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激戦、激戦、大激戦!!大洗大戦車戦!!

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<龍Sied>
遂に本格的な戦闘が始まった聖グロリアーナとの練習試合。
キルゾーンに誘い込み各個撃破する俺達の作戦は、俺とみほが予想していた様に圧倒的な実力を持つ聖グロリアーナの前に無意味であった。
それどころか、包囲する俺達が逆に包囲されてしまい全滅の危機に直面すると言う最悪な状況を迎えつつあった。
この状況を打開する為にも、みほと俺はキルゾーンを放棄し、生き残ったチームの全車両を連れて市街地へと後退を始める。
全く……、本当に最初の包囲作戦を考えたヒステリー河島……、もとい河島先輩……。
普段はクールな副官キャラだけど、実際は”アホの子の極み”なんじゃないのか?
市街地に向けて走っていく5式の中でそう思いながら、俺は休む事無く砲撃を続ける聖グロリアーナの戦車達を見て、チームの皆に注意を促す。
「総員、気をつけろ!!敵はまだ撃ってきている!!流れ弾に気をつけながら、市街地に後退するんだ!!」
『了解!!』『おーっす!!』『jawohl:《ヤボール:了解!!》』
そう俺の声に磯辺、牧、エルヴィン達が返事を返すのを聞きつつ、俺は続け様に裕也に対して砲撃の指示を飛ばす。
「裕也、セントーに向けて砲撃しろ!!」
『了解っ!!』
そう俺の砲撃指示を受け、裕也は間髪入れる事無くセントーに向けて砲撃を行う。
んで、その砲撃は命中するが、虚しくセントーの分厚い装甲に弾き飛ばされるだけだ。

あー……、もう何度目だろう……、この光景……。

胸の内でそう虚しく思いながら、弾かれ、明後日の方向に飛んで行く砲弾の行く末を見つめる間にも、俺を乗せた5式はみほ達の4号と共に市街地へと後退していく。
『逃げ出したわね……』
『行き先は……、市街地だな』
その様子を聖グロリアーナのダージリンとジッパーはチャーチルとトータスのキューポラ越しに見つめ、そう呟くと続け様にこう言葉を交わすのだった。
『ジッパー、今の見たわね?』
『あぁ、市街地に後退して、市街地戦に持ち込むつもりだな……』
そうセントーの中で地図を広げながら、ジッパーはダージリンに対して、こう言葉を返すと続け様にこう言い放つ。
『ダージリン、追撃するぞ』
『勿論ですわ。全車両、隊列を組みなさい』
ジッパーの言葉にダージリンは「ふっ」とほくそ笑みながら、残るマチルダ隊とゴッドハンマー隊に対して、再び隊列を組む様に指示を飛ばす。
このダージリンの指示を受けた、マチルダ隊とゴッドハンマー隊は素早く隊列を組むと市街地に向けて、進撃を開始するのであった。


そんな感じでキルゾーンより後退する事、約数10分。
俺達、大洗学園戦車道チームは大洗市街地へと何とか無事に到着する。
ココに来るまで、聖グロリアーナの連中に撃たれ放題だったからなー……、軽くノイローゼだぜ。
っていうか、大洗の町に石油コンビナートとか原発とかあったら、流れ弾で大参事だな……。
まぁ、そういうものがある時点で試合会場にはならないんだろうけどさ。
そう思いつつ、俺は後方から次々と飛んでくる聖グロリアーナの砲撃をかわしながら、前線指揮官として、次なる指示をチーム全員に向けて飛ばす。
「全車、これより市街地に突入する!!地の利を生かして、相手を蹂躙しろ!!分かったな!?」
『Why Not!!』
『おーっす!!』
『任せてください、大洗は庭です!!』
おー……、先程までのグダグダっぷりからは想像も付かない様な心強い返事……、ちょっと感度すら覚えてくるよ……。
こんな感じで、うっすらと感動を覚えている俺に対して、みほがしっかりとした声で次なる指示を飛ばす。
『これより、各チームの待機地点並びに待ち伏せ地点を指示します!!報告次第、直ぐに向かってください!!』
「了解!!」
『Einverstanden!!|《アインフェアシュタンデン:承知!!》』『分かりました!!』『はい!!』
そうみほが指示を飛ばすの聞いた俺達は、間髪入れる事無く復唱を返す。
そりゃそうだ、市街地に後退するまでの短い時間に”作戦参謀”のみほが精一杯頑張って考えてくれた作戦なのだ。
前線で戦う兵士の俺達が、それを有効に活用できなければ元も子も無い訳だ。
そうならない為には、前線指揮官である俺が兵士であるチームの皆をまとめなければならないんだ……。
『龍君はAC987地点に移動して、待ち伏せしてください!!』
「了解!!木場、直ぐにAC987地点に移動しろ!!」
『了解っ!!』
俺は胸の内でそう強く思いながら、みほから指示された地点へと5式を走らせるのだった……。


それから数分経った後、俺達より少し遅れる形で大洗の町にやってきた聖グロリアーナ戦車道チーム。
その指揮官であるダージリンとジッパーは異常なまでに静かな大洗の町に警戒心を抱いていた。
当然だろう。先程まで自分達に撃たれ放題だった敵が姿をバッタリ消してしまったのだから。
『消えた……?』
そう不思議に思う気持ちと、若干の不気味さを覚えたダージリンがそう呟く側で、ジッパーがトータスのキューポラから外の様子を見ながら、他の戦車の戦車長達に向け、問い掛ける。
『各車、捜索状況を報告せよ』
『こちら、マチルダ2号車、敵を確認できません』
『マチルダ3号車、同じく敵を確認できません』
『ゴッドハンマー1。敵、確認できず』
そう次々と無線機から、部下達の「敵を発見できない」と言った、言葉違えど”共通の意味の報告”を聞いたジッパーは「ふむ……」と一言呟くとダージリンに向け、こう言い放つ。
『どうやら市街地に突入するしか、方法は残されていないみたいだな』
『そのようね……』
ジッパーの提案を受け入れ、ダージリンはそう呟くと紅茶を一口飲むと、こう言葉を続けるのであった。
『こんなジョークを知ってる?「飛行機が欠航になった時、イタリア人は先ず客室乗務員を口説き、日本人は上司に連絡し、そして、イギリス人は紅茶を飲んでから考える」』
『大洗がどう出ようと落ち着いて行こうと言う事だな……。全車、市街地に突入せよ!!我に続け!!』
ダージリンが突然言ってきたブリティッシュジョークの意味を説きながら、ジッパーはマチルダ隊とゴッドハンマー隊に対し、市街地突入の命令を出すのであった……。





