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運命が動き出すとき……。中編2

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  3. 運命が動き出すとき……。中編2
俺の放り投げたミリタリーマグが、壁にぶっ刺さっている事など、知る由も無い俺は格納庫に1番乗りするなり、すぐさま出撃準備を始める。


まず最初に、P-80の収まっているハンガーの専用棚に置かれているパラシュートパックを手に取り、素早く背負いつつ、体に固定する為の器具やロープを締めていく。
それが全部終わると、続けざまに、空間失調対策用の水平器付きの高度計を手に取り、電源を入れ、簡単な動作チェックを行うと、先程、背負ったパラシュートパックの左肩部分にある専用の取り付けジョイントに水平器を取り付ける。
んで、更に続けて、俺はハンガーに収まっているP-80の一部分に付いているハンドルを引くと、その瞬間、プシューッ!という空気の抜ける音と共に、P-80の前面にあるハッチが開く。
俺はそれを確認すると、背に壁をつけるような形で、その空いた部分に足を入れると、すぐさまハッチを閉じると同時にロック機構を操作して、P-80のハッチをロックする。
これらの一連の動作をしている内にも、俺の後から、やってきたバルクホルンや芳佳達はレシプロストライカーユニットを起動させ、銃を手に次々と飛び立っていく。

もしP-80の問題点を上げたレポートを書くとすれば、出撃準備から、装着までの一連の動作に有する時間が長いという事が最大だな!!

次々とレシプロストライカーで、飛び立っていく他の面々を見ながら、やきもきとした様な感情を胸の内に抱きつつ、俺がハンガーの中にある、武器庫から、トンプソンM1A1と、その予備マガジンの入ったマガジンポーチを取り出し、装備していると、シャーリーがやってきて、P-51を足には装着しながら、BARを手に俺に対し、こう話しかけてくる。
「よぉ、まだ出撃してなかったのか?手間がかかるんだな、ジェットって!!」
「手間かかる仕様で、悪かったな!!」
そう軽口を叩くシャーリーに対し、そうボヤキつつ、俺はハンガーに設置されているコンプレッサーの起動ボタンを拳で叩くようにバンッ!と押す。
瞬間、すさまじい轟音と共にコンプレッサーが作動し、高圧空気をP-80の真同エンジンへと流し込んでいくのを、確認しつつ、俺は集中し、魔力を発動させる。
それによって、俺の頭に使い魔であるホワイトタイガーの耳が具現化すると同時に、P-80のエンジンが動き出し、レシプロストライカーには無い、ジェットエンジン独特のエンジン音が格納庫中に鳴り響く中、俺はそのエンジン音を聞き、異常が無い事を確かめる。
「デビル5、出撃準備よし!出撃する!!整備兵は退避せよ!!!」
確かめると同時に、周りにいる整備兵達に対し、大声でそう伝え、整備兵達が退避すると同時に、俺はハンガーのコンプレッサーの1画にあるボタンをバンッ!と叩くように押す。
瞬間、プシュッ!という、まるで瓶コーラーの蓋を開けたかのような、空気の抜ける音と共に、P-80に付いていたコンプレッサーの高圧空気用ホースが、勢い良く外れると同時に、P-80を固定していたハンガーのロックが外れる。
それを確認した俺は素早く滑走路に向け、タキシングを開始し、続く様にシャーリーのP-51もハンガーから、出庫し、滑走路へと向け、タキシングを始める。


そんな中、俺は滑走路へとタキシングしつつ、状況を把握する為、シャーリーに話しかける。
「今の状況はどうなっている?」
この俺の問いかけに対し、シャーリーは「ん?」と呟きながら、こう返してくる。
「そんなもん、知らないよ!先行している他のメンバーも、まだ接敵していないみたいだし!!」
「んだそりゃ?」
「とりあえず、他のメンバーと合流しようぜ!んじゃ、お先に!!」
俺の問いかけに対し、答えになってないも同然の答えを返しつつ、シャーリーは滑走路に進入すると、P-51のマーリン・エンジンのエンジン音を高鳴らせつつ、一気に滑走路を駆け抜け、空へと飛びあがってく。
そんなシャーリーに続く様に、俺も滑走路に進入する。
「管制塔、こちらデビル5。離陸許可を」
『了解、デビル5。離陸許可を出す。離陸後はポイントBC36-87-9方面へと向け飛行し、編隊と合流せよ』
「了解!!」
滑走路に進入すると同時に、そう管制官と話した俺は、まるで地平線の彼方まで続いているかと思わる程、長い、長い滑走路の先に見つめると、一回息を深く吸い、深呼吸する。
そうして、胸の内で暴れ狂う、コマンドの時とは違う緊張と興奮を抑えながら「ふぅ……」と吸い込んだ空気を吐き出すと、俺はカッ!と目を見開く。
同時に、魔力をP-80の魔道エンジンへと流し込んでいく。そうして、俺の流し込む魔力を得て、P-80のエンジンが獣の様に唸る中、俺は遂に滑走路を始める。
始めこそ、普通に走るとの変わらないスピードであったが、段々とスピードは上がっていき、最終的には、凄まじいGと風圧を感じ、内臓が背中から飛び出しそうになる感覚を覚えながらも、それを堪えつつ、さらに加速。
そして、”V2|《※離陸するのに必要な上昇角を取りうるスピードであり、この間にエンジントラブル等が発生しても、離陸を中止できない速度》”に達すると同時に、俺は体を起こすようにして、必要上昇角を取る。
瞬間、フワッ!と足が地面から離れ、重力の支配から解放されるのを感じると同時に俺の体は宙へと舞い上がる。
それと同時に、俺は体のその感覚に感動や戸惑いを覚えるよりも先にバランスや、エンジン出力を細かく調整しながら、更に上昇し、先行するシャーリー達の居る合流地点へと飛行していく。


