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超カオス 戦車捜索!!

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こうして新たに始まった戦車道だが、俺達の前にある戦車はこのボロボロの4号戦車D型が1台だけである。
うーん・・・・・・、いくら何でも1台だけって言うのは学校の授業でやる戦車道としては無理がありすぎるよなぁ・・・・・・、無いよりは1万倍マシだけど。
そう思いつつ、ボロボロの4号戦車を見つめていると佐織が少なからずガッカリしたような声でこう言い放つ。
「こんなボロボロの戦車で何とかなるの?」
「たぶん・・・・・・」
佐織の問いかけにみほが少しビクビクした様な声で返事を返すと、佐織は一回息を吸ってこう言葉を続けた。
「戦車と男は新しい方が良いって言うじゃない?」
「それを言ったら「女房と畳・・・・・」では・・・・・・」
「どっちも同じ様な物よ」
「「違うがな」」
華の指摘に対して、佐織が返した発言に前と同じように俺と裕也が共に揃って間髪入れること無く突っ込みを入れる。
ホント・・・・・・、こいつ(佐織)の恋愛乙女脳は末期すぎるぜ・・・・・・、どうしたらそこまで地球上の物事を恋愛に絡みつける事が出来るんだ?
あー・・・・・・、それとも何だ?早いうちに恋人を見つけないと、親同士が勝手に決めた許嫁として嫁に送られるのか?
自由憲法の真っ盛りの現代でも階級が高い家ではよーくあることらしいからな・・・・・・。
っていうか、お前(佐織)の実家ってそんなに階級の高い、お偉いさんの家だったけ?
まぁ・・・・・・、グダグダ長い事を言っている身ながらさ、本音ぶっちゃけるさせてもうと・・・・・・、俺にはお前の家庭事情なんてどうでも良いけどね・・・・・・。


佐織の発言を聞いて、頭の中でこんな考えを巡らせている側で野球部の部長並びにピッチャーを務める牧俊介(まきしゅんすけ)が被っていた野球帽を取り、頭をかきつつこうぼやいた。
「っていうか・・・・・・、戦車はこの一台だけ・・・・・・?」
「だとしたら・・・・・・、初っぱなから本末転倒すぎるな・・・・・・」
牧の言葉に続くように野球部の副キャプテン兼セカンドを担当する風間翔一(かざましょういち)が牧の言葉を肯定するようにぼやく。
そのぼやきを聞きつつ、小山先輩が手持ちのファイルを片手に俺達の人数を数えながらこう言い放つ。
「えーっと・・・・・・、この人数だと・・・・・・」
「全部で7台必要です」
つまり、ココにある4号を1として”7-1=6”。要は残り6台って事になる訳だよな・・・・・・。
小山先輩に続くように発言した河島先輩の言葉を聞きつつ、ふと4号を見てそう思っていた時だった。
小山先輩と河島先輩の側で腕を組みつつ、「ふーん・・・・・・」と言っていた会長が”とんでもない爆弾発言”をぶちかます。
「んじゃあ、みんなで戦車探そっか~」
はい・・・・・・?
会長の発言を聞いて、倉庫内に居る全生徒が一斉にざわめく。
そりゃ当然と言ったら当然だろう・・・・・・、「んじゃあ、みんなで戦車探そっか~」って、言われたらな・・・・・・。
つーか、どういうことですか?もしかして・・・・・・、ココにある4号以外は”みんな行方不明”と言う事ですか、会長?
そんな考えが俺の頭の中を物凄いスピードで過ぎる中、ざわめく生徒達の一人にして後輩の山郷が会長に問いかける。
「探すってどういうことですか?」
「我が校は過去20年前に戦車道を廃止している。しかし、過去に使用していた戦車があると思われる。いや、必ずある」
河島先輩・・・・・・、何という期待論・・・・・・、それだけ言っといて、探すだけ探して無かったらフルボッコになりますよ?
いや、流石にフルボッコは無いか・・・・・・。


そう思いながら、みほと裕也達と共に河島先輩の言葉に耳を傾けていると河島先輩は一回息を吸った後、こう言葉を続ける。
「明後日、自衛隊より戦車道の教官がおいでになる。それまでに各自、戦車を見つけ出すのだ」
「して、それは一体何処に?」
河島先輩の言葉を受けて、歴女チームのローマ史担当(?)のカエサルが河島先輩に問いかける。
カエサルの言う通りだ。何の予想もなしに戦車を探すなんて真っ暗闇の中で縫い物針に糸を通すような無茶苦茶な作業といえるしな。
ふとそう思いながら、会長の方に顔を向けると会長はざっくりばらんとした笑顔で「いやぁ~」と言ったかと思ったら、またまたとんでも無い爆弾発言をぶちかます。
「それが無いんだよねぇ・・・・・・」
とんでも無い爆弾発言を前に一年の澤が会長に問いかける。
「何の手がかりも無いんですか?」
「ない!!」
会長は”無駄に良い笑顔”で澤の質問に間髪入れずにそう返した。
っていうか・・・・・・、オイ・・・・・・、オイ・・・・・・、会長・・・・・・、いくら何でも”一寸先は闇”過ぎやしませんかねぇ?
戦車の居場所が分からない中古で購入するとか、リースしてくるとか色々あったと思うのですよ。
それもなしに戦車道を始まる予定だったんですかい・・・・・・、生徒会は・・・・・・。
会長の発言を聞いて、呆れ混じりに途方に暮れる俺の側で再び「「「えぇぇ~!!」」」と困惑の声が上がる。
だよなー・・・・・・、当然だよなー・・・・・・、お先真っ暗や見過ぎる物ね・・・・・・、始まって15分足らずでマジで心配になってくるんだけど・・・・・・、マジで大丈夫か、この戦車道?
そんな感じで胸の内で軽く絶望すら感じている俺にかまうこと無く、河島先輩がこう言い放つ。
「それでは捜索開始!!」
「がんばってねぇ~」
人数分の戦車なし、だから探してこい・・・・・・、あー、何も言えねぇー・・・・・・、ココまで来ると・・・・・・。