……

………



んでもって、市街地に後退してきた俺達、大洗学園戦車道チームはみほの指示に従い、大洗の市街地に突入してくるであろう聖グロリアーナを待ち伏せしていた。
「まだ来ないな……」
まるで敵の指揮官を狙撃・暗殺する為に送られた特殊部隊のスナイパーの様に、俺は5式のキューポラの覗き窓から、外の様子を伺っていた。
んでもって、”獲物”である聖グロリアーナは慣れない土地で戦う為か慎重になり、かなりの時間が経とうとしても姿を見せなかった。
まぁー……、早くしとめようと焦って注意散漫になった挙句に逆に”狩る側が狩られる”なーんて事になったら笑い物だしな……。
馬鹿静かになった練習試合の空気と共にそんな感情が湧いてくる中、一向に動きが無い事に痺れを切らした玄田が苛立ち混じりの声でこう言い放つ。
『おい、龍!!まだ攻撃しないのか!?』
「攻撃する目標がいなけりゃ、元も子も無いだろうが……。お前、レンジャー隊員志願だろ?アメリカ海兵隊伝説の狙撃兵、”カルロス・ハードソック”を見習え、カルロス・ハードソックを!!」
『俺はレンジャー志願だが、狙撃兵になるつもりなんて無いぞ』
そう苛立つ玄田を宥める様に俺はそう言い放つが、玄田はそう口を尖がらせながら反論するだけだ。
まぁ……、確かにコイツに『戦場のプロ』であるスナイパーは勤まりそうに無いな……。
むしろ、元祖|ワンマンアーミー《一人の軍隊》みたいに|LMG《ライトマシンガン:軽機関銃》を「アアアアアアッ!!」と叫んで腰だめ撃ちで乱射しているイメージだしな。
んでもって、上の会話で「カルロス・ハスコックって誰!?」となった方に簡単に説明しよう。
カルロス・ハードソックはベトナム戦争中に活躍したアメリカ海兵隊所属の伝説的スナイパーだ。
17歳で海兵隊に入隊し、訓練兵期間中に狙撃兵としての素質を見出され狙撃兵として各部隊に配属後、激戦続くベトナム戦争に派遣された。
そして派遣先のベトナム戦争の最前線にて、もう言わずと知れた大暴れをしてみせた訳だ。
その暴れぶりといったら、下の様な物になる。

1.3日3晩、夜通しで匍匐前進して1キロ以上移動して北ベトナム軍の将軍を暗殺した。
2.彼を脅威と判断した北ベトナム軍は全北ベトナム兵士&ベトコンゲリラに対し、3万ドル以上の賞金を掛けたが、誰も彼を止められずに返り討ちにされた。
3.彼を射殺するべく派遣された12人の敵狙撃兵をカルロス1人で全員射殺。
4.上の12人のうち、1人が彼をスコープの照準に治めた矢先にカルロスがスコープごと撃ち抜いて射殺。
5.丘の向こう側にいる敵狙撃兵をスコープをつけたM2ブローニングマシンガンで狙撃し、約2300キロと言う超超長距離狙撃を成功させる。

と言ったものだ……、まぁ……、更に詳しいことが知りたければ各自でググッて欲しい。
っていうか、こんな活躍する様な狙撃兵と馬鹿を極めた玄田を比較する事自体がおかしいのか……。
そんな考えがふと胸の内で沸いてくる中、俺がふとキューポラの覗き窓を覗き込んで外の様子を確認しようと思った矢先だった。
突如として、厚い装甲に包まれた5式の中に居ても分かる様な「ズドォォーンッ!!」と言う砲声が俺達5人の耳に飛び込んできた。
『何だ!?』『敵か!?』『結構近いよ……』『来たか、来たか?』
聞こえて来た砲声に対し、裕也、玄田、木場、葵の4人は戦闘に備えるべく一斉に身構える。
だが、俺はそんな裕也達とは違い落ち着いていた。
その理由は簡単、聞こえてきた砲声が仲間である”89式の砲声”だったからだ。
っていうか、89式の居る場所は俺達が隠れている場所からそう遠くない場所だったはず……。
つまり、敵はもう目と鼻の先まで来ているのか……。
89式の砲声を聞くなり、俺は脳内の思考回路をフル回転させて状況を把握しようとする。
それと同時に89式の戦車長である磯辺が無線機越しにこう報告するのだった。
『こちらBチーム、セントー1台撃破です!!副隊長の言った通り、榴弾でエンジンを破壊しました!!』
「こちら副隊長、よくやった。引き続き、警戒を緩めるな!!」
前もって磯部に指示を出しといてよかったぜ……、磯辺の無線通信に返信しながら俺はそう思った。
その指示とは”貧弱な火力しか無い89式で敵戦車を撃破する方法”だ。
元々、歩兵支援を主任務とする89式は対戦車戦闘力はハッキリ言って皆無だ。
だからこそ、俺は磯辺に対し「榴弾でエンジンを撃って炎上させろ!!」と指示を出しておいた。
これは太平洋戦争初期にマレー半島かフィリピンのどっちだったかは忘れたが、アメリカ軍の”M3スチュアート軽戦車”に苦戦を強いられた日本軍戦車部隊が行った方法だ。
まぁ……、ぶっちゃけると”日本軍戦車の使用する徹甲弾が弱過ぎた”って事なんだけどな……。


そんな事を思いつつ、俺が磯辺に警戒を続行する様に指示を出した瞬間だった。
再び「ズドォーンッ!!」と言う鋭い爆音が鳴り響き、続け様に無線機から報告が聞こえてくる。
その報告を行っているのは、3号突撃砲の戦車長を担当するエルヴィンだ。
『こちらCチーム、敵戦車撃破!!』
『おぉ、やるじゃねぇか!!』
エルヴィンの報告に対し、葵が浮き足立った口調でそう言い放つ。
お前……、もう少し気を引き締めろよ……、気持ちは分かるけどさ……。
葵の浮き足立った口調を聞き、俺はそう思いながらエルヴィンに対し磯辺と同じ様に引き続き警戒する様に指示を出す。
「了解、この調子で引き続き作戦を続行……って、あれは!!」
だが、俺は指示を出し切る前にキューポラの覗き窓を思い切り覗きこんだ。
その理由は言うまでも無いだろう。
俺達の隠れているポイントに向かって聖グロリアーナのマチルダが橋を渡って前進してくるが見えたからだ。
このチャンスを逃す事は勝利を掴む為には、絶対に許されない!!
「こちら副隊長、マチルダを1両確認した。直ちに攻撃を開始する!!」
『了解、気をつけて!!』
そう思った俺はみほに無線通信を入れると同時に裕也達に戦闘指示を飛ばす。
「戦闘再開だ、行くぞ!!木場、戦車前進!!」
『了解!!』
俺がそう言い放つと同時に出した前進指示を受け、木場は操縦桿を倒すと同時に思い切りアクセルをベタ踏みする。
すると、5式は凄まじいエンジンの爆音と共に隠れていた民家の壁をぶち破り、前進してきたマチルダの前に姿を見せ、強襲する。