それから、数分程、飛行すると編隊を組みつつ、先行していたシャーリー達のケツが見えてきたので、俺はゆっくりとエンジン出力を絞りつつ、編隊に合流する。
「お、もう合流したのか!流石はジェットストライカーだな!!」
「そりゃ、どうも……」
俺が合流したことに気づいたシャーリーがそう言ってくるので、軽くあしらっていると、俺とシャーリーのやり取りに気づいたバルクホルンが、怪訝そうな表情で、こう言ってくる。
「おい、お前達!我々は、ネウロイを迎撃しに来ているんだぞ!!ピクニックに行くよう様な、デカい会話をするな!!」
「……お前も十分にデカいぞ」
「激しく同意」
「なにをぉぉっ!?」
と言った感じで、俺とシャーリー、バルクホルンの3人が喧喧囂囂な、やり取りをしていると、それに気づいた坂本少佐が、俺たちに対して、檄を飛ばして来る。
「ウィーラー、シャーリー、バルクホルン!!さっきから、うるさいぞ!!もう少しで敵と接敵するんだ!!死にたくなければ、気を引き締めろ!!」
「「「了解っ!!」」」
そう少佐の檄に対し、復唱を返す俺たち3人だが、すぐにシャーリーとバルクホルンは、横目で「「お前が悪い!!」」と言いたげに、お互いに、見つめあっている。
うーん……なんだ……、まぁ、あれだな……ここまで仲が悪いと、もう1週回って、逆に仲が良いって感じだよな。お前ら……。
なんてことを胸の内で思いつつ、編隊を組み、ネウロイとの接敵予想地点へ向け、15分程、飛行を続けていた時だった。
「前方、2時方向にネウロイ編隊を視認!!数は中型が7機、小型が13機ですわ!!」
「来たわね……皆、戦闘準備!!」
隊を先行し、敵を探すポイントマンを務めていたペリーヌが、ネウロイを発見した事をミーナ中佐に伝えると、その報告を受けた中佐が、すかさず戦闘用意の指示を飛ばす。
この指示を受け、俺達は一斉に手にしていたMG42や、99式2号2型改13mm機関銃といった各々が持つ銃器の安全装置を解除し、いつでも撃てる体制に入る。
俺も、それに漏れることなく、愛用のトンプソンM1A1のマガジンを一回外し、ちゃんと弾丸が装てんされている事を確認すると、再びマガジンをトンプソンに差し、素早く横のコッキングハンドルを引いて、初弾をチャンバーへと送り込むと、同時に安全装置を解除する。
「戦闘準備よし!!」
一通りの戦闘準備を終えた俺が、そう報告すると、続くようにシャーリーやバルクホルンらも、「準備完了!!」とか、「準備OK!!」と口々に戦闘準備を整えたことを、ミーナ中佐に報告する。


その報告を一しきり聞いた、ミーナ中佐は、坂本少佐にこう話しかける。
「美緒、皆、準備OKよ。始めましょう!!」
「……よし、やるか!全員上昇、私に続け!!ネウロイより、上を飛ぶぞ!!」
大声で戦闘指示を出した少佐が、先陣を切って、上昇を始めると、それに続くように俺達も上昇していく。
上昇に伴う、凄まじい風圧とGによって、顔の皮膚やら、内臓やらが腹から、背中側に引っ張られる感覚を必死で堪えつつ、俺はパラシュートザックの左肩に装備した高度計に目をやる。
その視線の先にあった高度計の数値は、今まで見た事のないスピードで「3500……、4000……、4500……」と変わっていき、高度計に付属している水平器も、今までのフライトで見た事がない勾配を示していた。

(航空ウィッチって、こんな状況で戦っていたのか……)

今までは、下から、ウィッチ達の活躍を見上げ、その戦いの行く末を見守る立場だった俺は、今まで見上げるだけの存在だったウィッチ達が、このような状況で戦っていた事に驚きを感じる。
同時に、”これまでは、見守る立場だった自分が、見守られる立場になった”という事実を突き付けられた様な感じがして、何とも言えない複雑な感情が胸の内で湧いてくる。
それと同時に、今から始まる戦いが、自分が航空歩兵になってから初となる実戦である事を再認識し、今更ながら、何とも言えない妙な緊張感と興奮が、先程の何とも言えない複雑な感情と交じり合わさり、心臓が激しくバクバク!と鼓動を打つのを感じていた。
はっきり言って、コマンドだった頃に従事した特殊任務でも、ここまで緊張した事は無いかもしれないな……。
「……ふぅ」
そんな緊張感からか、無意識に自然と荒くなる呼吸を整えるかのように、息を吐きだしていると、それに気づいたシャーリーが、話しかけてくる。
「どうした、ウィーラー?緊張しているのか?」
「……否定はしない」
この俺の言葉を聞いたシャーリーは、まるで嫌ってる奴の弱点を見つけた子供が、嫌っている奴に悪だくみを試みる様な笑顔を浮かべつつ、こう言い放つ。
「元コマンド部隊のお前が緊張するって、コマンドらしくないねぇ!」
「るっせ、バーロー」
……といった感じで、さっきのバルクホルンも含めた3人のやり取りのような、やり取りを彼女と交わしていると、それを見て、俺が初めての実戦である事を思い出した坂本少佐が「……そういえば」と呟きながら、言葉を続けた。
「ウィーラー、お前は航空歩兵としての実戦は、今回が初だったな?」
「……はい」
「なぁに、そう固くなるな!やることの本質は、コマンドと大して変わらん!!目の前にいるネウロイをすべて、叩き落すだけだ!!簡単だろう?」
そう言って「ハ、ハッ、ハッ!!」と何時もの高笑いをかます少佐。流石は歴戦の勇者だから、出来る態度だと言えるだな……。
まぁ、少佐の言う通り、コマンドの時と同じように、目の前にいるネウロイを全て打ちのめせば良いだけの話……。
もうここまで来たら、引き返す事は出来ない……。やるだけ、やるしかないさ……!!


