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動き出す、運命の歯車 前編

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<龍Side>
激戦に次ぐ、激戦の末に大洗の町の”5分の2”が吹き飛ばされ、その被害総額が想定で”約6億円”上ると推定される聖グロリアーナとの練習試合は俺達の敗北で幕を閉じた。
っていうかさぁ……、想定ながらも被害総額が約6億円って……、まぁ、その6億円の被害総額の中に俺達が破壊した物も入っているけどさ……、ちょっとした”局地的な地震か竜巻レベル”の大災害だぞ……。
ちなみに、どうして俺が練習試合における被害総額を知っているかって?
簡単だ。つい先程、解説者が「えー、この試合における被害総額はー……」みたいな事を言っていたのを聞いたからだよ!!
胸の内でそんな事を思っている中、真っ黒に汚れ、ボロボロになった制服を着た俺達の前を同じ様にボロボロになった戦車達がドイツ軍で使用されている戦車運搬車両である”SLT 50 エレファント戦車運搬車”に乗せられ、修理工場に向けて運ばれていく。
その状態といったら、もう酷い有様だ。
俺の乗る5式はトータスの砲撃を至近距離から喰らったせいで、正面装甲が大きく|凹《へこ》み、みほの4号は至近距離でチャーチルの砲撃を喰らった為に主砲は完全に裂け、所々が黒くこげている。
勿論、被害を受けたのは俺の5式とみほの4号だけでは無い。
最初に撃破された1年生達のM3リーは側面が焼け焦げ、履帯はゴムが溶けて骨組みだけになっている。
バレー部の89式は立体駐車場ごと吹き飛ばされた為か、片方の完全に履帯が吹き飛ばれて点輪がむき出しだ。
同じ様に野球部のラムも片方の履帯を吹き飛ばされたほか、主砲の6ポンド砲が物の見事にポッキリと折れてしまっている。
まぁ……、縦に2~3メートルも吹き飛ばされたら着地の際に主砲が折れてもおかしくは無いよな……。
先程の試合中でラムが吹き飛ばされた光景を思い返しながら、再び運ばれていく大洗学園の戦車達を見つめると今度は生徒会の38tが運ばれてくる。
コイツも中々、酷い有様だ。至近距離で多数の砲撃を喰らった為に装甲はボコボコに凹み、まるで調理に失敗した焼き魚の様に真っ黒こげ……、と言うか殆ど”墨”になっている。


これらの戦車は多少なりに被害の違いはあるが、共通して俺達が聖グロリアーナにコテンパンされた事を示していた。
「「「………」」」
「はぁ……」
そんな戦車達を見て、ズゥーンと押し寄せる疲労感&重苦しい空気が俺達を流れる中、沙織が深く溜め息を付きながらこう言い放つ。
「負けちゃったね……」
「あぁ……」
「最初だし、こんな物じゃない?」
沙織の呟きに対し、裕也が同意する様に溜め息混じりに言葉を続ける中、葵はケロッとして特に気にも止めていない。
お前……、幾らなんでも立ち直りが早過ぎやしないか?ずっと失敗を引き摺り続ける事が良くない事なのは百も承知だけど……。
少しは人間らしく悲しむなり、悔しがるなりしたら?
清清しいまでにケロッとしている葵を見て、俺が胸の内でそう思う側では悔しそうな声で華がこう呟いた。
「悔しいです……」
「そうですね、五十鈴殿……」
拳をギュッと握り締め、悔しがる側で秋山がこう言葉を続けた。
確かに……、華の言うとおりだ……、現に俺達は逆転できる一歩手前まで行ったんだ。
一度掴みかけた勝利を逃がしてしまう……、コレほどまでに悔しい事は世の中に無いだろう……。
この勝利を逃がしてしまった一員に指揮官である俺……、言いたくは無いが同じくみほが”指揮官として力不足”の所もあったんだろうけどな……。
何れにせよ、この敗戦の原因に俺が大きく関わっているのは確かだ……。
「………」
「龍君……」
「「「………」」」
胸の内でそう思っている内に口が開かなくなり、黙り込んでしまう俺を見てみほや裕也、沙織達まで揃って黙り込んでしまう……。
そうして何処と無く重苦しく嫌な黒味がかった色のズゥーンとした”敗戦の空気”が俺達を包み込んでいく。
日本がポツダム宣言を受諾し、太平洋戦争が敗北&終結した”1945年の8月15日”もこんな感じだったんだろうか……。
そりゃ……、比べちゃ不味いんだろうけどさー……、心境的に近い物を挙げたら一番ピッタリ当てはまったんだけどな……。