この突然の強襲に対し、マチルダのクルーは当然ながら予想しているはずも無く、ただ車内で慌てるだけだ。
『て、敵襲!!』
『嘘っ!?主砲、照準定めて!!』
『わ、分かってるわよ!!』
この突然過ぎる強襲に対し、マチルダのクルーである聖グロリアーナの女子生徒達は大急ぎで戦闘態勢を整えようとする。
だが、それよりも先に戦闘態勢を整えていた俺達の5式がマチルダに照準を定めていた。
それを知っている俺は大声で裕也と葵に対し、こう言い放つ。
「主砲、副砲、共に撃て!!」
『『!!』』
そう俺が大声で叫び、指示すると同時に裕也と葵の二人は主砲と副砲のトリガーを引く。
瞬間、2発の砲声が5式の車内に引き続き鳴り響くと同時に中退機が勢い良く後退し、空薬きょうを車内に吐き出す。
同時に主砲と副砲から放たれた2発の徹甲弾は勢い良くマチルダに目掛けて飛んで行く。
そして、飛んでいった徹甲弾はマチルダに命中すると同時に「ズドオオオンッ!!」と言う爆音と共に炸裂。
真っ黒な黒煙とオレンジ色の爆炎がマチルダを包み込んだ後、マチルダの砲塔上部より白旗が上がり、俺達に対して撃破された事を示す。
「敵戦車……、撃破確認!!」
『しゃっ!!』『うおおおっ!!』『やった!!』『うひょー!!』
そう俺が敵戦車の撃破を告げると裕也達は一斉に歓喜に沸く。
だろうな……、先程まで一方的にやられていた俺達が見事にカウンターを決めて見せたのだから。
裕也達の反応を見て、そう思いながら俺はみほに向けて、この事を報告する。
「みほ、敵戦車を1両撃破!!」
『了解です!!次はAF056地点に向かってください!!』
「了解、直ちに移動する!!」
俺はみほに報告すると同時に返ってきた次なる指示に従って、5式を走らせる。


その一方で、俺達に撃破された聖グロリアーナの戦車の戦車長は慌てた様子で隊長であるダージリンとジッパーに向けて報告する。
『こちら、雌型2号車、3号突撃砲に撃破されました!!』
『ゴッドハンマー2号車、89式中戦車の榴弾攻撃を受けてエンジン炎上!!及びに走行並びに戦闘不能!!』
『こちらは雌型3号車、待ち伏せしていた5式にやられました!!スミマセン!!』
『なっ……!?』
『コイツは……、予想外の展開と言った所だな……』
ダージリンとジッパーは「”楽に勝てる”と思っていた」練習試合で聞いた、この報告に驚愕した。
特にダージリンは同様の余り、手にしていたティーカップを落してしまう程だ。
そのダージリンのティーカップが割れる音が無線機から聞こえてくる中、ジッパーは赤のパンツァージャケットの首元を緩めると、動揺が広がりつつあったチームに向けて無線機越しにこう言い放つ。
『全員動揺するな、落ち着いて冷静に対処しろ。そうすれば勝算はある!!』
この様にジッパーが素早く指示を出した事によってチームに広がっていた動揺は収まっていく。
ジッパーはそれを確認すると間髪入れる事無く素早く次なる指示を出す。
『これからは複数で動くんだ!!単独行動は決してするな!!必要とあらば、隠れている建物や建物と共に吹き飛ばすんだ!!』
『『『サー・コマンダー・サー!!』』』
そうジッパーの出した指示に対し、残った聖グロリアーナのメンバーが復唱を返す側でダージリンは若干怒りの混じった声でこう言い放つ。
『大洗学園……、おやりになるわね……、でも、これまでですわっ!!』
ダージリンはそう怒り混じりに呟くとマチルダ隊を引き連れ、ジッパーのトータスの後に続く様にチャーチルを走らせるのだった……。





……

………



それから、少し経った後。大洗の町は再び静けさを取り戻していた。
だが、その静けさは平和で平穏な静けさでは無い、何処か不気味で気味が悪い静けさだ。
俺は流れてくるこの不気味な静けさを前に”嫌な予感がする”と同時に心臓がバクバク言っていた……。
「気味が悪い……」
『あぁ、全くだぜ……』
思わずそんな言葉が俺の口からこぼれると、それを聞いた玄田が珍しくというか……、当然(?)の様に肯定してくる。
そんな俺と玄田のボヤキを聞き、操縦席の覗き窓から外の様子を覗き込んでいた木場が操縦桿を握り締めながらこう返してくる。
『そりゃ、敵もいきなり3両もやれたんだから、慎重になっているんでしょ……、「焦ったら負け」って事だよ』
木場、お前そう言うけどよ……、俺は玄田ほど焦ってねぇぞ。
まるで俺と玄田を咎める様にそう言い放った木場の言葉を聞き、腑に落ちない俺が胸の内でそう思った瞬間だった。

ズドオオオオオオンッ!!

と言った突如として鳴り響いた”桁違いな爆音”が大洗の町を覆っていた静けさを破壊する様に鳴り響く。
「クソッ!!誰か、やられたな!!」
『マジかよ……、聖グロリアーナのこん畜生!!』
突如として鳴り響いた爆音を前に俺がそうボヤくと同時に葵が毒づく。
っていうか……、この爆音は大きさからしてトータスで間違いないな……、ちっ!!
よりによって聖グロリアーナの戦車の中でも”最も凶暴な奴”が近くに来て居やがるのか……。
俺がそう思った瞬間、無線機から着信音と共に89式の戦車長である磯部の切羽詰った報告が聞こえてくる。
『こちらBチーム、隠れていた建物ごと吹き飛ばされました!!スイマセン!!』
「嘘だろっ!?」
隠れていた建物ごとって……、第二次世界大戦末期で”建物に隠れたM4シャーマンを建物ごと吹き飛ばしたヤークトティガーの話”かよっ!?
そう思いながら、俺はキューポラのハッチを開けて双眼鏡を手に磯部達の隠れていた方向に視線を向ける。
するとそこには、トータスの砲撃よって”完全に瓦礫と化した立体駐車場”と”その瓦礫の山にすっかり埋もれた89式”の姿があった。
おい……、おい……、おい……!!死人が出てもおかしくないぞ、この状況じゃないかよ!!
余りにも悲惨な光景を前に、そんな考えが胸を過ぎる。
それと同時に同じ事を思ったであろうみほが、大急ぎで磯辺に対して無事かどうかを聞く。
『Bチームの皆さん、大丈夫ですか!?』
『はい、何とか大丈夫です!!』
『良かった……』
この報告を前にみほが胸をなでおろすと同時に俺もホッと胸を撫で下ろした。
そりゃそうだ。死人が出ては勝敗以前の問題だからな。