少佐の高笑いを聞きつつ、気を引き締めた俺が軍服の襟元を緩めた……丁度、その時だった。
「全員、水平飛行に移れ!!」
さっきまで、高笑いしていた少佐が打って変わって、真剣な声で上昇飛行から、水平飛行に移る指示を飛ばす。
指示に従い、俺達が水平飛行に移ると、丁度、俺たちの下に飛行型ネウロイの編隊が飛行しているのが、目に入った。
そのネウロイ達の姿を俺は、己の目に捉えると思わず、ゴクリ!と固唾を飲み込んだ。
そこに居るネウロイ達は、自分の想像よりもはるかに巨大であり、爆撃機タイプのネウロイに至っては、まるでクジラの様に巨大であり、その周りを飛ぶ護衛戦闘機型のネウロイも、大型戦闘機並みの巨大さを誇っていた。
コマンドだった頃に見た、陸戦型ネウロイも十分に重戦車クラスのデカさがあったが、それを軽く上回る飛行型ネウロイは、下から見上げるだけでも、大きいと感じていたが、実際に間近で見るとこんなにデカかったのか……。
自分の想像を遥かに超えた、ネウロイ独特の迫力とでも言うべき物に、胸の高鳴りがピークを迎える中、俺は再びシャーリーと、バルクホルンに話しかける。
「……なぁ、シャーリー、バルクホルン」
「ん?」
「どうした、コマンド?」
「……ネウロイってさ、あんなにデカい物なの?」
この俺の問いかけに対し、二人は真下を飛ぶネウロイに視線をやると、こう言い放つ。
「今日の奴は、比較的、巨大な方だな……」
「うーん、確かに、クジラみたいだな」
「じゃあ、俺達、イワシかよ」
といった感じで、航空歩兵としては、先輩のシャーリーとバルクホルンも、その大きさを前に流石に緊張しているトーンで返答を返すのに対し、俺も皮肉気味に、そう言い放った瞬間、三度、少佐の激が飛んでくる。
「3人とも、情けない事を言うな!!奴らが、シロナガスなら、私達はシャチだと思え!!」
この少佐の劇に対し、俺とシャーリー、バルクホルンの3人が「「「了解!!」」」と復唱を返すの聞き、少佐は、今度は俺達以外のメンバーも含めた、501の面々に向け、こう言い放つ。
「いいか、2~3人でチームを組み、周囲の警戒を最大限に行いながら、攻撃しろ!!奴らを1匹も、ブリタニアに入れるな!!」
少佐のこの指示に対し、俺たち全員が「「「「「了解っ!!」」」」」と復唱を返すと、少佐は一回息を吸うと、ミーナ中佐と顔を見合わせ、ともに頷くと、こう叫んだ。
「行くぞ!!」
この少佐の掛け声と共に、坂本少佐とミーナ中佐が先陣を切る様に、一気に左に体をひねりつつ、ネウロイを目掛け、急降下。
二人に続く様に、バルクホルンとハルトマン、芳佳とリーネ、ペリーヌ、エイラとサーニャ、流斬、シャーリー、ルッキーニ、そして俺の組み合わせで、次々と攻撃を開始する。