河島先輩の捜索開始の合図を聞きつつ、軽く絶望していると後ろから「「はぁー・・・・・・」」と男女の溜め息が聞こえてくる。
お、何だ?俺と同様にお先真っ暗なこの戦車道の現状に嘆く奴が他にも居るのか?
そう思いながら、溜め息の聞こえてきた後ろに振り返って溜め息の主達を見るとその主達は葵と佐織であった。
なるほど・・・・・・、さっきの溜め息は俺とは違うベクトルなんだな・・・・・・、だって”恋愛脳コンビ”だものね・・・・・・。
そう思いながら、佐織と葵に視線を向けると当の本人達は再び深い溜め息を付く。
「はぁー・・・・・・、なんか思っていた物と違うんだけど・・・・・・」
「ホント・・・・・・、戦車道やるとモテるって聞いたんだけど・・・・・・」
「お前らは、何を狙っていたんだ・・・・・・」
落胆にくれる佐織と葵に対して、裕也が呆れ混じれに突っ込みを入れる。
だよな・・・・・・、本当にこの二人は何を目的として戦車道を履修したんだろう・・・・・・、謎すぎる・・・・・・。
そう思いつつ、後ろに薄暗いオーラを漂わせる2人を見つめていると会長がやって来てこう言い放つ。
「明後日、”かっこいい教官”来るんだよ?」
「えっ!?」
「なにっ!?」
会長の言った『格好いい教官』と言うワードに2人の目の色が変わる。
本当に単純だな・・・・・・、お前ら・・・・・・。
こう言った物って基本的にどうせろくな物じゃないって言うのに・・・・・・、特に佐織・・・・・・、お前いつか詐欺に遭うぞ・・・・・・。
そう呆れ混じりに葵と佐織を見つめていると、当の2人はすっかり上機嫌になってこう言い放つ。
「うふふっ!!、いってきまーす!!」
「同様に葵、いきまーす!!」
ガ○ダムかよ、ア○ロかよ、往年の名台詞「ア○ロいきまーす!!」かよ。


ちなみに豆知識だけどさ、ガ○ダム(※今回は”ファースト”の事を指す)って全部で30話あるけど”「ア○ロいきまーす!!」は一回しか言っていない”んだってさ。
後のゲームやイベントなんかで「ア○ロいきまーす!!」が多用されたから、”ガ○ダムの出撃=「ア○ロいきまーす!!」”って形になったらしいぜ。


葵の言葉に対して、そう思う俺の側で佐織と葵は勢い良く戦車を探しに行く。
そんな2人の背中を見て、裕也が少なからず呆れ混じりにこう言い放つ。
「あいつらは何時でも平常運転だな・・・・・・、平和というか・・・・・・」
「平和なのは良いことだよ」
頭を押さえながらぼやく裕也に対して、木場がこれまた平和そうに言葉を返すのを聞きつつ、俺はみほと裕也達に向けてこう言う。
「とりあえず、俺達も探しに行くぞ」
「うん」
「あぁ」
「そうですね」
「オッケー」
「お、おい!!俺を置いていくな-!!」
そう言って俺のを言葉を受けたみほ、裕也、華、木場達が俺と一緒に戦車に向かうのを見て4号を見つめていた、玄田も慌てて付いてくるのであった・・・・・・。





……

………



んで、戦車捜索に出発した俺達だが・・・・・・。
「どこにあるって言うのよー!?」
この佐織の言う通り、途方もない捜索を繰り広げていた。
本当に手掛かりは愚か、戦車のせの字すら見つからない状況だからな・・・・・・、見つけたほうが逆におかしいくらいだぜ。
そう思いながら、駐車場で絶叫する沙織と見ながら華の突っ込みを聞いていた時であった。
(ん・・・・・・?なんか人の視線を・・・・・・)
俺はふと背後から視線を感じる・・・・・・、ストーカーされるようなこと俺したっけ?
そう思いながら、俺は側にいるみほに話しかける。
「・・・・・・みほ、何か視線を感じないか?
「龍君も気づいていた・・・・・・?」
「え、お前もか?」
「・・・・・・うん」
みほにまで向けられているのか?この謎の視線は・・・・・・、一体誰が?
そう思いながら、ふと視線の向けられている方向に顔を向けるとそこにはモジャモジャ頭で第1印象が”犬”の女子が、木の陰に隠れながら俺達の様子を伺っている様子だった。
なんだアイツ?用があるなら、話しかければいいと思うんだがな・・・・・・。
そう思いながら、その女子を見つめていると沙織が深く溜め息をつき、こう言い放つ。
「はぁ・・・・・、じゃぁ・・・・・・、あっちの方を探してみよう。何とかを木を隠すには林って言うしね」
「それは森かと・・・・・・」
「はいはい・・・・・・」
そう言って華の突っ込みを受け流しつつ、佐織と華が森のほうへと足を向けるのを見て裕也、玄田達も同様に森へと自分の足を向けていく。
これに俺とみほも続くように足を向けると、同時に俺とみほに向けられていた視線も付いて来る。
いや、マジでなんなんだろう・・・・・・、あの犬系女子・・・・・・。


そう思いつつ、俺は再び側にいるみほに話しかける。
「なぁ、みほ・・・・・・あの女子・・・・・・、話しかけるか?」
「・・・・・・そうだね。このままだと埒が明かないしね・・・・・・」
しばらくみほは黙り込んだ後、俺にそう言葉を返した。
っていうか、みほの言うとおりだこのままずーっと視線を感じつつ、戦車を探していても埒が明かないしな・・・・・・、よし・・・・・・、話しかけるか。
そう胸の内で思った俺はみほに向けて、こう問いかける。
「よし・・・・・・、それで・・・・・・、俺から話しかけるか?」
「・・・・・・うん。お願い・・・・・・」
みほは軽く女子の方を一回見た後、一言俺にそう言って女子に話しかけることを託す。
やっぱり・・・・・・、みほの性格から見て難しい所があるんだろう・・・・・・。
そう胸の内で思いつつ、俺は1回深い溜め息をつくと先ほどからついてきている女子に向けてこう言い放つ。
「おい、お前」
「は、はいぃっ!!」
「なんか用があるのか?」
俺にそう声をかけられた女子は隠れていた木の陰から出て、もじもじとしながらこう言葉を返した。
「あ、あのですねぇ・・・・・・、あなた達が戦車を探すのに・・・・・・」
「ついて行こうとしていたのか?」
「・・・・・・はい」
うーん・・・・・・、こいつも少なからずみほと似たタイプなんだな・・・・・・、控えめでコミュニケーションが苦手・・・・・・。
決定的な違いは・・・・・・、俺のような幼馴染などがいない所あたりか・・・・・・。