そんな感じで安堵したのも僅か一瞬。
再び俺達の耳にドガァーン!!と言う爆音が鳴り響く。
っていうか、クソ!!また、聖グロリアーナにやられたのか!?
そんな考えが胸の内を過ぎる中、無線機から今度はみほの声が聞こえてくる。
『龍君、Cチームより「撃破された」との報告だよ!!』
「ちっ、3突がやられたか!!」
クソッタレ……、最悪の報告だ!!
俺達の大洗学園側の戦車で一番、対戦車戦闘力が高い3突がやられたと言う事は明らかな戦力ダウンだ。
っていうか、コレで敵との数的違いはどうなってるんだ!?
みほの報告を聞き、胸の内でそう思うと同時に俺は裕也に対し、戦車の数を問い掛ける。
「裕也、敵は残り何両だ!?」
『マチルダが2両で、残りのセントー、チャーチル、トータスが1両ずつ。合計で5両だ』
「5両か……」
裕也から残りの聖グロリアーナの戦車数を聞いた俺はそう呟くと同時に脳をフル回転させて、状況を考える。
敵の数は確かに減った……、だが俺達も損害を出しおり残るは、俺の5式とみほの4号を合わせて2両……って、ん?
あ、いけね……。すっかり牧達の事を忘れていた……、牧達のラムも含めると3両だ。
だとしても、明らかに数的不利なのは言うまでも無いか……。
っていうか、当の牧達&ラムは無事なんだろうか……、さっきから一切の報告が無いからな……。


この事が気になった俺はみほに対し、無線通信を入れるなり問い掛ける。
「みほ、Gチームはどうなっている?」
『まだ状況を確認していなかった……、龍君の方でお願いできる?』
「了解だ。葵、Gチームに連絡を入れて無事かどうかを確認しろ」
『ほいっさ』
そう言って俺の指示に従って葵は素早く無線機のチャンネルを変更し、Gチームに無線通信を入れると同時に無事かどうかを問い掛ける。
っていうか、みほがさっき「まだ状況を確認していなかった……」とか言っていたけど……。
もしかして……、みほも野球部の事を忘れていた……?
でもまぁ……、確かに野球部の連中……、昔から揃いも揃って存在感薄いよな……。
最近に至っては、ボロボロの野球部部室で「俺達って影薄いよな……」って自虐する有様だしな……、もう少し活躍の場を与えてあげないとな……。
そんな軽く”メタな考え”が胸の内をふと過ぎる中、牧達との通信を終えた葵が振り返りながらこう報告してくる。
『龍、野球部は無事だそうだ』
「そうか。みほ、今の聞いたな?」
葵の報告を元にそう俺が言ってみほに問い掛けると、みほは無線機越しに『うん!!』と一言言った後、こう言葉を続けた。
『龍君、BR8765地点で一旦合流しよう。このままバラバラに行動していても、良い的にしかならないよ!!』
「そうだな……、敵も俺達の動きに感づいてきているしな……、この事を牧達にも伝えてくれ」
みほのこの提案を俺は直ぐに受け入れた。
そりゃ当然だ、みほの言う様に聖グロリアーナの連中も俺達の動きに感づき確実に仕留めに掛かってきている。
だとしたら、バラバラに行動した時点で良い的以外の何者でも無い訳だ。
それを回避する為にもココは一旦終結して、束になった方が安全策だろう……。
「木場、BR8765地点に移動しろ」
『了解』
みほの提案を聞き、そう思った俺は木場に対して前進指示を出す。
木場はそれに答える様に5シキの操縦桿を倒すとアクセルを踏み込み、5式を走らせてBR8765地点に向かおうとした……、その瞬間だった!!

ゴィィンッ!!

突如として、上のような鈍い金属音が鳴り響くと同時に俺達の乗る5式は激しく揺さぶられる。
『うおっ!?』『ぐああっ!?』『うわあっ!?』『ぴゃーっ!?』
「ぐはっ!!(ゴキィイッ!!)」
それと共に裕也達が激しく揺さぶられると同時に、俺はキューポラに思い切り頭を衝突させる……って、言うか……、イデエエエエエエエエエエ!!
あー!!、もう俺は頭部ダメージの悪霊にでも取り付かれているのかね!?
東部に走る激痛にそんな事を思いながら、俺が覗き窓を覗き込んだ先には”先程の衝撃の原因”で間違いないであろうマチルダが、俺達に主砲を向け待ち構えているのだった。
「ちっ!!裕也、2時の方向に主砲を向けろ!!約300メートル先にマチルダが居やがる!!」
『クソッ、あの野郎は何時の間にココまで接近してやがったんだ!?』
全くもって裕也の言う通りだ、こん畜生!!
300メートルと言うかなりの近距離で、よく俺達に気付かれる事無く接近出来たものだ!!
嫌な奴&嫌な敵ながら天晴れと言った所だよ!!

そんな感情が湧き上がってくる中、俺達の5式も負けじとマチルダに主砲を向けていくが、対するマチルダの砲手と装填主が優秀な為か俺達が反撃するよりも先に2発目を放ってくる。
んでもって、その放たれた2発目は命中するなり、再び凄まじい金属音と共に衝撃を5式に走らせていく。
『『『『「ウワアアアアッ!!」』』』』
この衝撃に俺達は成す術&反撃する術が全く無く、もはや5人揃って撃破される事すら脳の片隅に浮かんでいた。
っていうか……、撃たれ放題だな……、俺達……。
『まだ生きてるぞ、近づいて早く止めを刺すんだ!!』
『了解、戦車前進!!』
『装填急いで!!』
『言われなくても、わかってるわよ!!』
俺達がそんな事を胸の内で思っている事など、知る由も無いマチルダのクルー達が車内でそんな会話を交わす。
それと同時にマチルダのクルー達が俺達の5式に止めを刺そうと接近した、その瞬間だった。

『『『『『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』』』』』

現在、アニメ2期が大絶賛放送中の『人間讃歌』な漫画シリーズにおける、第3シリーズの”主人公の必殺技”の様に無線機越しに「オラオラ」言いながら、野球部の牧達が搭乗するラムがマチルダの脇腹に全力で突っ込んでいく。
っていうか、上のセリフって、絶対に中の人は言い終わった後に「ゼハー……、ゼハー……」言ってるだろうな。
それ以前に……、牧達……、このセリフを完全に言い切りやがった……、野球で培った肺活量は伊達じゃないと言った所か?
そんな感情が胸の内で湧いてくる一方で、当の牧達が搭乗するラムは脇腹に突っ込んだマチルダをグイグイと押して行く。
そして、最終的には川に沿って設置されていた”ガードレールとフェンスを突き破る”様な形で、マチルダを川に突き落とす。
「………」
『『………』』『うわぁ、当て逃げだ』『警察24時だ、警察24時』
この光景を前に俺と裕也、木場は3人揃って絶句し、玄田は「当て逃げ」を連発、葵に居たっては玄田の言葉に連鎖するかの様に「警察24時」を連発している。
っていうか……、牧達よぉ……、お前ら存在感薄い癖にやる事が何気にゲスイな……。
そんな感情が巻き起る中、当の牧達から無線通信が入ってくる。
『副隊長、大丈夫ですか?』
「あぁ……、何とかな……、礼を言わせて貰うぜ」
『いえいえ、礼には及びませんよ』
そう俺の礼に対し、軽く返してくる牧達。
この間にも先程、突き落とされたマチルダのクルーだろうか、外から「この人殺しー!!」みたいな女子の声が聞こえるんだが……、気のせいだよな?
そうだよな……、気のせいだよな……、気のせいにしておこう……、うん……。
牧と会話しながら、外から聞こえてきた聖グロリアーナの女子の叫びに対し、胸の内でそう思いながら俺はこう言葉を続けた。
『よし……、お前も隊長の指示は聞いたな?早い内に合流するぞ』
『了解』
そう俺の指示に対し、牧がそう復唱を返すと共に5式とラムが走り出そうとした瞬間だった。

ズドドドドォーン!!