それに対するネウロイ側も、すぐさま、俺たちの存在に気付くと同時に、爆撃機型のネウロイは、次々とビームを連射して、俺達を攻撃し、周りにいた護衛戦闘機型のネウロイは、編隊を離れ、俺達の迎撃の為、俺達を目掛けて、ビームを乱射しつつ、飛んでくる。
「うおっ!?」
雨あられ如く、俺らに向かい飛んでくるネウロイのビームを前に思わず、情けない話だが、気が引ける俺。
地に足つけて戦っていたコマンドの頃は、頑丈な建物や岩陰、撃破された戦車等を始めとする遮蔽物に身を隠し、そう言う物がない場合では、地面の1ミリでも低い場所に隠れつつ、相手のスキを突くという戦いが出来たが、ここは空の上。隠れる場所なんて、どこにも無い。今までの戦闘経験との、ギャップに打ちのめされそうだ。
無論、原隊に居た時に、この種の訓練を受けていないわけではない。むしろ、俺を除いた|先輩方《姉御方》は、第1次ネウロイ対戦の戦場から、生きて帰ってきた百戦錬磨のプロである。そんな先輩方が行う実戦的な訓練や教育である、他のテストパイロットのウィッチがやっている物より、遥かに実戦的だ。
とはいえ、やはり訓練と実戦では、全くやることも、やられる事が違う!これに関しては、コマンドだった頃と同じ!!まぁ~、あれだな~!戦闘の本質って、何処でも変わんねぇ物だなぁーッ!!
なんて、心の中で絶叫しつつ、ネウロイが滅茶苦茶にぶっ放してくるビームの雨を潜り抜けいると、先行していた少佐とミーナ中佐が、1機の爆撃型ネウロイに狙いを定め、攻撃を開始する。
まず最初に、ミーナ中佐がMG42を乱射しつつ、ネウロイの懐に接近すると、後続する坂本少佐が、同様に99式2号2型改13mm機関銃を撃ちまくり、ネウロイのコアを露出させる。
「コアよ、美緒っ!!」
「任せろ!!」
コアを確認したミーナ中佐の声に答える様に、坂本少佐は、一気にネウロイとの間を詰めると、勢いそのままに扶桑刀を引き抜くなり、コア目掛け、接近する。
「うおおおおっ!!」
叫びながら、ネウロイに一撃を加えるべく接近を続ける少佐。
無論、ネウロイも少佐の接近&攻撃を許すわけもなく、爆撃機型のネウロイに急接近する少佐を護衛戦闘機型のネウロイが、撃墜しようと、頭を向けるが、それよりも先に……。
「させないわよっ!!」
という言葉と共に、護衛戦闘機型の前に立ちふさがると、間髪入れずにMG42のトリガーを引き、ネウロイを銃撃。
そのミーナ中佐の銃撃を浴びたネウロイは、コアを叩き割られ、破片をまき散らしつつ、砕け散る。
この光景に、坂本少佐は目をくれる事もなく、爆撃機型のネウロイのコアに接近するなり、振りかざした扶桑刀を一気に振り落とす!
「でやあぁぁーっ!!」
この少佐の叫びと共に、爆撃機型のネウロイのコアが真っ二つに斬れ、この攻撃で、コアを失ったネウロイは少し飛行した後、まるで銃撃を受けた戦闘機が火を噴きつつ、爆発し、海へと落ちていくかのように、砕け散っていく。
「1機撃墜!!」
「幸先、良いわね!」
その様子を見ながら、百戦錬磨を潜り抜けた、歴戦のウィッチらしく、軽口を呟きながら、ネウロイから距離を取る為に、離脱しようとする二人を逃さんとばかりに、3体の護衛戦闘機型のネウロイが二人に向かってくる。


その3体のネウロイは、ミーナ中佐と坂本少佐を狙って、次々とビームを撃ちまくり、二人を撃墜しようとするが、それよりも先に動く者がいた。
「ミーナ、援護する!行くぞ、ハルトマン!!」
「よーし、やっちゃうよ~♪」
ミーナ中佐、坂本少佐と共に、ここのベテランウィッチであり、百戦錬磨を潜り抜けたエースである、バルクホルンとハルトマンだ。
二人は、ミーナ中佐と坂本少佐と入れ違いざまに、向かってくる3体のネウロイと対峙すると、ネウロイ達が次々と放つ、ビームをよけつつ、真正面から接近して、ある程度、間合いを詰めた瞬間。
「今だっ!!」
「おりゃあっ!!」
二人は同時に手にしたMG42を乱射し、2機のネウロイを銃撃し、次々と銃弾を叩き込んで、返り討ちにする。
『GYAOOOOOOOOOOOO!!!』
残る1機のネウロイは、この世の物とは思えない金属音じみた甲高い唸り声をあげ、二人の下を潜る様にして、降下し、スピードを稼ぐと、一気に上昇しつつ、反転すると、下から二つの分身体を離脱させる。
本体から分離した分身体は、バルクホルンとハルトマンの二人を捉えるなり、急加速し、接近し、本体の方も再び二人を攻撃する体制に移行。
それを確認した二人は、この状況と対峙するネウロイが次に出る行動を素早く判断する。
「ハルトマン、分身体は自爆墳式型だ!シールドを頼む!!」
「オッケー!!」
そう二人は簡単に、やるべき事を確認すると、すかさず行動に移る。
まず最初に二人して、自爆攻撃の為に接近してくる分身体の1体を銃撃し、爆破し、撃墜する。
その爆炎の間を縫う様にして、もう1体の分身体が、二人に急接近し、その後方の本体も次々とビームを二人向けて撃ちまくる。
こんな最悪な状況下でも、二人は怯む事無く、次々と飛んでくるビームを避けつつ、次にやるべき事に移る。
「ハルトマン、前に着け!やるぞ!!」
「ほいさっ!!」
そう叫びつつ、出したバルクホルンの指示に従い、ハルトマンは、彼女の前に出ると、先程と同じ様にMG42を発砲し、残る分身体のネウロイに銃弾を浴びせ、装甲を削り、コアを露出させるなり、迷うことなく銃弾を叩き込み、コアを粉砕する。
『Giiiiiiiiiiiiiii!!!』
「っ!!」
ハルトマンにコアを叩き割られたネウロイは、先程のネウロイと同じ様に、この世のものとは思えない金属音じみた絶叫と共に、一瞬光ったかと思った次の瞬間には、凄まじい爆音と爆炎を挙げ、辺り一面に破片をまき散らしつつ、自爆する。
それよりも先に、ハルトマンはシールドを張り、次々と飛んでくる炎と破片を受けていると、分身体の後ろにいた本体がハルトマンを狙う。
だが、それよりも先に、ハルトマンの後ろにいたバルクホルンが動く。
彼女は、腹の底から吐き出す様な大声と共に、シールドを張っていたハルトマンの後ろから、飛び出すなり、自爆した分身体の爆炎と破片の雨の中を潜り抜け、一気に本体に接近するなり、彼女は手にしたMG42のストックを、振り上げる。
「うおおおおおおっ!!」
そして、全身全霊で叫びながら、振り上げたMG42のストックを全力で振り下ろし、ストックでネウロイの装甲を殴りつけ、装甲はおろか、ネウロイ本体をそのものを叩き折り、コアを粉砕する。
「うーわ、トゥルーデ。やる事、えげつなーい」
「戦闘にえげつないも、えげつなくないもあるか!!」
「はいはい!」
バルクホルンに本体を叩き折られた事で、空中分解しつつ、海へと落ちていくネウロイを見ながら、彼女を茶化す、ハルトマン。
そんな彼女に対し、バルクホルンは、頭に怒りマークを浮かべつつ、彼女を怒鳴りつけるが、ハルトマンには、どこ吹く風といった様子だ。
「ったく、気を抜くなよ!まだ戦闘は終わってないんだからなっ!!」
「りょーかいっ♪」
バルクホルンはそんな彼女に呆れつつも、開戦当初から、共に戦ってきた戦友として気を使いながら、次のネウロイへ、狙いを定め、攻撃を開始し、そんなバルクホルンにハルトマンも続く。


