本日 77 人 - 昨日 76 人 - 累計 192653 人

人馬一体

  1. HOME >
  2. 緋弾のアリア 我ら、栄光のADレイバー隊 >
  3. 人馬一体
マリの乗る2号機が、サターンと激しい格闘戦を繰り広げている頃、俺の乗る1号機はブルドッグと対峙していた。
そのブルドッグはチュィィィーン……と言う、エンジンカッターの機動音を鳴らしつつ、俺の1号機に何時でも飛び掛る事が出来る体制を取っている。
先にも言ったと思うが、今、俺が対峙しているブルドッグの腕には、鉄工所などで、鉄骨切断の作業に使う為のエンジンカッターが取り付けられている。
これで1号機が切り付けられよう物なら、俺は1号機もろとも綺麗に斬られて殉職。17歳と言う早過ぎる死を迎える事になるだろう……。
コレの逆を言えば、今、対峙しているブルドッグは、エンジンカッターが無ければ、唯の民間作業用レイバー。
警察、武偵が治安・災害警備活動に用いる事を前提に作られているイングラムとは、点と地の差がある。
用は……、性能だけ見れば、俺のほうが圧倒的に有利なわけだ。
それと同時に、俺は、さっき言った、余りにも早過ぎる死を迎えるつもりは、満更無い!!
そんな、「満更無い死」を迎えない為にも、言える事は、1つのみだ。
|奴《ブルドッグ》の最大の武器である、エンジンカッターのリーチに入らず、距離を取りながら、戦う事だ。
まっ……、用は”リボルバーカノンで、ブルドッグを撃って仕留める”……って、事だな。
自分で言うのも何だか、俺はマリとは違ってリボリバーカノンの射撃に関しては覚えがある。
と……、言うわけだから、さっさとブルドッグのエンジンぶち抜いて、ブルドッグの搭乗員を拘束して、帰るぞ!!
胸の内でそう思いながら、俺は1号機のレバーを操作して、リボルバーカノンをブルドッグに突きつける。
「動くな、動くと容赦なく撃つぞ!!」
『警告無しで、撃てば良いのに……』
外部スピーカー越しにブルドッグの搭乗員に対して、言い放った俺の警告を聞き、指揮車の上から、桜井が、実に面倒臭そうな口調で、そう言い放つ。
警察とは違って、基本的にやりたい放題可能な武偵と言えど、一応、警告した上で逮捕行動を実行しないと「違法行為」になるって事を、コイツは知らないのか……?
ヘッドギア越しに聞えてきた桜井の声に対し、胸の片隅でそう思いながら、俺はレバーのトリガーに指を掛け、何時でも、リボルバーカノンを撃てる体制を取る。
そんな体制を取っている俺の1号機に対し、ブルドッグはまるで自ら的になるかの様に突っ込んでくる。
っていうか……、おいおい……、マジで、マジかよ……。
|お前《ブルドッグ》……、突っ込んでくるって事は「撃って下さい」って事だよ?
本当に俺、撃っちゃうけど、文句言うなよ?アメリカみたいに訴訟なんて、バカみたいな事するなよ?
お前が撃たれたのは、おまえ自身の責任……用は、自業自得って事だからな?
ディスプレイ越しに突っ込んでくるブルドッグを見た、俺がレバーのトリガーを絞る側で、桜井が叫ぶ。
『海斗、来るわよ!!撃て、撃ちなさい!!』
「分かってる!!」
怒鳴り散らす桜井に対し、俺も怒鳴り散らしながら、そう言葉を返し、突っ込んでくるブルドッグを射撃しようとした時だった。


突如、ブルドッグの後ろにある事務所跡の窓から、キラリと光が反射したかと思った瞬間、「バババババッ!!」と言う凄まじい機関銃の銃声と共に、大量の銃弾が、俺の1号機に降り掛かる。
「っ!?」
この銃撃を前に俺は、咄嗟にシールドを出して銃弾を受け止める。
前にも言ったと思うが、レイバーの装甲はFRP……用は”強化プラスチック”だ。
なので、大口径の銃火器を使って、本気で銃撃されよう物なら、乗っている搭乗員ごと一瞬で”穴あきチーズ”に早変わり……、確実に殉職だ。
そんな事に、ならない様にシールドで咄嗟に庇った俺だが、それがブルドッグ&強盗団の狙いだった。
俺がシールドで攻撃に耐えるのを狙って、ブルドッグの拳が、俺の乗るイングラムの胴体にめり込み、凄まじい衝撃が走る。
「ぐああっ!!」
『ちょ、ちょ、ちょーっ!?』
凄まじい衝撃に脳みそが激しく揺さぶられながら、俺の1号機がリボルバーカノンを飛ばしながら、転倒する側で、桜井はイングラムの下敷きになる事を回避する為、指揮車をフルスピードで後退させる。
『うおっ!?』
『ちょっと、あたし達をひき殺すつもり!?』
『上から来るぞっ!!』
『退避、退避だ、退避しろーっ!!』
それにアリア達が逃げ惑うと同時に、飛んで行ったリボルバーカノンは、機動隊の指揮車の上に落下。
リボルバーカノンが落ちてきた指揮車は、凄まじい音と共に原型をとどめない程、滅茶苦茶に大破する。
うーん……、壊れた指揮車の弁償って、俺の責任なのかなぁ……?
後部ディスプレイに映る壊れた指揮車の映像を見て、そう思ったのも、ほんの一瞬。
『死ねぇぇぇっ!!』
「っ!!」
外部スピーカー越しに、そう罵倒しながら、ブルドッグは俺の乗る1号機にエンジンカッターで斬り掛かってくる。
これを右シールドで、咄嗟に受け止めながら、俺はフットバーを踏み込んで、1号機の右足を振り上げ、ブルドッグの胴に蹴りを放つ。
瞬間、凄まじい轟音と共にブルドッグが一回軽く飛んで、後ろに飛ぶ。
それを見逃す事無く、俺は続け様にブルドッグの正面胴体に全力で蹴りを入れ、更に距離を引き離す。
『ぐおっはあっ!!』
俺の1号機に蹴られた衝撃に、悶えるブルドッグの搭乗員の苦痛な声を聞きながら、俺は素早く1号機を操作して、左シールド側の電磁警棒を引き抜く。
電磁警棒を引き抜くと同時に、「バチバチバチッ!!」と言う放電があたりに一面に鳴り響く。
その放電音を聞きつつ、俺は1号機のレバーを操作して、電磁警棒を構えて、ブルドッグと対峙する。