この凄まじいオードナンス QF 32ポンド砲の爆音と共にラム巡航戦車の後ろにあった家が5件の程、『木っ端微塵』と言う言葉が似合うぐらいに吹っ飛んだ。
いや……、「吹っ飛んだ」じゃ駄目だ……、”爆散&消滅”だ。こっちの方がしっくり来る有り様だからな。
そんな感じで家々が消滅すると同時に、俺達に目の前に居たラムは「ズドォォォーン!!」と言う凄まじい爆発音と同時に、まるでアクション映画で吹き飛ぶ車の様に”2~3m程、上空を舞う”
そして、宙高く舞い上がったラムは引力に引かれ、最後は「ドガッシャーン!!」と言う音を立てて地面に叩きつけられる。
『『『『『うわぁぁぁ!?』』』』』
『なっ!?』『なんだとォォ!?』『えっ!?えっ!?えぇぇっ!?』『なぁぁぁー!?』
「っ!?」
吹き飛ばされた牧達はおろか、それを目撃した俺達は愕然とした。
そりゃそうだろ!?普通の車なら兎も角、30トン以上ある鋼鉄の塊である戦車が2~3メートルも宙に舞うって……。
SF映画で宇宙人のUFOにでも吹き飛ばされるか、イラクやアフガニスタンの戦場で使用されている”即製簡易性爆弾”でやられるかだぞ!?
ちなみに”即席簡易性爆弾”とは、不発弾などに無線式の起爆装置をセットし、それを敵の戦車の進路に設置して、敵戦車が来た際にドカン!!と爆発させる兵器だ。
その威力は凄まじく米軍の”M1A1エイブラムス戦車”やイギリス軍の”チャレンジャー戦車”を一撃で大破、爆発炎上させる程だ。
なので、現在、米軍やイギリス軍で使用される戦車や装甲車にはこれら対策が施されているぞ。


んで、吹き飛ばされたラムの後ろに視線を向ける。
すると、そこには吹き飛ばされた家々をバキバキと踏み潰しながら俺達に向かってくるトータスの姿があった……って、ヤベエエエッ!!
あんな威力を見せ付けられた挙句に、今度はその威力をマジマジと味わう事になるのか!?それだけは絶対に勘弁だ!!
俺はそう思うと同時に大声で裕也達に対し、戦闘指示を飛ばす。
「裕也、葵、1時方向にトータス!!照準を定め次第、直ちに発砲しろ!!」
『あの化け物戦車か!!』『マジか!!』『勘弁してー!!』『びゃー!!』
そう俺の指示に対し、裕也達は大急ぎで戦闘指示を整えるとトータスに向けて砲撃を行う。
だが、その俺達の砲撃はトータスの分厚い正面装甲に傷を付ける事すら出来ない。
あー!!もうチクショー!!やってらんねーぜ!!
弾き飛ばされる砲弾を見つめながら、そんな感情が巻き起こる中、俺は裕也達に向けて状況の報告を行う。
「撃破失敗だ!!」
『畜生!!』『もう勝てる気がしねぇ……』『ラスボスかよ……』『もうイヤー!!』
俺の報告に対し、裕也達がそう悲痛な叫びを返した瞬間だ。
再びトータスのオードナンス QF 32ポンド砲が爆音と共に火を噴き、砲弾を勢い良く放つ。
そうして、放たれた砲弾は俺達の5式の後方にあったマンションに命中。
トータスの砲弾が命中したマンションはガラガラと音を立てて崩壊する……って、おいおい!!
そんなやばい威力の戦車を俺達は相手にしているの!?逃げるが勝ちだな、こりゃ!!
そう思った俺は全力で木場に向けて退却指示を飛ばす。
「木場、合流地点まで退却だ!!退却しろー!!」
『りょ、了解っ!!』
この俺の出した撤退命令を受け、木場は間髪を入れる事無く5式を合流地点へと向けて走らせる。
その様子をトータスの車内から見て、ジッパーはニヤリとほくそ笑みながら、ゴッドハンマー隊に対し無線通信を入れる。
『ゴッドハンマー1号車、我に続け』
『サー・コマンダー・サー!!』
ジッパーの指示に対し、セントーの戦車長は言葉を返すと、ジッパーのトータスの後に続く様にセントーを走らせる。
それと同時にトータスより素早い装填が可能で、連射が効くセントーは俺達に向けて、次々と砲弾を放ってくる。


俺達はその砲撃を必死に交わしながら、みほ達との合流に向けて必死に逃亡する。
同時に俺達の5式も負けじとトータスとセントーに対して、砲撃を行う。
そりゃ、俺達だって一方的に撃たれる訳にも行かないからな!!
と言うか、尺だからな!!出来る限りの悪あがきをしてやる!!
胸の内でそう思いながら、後方より次々と飛んでくるセントーの砲撃で吹き飛ぶ家々や車、ビルの破片などを見ながら俺は戦闘指示を出す。
「裕也、砲塔旋回!!目標、6時の方向のトータス!!照準定め次第、直ちに撃て!!玄田は直ちに装填しろ!!」
『『了解!!』』
俺の出したこの戦闘指示に二人はそう復唱すると、直ちに準備を整える。
まず玄田は徹甲弾を素早く装填し、裕也は砲塔旋回レバーを操作して主砲を後方に居るトータスに向けていく。
そして、二人は俺の出した指示を実行し終えるなり声を揃えて報告してくる。
『装填完了!!』『同じく、照準良し!!』
「撃て!!」
二人の報告を聞いた俺が間髪入れる事無く砲撃指示を出し、それに答える様に裕也がトータスに向けて三度砲撃を行う。
だが、結果は予想通りと言うか、言うまでも無くトータスの分厚い正面装甲に弾かれるだけだ。
まったく……、あんなのマジマジと見せ付けられたら、やる気なくすぜ……。
まぁ……、やる気以前の問題だと思うけどさ……。
弾かれる砲弾を見て、俺が胸の内でそう思っていると、照準機越しに俺と同じ光景を見た裕也が怒り交じりにこうボヤく。
『畜生!!これじゃ勝ち目が無いぞ!!』
『裕也、唐辛子でも食って体に渇を入れれば?結構効くかもよ?』
『ジョッキー・チュウンの「極秘計画A2」かよ!!』
裕也のボヤキに対し、葵が”香港の大御所アクション俳優”である『ジョッキー・チュウン』の名作映画『極秘計画A2』を例えにそう言ってくる。
その映画は俺も裕也も見ていて、葵が言っている唐辛子のシーンも勿論知っている。