この様にベテラン勢が慣れた手つきで、ネウロイを次々と相手し、撃破する一方で、新人の俺は、まるで「溺れる者は藁をもつかむ」という言葉がピッタリな羽目に出くわしていた。
「くそっ、一体何が、どうなっている……って、うおおっ!?」
もう殆ど一方的に撃たれ、自分の命が危ない状況にある事は、十分に分かっている。
だが、ネウロイが自分から見て、何処にいるのか、おろか、そもそも自分が、上下どちらを向いて飛んでいるのかすら、まともに把握出来ない俺の脳は、もう既にオーバーヒート寸前……というか、殆どオーバーヒートしていた。
そんな俺の事なんぞ、お構い無しのネウロイは、俺を目掛けて、次々と撃ちまくってくる。
「クソッ!!」
これの状況に脳内がオーバーヒートを通り越して、爆発しそうな、俺はもう殆どヤケ気味で、ビームの飛んできた方向に、トンプソンの銃口を突き付けるなり、トリガーを引き、銃弾を撃ち込んでいく。
だが、まともに標的を狙ってすらない状態での射撃である為、ネウロイを撃墜するどころか、掠りもせず、マガジンの弾を全て吐き出し、弾切れを起こすだけだ。
「っ!!」
勿論、俺だって、愛銃のトンプソンが弾切れを起こすと、コマンドで学んだ技術を生かし、速やかに空になったマガジンを外し、新しいマガジンを装填しようとするが、それよりも先に、ネウロイのビームが、俺の顔面を目掛けて飛んでくる。
そのビームを間一髪で交わしつつ、俺は、左手で、素早くトンプソンを背中に回しつつ、同時に空いた右手で、腰のホルスターから、コルトガバメントを引き抜くなり、安全装置を外しつつ、スライドを引き、初弾をチャンバーへと送り込むなり、撃たれた方向目掛けて、3発程、ぶっ放した。
「畜生!!」
ぶっ放すと同時に、俺はそう呟きながら、また飛んでくるビームを必死にかわしつつ、腰に巻いていたベルトに差していた、もう一丁のコルトガバメントを左手で引き抜きつつ、片手でスライドを引くと二丁拳銃で撃ちまくっていた。
ネウロイとの戦闘の合間に、そんな俺の様子を見ていた、エイラはこう言い放つ。
「あいつ、大丈夫カ?」
「見た感じ、軽くパニック状態になってますね……」
「彼、本当に特殊部隊の人間でしたの?」
「でも、さっき凄いスピードでピストル取り出していたよ~」
「あぁ、見た感じ、1秒も掛かっていなかったぞ……」
エイラの指摘に、リーネとペリーヌが痛烈な評価を下す一方で、俺の武器を切り替える様子を見ていた、ルッキーニと流斬が感嘆の声を上げる。
そんな彼女達の声を聴きつつ、ネウロイとの戦闘の傍ら、俺の様子を見ていたシャーリーは「……はぁ」と一回ため息をつくと、心の中で、やる事を決めた様に「よし!」と呟くと、彼女達に向け、こう言い放つ。
「じゃあ、私はアイツと、ちょっと組んでくるから!ルッキーニ、ペリーヌ達と一緒にいろよ!!」
「えぇ~、シャーリー。行っちゃうの~?」
「大丈夫だ!アイツも連れて、ちゃーんと帰ってくるよ!!」
このシャーリーの発言に対し、ルッキーニが、まるで帰宅する祖父母を惜しむ孫の様な声を上げるが、当の本人は「ニカッ!」とした笑顔を浮かべつつ、ルッキーニの頭を撫でながら、彼女を諭すと、手にしたBARを今一度、握りしめなおし、俺の元へ向けて、飛行する。