そんなズゥーンと重苦しく、ドス黒い空気を取り払ったのは突如として俺達に掛けられた女子の声だった。
「ちょっと、よろしくて?」
「……はい?」
ココに居るみほ達は愚か、チームメンバーの女子の誰でもない女子の声を聞き、俺は声を掛けられた方を振り返る。
すると、そこに居たのは、つい先程まで激しい戦車戦を繰り広げていた聖グロリアーナ戦車道チームの雌型隊長のダージリンだ。
その彼女の隣には、同じく聖グロリアーナ戦車道チームの雄型隊長であるジッパーと副隊長のドアーズの姿もあった。
っていうか、ノーブルシスターズ&ブラーザズが勢ぞろい!?サラッと流したけど、コレは何気に凄まじい光景だぞ!?
「うぉっ!?」
「の、ノーブルシスターズとブラーザズが!?」
「ど、どう言う事なの!?」
そんな感情と共に思わず驚愕の声を上げてしまう俺の側では、秋山と沙織が俺と同じ様な感じで驚愕していた。
だよなぁー……、試合前に聖グロリアーナの全生徒はおろか、うちの1年生まで巻き込んで黄色い歓声を浴びていた人達が目の前に居るんだから……。
そんな人達が一体、何の目的で『勝てば官軍、負ければ賊軍』の賊軍である俺達に合いに来ているんだろうか……。
胸の内でそんな感情が湧いてくる中、葵はダージリンの姿を見てこうボヤく。
「うひょ~……、ドべっぴんさんやなぁー……」
おい、葵……、出来ればその種の”顔に泥を塗る”様な発言は止めてくれ……。
相変わらず無駄に安定している葵の発言を聞いて、そんな感情がふと湧いてくる中、当のダージリン隊長は葵の発言を気にも留めない様子だ。
それどころか、逆に俺とみほ達の元にやって来ると俺に向け、こう問い掛けて来る。
「貴方達が大洗学園の隊長と副隊長からしら?」
「あぁ……、はい……、自分が大洗学園の雄型隊長並びに副隊長で、彼女が雌型隊長並びに隊長です」
そう問い掛けてきたダージリンに対し、俺はみほを紹介しながら返事を返す。
この俺の紹介に対し、みほはオドオドしながらダージリンとジッパーに向け、ペコリと頭を下げて会釈する。


コレに対し、ダージリンとジッパーの二人はみほの会釈を受け入れると続け様にこう問い掛けて来る。
「二人共、お名前は?」
「自分、喜田川龍と申します」
「喜田川……、龍……、何処かで聞いたような名前だね……」
そう俺の名を聞いたジッパー隊長はそう一言呟くと、あごに指を当てて思い出す様に「う~ん」と言った声を上げる。
個人的に知り合う以外で俺の名前を知る機会って……、アレしか無いか……。
ジッパー隊長の様子を見て、個人的に思い当たる唯一のケースを思い返していると当のジッパー隊長も思い出したらしく「あっ!!」と言いながら、手をポンッ!!と叩くと俺に向け、こう言い放つのだった。
「そうそう、確か、前にテレビで放送されていた戦車道の練習試合でパンターを撃破したM24チャーフィーの戦車長が、君だったよね?」
「あぁ、ハイ……、その通りです」
うわぁー……、前に秋山も言っていたシーンだ……、そこまで有名なのかぁー……。
確かに物凄く印象深いシーンといえば、そうだけど……、当の本人はそこまで印象深くないですよ……。
何故だか、尊敬にも近いような視線でジッパー隊長が見つめてくるのが地味にキツイ……、新手の精神的テロ攻撃ですか……。
ジッパー隊長の視線によって胸の内が地味に痛んでいるの感じている俺の側で、ダージリン隊長はみほに対し問い掛ける。
「貴方のお名前は?」
「あ、はい、西住みほです」
「西住……?西住って……、あの西住流の?」
ダージリン隊長はみほの”西住”と言う苗字を聞いただけで、みほが西住流の血を引く者である事を見抜いた。
流石は準優勝の経験もある戦車道チームの雌型隊長&戦車道における天下の西住流と言った所か……。
ダージリンの言葉を聞き、そんな考えが沸いてくる中で当のダージリンの本人はこう言葉を続けた。
「やはり、そうでしたのね……、前に”お姉さん”とも戦いましたが……、貴方は随分と違うのね……」
「………」
そうダージリン隊長が意味深に言い放った、”お姉さん”とはみほの実の姉である”西住まほ”の事だろう。
今、実家でギクシャクした立場に居るみほからすれば、お姉さんは複雑な心境でしか見れないのだろう……。
幼馴染の立場である俺だが……、確かに実家の関係がギクシャクしているのは嫌だろうな……。
ダージリン隊長の言葉に表情を曇らせるみほを見て、そんな考えがふと沸いてくる中、腕時計を見つめていたジッパー隊長がこう言い放つ。
「ダージリン、悪いが……、もう時間だ」
「あら……、残念ですわね……、もし今度会う機会があればゆっくりとお茶でも飲みながら話したい物ですわね……、それでは御機嫌よう」
ジッパーの言葉を聞き、ダージリンは残り惜しそうにそう告げるとジッパーと共に後ろを振り返って立ち去っていく……。
「あぁ、そう言えば……」
だが、その途中でジッパーが何かを思い出したかの様に俺達のを方を振り返るとこう言い放つ。
「君達は知っているかい?『大洗学園には、猛獣2匹と怪物が眠る』って、都市伝説を?」
『大洗学園には、猛獣2匹と怪物が眠る』……?
何だその軍事暗号みたいな物は……、”日本海軍における真珠湾攻撃開始の暗号”である『ニイタカヤマノボレ』じゃあるまいし……。
ジッパー隊長の言ってきた、この謎めいた言葉に対して俺はそんな複雑な心境を持ちながらジッパー隊長に返事を返す。
そんな返事を返す俺の側に居るみほや裕也、沙織達も何のことだかサッパリらしく、頭に「?」を浮かべている。
ジッパー隊長は、そんな俺達を見て「フッ」とほくそ笑むと続けて、こう言い放つのだった。
「次に再戦するときは、その猛獣と怪物を起こしてからな」
そう再戦を楽しみにしているのか、挑発しているのか分からないが……、ジッパー隊長はそう言い放つとダージリン隊長やオレンジペコ副隊長、ドアーズ副隊長達と共に聖グロリアーナの待機場所へと戻っていく。