そんな哀れみにも近い感情が胸のそこから湧き上がる中、俺はみほに対してこの女子を戦車捜索のメンバーに加えるかを問う。
「んで、どうする?メンバーに加えるか?」
「・・・・・・そうだね」
こんな感じで俺とみほがどうするべきかを考える側で先を行っていた裕也、佐織達が俺とみほの様子を見て軽くざわついている。
ざわついてるんだったら、合流して話し合いに加わってくれんかね・・・・・・。
胸の内でそう思いつつ、俺とみほの様子を伺う裕也と沙織達の様子を見ている側でみほが覚悟を決めたように一回息を吸うと付いて来ていた女子に向けてこう言い放つ。
「あの一緒に戦車探しませんか?」
「い、良いんですか!?」
「良いんです!!」
「テンプレートなギャグやめろ、葵」
まったくこのアホ葵は・・・・・・、純度100パーセントの猛毒馬鹿の玄田とは違って、無駄に高度な技術でタイミングとか判断してボケをぶち込んできやがる・・・・・・。
葵に突っ込みを返しつつ、そう胸の内で深く溜め息をつく俺の側でみほに「戦車を一緒に探そう」といわれた女子は目をキラキラさせて自己紹介を始める。
「あ、あの・・・・・・、2年B組、秋山優花里と申します。不束者ですが、よろしくお願いします!!」
「こちらこそ。2年A組の五十鈴華と申します」
「竹部沙織!!」
「2年A組の神崎裕也だ。よろしく頼む」
「2年B組の木場正純です。よろしくお願いします」
「よろしく頼むぜ。玄田浩二だ」
「2年B組の葵直正。よろしくー」
「私は・・・・・・」
「存じ上げております。西住みほ殿ですね」
そう言って裕也と沙織達が秋山と同じように自己紹介を交わすのを見て、みほも続くように自己紹介をしようとした時、秋山がみほの言葉を遮ると本人に代わってみほの名前を述べた。
はぁ・・・・・・、西住流の名は一般に知れ渡っていても可笑しくないのだが、関係者以外でみほの名前を知っている人が居るなんて・・・・・・、ちょっと驚きだな・・・・・・。
秋山の言葉を聞いて、そう感慨深くみほを見つめていると秋山は今度は俺に顔を向けてこう言い放つ。
「それと西住みほ殿の隣に居るのは喜田川龍殿ですよね」
「へ?」
え、俺の名前ってそんなに知られる程、有名だったっけ?
天下無敵の西住流の血を引くみほは名前が知られていても当然だ。
俺の関係者で名が世に知られている人といえば、福岡で自衛隊の機甲部隊最高司令官を務める親父ぐらいだ。
今では福岡に新設された機甲師団の最高司令官を務める親父は、俺が生まれる前の1976年に発生した”ベレンコ中尉亡命事件”の際、ソ連が軍事機密流失を防ぐ為に亡命を求めて北海道の函館空港に着陸した当時最新鋭の戦闘機だったソ連のミグ25戦闘機の破壊とそのパイロットだったベレンコ中尉を殺害する為にソ連の特殊部隊が軍事侵攻すると言った情報が流れた為、それに備えて自衛隊の特殊部隊と共に61式戦車で函館空港に突入する任務を帯びていたらしい。
まぁ、その後もたーまにニュースやミリタリー雑誌の特集とかで名前が出ることがあるが・・・・・・、息子の俺にはそういった心当たりは一切ないんだがな・・・・・・。
そんな疑惑が巻き起こる中、その疑問を解くように秋山はこう言い放つのだった。
「喜田川殿は4年前に行われた戦車道九州大会の決勝戦でM24チャーフィーで対戦校のパンターを撃破したじゃないですか。あのときの中継を自分は見ていたんですよ!!」
「あぁ・・・・・・、そりゃ光栄で・・・・・・」
秋山にそう言葉を返しつつ、俺は思い出しつつ感慨にふかる。


あれは確かに・・・・・・、俺の今まで生きてきた人生の中で唯一のテレビ出演&ヒーローインタビューを受けた出来事だったしな・・・・・・。
そう秋山の言うとおり、俺は4年前の中学2年生の時に在校していた中学の戦車道チームにてM24チャーフィーの戦車長を務めていた。
軽戦車としては初めて大火力の75ミリ砲を搭載したチャーフィーは機動力を始めとして、全体的にバランスの取れた名戦車だ。
しかし、軽戦車ゆえの装甲の薄さから敵戦車と真正面からドンパチ撃ち合うのは到底不利な話である。
それ故に俺の搭乗するチャーフィーは基本的に偵察戦車として機動力を生かした偵察活動ならびに前線の情報収集を基本任務としていた。
んで、秋山の言っていた戦車道九州大会の決勝戦では何時もの様に前線を走り回って敵の情報を集めていたら偶然にも待ちつぶせしていた対戦校のパンターと偶然にも遭遇。
ペリスコープ越しにパンターのケツを見た俺は驚く間も無く・・・・・・、というか殆ど条件反射的に砲主に砲撃を指示。
瞬間、75ミリ砲の砲声がチャーフィー内部に鳴り響くと同時に相手のパンターは一瞬にして燃え上がった・・・・・・。
とまぁ、ドキュメンタリー風味に語らせてもらったが、秋山の言ってることはこれで以上だ。
そんで、これがテレビ放映させていて当時中学生だった秋山が見ていたということか・・・・・・、納得だな。
まぁ・・・・・・、軽戦車で中戦車を撃破するなんて滅多に出来ないことだしな・・・・・・、印所に残っていてもおかしくは無い。
それでも、試合終了後に一斉にインタビューがヒーローインタビューでやってきた時は本気で驚いたなぁー・・・・・・。
そんな感じで過去の栄光(?)にふけっている側で当の秋山本人は敬礼しながら、こう言い放つ。
「では、よろしくお願いします!!」
とまぁ、こんな感じで一礼した秋山を加え、俺達は再び戦車の捜索に乗り出すのであった・・・・・・。