この間に、桜井が双眼鏡を手に指揮車のハッチを開ける。
「今のって……くっ!!」
そう呟きながら、俺の乗る1号機を見上げた桜井は、苦虫を噛み潰した様な表情になる。
何故なら、桜井が見上げた俺の1号機には、所々に銃撃を受けて、出来た弾痕が刻まれていたからだ。
これは、武偵や機動隊員達にまだ確保されていない強盗団が居る事を示す証拠だからだ。
「どこに隠れているのよ……?」
1号機に開いた弾痕を見て、そう呟きつつ、ホルスターからM19リボルバーを引き抜く側で、頭に怒りマークを浮かべたアリアが、指揮車に駆け寄ってくる。
「ちょっと桜井、さっきのは何よ!?アタシ達をひき殺すつもり!?」
「今は、それどころじゃないわ!!」
「!?」
ほぼ逆ギレ状態で言い放った桜井の怒号を聞き、アリアの目は思わず点になる。
そんな珍しい状態のアリアを横目に見ながら、彼女に変わってキンジが桜井に問いかける。
「それどころじゃないって……、どういう事だ?」
「イングラムが銃撃を受けているわ……、これがどういう事かは、説明入らないわね?」
桜井の返答を聞き、キンジも彼女と同じ様に1号機を見上げ、「なるほど……」と一言呟いた。
そんなキンジと同じ様に1号機を見上げたアリアが、再び頭に怒りマークを浮かべながら、こう言い放つ。
「このぉ~……、隠れてコソコソとしか動けない卑怯者めぇえ~……、風穴あけてやるわ!!」
アリアがいつもの決め台詞を言いはなったその瞬間、別の場所で1号機が銃撃を受けた事をしったらリーダーが、64式小銃を手に彼女達の元に駆け寄り、問い掛けた。
「おい、桜井、状況はどうなっているんだ?」
「今、イングラムの状態や強盗団の位置等を海斗に聞いてみます」
「急げ、それと夕張にも損害状況を聞け、最優先だ!!」
リーダーが飛ばしたこの指示を聞き、桜井は「了解!!」と復唱を返しながら、俺に通信を入れる。
『海斗、聞こえる!?』
「あぁ、バッチリな!!」
ヘッドギアのスピーカーから、聞こえてきた桜井の無線通信に対し、そう俺が返事を返すと、桜井は怒鳴り散らす様に、こう聞いてくる。
『海斗、イングラムの状態は、それと強盗団の位置は!?』
「要望が多いな!!」
『うっさい、さっさと答えなさい!!』
軽く返事を返した俺に対して、桜井は、まるで罵倒するかの様に、言い放つ。
なるほど……、通りで、暴走ヒロイン1号のアリアと馬が合う訳だ……。
そう胸の内で武偵校2大暴走ヒロインの事を思い浮かべつつ、俺は桜井に報告する。
「現在、機体に問題はないみたいだが……。内部の詳しい事までは分からない、夕張!!」
『OK……、ちょっと待って……』
レバーやフットバーから伝わって来る正常時と変わらない1号機の操縦感覚を元に、機体に異常が無い事を報告しつつ、夕張に対して、さらに詳しい分析を依頼する。


この俺の報告&要請を受け、夕張はキャリアの中に搭載されたパソコンのキーボードを叩き、現段階での1号機のデータを素早く確認していく。
『OK、一通り終わったわ……。胸部並びにシールド部分に、銃撃による損傷があるわ。今は軽症って感じだけど、ココを抉られたら、大ダメージにも繋がりかねないわ、注意して!!』
「了解!!」
ちっ……、面倒くさいことになったぜ……。
幾ら「軽症」と言った所で、1号機がダメージを受けているのは、紛れも無い事実。
んで……、夕張の言う様に、このダメージを更に抉られる様な事になれば、大ダメージにも繋がりかねない。
そうなれば、「武偵側の敗北&俺の殉職」なーんて、絶対に洒落にならない事態こともありえる訳で……。
全力で、|それだけ《「武偵側の敗北&俺の殉職」》は回避しないと!!


そう思った俺は、桜井に対して通信を入れる。
「桜井、今の聞いたな?」
『えぇ、バッチリね!!』
俺と同じ無線チャンネルで、夕張の報告を聞いた桜井が、そう返事を返すの聞き、俺はこう告げる。
「桜井、1号機を銃撃した奴らは、ブルドッグの後ろだ……、何とかして奴らを叩いてくれ。そうしないと俺の方も思う様に動けねぇ……!!」
『えっ、ちょっ!?』
俺の出したこの要望を聞き、桜井が困惑したような声を上げる。
そりゃまぁ、要望した見ながら、無茶なお願いだとは思うよ……。
だって、暴れるレイバーを避けて、その後ろに居る敵を迎撃するって言うのは、そう簡単にできる物じゃない。
下手したら指揮車共々、犯人レイバーに踏み潰されたり、蹴飛ばされるかして、豪快な最後を迎える事にも繋がりかねない訳だし……。
いくら暴走女子の桜井と言えど、自分の命を捨てるような事はしないだろう。彼女が人間ならば。
困惑した様子で返って来た桜井の返事を聞き、そう思った瞬間だった。
『うぉおおおっ!!』
突如として、俺の1号機と対峙していたブルドッグが豪快にエンジンカッターを起動させながら、俺の1号機に切り掛かって来る。
「っ!!」
この切り付けを、咄嗟に左側シールドで、受け止めつつ、右足でブルドッグの腹を蹴り上げる。
瞬間、凄まじい音と共にブルドッグが2m程、後ろに飛ぶのを見ながら、続け様に電磁警棒で追撃しようとするが、再び強盗団による銃撃が俺の1号機に飛んでくる。
っていうか、今度は対物ライフルまで居るんじゃないのか!?
機関銃の銃声に混じって、「ドガァーンッ!!」と言う.50口径辺りの銃声が聞えたんだけど!?
くっそー、もう強盗団の連中はやりたい放題じゃねぇかよ、チクショー!!