確か……、クライマックス付近で敵に追い詰められたジョッキーが自分を奮い立たせ、渇を入れる為に屋台にあった唐辛子を思いっきり喰らう……と言ったものだった気がする。
見てみるだけでも口の中がヒリヒリして来そうなシーンだ……、やったジョッキー自身もエンディングのNGシーン集で”辛さの余りに思いっきり吐き出して、スタッフから水を貰っている”シーンがある程だしな……。
俺も裕也もあのシーンの再現だけは、大金払われてでもやらないぜ……。
え?お前は頭部ダメージが多いから、ジョッキー映画でも「『警察物語』のカーチェイスで、ガラスを突き破ってバスから落下する犯人役」がピッタリだ?頭部ダメージ的な意味で?
ざけんじゃねぇよ!!あのシーンも知っているが、あれは”撮影中に発生した事故”だっんだぞ!?
まぁ……、映画の内容が内容だけに全く違和感が無いけどな……。
っていうか、同じく警察物語のワンシーンで”ジョッキーが、逃亡する犯人がバスジャックしたバスに傘でぶら下がって振り回される”シーンがあるけど、裕也なら割と本気で出来そうな気がする。


葵の言葉を聴いて、そんな感情が胸の内で湧いてくる中、俺は後方に居るセントーとトータスの様子を確認するべく覗き窓を覗き込んだ。
すると、そこにはトータスの主砲が俺達を照準に定めた事を示すかの様に”黒い点”が俺達の5式に向いていた。
って言うか……ヤバイ!!トータスの野郎が、俺達に照準を定めやがった!!
俺はその事実を知るや否や、大声で木場に対して回避行動の指示を飛ばす。
「木場、狙われているぞ!!右に移動しろ!!」
『えっ!?』
「ボサっとするな、急げ!!」
『わ、分かった!!』
狙われていると言う俺の報告が信じられない様子の木場に対し、俺は尻を蹴り上げるかの様に回避行動を指示する。
コレを受けて木場は半場、慌てた様子で操縦桿を操作して5式を右に移動させる。
それから、0.1秒も経たない内に後方に居るトータスが凄まじい32ポンド砲の砲声を上げ、砲弾を放ってくる。
ひえええ~っ!!聖グロリアーナの連中は、あんなのをぶち込むつもりだったのか!?
近くに居ると骨の髄まで響いてくるトータスの砲声。
それを聞いた俺が思わず恐怖に駆られ、体中の血がサーっと引いていくのが手に取る様に分かった。
いやぁー……、ありゃ本気でやばい奴だわ……。
そんな感情がドッと湧いてくる中、俺達の5式に命中する事無く飛んでいったトータスの32ポンド砲弾は最終的に俺達の前にあった”古い民家”に命中。
その凄まじい32ポンド砲は民家に命中するなり、「チュドオオオオンッ!!」と言う爆音と共に炸裂。
民家は先程、ラムを吹き飛ばす際に巻き添えとなった家と同じ様に木っ端微塵に爆散した。
その民家の住人である”中高年の親父が所有する、大量のエロ本秘蔵コレクション”を辺り10キロ圏内に撒き散らしながら。
っていうか、よーくここまで大量のエロ本を集めたもんだな……。
降って来るエロ本を前に、そんな感情がドッと湧いてくる。
「ぎゃあああああ、俺の秘蔵コレクションがあああっ!!」
『まぁ……、何とも……、紳士向けな本だこと……』
『お、男ってこう言うのが好きなんだね……、みぽりん……(木場君に”コレ”をやったら喜ぶのかな?)』
(何でだろう……、寒気……、と言うか悪寒がする……)
その一方で観客席からは、そのエロ本の所有者である中年親父の悲鳴が炸裂すると同時に沙織、ダージリン達は揃ってドン引き。
更に詰めて言うと沙織は”夜戦技術”の一部を見て、木場に思いを寄せ、当の木場が悪寒を覚えていた。
んで、その一方で葵は5式の上に振ってきたエロ本を見てハッスルしている……って、オイッ!!
「未成年(※龍達は全員17歳)がエロ本読んでじゃねぇ!!(ゲシッ!!)」
『何をするだァーッ!』
葵の頭部に全力で蹴りを入れながら、突っ込んできた俺に対して、当の葵は副砲の照準機に顔面をぶつけながら、どっかで聞いた様なセリフを言い放つ。


そんな葵の悲鳴を聞きながら、俺はキューポラの覗き窓を覗き込むと直ぐ近くにみほとの合流地点が迫っている事を知る。
何とかココまで来れたな……、みほはきっと無事だよな……?
合流地点を前にして、そんな心配が沸いて来た俺はみほに対して報告を兼ねた状況確認を行う。
「みほ、聞こえるか!?こちらDチーム!!現在、合流地点より200メートル地点にてトータスとセントーにケツを噛み付かれた!!そちらの状況を教えてくれ!!」
『こちらAチーム!!こちらの方も現在、チャーチルとマチルダに追撃させています!!』
「了解!!全く、揃いも揃って最悪の状況だな!!」
みほの報告を聞いて、俺が思わず胸の内に浮かんだ事を口から吐き出す側でみほは冷静に無線機越しにこう言葉を続けた。
『龍君、とりあえず今は合流地点で合流する事を最優先でお願い!!』
「了解、それまで無事で居ろよ!!」
『龍君もね!!』
俺とみほは無線機越しにそう言葉を交わした後、必死になって聖グロリアーナの追撃を回避しながら合流地点へと急ぐ。
それから、約数分程度が経った頃には5式は合流地点から目と鼻の先の距離にまで接近していた。
よーくココまで無事に逃げて来られたもんだな……、自分で自分を褒めたい気分だ……。
キューポラの除き窓越しに見える合流地点を前にそんな感情が湧いてくるのを感じつつ、俺はみほ達の4号を確認する。
俺達と同じ様に聖グロリアーナのチャーチルとマチルダにケツを噛み付かれた状態で。
その様子を見ながら、俺は操縦主の木場に向けて大声で指示を飛ばす。
「Aチームを確認した、合流するぞ!!木場、B876に向けて全速前進!!一気に引き離すんだ!!それとトータスはアホなまでに主砲が長いから、カーブを大回りでしか回れない!!だから、俺達はカーブを小回りで回って距離を稼いだら一気に加速しろ!!」
『了解!!』
俺の指示に木場はそう返しながら、5式のアクセルを目一杯踏み込んで、合流地点へと向かって走らせる。
セントーは兎も角……、トータスは5式ほどスピードが出なくて助かるぜ!!
キューポラの覗き窓越しに引き離されるトータスを見て胸の内そう思う側で、木場は俺の指示通りにカーブに突入すると同時に小回りで回っていく。
流石は航空自衛隊の戦闘機パイロット志願!!
お前絶対、アメリカ海軍&空軍じゃ『|トップガン《エリートパイロット》』認定だぜ!!
っていうか、そもそも航空自衛隊における戦闘機パイロット自体が”航空自衛隊において3%しか居ないエリート中の超エリート航空自衛官”だからな!!
そんな物を志すって事は何らかの素質あるよ、お前!!
俺が胸の内でそう思っている間にも木場の操縦する5式は交差点を小回りで回っていき、交差点の右から出てきたみほ達の4号と素早く合流する。