……

………



秋山を加えて、再び戦車の捜索を再開した俺、裕也、玄田、木場、葵の5人はみほ達と別れて戦車を捜索していた。
「おーい、木場。そっちはどうだ?」
「いやぁー・・・・・・、さっぱりだね・・・・・・」
蛇除けを兼ねて藪を木の棒で探っていた木場に裕也が問いかけるが、木場は藪を突きながら戦車が無いことを報告する。
その報告を聞いた瞬間、玄田が渋柿でも齧ったかのような渋い顔で苦言をもらした。
「ちっ・・・・・・、これじゃ西住達と一緒のほうがよかったんじゃねぇのか?」
「その後、一時間以上探して見つからなかったんだろ?所詮、同じさ」
「だけどよぉ・・・・・・」
玄田の苦言に葵が無駄に的確に返すと玄田は再び苦虫をかんだような顔をする。
まぁ・・・・・・、玄田と葵の言い分もわからないことも無い状況だけどな・・・・・・。
一応、みほ達と別れる前にチェコスロバキア製の軽戦車”38t”を見つけている。
まぁ・・・・・・、捜索開始して約45分にて見つかった戦車が38tとは少なからずガッカリだが・・・・・・、よしとしよう。
そんで更に一緒に探すこと一時間で結果が坊主だったから、分かれて探すことになって、今に至るわけだ・・・・・・。
マジで戦車があるんだよ・・・・・・、ひょっとしたら4号と38tの2台だけか・・・・・・?
うーん・・・・・・、その可能性がありえるだけにシャレにならないな・・・・・・、マジで・・・・・・。


そう思いつつ、再び藪の中を掻き分けて進んでいた時だった。
制服のズボンに入れていた携帯が着信音を立てて、着信を知らせる。
何だ、他の班が戦車を見つけたって言うのか?
そう思いながら、携帯を手に取り画面をパカッという音と共に開くと「新着メール1件」と言う文字が表示されており、半場それに従う形でメールボックスを開く。
すると、そこには「野球部が船舶科の重機駐車場にて、ラム巡航戦車を発見」と言う戦車発見の報告があった。
っていうか、そこはは俺達も捜索していた場所なんだけど・・・・・・。
自分達も探していて、見つからなかった場所に戦車があったなんて・・・・・・、どういことだよ!?
複雑な感情が巻き起こる中、同じように携帯メールを確認していた裕也達も各自ボヤキを述べる。
「あちゃー・・・・・・、崖っぷち野球軍の連中に先を越されるとは・・・・・・」
「”アパッチ野球軍(1970年代にあった野球漫画ならびに映画)”みたいに言うな、葵」
そういって無駄にコアな印象を受ける会話を交わす葵と裕也の側では玄田が不満げな表情でこう言い放つ。
「何だよ、何だよ、俺達が探したときには無かったって言うのに野球部の連中が探した瞬間、見つかるなんてよぉー・・・・・・」
「そう言ったって仕方ないだろ、玄田。その戦車と僕達は縁が無かったんだよ」
ぼやく玄田をイケメンキャラらしく、クールに宥める木場。
あー・・・・・・、何となく佐織を筆頭とする”恋する乙女”のハートを次々に射止める理由がわかる気が・・・・・・する?
「はぁ・・・・・・」
そう思いつつ、俺は一回酸素不足になった脳に酸素を補給する様な形で深く一回溜め息をつくと、各自の考えをぼやく裕也達に向けてこう言い放つ。
「んで、次はどこを捜索するか?」
「そうだなぁ・・・・・・、ココにはもう戦車は無いと見ていいだろうしな・・・・・・」
「はぁ・・・・・・、もうやってらんねぇぜ・・・・・・」
そう言った俺に提案に対して、裕也と玄田がそう言葉を返す。
「ちょっと意見良いかな?」
「何だ木場?」
すると、近くの石に腰掛けていた木場がそう言うと続けざまにこう提案する。
「今度は川上のほうを探してみない?そっちは今のところ、誰も手をつけてなかったと思うけど・・・・・・」
「あー、なるほどね。それは思いつかなかったわ」
木場の提案に対して、葵が頷く。
確かにずっと森の中を捜索していたけど、ココは川下の地区で木場の言うとおり川上の方は一切手をつけてなかった。
捜索してみる価値はありそうだな・・・・・・、それでも無い可能性も否定できないが・・・・・・、やらないよりはマシか。
そう胸のうちで思った俺は裕也達に向けて、こう言い放つ。
「よし・・・・・・、川上の方を探してみるか」
「あぁ、そうだな」
「で、方向は?」
「たぶん、こっちだったな・・・・・・」
俺の言葉に反応して、裕也が頷く側で玄田が川の方向を問いかけると、どうやら方向を知っている葵が先行する。
そんな葵に対して、俺達はついていく形で川上へと向かうのだった・・・・・・。