一方で、当の俺は相変わらず滅茶苦茶な戦いをしていた。
「こんの!クソっ!!落ちろ!!!」
俺はネウロイを罵倒しながら、二丁拳銃で構えたコルトガバメントを、ビームの飛んでくる方向目掛け、しちゃかめっちゃかに撃ちまくる。
だが、そんな俺をあざ笑うかの様に、ネウロイは次々と接近してきては、俺に目掛け、ビームを撃ち、素早く離脱……という事を繰り返してくる。
「くそっ!!」
そんなネウロイの攻撃をかわしつつ、弾切れしたガバメントのマガジンを捨て、新しいマガジンをマガジンポーチから、引き抜き、装填しようとした時、1機のネウロイが、この隙をつき、懐に飛び込んでくる。
『BUOooo!!』
「!!」
ほぼ互いの顔(※ネウロイに顔があるかは不明だが……)が見える距離まで、接近された事に気付くと同時に、シールドを俺は張ろうとするが、それよりも先にネウロイがビームを放つ方が早く、俺の顔面目掛けて、ビームが飛んでくる!!
「っ!!」
咄嗟に顔を横にずらし、ビームの凄まじい熱量を感じつつ、顔面の横、役10㎝程のギリギリの距離でビームを躱す俺。

「ぐっ(我ながら、よーやるわ!!)!!)

コマンド時代及び、人体改造手術前の体では、決して出来なかった超荒業を咄嗟にやってのけた事に、自分自身で驚きつつ、リロードしたばかりの、コルトガバメントをネウロイ目掛けて、撃ちまくり、7発全弾撃ち込むが、ネウロイの走行を少し削るぐらいであり、対するネウロイは、まるでに「蚊にでも、かまれたのか?」と言わんばかりに、装甲を再生させながら、俺目掛けて、再びビームを撃ち込んでくる。
「っ!!」
今度こそ、避けられない距離であったが故、咄嗟にシールドを張り、ビームそのものが、体を貫く事こそ防げたが、着弾の衝撃を殺す事は出来ず、俺はまるで砲撃で吹き飛ばされるかの様に軽々と飛ばされていく。
「ぬおおおおっ!?」
コマンドだった頃にも、何度かネウロイの砲撃を受けて、吹き飛ばされた事こそあるが、その時は、重力に引かれ、地面に必ず落ちる……という着地点があった。
だが、今いるのは、空の上。俺の体を支えてくれるものなど何もない。つまり、自分で何とかしなければ、いけないわけだ!!
「こん畜生!!」
その事実を前に、俺はヤケクソ気味にP-80のジェットを吹かし、飛ばされた勢いを殺しながら、減速しつつ、体制を立て直そうとする。
だが、それよりも先に、先程のネウロイが「待ってました!」と言わんばかりに、俺を狙っている事に気付く。
そのネウロイとの距離は、先程よりも近く、撃てば確実に当たる距離だ。おまけに手持ちのガバメントは弾切れ……まさに俺は良いカモであった。

(クソっ、1発貰った!!)

この事を認識すると同時に、被弾を覚悟し、思わず目を瞑った瞬間だった。
「はーい!オタスケマン、参上ですよーっと!!」
……といった感じの戦闘中とは思えない程、気の抜けた声が聞こえたかと思った瞬間には、ネウロイに銃弾が叩き込まれ、砕け散っていく光景が目の前で繰り広げられた。
この突然の事に、何が起きたのか理解できず、思わず「は?」と呟く俺の肩にポンッ!と叩く感覚が走る。
「っ!?」
「うおおっ!!」
思わず咄嗟に叩かれた方に、コルトガバメントを突き付けると、そこにはBARを片手に、驚いた表情で、両手を挙げるシャーリーの姿があった。
「……お前か」
「そうだよ」
それを確認した俺が、息を軽く吐きつつ、銃を下すと、シャーリーは、少し呆れたような表情で、こう言い放つ。
「ったく、お前、一人で盛大にパニくってないか?」
「るせー!お前とは違って、航空歩兵としては、初の実戦なんだよ、こっちとらぁ!!パニックぐらいに、なるわ!!!バーロー!!!!」
……と俺のマシンガントークに対し、シャーリーが、どこか感心した様な口調で「お前さん。よー、此処まで、ベラベラと口が回るね」と呟く物だから、これに対して、思わず「るせーっ!!」と再び叫んだ瞬間だった。
再び、俺とシャーリーを狙って、別の個体のネウロイのビームが次々と飛んでくる。
「うおっ!?」
「こっちだ!!」
「ぶえっ!?」
この攻撃に対して、俺がガバメントを構えようとするよりも先に、シャーリーが、俺の首根っこを掴み、半場、引きずる様にして、この攻撃を回避する……っていうか、ガチで首しまってるんですけど!?
「あqwせdrftgyふじこlp;@::::::(※ちょ、お前!?首しまってるから、首しまってるって)!!!!!」
「ちょっと静かにしてくれよ!!」
「あwせdrftgyhじおk(※殺すきかっ!?っていうか、死ぬ、死ぬ、死ぬ)!!!」
そんな感じで、首が閉まって、窒息寸前の俺を容赦なく引っ張りながら、次々と飛んでくるビームを回避するシャーリー。
彼女は、俺が窒息死寸前である事など気にも留めない様子で、すぐさま、歴戦のウィッチらしい行動を取る。
「ルッキーニ、宮藤、悪いが新入教育するから、援護してくれ!!」
「うじゅーっ!!」
「わかりましたっ!!」
シャーリーは、相変わらず俺を引きずり回しながら、ルッキーニと宮藤に援護を要請。
この援護要請に答えるように、ルッキーニと宮藤が、俺を引きずり回しているシャーリーと入れ違いざまに、俺達を追尾してくるネウロイと対峙し、戦闘を開始しする。