この銃撃を咄嗟に右側シールドで受け止めながらも、小さく連続する振動に揺さぶられる1号機。
その様子を下から見ていたアリアとキンジは、こう言葉を交わす。
「い、今、.50口径の銃声がしなかったか!?」
「えぇ……、バッチリね……。恐らくは、アメリカの”バレッタM82”か、イギリスのアキュラシー・インターナショナル社の”AW50F”って所ね……」
「そんな事を話している場合!?」
俺の乗る1号機を撃った銃の種類を推測するアリアとキンジに対し、指揮車の中から突っ込みを入れる桜井。
そんな3人を無視しつつ、桜井の指揮車の上から、64式小銃を背負いながら、銃撃してきた強盗団を探していたリーダーが、大声でこう言い放つ。
「居たぞ、あそこだ!!ビルの2階と屋上だ!!桜井、あそこまで指揮車を回せ!!」
発見した強盗団員の位置を言いながら、リーダーは64式小銃を手に取り、トリガーに指を掛ける。
その様子を見た、桜井は少なからず困惑したような声で、こう言い放つ。
「えぇっ、本気ですか!?幾らなんでも、危険過ぎますよ!!」
「バカ言え!!これ以上、奴をほったらかしにしておけば、海斗が危なくなるんだ!!」
「っ……!!」
リーダーに叱責され、桜井は唾をごくりと飲み込み、三度、1号機を見上げる。
そこには銃撃を受けつつ、必死にブルドッグと戦っている様子が広がっていた。
「海斗……」
明らかなる不利な状況を強いられながらも、必死に戦う相棒の姿を見て、桜井は一度、目を瞑り、深呼吸をすると、目を見開き、こう言い放つ。
「分かりました、リーダー……。全力で突っ込みます、しっかり掴まっていてください!!」
「OK!!」
決意した桜井のこの言葉を聞き、リーダーは彼女の言う様にしっかりと指揮車に掴まる。
そんな様子の桜井とリーダーを見て、アリアとキンジもこう言い放つ。
「私達も行くわ!!」
「アリア……、悪いわね……」
「何、武帝憲章第1条『仲間を信じ、仲間を助けよ』よ!!』
そう微笑みながら、アリアはリーダーの手も借りつつ、桜井の指揮車に乗ると、その上からキンジに対して、何時もの口調でこう言い放つ。
「ほら、キンジ!!」
「おっ、おうっ……!!」
この無茶振りに対して、キンジは、半場、流される様にして指揮車への上に載る。
そうして、リーダー、アリア、キンジが乗った事を確認した桜井は、ヘッドギアを直しながら、こう言い放つ。
「行くわよっ!!」
桜井はそう言い放つと同時に、指揮車のアクセルを踏み込み、指揮車を全速力で走らせる。


この指揮車の行動に、桜井達が何をするつもりなのか、気づいたブルドッグの搭乗員は、それを阻止せんとばかりに、近くにあった放水車の残骸を拾い上げ、指揮車に投げつけようとする。
『くたばれぇ!!』
「させるか物かっ!!」
そう罵倒しつつ、ブルドッグの投げつけた放水車の残骸を左側のシールドで受け止め、桜井の指揮車を庇いつつ、俺は思いっきりブルドッグに体当たりを喰らわせる。
瞬間、三度、凄まじい金属やFRPの衝突音が鳴り響き、バランスを崩したブルドッグは、尻餅をつくようにして転倒する。
すかさず、転倒したブルドッグに追撃をかけようとするが、また強盗団の銃撃が1号機に向けて、行われ、俺は再びシールドで銃弾を受け止め、防御する。
その間にブルドッグは、素早く手足を使ってダウン復帰する。
全く……、敵ながらあっぱれと言いたくなるぐらいの連携プレー!!これじゃ、いつまで経っても決着が付かないぜ!!
んでもって、そのいつまで経っても付かない決着を付ける為、桜井……、早く頼むぜ!!
胸の内でそう思いながら、俺は、再びブルドッグを対峙する……。






……

………



<桜井Side>
三度、ブルドッグと対峙して、埒の付かない戦いを続ける海斗の1号機。
その姿を指揮車の中にあるモニターで見ながら、私は指揮車を全速力で走らせる。
埒の付かなくなっている原因である、強盗団の銃撃班を潰す為に。
と、言っても……、直接やり合うのは後ろに乗っているリーダーとアリア&キンジコンビだけどね。
そんな事をふと思った瞬間だった。
突如として、向かっていたビルから銃声と共に銃弾が飛んできて、指揮車に命中。
火花を散らしつつ、跳弾して、明後日の方向へと飛んでいく。
その火花を、小さい防弾窓から見ながら、私はヘッドギア越しにリーダー達に、こう告げる。
「リーダー、目標近くまで接近!!戦闘用意を!!」
『おぅし……。アリア、キンジ、お前達も行くぞ!!』
『『了解っ!!』』
そうヘッドギア越しにリーダー、アリア、キンジの声が聞こえた来た瞬間。
小さい防弾窓越しに、指揮車の前に立ち塞がり、強盗団の1人がM16A2を指揮車に向け、撃ちまくってくる。
「っ!!」
だが、それに怯む事なく、私はアクセルを踏み込んで、指揮車を加速させると、ひき殺さんとばかりの勢いで強盗団に突っ込んでいく。
「うおおっ!?」
そう強盗団のメンバーが、M16A2を、思わず地面に落としながら、突っ込んできた指揮車を回避する。


同時に、間髪入れることなく、レッグホルスターにて、携帯していたベレッタM92Fを引き抜くなり、指揮車に向けて、次々と発砲する。
その発砲による着弾により、火花があがり、嫌な金属音が指揮車中に鳴り響く中、私はリーダー達に対して、こう叫ぶ。
「リーダー、ご相手をお願いします!!」
「おうっ!!」
私の叫びに対して、リーダーは、短く答えると、指揮車から飛び降りるなり、指揮車の側に隠れ、楯にしながら、素早く64式小銃を構え、照準を合わせるなり、素早くトリガーを引き、NATO7.62mm弾の雨を、次々と強盗団に降らせていく。
「くっ!!」
「風穴、開けてやるわ!!」
そんなリーダーに続く様に、キンジとアリアも、互いの拳銃を次々に、強談に向けて、撃ちまくり、銃弾を浴びせていく。
「ぐはっ!!」
こうして、多数の銃弾を喰らった強盗団員は、ベレッタも落としながら、地面へと崩れ落ち、即座に駆けつけたリーダー達によって、身柄を確保される。


その様子を見ながら、私はホルスターから、愛用のM19を引き抜き、ハンマーを落とし、シングルアクションにしながら、指揮車のハッチを開け、残りの強盗団が、何処にいるのか、確認する。
すると、間髪入れずに、強盗団の放ったAK-47の銃弾が、指揮車に命中し、金属音と共に火花を散らす。
「そこねっ!!」
私は、これに対して、すぐさま、銃弾の飛んできた方を確認するなり、そこにいた強盗団員に向けて、M19を続け様に3発発砲する。
この銃撃に対して、強盗団員は素早く、壁に身を隠すなり、AK-47をリロードし、対応する。
その様子を見ながら、私は建物の脇まで、移動していたリーダー達に向け、こう言い放つ。
「リーダー、強盗団は建物の3階部分に立てこもっています!!」
私の報告に対して、リーダーは「3階か!!」と呟くと、続け様に、こう指示を飛ばす。
「分かった、俺達は、そいつらを制圧しに向かう!!お前は、指揮車を、前後に動かして、奴らを陽動しろ!!」
「了解!!」
とは言った物の……、”指揮車を前後に動かして、陽動”……って、用は「的になれって」ことよねぇ~……、あー、下っ端はつらいわ……。
まぁ、でも、そうしないとリーダー達が、棺桶に入って帰宅するハメにも、なりかねないし……。それを防ぐ為にも、頑張るとしますか!!
胸の内でそう思いながら、指揮車の後ろに置いてあった、個人購入のM79グレネードランチャーに、催涙ガス弾を装填しながら、私はリーダーの指示通り、強盗団を陽動する為に、指揮車をバックさせる。
瞬間、強盗団員の一人が持っていたと思われる、M26手榴弾が、直ぐ近くに落下するなり、轟音と爆炎を上げて、炸裂。
「くっ、お返しよ!!」
その衝撃に私は揺さぶられながらも、指揮車を、急ブレーキで、停車させるなり、ハッチを開け、M79を立てこもる強盗団員を目掛け、発砲し、催涙ガスを打ち込む。
瞬間、打ち込まれた催涙ガス弾が炸裂し、白い煙が建物の3階から、モクモクとあがるのを見ながら、私の目の前で、リーダー、アリア、キンジ達は、建物内へと、突入するのだった……。