……

………



それから数分後、川上にやってきた俺達は川のせせらぎを聞きつつ戦車を捜索していた。
いやぁー・・・・・・、人が数々作ってきた人工物の中でもトップクラスともいえる学園艦にこんな自然豊かな場所があったとは・・・・・・。
ふと、心なしかも知れないが空気が学校や寮の周りよりおいしい気がする。
うん、地球環境保護が叫ばれる現代にとって必要とされるであろう良い事だ。
だけど・・・・・・、肝心な戦車が見つからないんだよねぇー・・・・・・、これはよくないねぇー・・・・・・、うん・・・・・・。
「はぁぁぁっー・・・・・・」
そう胸のうちで思いつつ、思わずおいしい空気を全部肺から吐き出しかねない程の深い溜め息を俺はつく。
そんな俺を見ながら、俺と同様にお手上げ状態の裕也も近くの岩に腰掛けながらこう言い放つ。
「ここもスカと見て良いかもな・・・・・・」
「一時間探しても見つからないしね・・・・・・」
「提案したお前が言うなや」
裕也の言葉を受けて、木場が続くようにぼやいたことを受けて玄田が恨み混じりの声で間髪居れずに突っ込む。
まぁ、恨み節を言いたくなる玄田の気持ちもよーく分かる状況だよな・・・・・・。
「あははは・・・・・・・」
木場の苦笑いを聞きつつ、そう胸の内で思いながらふと周りを見渡してみると川の前で仁王立ちする葵の姿が目に入る。
何をやっているんだ、あの葵は?なんか戦車らしい物でも見つけたのかね?
そう思いながら、俺は立ち上がると当の本人に話しかける。
「おい、何か見つけたのか?」
「いやぁ、残念ながらそうじゃない。だけど、”ある考え”が思いついた?」
「ある考え?」
どーせお前の考える事なんて10割10部ロクな事じゃないだろ・・・・・・、一応聞いてやるけどさ・・・・・・。


そんな言葉が胸のうちを過ぎる中、一応は話を聞くことにした俺は葵にその考えとやらを聞いてみる。
「考えって何だよ?」
「いや、ちょっと川上の方まで泳いで探してくるわ」
「バーカ!!いろんな意味でバーカ!!」
本当にロクな考えじゃ無かったぜ・・・・・・、この馬鹿は・・・・・・。つーか、心なしか偏頭痛がする・・・・・・。
だけど何でコイツが学年2番目の成績優秀者なんだろう・・・・・・、世界の仕組みが分からなくなってきた・・・・・・。
そんな感じで偏頭痛が起こる頭を抑えながら、考えていると葵は無駄に決まっているドヤ顔をかましながらこう言い放つ。
「大丈夫だぁ~、このとおり制服の下に水着はつけてあるぞい!!」
そういってバサァ!!と言う音と共に制服を脱いだ葵はサーフィン用の水着を身にまとっていた・・・・・・
制服の下に水着っておいおい・・・・・・、お前は水泳部か・・・・・・。
そう痛む頭で考えてると、葵は制服をご丁寧に畳みながらこう言葉を続けた。
「俺の従姉妹に千葉県鴨川市で”ジャージ部”なる物をやっている奴が居てな、そいつと同じスタイルだ」
「どっかのアニメに居たな・・・・・・、そんな感じの奴・・・・・・、何だ宇宙戦争でも始まるのか?」
制服をご丁寧に畳む葵に対して、裕也がそう問いかけると葵は何かを思い出すかのように「あー・・・・・・」と宙を見ながらつぶやくと、こう言葉を続けた。
「そういえば、その従姉妹のジャージ部に入った2名の新入部員が”自称:宇宙人”を名乗っているって言ってたな・・・・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
葵の発言に俺と裕也だけではなく、玄田と木場も絶句する。
そりゃそうだろ・・・・・・、マジで日本と周辺アジア諸国との戦争だけでドエライ事態なのに・・・・・・、それの先を行く”宇宙戦争勃発”の可能性が出てきちゃったんだから・・・・・・。
マジで人類はどうなるんだろう・・・・・・。
そんな考えが葵を除く俺達の胸の内を駆け巡る中、準備を整えた葵は軽く準備体操をするとこう言い放つ。
「じゃ、ちょっと行って来る」
「コンビニ行くみたいに言うな・・・・・・」
葵の発言に間髪入れることなく裕也が突っ込むと、当の葵本人は「はいはい」と緊張感0の声で返事を返す。
それと同時に勢い良く川にバシャーン!!と言う豪快な音を立てつつ、飛び込むと勢い良く泳いでいく。
例えるのであれば、産卵期に生まれた川へと遡る鮭の様に・・・・・・。
それを見て、裕也も同じことを思ったらしく唖然とした様子でこう言い放つ。
「シャケかアイツは・・・・・・」
「あ、昨日の夕飯シャケ弁だった」
「どうでも良いよ・・・・・・」
裕也の発言を聞いて、続けざまにボヤいた玄田の言葉に木場が間髪入れることなく突っ込む。





……

………



いや、本当にお前の昨日の夕飯なんてどうでも良いんだよ・・・・・・。
それから、またまた約30分ぐらい時間が経とうとしていた・・・・・・。
シャケ人間・・・・・・、もといバカ葵が戻ってくるまで携帯の対戦格闘ゲームをしながら、俺達4人は暇を潰していた。
「ぬぉわぁおわたぁぁあぁぁ!!」
「ぬぉぉぉっ!?お前、それ反則だろ!?」
「ありゃりゃ・・・・・・」
「・・・・・・アホくせぇ」
とは言っても・・・・・・、殆ど裕也が玄田、木場、俺のキャラを相手に”ラウンド開始と同時に200コンボを決める”と言うトンでもない戦闘力を発揮しているのだが・・・・・・。
裕也の様に格闘技のプロになると、格闘ゲームでも敵が居なくなる物なのかね?
っていうか、確か”ラウンド開始と同時に相手から一方的に殴られる格闘ゲーム”は他にあったな・・・・・・・、余りにもクソゲー過ぎて逆に一回転して神ゲーになったって奴・・・・・・。
その”色んな意味で伝説となったゲーム”のプログラマーは裕也の親戚かね?
胸の内にそんな考えが過ぎると同時だった。
突如として、川のほうからザバァー!!と言う豪快な水音が聞こえてきたものだから、俺達は半場驚きながら川のほうを振り返る。
すると、そこには捜索から帰還した”水も滴るいい男”ならぬ”水も滴るシャケ人間並びにバカ葵”の姿があった。
「うわ・・・・・・、すげぇビチャビチャ・・・・・・」
「川に入っていたんだから、ビチャビチャになるのは当然」
「そりゃそうだけど・・・・・・」
驚くまでにビチャビチャの葵に対して、木場が軽く唖然としたように問いかける側で当の葵は涼しい顔でそう言葉を返した。
つーかさ・・・・・・、川に入ってビチャビチャになるのは当然としてもよ・・・・・・、そもそも日常生活で川に飛び込む人なんてめったに居ないぞ・・・・・・、お前・・・・・・。
「はぁ・・・・・・」
「んで・・・・・・、戦車は見つけたのか?」
そう思うと同時に何故か自然に深い溜め息が出る俺の側で裕也が若干呆れ混じりに問いかける。
すると、当の葵本人はドヤ顔でこう言い放つ。
「おう、ばっちりな!!」
「「「「おぉぉっ!!」」」」
この葵の発言を聞いた瞬間、俺達は一斉に興奮のボルテージがMAXを迎える。
当然だ、苦労に苦労を重ねた上でやっとお望みの戦車が見つかったんだから。
そんな感じで高鳴る胸の鼓動を感じつつ、俺達は発見者の葵の案内で道無き道を歩いていく。
確かに・・・・・・、キツイ道だが・・・・・・、今の俺達にはそれすら興奮を高める要因でしか無い。
遂に俺達の相棒となるかもしれない戦車とのご対面が近いのだからな・・・・・・。
そう胸の内で期待と興奮が高まっていくのを感じながら、3キロ程歩いた頃だった。
「おぉ、あれだ、あれだ」
そういって岩の上で仁王立ちして葵が指を指した方向に俺達が顔を向けると岩陰に殆ど一定の方向からしか見えない様に隠されるようにして”それ”はあった・・・・・・。