それと同時に5式と4号は木場と麻子の的確な操縦によって、続け様に左カーブを綺麗に曲がっていく。
っていうか、麻子……、お前操縦スゲェ上手いな!!
流石は練習試合の途中で参加して、物の数秒で操縦をマスターしただけはあるな!!
キューポラの除き窓越しに4号の動きを見て、そう思っている間にも聖グロリアーナは手を休める事無く俺達を追撃してくる。
そうして、俺とみほ達が別のカーブに差し掛かり、それを曲がっていく側で曲がりきれなかった1台のマチルダが旅館に轟音と共に突っ込む。
うひゃー……、これ試合じゃなかったら普通にニュースになりそうだよな……。
もはや原形を留めない程にグッチャグチャになった、旅館の玄関を見て胸の内でそう思う俺に対し、当の旅館のオーナーは……。
「うちの店ががあぁぁぁーっ!!これで新築できる!!」
俺の予想と裏腹に戦車道委員会の規定による『戦車道の試合中における損害は全て戦車道委員会が補償する』と言う事から、来る無償の新築リフォームに胸を躍らせていた。
「いいなー、うちの店にも突っ込んでくれないかな?」
「いやいや、それよりもあの|馬鹿でかい戦車《トータス》で木っ端微塵の方が……」
そんな旅館のオーナーの喜ぶ様子を見て、同じ商売仲間のおやっさん達が羨ましそうに指を咥えていた。
だが、そんなおやっさん達の事なんぞ知る由も無い俺とみほ達は必死になって飛んでくる砲撃回避しながら、大洗の町を逃げまくる。
っていうか、もう既に大洗の町の3分の1は壊滅状態じゃないのか?主にトータスのせいで。
そんな感情が胸の内で湧いてくると同時に、必死になって大洗の町を所狭しと逃げ回る俺達に対し、業を煮やしたジッパーは砲手に向け、この様な指示を飛ばす。
『砲手、前方のマンションを狙え!!マンションを壊して、奴らの逃げ道を塞ぐんだ!!』
『サー・コマンダー・サー!!』
そうジッパーの出した指示を受け、トータスの砲手はゆっくりと俺達の前にあるマンションに狙いを定めると一気にトリガーを引いた。


瞬間、32ポンド砲が轟音と共に砲弾をマンション目掛けて放たれ、それが命中したマンションはガラガラと土煙を上げながら完全に崩壊する。
その際に出たマンションの瓦礫は周囲の家々を巻き込む様な形で道路を完全に封鎖してしまう。
「ちっ、木場戦車停止だ!!」
「冷泉さん、戦車停止!!直ちに旋回、6時の方向!!」
この光景を見た俺とみほが慌てて、木場と麻子の両操縦主に対して旋回の指示を飛ばすと2人は指示通りに5式と4式を旋回させていく。
だが、新地旋回した先には聖グロリアーナの戦車達が一同揃って俺達を待ち受けているのだった。
「全く……、絵に描いた様な最悪の状況だな……」
「………」
俺とみほが揃って俺達に主砲を一斉に向ける聖グロリアーナの戦車達を見つていると、チャーチルのキューポラを空けて雌型隊長のダージリンが出てくる。
そうして、出てきた彼女は「ふっ」と笑みを浮かべながら俺とみほに向け、こう言い放つのだった。
「お2人方はこんな格言を知っていますか?”イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ば無い”」
そうダージリンが俺とみほに向け、意味深なジョークを呟く側でジッパーは搭乗しているトータスの上で右手を大きく振りかざす。
その手が振り下ろされると同時に聖グロリアーナの戦車達は一斉に俺達に砲撃を行うのだろう……。

もう悪あがきをしても勝てる訳が無い……、これまでか……。

向けられた多数の主砲の黒い点を前にそんな感情が湧いてきた瞬間だった。
突如として、俺の5式とみほの4号とは違う戦車のエンジン音が聞こえ来たかと思った瞬間。
『さんじょー!!』
この会長の軽快な掛け声と共に先程、スタックしていた生徒会の登場する”黄金の38t”が俺達と聖グロリアーナの間に割って入るような形で登場する。
俺の予想に過ぎないが、多分、スタックした後、小山先輩が一人でヒイヒイ言いながら直したか、審判団に無線連絡して戦車道委員会の整備班を寄越して貰ったんだろうな……。
そんな考えが、ふと脳内を過ぎる中、無線機から河島先輩の意気揚々とした声が聞こえてくる。
『これでクタバレ!!発射ーぁっ!!』
そう自信満々に言い放ちながら、河島先輩が砲手を務める38tは砲声高らかに砲撃するが……、まさかの鼻先3メートルで外すと言う軌跡の大技を見せ付けるのだった。

って、ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?
おいおい……、河島先輩……、下手にも程がありますよ……って言うか、38tに欠陥でもあるんですか!?

ちょっと余りにも信じがたい光景を前にして、俺の胸の内でそんな考えが巻き起こる側では沙織や裕也達の困惑した声が聞こえてくる。
『えっ!?』『嘘でしょ!?』『そんな事、あるの!?』『駄目だこりゃ……』
『おいおいおい……』『戦犯だ、東条英機並みの”超A級戦犯”だ!!』『………』
呆れや絶望、怒りの混じった沙織や裕也達の叫びが、4号と5式の中でこだまする中、ただ一人葵が冷静にこう言い放つ。
『まぁ、でも当たっても貫通出来ないと思うけどね』
『た、確かに……』
葵の発言に対し、秋山が肯定する様にそう言い放つ。
確かに葵の言う通り、トータスやチャーチルやマチルダの前面装甲は非常に分厚い事で有名だ。
その分厚さを証明する様にこれらの戦車を撃破するには、88ミリ砲を搭載するタイガー戦車を持ってくるしか無いとも言える訳だ。
だが、それをもってしても、チャーチルやトータスを撃破するのは骨が折れる様な苦労をしなければならない……。
そんな戦車相手では、小口径の主砲である38tに勝ち目が無いのは目に見える事だ……。
っていうか、そんな事を考えている様な状況じゃないな!!
俺がそう思った矢先には、38tは聖グロリアーナの戦車達による”連続0距離射撃”の雨霰を物の見事に喰らい撃破される。
それと同時に”一瞬、僅かばかりの隙”が生まれ、俺とみほはそれを見逃す事無く、木場と麻子に向けて大声で指示を飛ばす。
「冷泉さん!!前進、一撃で離脱して!!路地左折!!」
「木場、前進しろ!!俺達は路地右折、家の壁をぶち抜け!!」
そんな俺とみほの指示を受けて、木場と麻子は同時に戦車を猛スピードで前進させる。
コレと同時に華と裕也が両脇に居たマチルダとセントーに砲弾を放ち、両車を撃破すると俺とみほは素早く分かれて逃亡する。