……

………



<リーダーside>
桜井の支援の元、強盗団の銃撃班を制圧し、海斗の乗る1号機を援護するべく、俺とアリア、キンジの3人は、建物内へと突入した。
「進入されたぞ、応援を回してくれ!!」
すると、直ぐ様、強盗団員の一人が、叫びながら、俺達に向け、UZIを、フルオートで、次々と撃ち込んでくる。
「くっ!!」
「あぁ、もう何時まで経っても、キリが無いのよっ!!」
「あっ、バカ!!」
その銃撃で、俺達の隠れる壁が抉られていくのを感じながら、銃撃を回避していると、痺れを切らしたアリアが、俺の制止も聞かずに、壁から飛び出すなり、強盗団員に向けて、次々とガバメントを発砲し、銃弾を撃ち込んでいく。
このアリアの銃撃を受けた、戦闘団員が、UZIを落としながら、崩れ落ちたのは良いが、直ぐさま、後ろにいた強盗団員が、UZIを持っていた強盗団員の代わりに、飛び出すなり、アリアに対して、手持ちのリボルバー式グレネードランチャー、アームスコー MGLの照準を合わせる。
「!!」
「死ねぇ!!」
それにアリアが気づいた頃には、もう既に強盗団員が、トリガーを引き、銃声と共にグレネードを、アリアに向けて、発砲する。
「あぶないっ!!」
その様子を見た、俺は、もはや条件反射とも言える状態で、隠れていた壁から、飛び出すなり、アリアにタックルし、グレネード弾の着弾点からずらす。
これに対して、アリアが「青柳先輩!?」と驚いた次の瞬間には、放たれたグレネードが、着弾と同時に炸裂し、凄まじい衝撃が、俺に襲い掛かる。
「うおおおっ!!!!」
この衝撃に俺は、為す術も無く、64式小銃を手放しながら、数秒間、宙を舞うなり、直ぐさま、地面に叩き付けられ、胸から全ての空気が抜ける様な、感覚に襲われる。
「青柳先輩!!」
その様子を見た、アリアが、俺の元に駆け付けようとしたが、そんな彼女を、強盗団の銃撃が襲う。
「きゃっ!!」
「来るなあっ!!」
その銃撃に、思わずアリアが、身を屈めるのを見て、俺は叫びながら、デザートイーグルを引き抜くなり、アリアを銃撃した、強盗団員に対して、デザートイーグルを発砲する。
このデザートイーグルから、放たれた銃弾を喰らい、アリアを銃撃した強盗団員が、倒れたのは良いが、直ぐさま、別の強盗団員が、姿を見せるなり、苛烈な猛射を、今度は俺に向けて行う。
「先輩、あぶない!!」
「っ!!」
その様子を見た、キンジの叫びを聞きながら、俺はローリングして、その銃撃を回避するなり、再びデザートイーグルを撃ちまくり、応戦する。
この俺の反撃を喰らった、強盗団員が、手持ちのM1カービンを地面に落としながら、崩れ落ちるが、それと同時に、俺のデザートイーグルも、弾切れし、スライドが、ホールドオープンになる。


それを見て、俺は素早く、マガジンポーチから、予備のデザートイーグルのマガジンを引き抜き、再装填しようとするが、それよりも先に、また別の強盗団員の銃撃が、俺に襲い掛かってくる。
「くそっ!!」
「先輩!!」
「青柳先輩!!」
そんなアリアと、キンジの叫びを聞きながら、俺は再び、ローリングして、近くの遮蔽物に身を隠すと、素早く、弾切れした、デザートイーグルに、新しいマガジンを叩き込み、スライドストップをはずし、スライドを前進させるなり、再び、強盗団員に向けて、デザートイーグルを撃ちまくる。
こうして、2~3人、強盗団員を続けざまに倒すが、このとき、別の場所に隠れていた強盗団員の銃撃が、俺の着ている防弾ベストに命中し、凄まじい衝撃に、俺は襲われ、勢いそのままで、後ろに倒れ、デザートイーグルをも、手放してしまうのだった。
「クソッ!!」
俺は、この状況に思わず、そう毒づきながら、素早く別の場所に身を隠すが、如何せん手持ちの武器がない以上、まともな行動が出来ない……、どうしたら良いんだよ!?
そんな考えが、脳内を過ぎる中、周りを確認すると、近くに、先程の攻撃で、手放した64式小銃が、落ちていた。
俺は直ぐさま、コレを拾って、応戦しようとするが、強盗団員も、コレに気づいたのか、阻止せんとばかりに、今度は俺に対して、隙のない猛射を浴びせてくる。
畜生……、これじゃ、”池のカモ”だぜ!!
飛んでくる銃撃によって、隠れている遮蔽物に、次々と弾痕が開いていくのを感じながら、そう思っていた時だった。
「うおおおっ!!」
「あ、待ちなさいよ、このバカキンジ!!」
……と言う、キンジと、アリアの叫びが聞こえてきて、俺が、その叫びの聞こえてきた方向に顔を向けると、そこでは、キンジが意を決した様に、隠れていた遮蔽物から、飛び出すなり、落ちている64式小銃の元へと走り出すキンジと、それを必死に援護射撃するアリアの姿があった。
ったく、良い後輩を連れてきたものだぜ!!
「青柳先輩、これを!!」
その光景を見て、そんな考えが胸の内を過ぎる中、キンジは、アリアの援護射撃を受けつつ、銃弾の雨をかいくぐり、落ちていた64式小銃を拾い上げるなり、俺に向かって、投げつけるのだった。
「ナイスフォロー!!」
俺は、そんな投げつけられた64式小銃を見ながら、そうキンジに対して、言い放ちながら、上空を舞う64式小銃を、キャッチするなり、俺はトリガーを引き、フルオートで、次々と、俺達の前に立ちふさがる強盗団員に対し、NATO 7.62mm弾を撃ち込み、まるで、アクション映画や無双ゲーの様に、強盗団員を、次々と地面に崩れ落としていく。
こんな俺の側では、アリアとキンジの二人も、続く様に、揃って手持ちの銃を、次々と強盗団員達に対して、撃ちまくり、押し寄せる強盗団員達を、なぎ倒し、1階部分を制圧するのだった。
「どうやら、1階は、これで終了みたいだな……」
「そうですね……」
「速い内に、3階を制圧しましょう、青柳先輩」
「あぁ、そうしよう」
強盗団員達を撃退した俺達は、そう短く言葉を交わすと、直ぐ様、3階部分を制圧する為に、階段を駆け上がる。