太平洋戦争中に日本軍が米軍のM4シャーマン戦車に対抗するべく生み出した最後にして最強の戦車・・・・・・、”5式中戦車”が・・・・・・。





……

………



その後、自動車部の協力も得て川から何とか引き上げた5式中戦車を土産に倉庫前に戻ると既に俺達以外のチームが各自見つけてきた戦車を土産に集合していた。
と言っても・・・・・・、大した戦車とはいずれも言い難い物ばかりだが・・・・・・、無いよりマシだよね・・・・・・、うん・・・・・・。
そう思いながら、5式中戦車と共に倉庫の前にずらっと並ぶ戦車を見つめている側で川島先輩が小山先輩のメモ取りを手伝うように戦車の名前を言っていく。
「4号戦車D型と38t B/C型、III号突撃砲F型と八九式中戦車甲型、それからM3中戦車リーとラム巡航戦車MK.2、そして5式中戦車か・・・・・・」
うーん・・・・・・、そりゃ流石にタイガーやスターリン、パーシングと言った重戦車などは望んでないとは言え、いくらなんでも正直に言ってビミョーなラインナップだな・・・・・・。
まぁ、仕方が無いと言えば仕方が無い・・・・・・、ここは素直に状況を受け止めるしかないだろう・・・・・・。
川島先輩の言葉を聴きながら、胸の内でそう思っている俺の側で川島先輩は会長にこう問い掛ける。
「会長、どう振り分けましょうか?」
「ん~、見つけた人が見つけた戦車に乗れば良いんじゃない?」
アバウトに定評のある大洗学園の生徒会長、ここでも見事なアバウトぶりだこと・・・・・・、HAHAHAHA・・・・・・。
もう胸の内でアメリカ人の様に苦笑いするしか無い俺の側で生徒会で唯一常識人とも言える小山先輩が困惑した様子で問い掛ける。
「そ、それで良いのでしょうか・・・・・・?」
「うん、良いよ、良いよ」
「では、38tは我々が。4号は西住達、5式は喜田川達が」
「あ、はい」
「分かりました」
そういってかるーく小山先輩を会長があしらうと河島先輩が会長との阿吽(あうん)の呼吸の様に俺とみほに向けて搭乗する戦車を指示する。
んー・・・・・・、みほ達の4号は兎も角・・・・・・、俺達の5式はぶっちゃけ人数が足りない気がするのですけど・・・・・・、大丈夫かな?
そんな俺の心配をよそに川島先輩は続けて搭乗する戦車を指示して行く。
「では、4号 Aチーム、89式 Bチーム、3突 Cチーム、M3 Cチーム、38tは我々Eチーム、5式 Dチーム、ラムはEチームだ」
そう言って河島先輩がメンバーに搭乗する戦車を告げる側で小山先輩がせっせとメモを取る。
まったくもってご苦労様です・・・・・・、社会に出ても対応できるようになると思いますよ先輩・・・・・・。


そんな考えを忙しくメモをとる小山先輩を見ながら思っている側で河島先輩がこう言葉を続けるのであった。
「いよいよ明後日は教官がお見えになる。ご覧の様に今の状態ではとても汚過ぎる。だから、失礼の無いように戦車を綺麗にしておけ!!では、体育着に着替えた後に清掃開始!!」
この河島先輩の言葉を受けて、俺達は一斉に更衣室へと走っていく。
そんな中、恋する乙女佐織とシャケ人間並びにエリートバカの葵が明後日来ると言う共感の件で花を咲かせていた。
「どんな教官来るのかな~、イケメンだと良いなぁ~」
「俺は美人のねーちゃんにジュース一本賭けるぜ」
「むぅー、じゃあ私はイケメンにジュース一本!!」
「おうおう、受けてたつぜ!!」
「「「・・・・・・」」」
この様子を見ていた俺とみほ、裕也、華達がたぶん共通して思っていることは唯一つだけ。

”お前ら平和だなぁ・・・・・・。”

そんな考えを胸に抱きつつ、俺達は更衣室で体育着(※なぉ、野球部とバレー部はユニフォーム)に着替えると各自の担当する戦車を洗い始める。
「行くよ!!それっ!!」
「きゃあっ!!もう・・・・・・、さーおーりさん・・・・・・」
「だ、誰ですか!?」
戦車を洗い始めるや否な沙織がそう言いつつ、後先考えずに水をホースから豪快に出したものだからその先に居た華がずぶ濡れになる。
流石にこれにはTHE・大和撫子と言うべき華でもカチンとくる所があったのか、返す言葉に若干恨みが混じっているような気がするのは俺だけか?
つーか、秋山があまりの代わりように困惑しているし・・・・・・。
んで、ずぶ濡れになって恨み節(?)を言い放つ華・・・・・・、少なからず美しい存在みたいだ・・・・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・裕也?」
何故なら、特に裕也あたりがそう思っていそうだ・・・・・・、何故ならずぶ濡れになった華を少なからず黙って見つめていたし・・・・・・。
ふーん・・・・・・、史上最強の高校生と言える存在であるコイツもやっぱり”恋心を抱く(?)”とは人間なんだな。
まぁ・・・・・・、邪な感情かもしれないが・・・・・・、コイツは葵とは違ってそんなことを抱くことはなさそうだしな。