そんな後一歩と言う所で逃げだした俺とみほを見て、ダージリンとジッパーは共に声を張り上げて指示を飛ばす。
「全車、大至急回りこみなさい!!」
「ダージリン、5式は俺だけで対処する!!お前は4号を頼む!!」
「えぇ!!」
そうダージリンとジッパーが言葉を交わし、追撃を再開する中で俺は5式の覗き窓からトータスの様子を伺いながら大声で指示を飛ばす。
「木場、これより先の交差点に到着したら壁に寄せろ!!玄田は砲弾を再装填しろ、急げ!!」
『『了解!!』』
「裕也と葵はトータスが交差点から出て来た所を狙い撃て!!」
『OK!!』
『ういっす!!』
次々と出した俺の指示に裕也、玄田、木場、葵が復唱を返すのを聞きながら、俺は三度キューポラの覗き窓から外の様子を確認する。
下手したら、さっきで撃破されたかもしれないのに……、俺達は生きている……。
もしかしたら、勝てるかもしれないんだ……、こうなったら絶対に勝ってやる!!
高校生になってから貴方に祈った事なんて一度も無いが、神様!!お願いしますぜ!!
そんな感情と共にキューポラから交差点が近づいてくる事を確認した俺は木場に向け、次なる指示を飛ばす。
「木場、戦車を180度旋回!!それと同時に5メートル、後退させろ!!」
『了解!!』
俺の出した指示に木場は復唱を返しながら、操縦桿を操作して5式を180度旋回させると素早くギアをバックギアに入れ、5式を後退させていく。
そうして、後退した5式は交差点から出てくるであろうトータスを今か今かと待ち受ける。
そして、数秒後には俺の予想通りに交差点からゴゴゴゴゴッ!!と桁違いな地響きと共にトータスが顔を出した。
「裕也、葵、撃てぇーっ!!」
俺がそう叫んだ瞬間には、裕也と葵は同時タイミングでトリガーを引き、主砲と副砲から砲弾を共に放つ。
だが、その砲弾は先程何度も繰り返された様にガキィン!!ガキィン!!と言う金属音と共に虚しくトータスノ銃装甲に弾かれてしまう。
『この距離でもか!?』『ふざけんな!!』『本日は「死に日和」かよっ!!』『もう駄目だぁ……、おしまいだあ……』
この光景を前に裕也が驚愕し、玄田が怒り、木場が裕也の出演したSF映画の主題歌を例えに死ぬ事すら悟って、葵が何処かの”ヘタレ サ○ヤ人王(笑)”の様な声を漏らす中、俺は裕也達のケツをケツバットするかの様に大声で叫ぶ。
「あきらめるな!!玄田、煙幕弾を装填しろ!!裕也は装填次第、発砲!!」
『『りょ、了解っ!!』』
そう俺にケツを叩かれた二人は素早く煙幕弾を装填し、照準機を覗き込む。
『煙幕弾、装填完了!!』
「トータスに向けて、撃てぇー!!」
そして、玄田から装填官僚の報告を聞いた俺は裕也に対して砲撃指示を飛ばす。
この指示を受けて、裕也は煙幕弾を轟音と共にトータス目掛けて発射する。


その煙幕弾はトータスに命中するなり、凄まじい炸裂音と共に炸裂して白い煙幕とモクモクと吐き出して、視界を白く塗りつぶしていく。
『煙幕だ!!全員、最大限に警戒するんだ!!奴らは接近戦を仕掛けてくるぞ!!』
トータスの車内でクルー全員に向けて、大声で警戒を促す側で俺は5式の車内で指示を飛ばす。
「木場、戦車前進!!トータスのケツを取るんだ!!玄田、今度は徹甲弾を装填しろ!!」
『『了解!!』』
この指示に対し、木場は5式を素早く操縦し、玄田は砲弾ラックから徹甲弾を取り出し装填していく。
俺はその様子と覗き窓から見える外の光景を見ながら、木場に向けて次なる指示を出す。
「木場、次は左を曲がれ!!」
『えっ、でも結構高級そうなキャデラックがあるけど……』
操縦主席の覗き窓から見えた路上駐車してあったキャデラックを指差しながら、そう言うが俺は大声でこう言い放つ。
「構うな、どうせ新車が支給されるんだ!!それでもタダで!!だから、問題ない!!」
『そういう問題かな……』
俺の返した言葉に対し、木場は腑に落ちない様子だ。大丈夫だと、思うぞ木場。
さっきの河島先輩の砲撃で”ガス爆発を起こして、木っ端微塵に吹き飛んだ焼き鳥屋”よりは損害額は少ないと思うし……、まぁ……、そういう問題じゃないんだけどね……。
胸の内でそう思っている頃には、5式が路上駐車していたキャデラックを豪快に踏み潰しながら、左カーブを曲がっていく。
それに伴い5式の下から聞こえてくるバキバキバキッ!!と言った金属音や破壊音を聞きながら、俺はキューポラの覗き窓越しに外の様子を確認する。
すると、俺に視界に先程俺達が放った白い煙幕に包まれた”トータスのケツ”が飛び込んでくる。


それを確認した俺は裕也と葵に対し、砲撃指示を飛ばす。
「裕也、葵、砲撃用意!!」
『『了解!!』』
そうして、裕也と葵が揃ってトータスのケツに向けて砲撃を行おうとした瞬間だった。
トータスが突如として、豪快なエンジン音を上げながら俺達を目掛けてバックしてくる。
それも”前進と変わらない程の猛スピード”で。
『『『『「え……っ!?」』』』』
この信じられない光景に俺達が驚いた……と言うか、固まった瞬間にはトータスが俺達の5式目掛けて激突した。
『『『『「うわああああああっ!?」』』』』
そんでもって、車内で俺達が叫ぶ側で”79t”と言う超ヘビー級の重量を誇るトータスにぶつけられた5式は軽々と弾き飛ばされるビー玉の様に飛ばされ、近くにあったパン屋に突っ込む。
だが、攻撃はそれに留まらず間髪入れる事無くトータスは5式に主砲を向けると轟音と共に32ポンド砲を放つ。
『『『『「おわああああああっ!!」』』』』
そんな至近距離で32ポンド砲の威力をマジマジと味わった俺達が悲鳴を上げる中、5式の上部ハッチから撃破を示す白い旗が上がる。
「え……、やられたのか……?」
『ま、マジで……?』
ピコーン!!と言う音と共に撃破された事を知った俺や裕也達が信じられない様子で呆然と顔を見合わせる側で、再び5式の外からドガァァァン!!と言う爆音が鳴り響く。
それから、数秒ほど経った後……、無線機から聞こえてきたのは……。

『4号、5式、共に行動不能!!それにより、大洗学園の全車両行動不能!!よって……、聖グロリアーナ学園の勝利!!』

大洗学園が聖グロリアーナに敗北したと言う報告だった……。