……

………



所々で、俺達を足止めする為に、銃撃を加えてくる強盗団員を撃退並びに確保しながら、2階部分を制圧した俺達は、遂に3階部分へと、到着する。
「いよいよだな……」
「そうね……、気を引き締めなさいよ、バカキンジ」
「………」
俺の直ぐ脇で、ガバメントとベレッタを構え、周囲を警戒しながら、そう言葉を交わすアリアとキンジを横目で見ながら、俺が64式小銃を構えながら、先導していると……。
「死ねぇ、ガキ共ぉぉぉ!!」
……と、叫びながら、強盗団員の一人が、マウントに設置したMG42汎用機関銃を、俺達に向けて、バリバリと乱射してくる。
「うぉっ!?」
「何っ!?」
「マズイ、伏せろ!!」
このMG42の銃撃に対して、アリアとキンジが揃って、意表を付かれ、混乱するのを見ながら、俺は64式小銃を、フルオートで撃ちまくりながら、MG42を撃ちまくる強盗団員に対して、応戦する。
だが、しかし、どちらもフルオート射撃が、可能な銃とは言えど、1つのマガジンに、20発しか装填出来ない、|バトルライフル《64式小銃》と、ベルトリンク式で、ほぼ1000発以上の銃弾を、リロード無しで、撃ちまくる事が可能な、|汎用機関銃《MG42》では、明らかに、前者の方が、不利だ。
この圧倒的に、不利な状況に、今、物の見事に、俺達が立っているのだ。
まぁ、そもそもフルオート射撃してくる、機関銃と真っ正面から、勝負する事そのものが、”バカな行為”なのだが……。
そう胸の内で思ったのも、ほんの一瞬。直ぐ様、俺達は、MG42による、凄まじい銃撃に襲われる。
どうやら、海斗の乗る1号機に対して、銃撃を行った強盗団員達が居る可能性が、高いかもな……。
「くっ!!」
「きゃっ!!」
「後退、後退しろ!!」
この銃撃に対して、俺とアリア、キンジの3人は、一端後退しようとするが……、しかし……。
「待っていたぜ、クソガキ共!!」
と、後退しようとする俺達の前に対して、隠れていた強盗団員が、背中にレミントンM870ショットガンを背負い、手に持ったステアーAUGを構え、俺達の前に立ち塞がる。
「っ!!」
「死ねえっ!!」
咄嗟にキンジが応戦しようとするが、それよりも先に、強盗団員のステアーが、先に火を噴き、キンジを銃撃する。
この銃撃を前に、キンジは為す術も無く、キンジはC装備に次々と、ステアーから放たれた、NATO 5.56mm弾に喰らい、地面へと崩れ落ちる。
「ぐあっ!!」
「キンジ!!」
「っ!!」
地面へと崩れ落ちたキンジを見て、アリアが悲痛な叫びを上げるのを聞きながら、俺は素早く64式小銃を、ステアーを持つ、強盗団員に向けるなり、トリガーを引いて、反撃。
7.62mm弾の銃声が連続して、鳴り響くと同時に、64式小銃の銃口から飛び出した、銃弾が次々と強盗団員に飛びかかり、強盗団員に凄まじい衝撃を与えていく。
「ぬおおおっ!!」
多数の銃弾を浴びた強盗団員だが、かなりタフな奴なのか、まだ銃撃を受けながらも、立っており、その途中で、64式の方が、先に弾切れを起こした。
これに対して、俺は素早く、デザートイーグルに武装を切り替えると、次々とトリガーを引いて、デザートイーグルを発砲し、強盗団員を銃撃する。
「ぐおおっ!!」
こうして、デザートイーグルの銃撃も喰らった戦闘員が、やっとダウンする側では、アリアが、素早く負傷したキンジを引っ張りながら、近くの部屋のドアを蹴飛ばして、開けるなり、そこに転がり込む様にして、逃げ込んでいく。


その様子を見た、俺も素早く部屋の中に隠れ、MG42の銃撃から、身を隠し、弾切れした64式小銃をリロードする。
「はぁ……、はぁ……」
リロードを終えるなり、肩で息をしながら、あがった息を整えている俺の側で、アリアは少なからず手慣れた手つきで、負傷したキンジを手当てしていた。
「ほら、消毒するわよ……」
そうキンジに対して、言いながら、アリアが消毒液を、キンジの負傷した部分に塗ると、キンジは「ぐっ!!」と苦虫を潰した様な表情になる。
現に、今、アリアが塗っている消毒液は、強襲科支給の医療キットの消毒液であり、ド偉く染みる事で、有名なのだ。
過去に俺も、強襲科にいて、何度かお世話になったのだが……、まぁ……、飛び上がるほど、痛いこと……、痛いこと……、ご愁傷様です……。
そんな思い出が、脳内を過ぎる中、アリアは素早く、キズを保護する為の、ガーゼと止血帯を、キンジの負傷箇所に巻き、応急処置を終える。
「ほら、これで大丈夫でしょ……」
「あぁ……、悪いな……」
「ったく……、少しは私の手を借りないで、頑張って欲しいわね!!」
そう照れくさそうに礼を言うキンジに対して、アリアは校内でも有名な、ツンデレモードで、答える。
うーん……、なるほど……、海斗や桜井達が言っていた通りだな……。
この様な、やり取りを見て、そう思っていた俺に対して、キンジが、ベレッタを握りしめながら、こう問い掛ける。
「それで、どうします?機関銃と真っ正面から、やり合うのは、自殺行為ですよ……」
「あぁ……」
キンジの言う通り、真っ正面から機関銃とやり合うのは、自殺行為以外の何物でも無い。
一番理想的な、攻撃方法は「側面から、回り込んで、叩く」と言ったものだが……。
如何せん、ココは建物の中だ、野外戦闘とは違って、限られたスペースで戦うしかない……。一体、どうしたら良いんだろうか……?
そんな考えを胸に抱きながら、俺はふと部屋の周りを見渡すと、”ある事”に気づいた。
この部屋は、”MG42が設置された部屋の、ほぼ隣”であり、近くには、”火災消火用の消火栓並びに、消火ホース”が設置されており、どうやら使えるみたいだ。
現に、先程、桜井が撃ち込んだ催涙ガス弾の、催涙ガス成分を洗浄する為に、放水したらしく、消火ホース並びに放水銃が、放り投げられており、床は、赤さび混じりの水で、水浸しだ。
また壁には、建物の老朽化の為か、所々にひび割れが、走っている。
そして、先程、倒した戦闘員の持っていたレミントンM870が、俺達の直ぐ近くに転がっていた。
「……これだ」
この4つを見て、俺の中で、1つのアイディアが浮かんだ。


