砲弾を豹戦車の防循に撃ち込んだ!
この2発目の砲撃を受けた豹戦車は、先程の砲撃で破壊された車体上部の装甲を更に抉らせるが、未だに戦闘可能な様であり、砲塔を回し、此方を狙おうとしてくる。
その様子を見て、コヴァーリ軍曹が悪態づく様に叫んだ。
「クソったれ!こいつは化け物か!?」
「そんなはずはない!何処かに弱点があるはずだ!!」
コヴァーリ軍曹の悪態を窘める様に、バートル軍曹が次弾を装填しつつ、声を荒げるのに続く様に、私もやけっぱち状態で叫ぶ。
「砲塔の後ろにある、非常用ハッチ!そこなら、走行が薄いはず!!」
「よし、そこだ!伍長、後退!!砲塔の後ろに回り込め!!!」
「了解っ!」
私のやけっぱち状態の提案を受け、曹長がそこを狙う事を決めるや否や、私に対して、戦車の後退を指示。
その指示に従い、私は戦車を後退させ、砲塔の後ろに戦車を回り込ませる。
そうして、回り込むや否や曹長は照準器を覗き込み、照準を豹戦車の砲塔後部にある非常用ハッチに定め、間髪入れずに主砲を発砲!砲声と共に76㎜砲弾を撃ち込んだ!!

その次の瞬間には、凄まじい金属音と共に豹戦車の砲塔後ろにある非常用ハッチが吹き飛ぶと同時に、炸裂した砲弾によって、内部の弾薬に引火!
瞬く間に豹戦車のハッチという、ハッチから、オレンジ色の業火を吹き出し、豹戦車はあっという間に燃え盛るダッチオーブンと化していく。

だが、曹長はそんな豹戦車を見ながら、更に大声で次なる指示を飛ばす。
「まだだ!装填、装填しろ!!」
「了解!!」
そう叫ぶ曹長の声を聴きつつ、バートル軍曹が次弾を装填。それが終わるなり、再び曹長はトリガーを引いて、発砲!
燃え盛る豹戦車の砲塔部分に更なる攻撃を加えた後、主砲の仰角を下げ、エンジン部分に狙いを定めるなり、バートル軍曹に対し、大声で叫ぶ。
「バートル、もう1発だ!!」
この曹長の指示にバートル軍曹が次の徹甲弾を装填し、「装填完了!」と叫ぶや否や、曹長は三度トリガーを引いて、主砲を発砲!!
放たれた砲弾はエンジン部分に凄まじい金属音と共に命中し、炸裂。豹戦車の上部エンジンハッチを吹き飛ばしつつ、エンジンを撃ち抜く。

そして、これが”トドメ”となったのだろう。
豹戦車が更に一層激しく燃え上がったかと思った次の瞬間には、内部の弾薬が誘爆!
凄まじい爆音と共に豹戦車は、大爆発!
オレンジ色の炎と共に砲塔を上空に吹き飛ばしたかと思った次の瞬間には、凄まじい金属音と共に吹き飛ばした砲塔を地面に落下させていく。

そうして地面に落下した豹戦車の砲塔を、私は操縦主用の覗き窓越しに呆然とした様子で見つめていた。
同様にコヴァーリ軍曹とバートル軍曹も、信じられない様子で豹戦車の砲塔と燃え盛る豹戦車の車体を見つめていた。
「「「………」」」
「豹戦車、撃破確認……」
そんな私達を横目で見つつ、曹長は照準器越しに豹戦車の吹き飛んだ砲塔が地面に落ちるのを確認すると一言、呟く様に豹戦車の撃破を告げる
その後、曹長は主砲用照準器から、目を離し、私達の方に顔を向け、息を軽く吸った後、声を張り上げながら、こう言い放つ。
「やったぞ、お前ら!!」
「うおおおっ!やったぜぇぇぇ!!」
「やってやったな!!」
「あぁ!!」
豹戦車の撃破した事を、そう嬉しそうに報告する曹長の声を聞き、コヴァーリ軍曹とバートル軍曹も共に歓喜の声を上げて、喜び、共に狭い戦車の中で抱き合っていた。
そんな歓喜に浸る曹長達を見ながら、私は張りつめていた緊張の糸がプツンとキレるのを感じ、一気に力が抜ける様に「はぁ~……」と言いながら、戦車の操縦桿に両肘を立てて、寄り掛かりながら、ふと覗き窓を見た。