その様子を横目で見つつ、俺を一通り、引きずりまわしたシャーリーは、一応、安全な所までやってくると、俺の首根っこをつかんでいた手を緩めつつ、こう言い放つ。
「生きてる?」
「本気で死を覚悟したわ!!」
「えー、今、生きてるから問題ないじゃん?」
「そういう問題か!?」
といった感じで、頭に怒りマークを浮かべつつ、キレている俺の言葉を、シャーリーは「アー、ハイハイ。ソウデスネー」と、エイラの様な口調でながしつつ、こう告げる。
「とりあえず、リロードしたら?」
「あっ?あぁ……」
そうシャーリーに指摘され、俺はここで、自分の持っている銃器の弾丸を全て撃ち切っている事を思い出し、素早くトンプソン、ガバメントのカラになったマガジンを外し、新しいマガジンを、マガジンポーチから取り出すなり、素早く叩き込み、弾丸を再装填する中、シャーリーも同じように、BARのマガジンを交換し、次の戦闘に備える。
こうして、二人して、銃器のマガジンを再装填した後、シャーリーは、こう聞いてくる。
「終わった?」
「あぁ」
「よぉーし……じゃあ、航空歩兵としてのイロハを教えてやるから、私に付いてきてな!」
「……お前にか?」
「良いから、良いから♪」
俺の問いに、まともな答えを返さないまま、もう殆どノリと勢いだけで、答える様なシャーリーに対して、思わず絶句する俺。
まぁ、一応、航空歩兵としては、こいつの方が先輩なのは、重々承知しているけど、仲間の首根っこ掴んで、引きずりまわすような奴だぞ……。
俺もコマンドだった頃に、負傷した友軍を回収する際に、似た様なことやったけど、その場合でも、肩部分を掴んでいたし、間違っても首根っこは掴まなかったぞ……。

ホントに、お前について行って、大丈夫なのか?

そんな考えが胸の内を駆け巡る中、シャーリーは、一回息を深く吸うと「うっし!」と覚悟を決めた様に呟くと、続けざまにこう言い放つ。
「始めるぞ!ウィーラー、アタシのケツ見て、付いてい来いよ!!」
そう言いながら、BARを握りしめつつ、再びネウロイを目掛けて、飛行していくシャーリー。
シャーリーの後姿を見つつ、俺は「……はぁ」と一回息を深く吐き出すと、己に言い聞かせるように「よし!」と呟く。
まぁ、そりゃ彼女に対して、言いたいことはある……だが、今は戦闘中だ。戦闘が終わり次第、全部言ってやるさ!!
心の中で、自分に言い聞かせ、彼女への信頼を捧げた俺は、彼女の後に続く様に、飛行していく。


そんな俺とシャーリーを狙い、撃ち落す為、次々とネウロイ達のビームが飛んでくる。
「うおおっと!?」
「大丈夫!この程度、掠りもしない!!付いてきな!!!」
相変わらず大量に飛んでくるビームの中、怯みせず先行するシャーリーに付いていく様にして、俺は、このビームの暴風雨の中を飛行していた。
この間にも、相変わらず次々とビームが飛んでくるが、先程とは、違い先輩にあたるシャーリーが先行してくれている為か、だいぶ楽な気がする!
胸の家で、そんな感情を抱えながら、俺は必死に、周囲の状況を確認しつつ、シャーリーの指示に耳を傾ける。
「ウィーラー!次が来るぞ!!あたしの合図で、右に回避しろ!!」
「お前が言っているのは、2時方向の奴の事か!?」
「そう!すれ違いざまに、攻撃するよ!!」
俺の言葉に頷きつつ、BARを握りしめるシャーリーの視線の先にいるネウロイに俺も視線をやると、そこに居たのは、一見すると中型爆撃機サイズのネウロイだ。
彼女が狙う獲物が、自分の予想を超えた大物であることに、思わず気が引ける俺。
「マジかよ……!?」
と困惑と緊張の混じった声で出る、俺のボヤキに対して、シャーリーは「ハッ!」と鼻にかけた様な声で、こう言ってくる。
「大丈夫だって!コツさえつかめば、楽なもんだぞ!!」
「つーた所で、中型爆撃機サイズはあるぞ!?二人だけで、やれる物なのか!?」
「なーに!逆に考えろ!!的がデカいんだから、テキトーに撃っても当たるんだから、楽勝だって!!!」
「そんな問題!?」
戦い慣れたベテランウィッチとして、余裕を見せるシャーリーに対して、思わず突っ込みを入れる俺。
何度も言うが、俺はコマンド隊員からの転職組であり、航空歩兵としての基本的なイロハ以外は、何も知らないが故、事ある度にアタフタ状態だ。
そんな俺に対して、シャーリーは俺を引っ張る様に……というか、引きずり回す様な感じで、「ニカッ!」と笑みを浮かべ。
「大丈夫、大丈夫!やれば、案外何とかなるもんだって!!そんじゃ、行くぞーっ!!!」
「あぁ、もうヤケクソじゃあーっ!!」
と、満面の笑みを浮かべつつ、ネウロイに突っ込んでいくシャーリーに続きつつ、絶叫する俺。