そして、俺は直ぐさま、その思いついたアイディアを実行するべく、アリアとキンジに伝える。
「良いか、よく聞け?今から作戦を伝える」
「はい!!」
「分かりました!!」
俺の言葉に対し、しっかりとした口調と表情で答えるアリアとキンジ。実に頼もしい後輩だ。
そう思いながら、俺はレミントンM870を拾い上げながら、作戦を伝える。
「キンジ、あの消火栓が、見えるな?」
「はい」
「あそこまで、突っ走って、ホースをこっちまで、引っ張ってくるんだ。アリアは、俺と一緒に、キンジを援護すると同時に、機関銃主を牽制するんだ」
「えっ……?」
「それは、一体どういう事ですか?」
俺の作戦説明に対して、頭に疑問符を浮かべながら、問い掛けてくる二人。
まぁ、これだけ聞いたら、海斗や桜井達すら、頭に疑問符を浮かべて、聞いてくるだろうな……。
二人の様子を見て、そう思いながら、俺は、更に作戦を説明する。
「キンジが戻ってきたら、俺がショットガンで、壁を撃つ。そしたら、俺の合図で、一気に放水するんだ、最高水圧でな!!」
こう説明すると、アリアが作戦に感づいた様で、こう言い放つ。
「つまり、それで、壁に大穴を開けると同時に、放水で相手が怯んだ隙に……」
「あぁ、一気に取り押さえる訳だ!!」
そう俺が言い放つと、キンジも納得したのか、「な、なるほど……」と、呟いている。納得したなら、話は早い……。
「二人とも、直ちに作戦に掛かれ!!」
「「了解っ!!」
俺の命令に対し、二人はしっかりとした返事を返すなり、直ぐさま作戦を実行する。


まずキンジが、強盗団員の銃撃が一瞬止んだ隙に、消火栓へと駆け寄る。
この間にも、別の強盗団員によって、キンジを射殺しようと、凄まじい銃撃を加えるが、それを阻止するために、俺とアリアは、共に揃って、互いの銃を撃ちまくり、相手を牽制する。
その間に、キンジは消火栓に付くなり、素早くホースを拾い上げつつ、消火栓のバルブを回し、水圧を最大にして、戻ってくる。
「準備完了です!!」
「よし……」
消火ホースを手に、部屋に転がり込んで来た、キンジの報告を聞き、俺は、そう呟きながら、レミントンM870のフォアグリップを前後に動かし、12ゲージ散弾を薬室に送り込む。
そして、一気に壁の割れ目に向けて、1発、ドカンと射撃するなり、フォアグリップを後退させ、チャンバーから、空薬莢を吐き出させるなり、続け様に、フォアグリップを前進させ、次の弾丸を薬室へと、送り込む。
この行為を数回繰り返し、壁の割れ目に向かって、次々と射撃していると、壁の割れ目は大きくなり、少なからず穴が開いた。
ショットガンは、銃器であると同時に、道具にもなる武器だ。
現に、世界各国の警察や軍隊の特殊部隊を始め、一部の武偵達は、犯人やテロリストの立て籠もる部屋のドアの鍵を、ショットガンで撃って破壊し、突入する事がある。
また、今回、拾ったレミントンM870に装填されていた、12ゲージ散弾は、至近距離では、凄まじい威力があり、材質や状態にもよるが、今の様に、穴を開ける事すら、可能だ。
こうして、開いた穴を見つめながら、俺は、全ての弾丸を撃ちきったレミントンM870を捨て、再び64式を手にすると、キンジに対して、指示を飛ばす。
「放水開始!!」
「了解っ!!」
俺の指示を聞いたキンジが、間髪入れること無く、消火ホースの放水部分の安全装置を解除。
瞬間、最大水圧で、水が勢い良く、吐き出され、ショットガンで開けた、穴に凄まじい水圧を掛け、更に穴を大きくすると同時に、部屋の中に居た、MG42の機関銃主を始め、海斗の1号機を銃撃した、バレッタM82の狙撃手など、全ての強盗団員をなぎ払っていく。
「うおおおっ!!」
「み、水だ!!」
「た、助けてくれっ!!俺は、泳げないんだ!!」
突然の放水に、強盗団員達は為す術も無く、吹き飛ばされていく。
「今だ、アリア、突入するぞ!!」
「はいっ!!」
そんな様子を見ながら、俺とアリアは、共に弾丸の様に、部屋の中へ突入。
強盗団員達に、反撃の隙を与えることなく、次々と銃弾や、顔面蹴りを加え、制圧する。
そうして、本当に”電光石火の早業”で、俺とアリアは、強盗団員達を確保するのだった。
「ぐっ、離せっ!!」
「うるさいっ!!」
「グハッ!!」
……と、こんな感じで、最後の悪あがきを試みる強盗団員も居たが、直ぐさま、アリアの鉄拳を喰らい、伸びてしまうのが、オチだ。
「海斗、1号機を銃撃した奴らは確保した。後は、思う存分に暴れろ!!」
そんなオチを見ながら、俺は無線機を手に取ると、海斗の1号機に対して、そう伝えるのだった……。





……

………



<海斗Side>
『海斗、1号機を銃撃した奴らは確保した。後は、思う存分に暴れろ!!』
「言う程、楽じゃないですが!!」
……と、銃撃班を制圧したリーダーからの、報告を聞きながら、俺は短く言葉を返すと、三度、ブルドックと対峙し、操縦レバーを、握りしめる。
同時に、目の前のディスプレイには、ブルドッグが、エンジンカッターを2、3回、回転させ、威嚇してくる様子が、映し出される。
俺は、その様子を見ながら、イングラムを操作して、電磁警棒を構え、ブルドックと対峙させた時だった。
『死ねやぁ!!』
「っ!!」
そう罵倒しながら、突如として、ブルドックが、走り出したかと思ったら、次の瞬間には、大きくブルドックが地面を蹴り上げ、俺の乗る1号機に飛び掛かってくる。
この攻撃に対し、俺は咄嗟に左側シールドを出して、カバーするが、それでも、地面に倒れる程の凄まじい衝撃が、1号機と俺に、襲い掛かってくる。
「ぐああっ!!」
為す術もなく、地面へと崩れ落ちる俺の1号機。
それに馬乗りすると、エンジンカッターをフル回転させ、コックピット部分を斬りつけようとする強盗団員のブルドッグ。
『トドメだぁ!!』
「そうはいくか!!」
この場で、ご臨終なんて、まっぴらゴメンだぜ!!
ディスプレイ越しに、ブルドックを見ながら、俺はそう思うと同時に、素早く操縦席の左側にある、操作盤パネルに設置された無数のボタンや、レバースイッチの中から、1つのレバースイッチを、素早く指で弾いて起動させるなり、間髪入れる事無く、右腕を操作し、ブルドッグに向けるなり、操縦桿のトリガーを引いた。
瞬間、右腕に設置されたシールドの下部が、勢い良く「ドゴンッ!!」と言う、火薬の炸裂音と共に、スライドし、馬鹿でっかい空薬莢を吐き出しながら、ブルドッグの左側面に、撃ち込まれる。
実は、イングラムの武偵モデルであるAD型には、第2小隊の先輩達が使っている、イングラム(※オリジナル型)には無い、”独自の装備”が、幾つかある。
その中の1つが、たった今、使用した”右腕シールド兼、火薬作動式パイルドライバー”だ。
『ぐおおおっ!?』
コレを知らない、ブルドックの操縦主である強盗団員は、凄まじい勢いで、ブルドッグごと、はじき飛ばされる。
地面へと崩れ落ちたブルドッグを見ながら、俺は続け様に、今度は、左側の操作盤パネルに設置された、ボタンの中の1つを押し、これまた、AD型ならではの、独自機能を起動させる。
現在、俺の乗る1号機は、左膝を地面に付け、右膝で、膝立ちしている状態である。
この状態で、地面に付けた左膝の関節部分から、内蔵されたタイヤが勢い良く出て、地面と接する。
それを、側にある専用ディスプレイで確認すると、直ぐ様、俺は左フットバーを勢い良く踏み込み、そのタイヤを勢い良く「ギュルギュルギュル!!」と、まるで路上レースを、やろうとする暴走族の改造車の様に、タイヤスピンさせると、その回転の勢いそのままに、凄まじいスピードで、1号機を旋回させる。
同時に、残る右足を振り上げて、思いっきりブルドッグに対して、回し蹴りを放つ。
この回し蹴りが炸裂した瞬間、三度、ブルドッグは凄まじい衝撃音と共に地面へと崩れ落ちた。