そこには増援の戦車部隊及び跨乗兵が砲兵陣地内に突入したのだろう。多数のT-34やKV-1、イギリスから供給されたバレンタイン歩兵戦車と言った戦車が辺りを走り回り、それらの戦車の上や、随伴のアメリカ製のM3装甲車に乗っていた跨乗兵達が素早く戦車や装甲車から飛び降り、辺りに残存するドイツ兵達に銃を突き付け、降伏させ、武装解除していく光景が広がっていた。

その様子が私の視界に入ってきてから、間もなく戦車の無線機からは司令官の声が飛び出してきた。
『同志諸君!経った今、我が軍に多大なる損害を与えていた砲兵陣地は粉砕された!!これも我々の祖国を守り抜くという強い忠誠がもたらした勝利であろう!!!だが、これはまだ途中に過ぎない!!!!ファシストの野獣共の息の目を止めるまで、我々の戦いは終わらないのだ!!!!!この戦いの勝利に自惚れ事なく、より一層、祖国の為に戦い続けよう!!!!!!』
そう高らかに言い放つ司令官の声を聴きつつ、全てが終った事を悟った私が「……ふぅ」と息を吐き出しつつ、戦車の操縦主ハッチを開ける。

瞬間、新鮮な空気がドッと車内に流れ込んでくるのを感じつつ、再び息を「……ふぅ」と息を吐き、深呼吸している時だった。
「伍長」
……と、後ろから話しかけられたので、振り返ると、そこには私の方を見つめる曹長達の姿が。
勝手に操縦主ハッチを開けた事でも、咎められるのだろうか?
ふとそんな考えが湧いてくる中、曹長は真剣な声でこう切り出した。
「伍長、今回の豹戦車の撃破はお前の活躍が大きい。お前の操縦技術は勿論の事、お前の咄嗟の判断が無ければ、豹戦車の撃破どころか、此方が逆にやられていたかもしれん。それだけにお前の活躍は本当に素晴らしい物だ。軍曹への昇格及び勲章候補者に推薦する。これからも、宜しく頼むぞ!」
そう言って私に対し、敬礼する曹長の傍で曹長。
それに続く様に、コヴァーリ軍曹とバートル軍曹も私に対し、敬礼する。
私はそんな曹長達に顔を向けるなり、こう言い放つ。

「いえ、同じ戦車の搭乗員として出来る事をしたまです……。こちらこそ、これからも宜しくお願い致します!」

そう言った後、私は曹長達に向け、力強く敬礼するのだった……。





……

………



……今回はこの辺までにしておきましょう。
もっと皆さんにお伝えしたいことはたくさんあるのですが、なんせ上手く表現できないものですから……。

だけど、これだけは言わせてください……。

それは、私の全てがこの戦争と共にあると言う事……。
戦争で家族を失い、天涯孤独の身となった時、ファシストへの復讐心だけで軍に入隊し、戦車兵になった事……。
戦車兵となり出会ったセルゲイ曹長、コヴァーリ軍曹、バートル軍曹達との間に生まれた友情や絆……。
良いも悪いも、酸いも甘いも、ありとあらゆる事が、あの戦争にあったわ……。
それが良かったのか、悪かったのかは、年を取った今でも分からない……。
ただ、言えることは、これらの記憶と共に私は生き、そして死んでいくこと……。

絶対に忘れる事なんて、出来ない思い出……。

それだけは、確実に言えるわ……。

それでは、また機会があれば、皆さんに私の戦争体験をお話ししましょう……。
その日まで、皆さん、さようなら……。