あぁ……今なら、死んだ母さんが、ヤクに溺れた理由がなんかわかる気がする……。いや、俺は、やらないよ。

とまぁ、ふと俺の脳内に残る数少ない死んだ母さんの記憶が脳内を過る程、溢れるドーパミンを感じつつ、俺はシャーリーと共に戦闘に突入する。


そんな感じで、脳みそが爆発しそうな程、沸騰している俺を完璧に置いてけぼりにしつつ、俺達と対峙するネウロイは、有無を言わせないかの様に、ビームを次々と撃ちこんでくる。
「っ!!」
俺とシャーリーに向け、次々と降り注ぐ、ビームの熱さを感じつつ、シャーリーの後に続く様にして、ビームの雨を潜り抜ける。
そんな感じで、シャーリーと共に、ある程度、ネウロイとの距離を詰めると、シャーリーが声を張り上げて、叫んだ。
「ウィーラー!右だっ!!」
「っ!!」
そう叫びつつ、右に勢い良く回避機動を取り、それに俺も続く様にして、回避機動を取る。
この間にも、ネウロイは、俺とシャーリーを撃ち落とさんとばかりに、次々にビームを撃ちまくってくる中、俺とシャーリーは、それを回避しつつ、ネウロイの横を通り過ぎると同時に、シャーリーが、叫んだ。
「今だっ、撃てっ!!」
シャーリーは、そう叫びつつ、振り返りざまに、ネウロイにBARの銃口を向け、トリガーを引き、発砲する。
瞬間、.30-06スプリングフィールド弾の銃声が鳴り響くと同時に、勢いよく銃弾が、銃口から飛び出し、ネウロイの装甲を目掛けて、飛んでいき、着弾すると同時に、ネウロイの装甲を抉っていく。
その様子を見ながら、俺も、彼女と同様に、トンプソンM1A1をネウロイに向けて、構え、トリガーを引き、銃撃を加え、ネウロイの装甲に銃弾を叩き込んでいく。
同時に、トンプソンM1A1の右側に付いているコッキングハンドルが、勢い良く前後し、エジェクション・ポートから、発砲した.45ACP弾の薬莢を勢いよく吐き出していく。
こうして、俺とシャーリーによって、銃撃を加えられたネウロイは、装甲を飛び散らしながらも、果敢にビームを撃ち返してくるが、俺とシャーリーは、それを回避しつつ、更なる攻撃を加えていく。
「これでっ!!」
「なぁ、コレ、使っていいのか!?」
先程と同じ様に、BARによる射撃を続けるシャーリーの傍で、俺はトンプソン片手に、グレネードポーチに入れていたMK.2手りゅう弾を取り出し、彼女に使用の有無を問う。
この俺の問いに対し、シャーリーは「おぉ!」と言わんばかりの表情で、こう返す。
「良いねぇ~!ド派手にやろうや!!」
「それじゃ、遠慮なく吹っ飛ばすぞ!!」
シャーリーの言葉に、俺は呟きながら、手りゅう弾の安全ピンを、歯で齧ると、勢いよく引き抜きつつ、抑えていた安全レバーから、指を話す。
瞬間、ピンッ!という音と共に、抑えられていたバネが、安全ピンを歯ね飛ばし、信管を作動させる。
「Flag out!」
それを確認した俺は、咥えていた安全ピンを吐き出し、叫びつつ、手りゅう弾をネウロイに向かって、投げつける。
『GIAAAAAAAAAA!!』
そうして、対峙するネウロイが、己に向かって、手りゅう弾が投げつけられた事に気付き、悲鳴の様な、金切り声を上げた次の瞬間には、手りゅう弾が炸裂し、凄まじい爆音と爆炎を挙げつつ、破片と衝撃波をまき散らしていく。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
これによって、コアもろとも、本体を切り刻まれたネウロイは、この世の物とは思えない断末魔の様な叫びと共に、白い破片となり、散っていった。
思わず、その光景を目の当たりにして、思わず、ポカンとなる俺に対して、シャーリーが、俺の肩をポンッ!と叩きながら、こう言ってくる。
「やったじゃないか、ウィーラー!」
「………」
このシャーリーの言葉に、嬉しいような、呆気ない様な、何とも言えない複雑な感情が湧いてくる中、シャーリーは、三度、ニカッ!とした笑顔で、こう言い放つ。
「航空歩兵としての初戦火だ!おめでとう!!」
「……お、おうっ!!」
俺に向けられたシャーリーの笑顔を前にして、やっとここで、俺が航空歩兵としての初戦火を挙げた事の実感が湧いてくると同時に、俺の中で、自信というのが、芽生えるのが分かった。

(なるほどな……)

とりあえず何て言ったら良いか、分からない妙な自信と満足感に、胸の内が満たされるのを感じつつ、トンプソンM1A1のマガジンを交換していると、シャーリーは、先程の笑顔で、こう続けた。
「んじゃ、この調子で残りもやっちゃいますか!!」
「……あぁ、行くぞ!!」
シャーリーの言葉を受け、俺も何処となく笑顔になりつつ、同意すると、俺とシャーリーは次の獲物を狙っていくのだった。