そんなブルドッグを見ながら、俺は1号機を操作し、電磁警棒を構え、三度、ブルドッグに警告する。
「ブルドッグの操縦者に告ぐ!!直ちに機体を停止させ、両腕を上げて、降りるんだ!!これ以上の抵抗は、もう何の意味も成さないぞ!!」
そう内蔵されたスピーカーから、ブルドッグを操縦する強盗団員に対して、警告した瞬間だった。
『ざけんなっ!!』
……と言う、罵倒と共に、操縦していた強盗団員が、ブルドッグのコックピット内に持ち込んでいた、グロック18を、乱射して、コックピットのキャノピーを粉砕しながら、俺の1号機を銃撃してくる。
この銃撃で、グロック18から、放たれた一発の銃弾が、頭部カメラに命中し、火花を散らす。
その火花は、映像ディスプレイにて、凄まじき白い閃光となり、俺の目を失明させんとばかりに、目に突き刺さってくる。
「ぐっ!?」
この瞬間、俺は、まるで突入する特殊部隊の閃光手榴弾による攻撃を喰らった、人質立て籠もり事件の犯人の様に、視界が奪われる。
その視界が、まだ完全では無いながらも、戻った瞬間、俺の視界に飛び込んできたのは、キャノピーに銃創を開けつつ、ダウンから復帰し、俺を殺さんとばかりに、エンジンカッターをフル回転させて、突っ込んでくるブルドッグの姿であった。
『死ねえええーーーーっ!!』
「このクソッ!!」
往生際悪すぎだろ、このブルドッグを操縦している強盗団員!!
胸の内でそう思いながら、咄嗟に電磁警棒で、ブルドッグのエンジンカッターを受け止めるが、ブルドッグは間髪入れることなく、先程のお返しと言わんばかりに、1号機の腹に向けて、思いっきり蹴りを入れてくる。
っていうか、衝撃スゴッ!!我ながら、こんな衝撃を相手に喰らわしていたんだ!!
「うおおっ!!」
1号機を襲う凄まじい蹴りの衝撃に、コックピット内で、操縦桿を握りしめながら、俺は身構える。
それと同時に、1号機は、蹴りの衝撃によって、後ろに転倒し、リボルバーカノンに引き続き、電磁警棒までも、手落としてしまう。
『喰らいやがれええっー!!』
「っ!!」
そんな1号機に対して、ブルドッグが、トドメを刺さんとばかりに、エンジンカッターを振り落としてくるが、咄嗟に俺は、左側シールドに装備されている2本目の電磁警棒を引き抜き、エンジンカッターを受け止める。


ブルドッグを操縦する強盗団員は、それを見るなり、エンジンカッターを、続け様に2~3回、振り下ろし、攻撃してくるが、俺は先程と同じ様に電磁警棒で、その攻撃を受け止める。
『この野郎!!さっさと、死にやがれ、クソッタレ野郎!!』
自分が思う様な展開にならない様に、怒り心頭で、俺の1号機に対して、罵倒してくる強盗団員。
っていうか、それはコッチの台詞だ、このクソッタレ野郎!!死んでたまるか、この野郎おぉぉーっ!!
強盗団員の罵倒に対して、そう思いながら、俺は1号機の右足を思いっきり、振り上げ、勢いそのまま、1号機の右足を、ブルドッグのコックピットに叩き込む。
瞬間、三度、金属フレームとFRP装甲が、激しくぶつかり合い、凄まじい衝撃音が辺り一面に鳴り響くと同時に、今度はブルドッグがバランスを崩し、地面へと尻餅をつく形で、倒れ込む。
『クソッ!!』
「させるかよ!!」
素早くダウンから復帰しようとするブルドッグに対し、俺は、素早く1号機を起こすなり、ブルドッグに対して、タックルを喰らわして、再び、転倒させる。
「喰らえ!!」
『ぬおおっ!!』
俺のタックルを喰らったブルドッグが、再び転倒したのを見て、俺はとどめを刺すために、電磁警棒を振り下ろすが、咄嗟にブルドッグは、ローリングして、それを回避する。
そして素早く立ち上がるなり、エンジンカッターを再びフル回転させ、滅茶苦茶に振り回しながら、俺の1号機に対して、斬り掛かってくる。
『ぐおああああーっ!!』
「チイッ!!」
ヤケクソ状態としか言い様が無い、叫び声を上げつつ、行われるブルドッグの斬りつけ攻撃に対して、俺は必死になって1号機を操作し、必死に回避し続ける。
何とか、一瞬だけでも隙が有れば、反撃が可能なのだが……。
相手も「捕まってたまるか!!」と、必死なのだろう。徹底的に隙を作らない様にしながら、しつこく攻撃を加えてくる。
これじゃ、キリがないぜ、クソッ!!せめて、リボルバーカノンだけでも、取り戻せれば……。