そんな感じで友人の人間らしい一面を垣間見た所で、ふと視界に入った葵が鼻の下を伸ばしている事に気づいた。
どーせ・・・・・・、コイツは碌な事考えてないよな・・・・・・。
戦車捜索時にも抱いた考えがまた胸の奥から再び巻き起こる中、俺は一回深く溜め息を付いた後に葵に問い掛ける。
「はぁ・・・・・・、お前は何を考えているんだよ?」
「いやぁ~・・・・・・、ちょっとねぇー・・・・・・、良いよね・・・・・・」
「何が?」
「水にぬれて体操着が透けて下の・・・・・・「それ以上言ったら容赦なく首骨へし折るぞ・・・・・・」ごめんなさい・・・・・・」
邪なことを言おうとした葵に対して、裕也が若干切れ気味にアームロックを掛けている。
つーかさ・・・・・・、裕也・・・・・・、お前は葵から10メートルぐらい離れた場所に居たよな?
そんで葵にアームロック掛けるまで約1秒もかかっていないんだけど・・・・・・、瞬間移動ですか?
つーか、お前は本当に人間ですか?実はター○ネーターって事は無いよね?
まぁ・・・・・・、そこまでは無いと思うけどさ・・・・・・、俺はお前が警察官になって殉職してロ○コップになっても、「ふーん」で軽く受け流してしまいそうな気がするぜ・・・・・・。
あとさ、やっぱりお前は華に恋心を抱いているのか?
裕也を見てそう思っている側で河島先輩が俺達の様子を見て檄を飛ばしてくる。
「おい、そこ!!遊んでないで早く洗うんだ!!」
「あっ、はい!!」
「すいません」
この河島先輩の言葉に俺達(特に裕也と葵)は我に返ると直ぐに戦車を洗い始める。
まぁ、今のペースじゃあ終わるのが1週間後になってしまうしな・・・・・・。
「・・・・・・よし、やるか!!」
そう思うと同時に俺は気合を入れて裕也達と共に5式に水をぶっかけるのであった・・・・・・。





……

………



そうして戦車を洗い始めること約数十分が経った頃・・・・・・。
「おい、そろそろ中も洗ったほうが良いんじゃないのか?」
「あぁ、そうだな」
高圧洗浄機で足回りの錆や泥を吹き飛ばしていた裕也にそう言われ、俺は5式の上に上る。
正直に言わせてもらうと中を見るのは荷が重いな・・・・・・、普通にみほ達の4号でさえ内部は錆やカビが発生して酷い有様だって言うのに・・・・・・、川に突っ込んでいたコイツ(5式)は酷い有様確定だよなぁ・・・・・・。
そう思うと若干おっくうになってくる気持ちを抑えつつ、俺は5式のキューポラに手を掛けてゆっくりと開けていく。
そうして、開いたキューポラ越しに中を覗き込んだ瞬間だった。


俺の目の前、約50cm程の距離に15cm程のアシダカグモが居た・・・・・・。


「亜qwせdrftgyふじこlp;@:!!」
クモを見るや否や思わず原のそこから人間の声とは到底思えないような声を上げながら、俺は派手に転倒する。
それと同時に俺の後頭部は5式の固い鉄製のエンジンハッチに見事命中!!オーマイガーッ!!
「亜うぇrtfgyふいjこlp!!!」
頭に走る激痛に頭を抱えつつ、戦車の上で右へ左に悶えている内に俺の体は自然と5式の上から移動・・・・・・、そして見事に落下する。
「あっ・・・・・・」
それに気いた瞬間には、俺は顔面から見事に地面に激突する。
瞬間、グシャァァツ!!と人の体から絶対に鳴ってはいけないような音と共に激痛が走る。
つーか、マジで痛いんですけどぉぉぉ!!
「zw背xdrcftgybふjmk、l。;!!!!」
「りゅ、龍君大丈夫!?」
「お、おい、喜田川!?誰か直ぐに保健室から氷を貰って来い!!」
声にならないに悲鳴を上げる俺に対して、直ぐにみほと河島先輩が駆け寄ってきて俺の状態を確認する。
少なからず無事じゃないって言うのは見て分かりますよねぇ・・・・・・。


そう思いながら顔面と頭に走る激痛に悶える俺の側では裕也達が「何だ、何だ?」と言った感じで5式の中を探っている。
少しはメンバーのことを心配してもいいだろう・・・・・・、しているのか?そんな考えが一瞬、胸のうちを過ぎる。
そう思ってから数秒も経たないうちに玄田が例のアシダカグモを掴みながら、5式の中から顔出した。
つーか、クモみたいな化け物をよーく素手で掴めるなぁ・・・・・・、俺なら絶対に即死物だぜ・・・・・・。
胸の内でそう思う俺を見ながら、玄田は「ふぅーん」と呟くなり、こう言葉を続けた。
「お前、こんな物でビビッテンのか?」
「うるせぇぇぇーっ!!お前は”アラクノフォビア(クモ恐怖症)”じゃないから、そう言えるんだよ!!」
実際になってみやがれ、マジでクモが怖くてしかたないぞ!!
え?「なんでお前はクモ恐怖症になったんだ?」って、ガキの頃にアシダカグモが顔面に張り付いたからだよ!!
つーか、思い出したくねぇ事を思い出させるな!!ボケェェェッ!!
そう胸の内で玄田への怒りとクモへの恐怖で逆立つ胸の内を感じつつ、アシダカグモを「アハハハ」と笑いながら放り投げる玄田を睨み付けていると小山先輩が保健室から持ってきてくれた冷却パックを渡してくる。
「はい、これ使って」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
俺はそう一礼言って小山先輩から冷却パックを頭と顔面に当てて、痛みを和らげる為に冷やす。
はぁー・・・・・・、マジで痛いなー・・・・・・、まったく溜まったもんじゃないぜ・・・・・・。
「お前達はボーっと見て居ないで作業を再開するんだ!!喜田川も少し休んだら再開するんだ」
そう思いながら、俺が患部を冷やしている側で河島先輩が俺の様子を見ている他のメンバーに対して檄を飛ばして作業を再開させる。
はぁ・・・・・・、こんな調子で本日中に終わるかな・・・・・・。
ある意味でこの騒ぎの直接の原因である俺はそう思うのであった。


それから暫くして、何とか復帰した俺は「別のクモがいないか?」と言う心配から少なからず引き腰で裕也達と共に戦車を洗う。
つーか・・・・・・、「2度あることは3度ある」と言うけどマジで勘弁してほしいよ・・・・・・、それ以前に誰だよこんな言葉考えた奴?
そう胸の内で思いつつ、デッキブラシ片手に5式を洗っているとある事に気づく。
あれ?裕也は側で高圧洗浄機片手に転輪と履帯、玄田はエンジンハッチを洗っているけど葵と木場はどこ行った?
さっき俺が悶えている間に戦車の中を洗っているのかね?
デッキブラシで5式の側面を洗いながら、そう思ったのも一瞬。
その疑問の答えを示すように上半身素っ裸の葵が5式の操縦主ハッチを開けつつ、俺達に話しかけてくるのであった。
「ひゃー・・・・・・、もう中は厚くて溜まったもんじゃねぇな・・・・・・」
「文句言うな、そもそも戦車は戦闘兵器なんだよ。快適さなんて求めるなよ」
「そりゃ分かるけどさぁ・・・・・・」
内部の暑さに愚痴を漏らす葵に対して、俺は口を酸っぱくして咎める。
全くコイツは・・・・・・、”究極の強さ”を求めて何ぼの兵器に快適さを求めるなよ・・・・・・。
一応、世界最強のアメリカ軍の主力戦車である”M1A1エイブラムス戦車”とかはイラクとかアフガニスタンと言った死ぬ程の猛暑の場所で戦闘を行う為にクーラー付いているタイプもあるけどな・・・・・・。
ちなみにこのモデルに関して、日米合同軍事演習でアメリカにある演習場で本物を見た親父いわく「アメリカ軍以外では出来ない技だね、こりゃ」との事である。
確かにアメリカ軍以外で配備している戦車にクーラーを搭載すると言うのは出来ない技だよね・・・・・・。
そう思いながら、5式を掃除している(※なぉ、葵は全力でスルー)と上半身素っ裸の葵に対して佐織が若干不満げな表情でこう言い放つ。
「ちょっと葵、女子も居る前で裸見せないでよ・・・・・・」
「えーっ?」
沙織の発言に対して、葵が腑に落ちないような声でそう呟く。
お前は将来、裸族になるタイプか?
沙織に指摘に対して腑に落ちない様子の葵の発言を聞き、そう思った瞬間だった。
「いやぁー・・・・・・、戦車の中ってすごく暑いんだねぇ・・・・・・」
葵の居る操縦主席の隣にある37ミリ副砲主席のハッチをパカッと空け、中を掃除中だった木場が出てくる。

大洗学園の全ての女子が歓喜するであろう”上半身裸姿”で。

そんな考えが一瞬、頭の中を過ぎったかと思った次の瞬間だった。
突如として後ろから「ブフゥゥゥーッ!!」と言う液体が勢い良く噴出する様な音が聞こえてくると共に液体が掛けられるような感覚を覚える。
「ん、何だ・・・・・・って!?」
ふと体操着に掛かった液体に手を触れるとそれは”真っ赤な血”であった。
つーか、何で血が!?誰か首でも切られて、時代劇の様になっているの!?
そうだったら翌日の新聞やニュースで前面トップの大惨事だぞ!!
そう思いながら、後ろを振り返ると沙織が俗に言う”ヘブン状態”で鼻血を出していた。
っていうか、お前の鼻血かよ・・・・・・、裸見て鼻血出す人を現実で始めてみたぜ・・・・・・。


そう呆然としながら思う側で沙織は両穴から鮮血を出しつつ、実に満足げな表情でこう述べる。
「華・・・・・・、木場君の裸見れた・・・・・・、私・・・・・・、もう死んでもいい・・・・・・、うへへ・・・・・・」
「しっかりしてください・・・・・・」
華が凄まじい呆れ顔で沙織を抱きかかえる。
お前・・・・・・、木場に対しての恋が変な方向並びにヤバイ方向に向かっていないよな?
そんな心配が鼻血を出しつつ、微笑む沙織を見て沸いてくる俺の側で当の原因である木場は状況を読むことが出来ずにオロオロしている。
「あ・・・・・・、え・・・・・・?これって・・・・・・、僕のせい?」
「そうだと思うよ・・・・・・、俺は・・・・・・」
「「このイケメンが・・・・・・」」
状況が読み込めない木場に対して、裕也が状況を説明する側で玄田と葵がイケメンへの恨み節をボヤく。
ぶっちゃけこのメンバーってマジで大丈夫なのかなぁ・・・・・・?
そんな考えが裕也達を見て沸いてくる中、俺は近くにいたみほに向けてこう言い放つ。
「先は長いな・・・・・・」
「そうだね・・・・・・、アハハハ・・・・・・」
疲れ交じりにそういった俺の発言に対して、みほは苦笑しながら返すことしか出来ないみたいだ・・・・・・。
当然だ・・・・・・、目の前で余りにも”カオス極まる光景”が繰り広げられているのだから・・・・・・。
もう笑うだけしか出来ない&訳が分からないよ・・・・・・。


んで、この騒動の後に戦車の洗車が終わった頃にはすっかり夕方になっているのであった・・・・・・。


ちなみに、この上半身姿の木場を何処からか沸いた”マスコミ系女子”のカメラが捕らえたらしく、この写真を基に作られた木場の上半身裸のブロマイドは1万5千円を越すプレミアム商品となったらしい・・・・・・。nd