必死になって、ブルドッグのエンジンカッターによる、斬りつけ攻撃を回避しながら、そう思った瞬間だった。
『海斗!!』
「桜井!?何処に居るんだよ!?」
……と言う、桜井の声が、指揮車のエンジン音混じりで、ヘッドギアに内蔵されたスピーカーから、聞こえてくる。
これに対して、俺が驚きながら、桜井に問い掛けると、当の本人は、再び大声で、こう返す。
『アンタの後方、約600メートルよ!!』
「っ!!」
そう帰ってきた桜井の答えに対して、俺はブルドッグの攻撃を回避しつつ、後方確認用ディスプレイに視線を向ける。
すると、そこには、上にリーダー、アリア、キンジの3人を乗せつつ、リボルバーカノンを、牽引用ワイヤーで、火花を散らしつつ、引っ張って、こちらに向かってくる桜井の指揮車が、映し出されていた。
『ほら、アンタ、お得意の銃よ!!5秒後には、アンタの方に向かって、飛ばすから、何とか拾って使いなさいよ!!』
「と、飛ばす!?」
飛ばすって……、一体どういう事だよ!?
桜井の発言に対して、思わず頭に疑問符を浮かべた瞬間、ブルドッグは勢い良くエンジンカッターを、高く振り上げたかと思ったら、俺の1号機の頭部を兜割りしようとしてか、勢い良く、エンジンカッターを振り下ろして攻撃してくる。
『オラアッ!!』
「こんにゃろーっ!!」
俺は咄嗟に、その兜割り攻撃に対し、1号機のフットバーを、勢いよく後方に踏み込み、後方にジャンプさせ、回避すると、続け様に、今度はフットバーを、勢い良く前に踏み込んで、前方にジャンプさせる。
そして、そのまま右足で、ブルドックに対して、蹴りを叩き込んだ瞬間、また凄まじい金属音とFRPの衝突音が鳴り響き、ブルドッグが7~8メートル程、吹き飛ばされる形で、転倒した。
『行くわよ!!』
まるで、「待ってました!!」と言わんばかりの口調で、桜井の声がヘッドギアのスピーカーから、聞こえてきたと思った次の瞬間には、凄まじい勢いで指揮車がドリフトする。
そして、そのドリフトの勢いで、牽引用ワイヤーで、引っ張っていたリボリバーカノンが、一瞬、宙に浮いたかと思った瞬間には、指揮車の上に箱乗りしていたリーダーとアリアの二人が、リボルバーカノンを引っ張っている牽引用ワイヤーと、リボルバーカノンの結び目を、共に互いのガバメントと、デザートイーグルで、同時に銃撃。
これによって、リボルバーカノンを縛り付けていたワイヤーが切れたかと思ったら、ドリフトの勢いはそのままで、リボルバーカノンが、まるで水切りの石の様に、グルグルと回転し、地面を削りながら、俺の方に向かって飛んでくる。
なるほど……、さっき、桜井が言っていた「飛ばす」とは、この事か!!
『ぬおおおおおおおっー!!』
「!!」
後部ディスプレイに映し出された一連の行為に対し、そう思っていると、ダウンから復帰したブルドッグが、大声で絶叫しつつ、エンジンカッターをフル回転させながら、勢い良く地面を蹴り上げ、ジャンプする。
これに対し、俺は1号機を操作し、クルリと機体を180度旋回させ、1号機を膝立ちさせると、そのまま地面を削りながら、飛んできたリボルバーカノンをキャッチ。
それと同時に、素早く1号機を再び、旋回させて、ブルドッグの方に機体を向けると、そのままリボルバーカノンを握る右手を操作し、宙にいるブルドッグに狙いを定める。
『死ねえっー!!』
「当たったれぇーっ!!」
地面に落下しながら、1号機の頭を狙うブルドッグを操縦する強盗団員と、そのブルドッグにリボルバーカノンの照準を定める俺の叫びが共に、倉庫中に、こだました、数秒後には……。

ズドォーンッ!!
ガシャアァァーンッ!!

……という、銃声と金属が崩れ落ちるような音が鳴り響く。





……

………



音が鳴り響いた、数十秒後……。
「海斗!!」
「大丈夫か!?」
「一体、どうなってるの!?」
「っ!?」
1号機の近くにやってきた桜井、リーダー、アリア、キンジ達が、音のした方に顔を向ける。すると、そこには……。
腹の部分に、リボルバーカノンの銃創を開け、そこから「バチバチッ!!」と言うスパーク音を鳴らしつつ、地面に崩れ落ちたブルドッグ。
そして……、リボルバーカノンから、白い煙をモクモクと、上げながら、そのブルドッグを見つめる1号機の姿があった。
「い……、やったあー!!」
「おぉ……、おぉぉぉ……、おぉぉぉ!!」
その姿を見て、指揮車のハッチを上げながら、万歳する桜井。
彼女と、1号機の勇姿を見て、思わず感嘆にも近い声を上げるキンジ。
「アリア、援護を頼む」
「了解です」
そんな二人を見ながら、リーダーとアリアは、共に指揮車から、降りると銃を構えつつ、ブルドッグに接近していく。
二人が共に、銃を構えながら、ブルドッグのコックピット部分を覗き込むと……。
「くっ、くそっ!!動け、動けよ、このクソマシーン!!」
こう叫びながら、ブルドッグの操縦桿を必死に動かしたり、手前の操作盤を叩き、必死になってブルドッグを動かそうとする強盗団員の姿が。
「往生際が、悪いぞ!!」
「静かにしないと、風穴開けるわよ!!」
その姿を見て、リーダーが、ブルドッグのコックピット開放レバーを操作し、コックピットをこじ開けると、アリアが、すかさずガバメントと突きつけながら、操縦席より強盗団員を引きずり出し、身柄を拘束する。
「こ……、このチビが!!」」
「うっさい、『チビ!!』って言うな!!」
強盗団員の言い放った『チビ』と言うワードに、ブチ切れたアリアが、切れると同時に、思いっきり拳を強盗団員の頭にめり込ませる。
自ら『チビ』と表した、その小さな体からは想像も付かない、もの凄いパワーで放たれたアリアの鉄拳を喰らい、強盗団員は「どっはあっ!!」と、叫んだかと思った次の瞬間には、頭の上にクルクルと回りながら、「ピヨピヨ」と鳴いている、ヒヨコを浮かべながら、気絶する。
そんな光景を横目に見ながら、リーダーは、無線機のスイッチを入れると、1号機の中にいる海斗に通信をつなぐ。
「海斗、聞こえるか?」
『えぇ、バッチリと』
リーダーの問い掛けにそう返しながら、海斗が1号機の首と胴体の間から、姿を見せる。
その姿を見て、リーダーは、こう言葉を続ける。
「良くやった、これで本隊が突入できる。少し休んだら、|俺達《ADレイバー隊》も、最後の仕上げの手伝いに行くぞ!!」
『了解!!』
リーダーの指示に対し、そう海斗は復唱を返しながら、マリと同じ様に、操縦席内に持ち込んだ、ミネラルウォーターのペットボトルのふたを開け、一気に飲み干していく。
「ぷっはあ!!」
一気にミネラルウォーターを飲み干した海斗は、空になったペットボトルを、操縦席内の小物入れに、放り込みながら、こう思うのだった。

もうすぐ、この作戦は終了だ……。

そう胸の内で思いながら、気を引き締める。
だが、しかし……、そんな海斗の思いとは裏腹に、状況は予想も出来ない方向に動き出そうとしていた……。