そんな聖グロリアーナ隊長陣の背中を俺達が呆然と見つめていると、今度は聞き覚えるのある声が聞こえてくる。
「やぁ~、皆~、負けちゃったねぇー」
この以上に間延びして、緊張感が一切感じられない女子の声は……、我らが大洗学園の生徒会会長の角谷会長だ……。
そんな会長の声がした方を俺達が振り返ると、そこには会長を中央に小山先輩と河島先輩が両脇に立っていると言う”いつもの光景”があった。
っていうか……、会長達が来たって事は……。
「約束通りやってもらおうか、”罰ゲーム”」
「「「「「「「うっ……!!」」」」」」」
河島先輩が言い放った罰ゲームという言葉を前に俺とみほ達(※裕也は除く)は揃って苦虫を潰したような表情になる。
そりゃそーだろーなぁぁぁーっ!!(※めっちゃ怒り混じりです)
今から、俺とみほは揃って”末代まで受け継がれるであろう罰ゲーム”を受けないといけないんだから!!
俺と裕也、玄田、木場、葵は5人揃ってプロレスショーでの”噛ませ犬”、みほ達はメンタルの弱い女子なら崖からホップ、ステップ、ジャンピングしかね無い様な辱めである”アンコウ踊り”を踊るんだぜ……。
うわーん、”ヘ○リア”として少し前まで、ネット上などでよーくネタにされていたイタリア軍じゃないけど、全力で逃げたい!!
そう思う俺の側では、みほ、裕也、沙織達が揃いも揃って”この世の終わりに直面した”かの様に絶望に打ちひしがれた表情で会長を見つめていた。
すると、会長が俺達の心情を汲み取ってくれたのか「ニヤーッ……」と超不敵な笑みを浮かべ、河島先輩と小山先輩に向けてこう言い放つ。
「まぁまぁ、二人ともこう言うのは”連帯責任”だから」
「えっ!?」「会長、まさか!?」
「うんっ!!」
河島先輩と小山先輩の驚愕した表情を両脇に会長は満面の笑みでこう言い放つのだった……。





……

………



それから、数十分後……。
「あ、あ、あん、あん~♪あ、あ、あん、あん~♪」
と言った感じの、猛烈な電波ソング……、もとい”アンコウ踊り”が大洗の町中に鳴り響いていた。
うひゃー……、この曲……、マジで耳に残るねぇー……。
いや、耳に残るなんてレベルじゃない……、鼓膜に焼き付くと言った方が正しいな……。
っていうか、この曲の作曲者はどんな”ドマゾ野朗”だよ……。
聞こえてくるアンコウ踊りの恥ずかしい歌詞&音楽を聞き、そんな考えが沸いてくる中、俺はプロレスショーの待機テントで裕也達と共にプロテクターを装着していた。
はぁー……、マジでプロのレスラーに殴られないといけないのか……、俺はアンコウ踊りの作曲者の様にドマゾじゃ無いんだぞ!!
怒り交じりの感情が胸の内から湧いてくる中、俺は隣に座ってプロテクターを装着する裕也に対し話しかける。
「はぁ……、気分はどうだ裕也?」
「あ?別に姉貴に頼まれて出た映画でのスタントに比べれば、楽な仕事だぜ。まぁ、アクションの台本が無いのが地味にキツイな」
「そりゃ、スタントマンのバイトなんてしてたらな!!」
ったく、アイドルの姉貴を持つと人生相当変わるものだな!!
どんなセリフだよ「まぁ、アクションの台本が無いのが地味にキツイな」って!?
お前、自衛隊に勤めて除隊したら、本気で芸能界デビューした方が良いんじゃないのか!?
この前、沙織が「皆でカラオケに行こうよ!!」と言って事をキッカケに俺とみほ達行ったカラオケ店の採点機能で、平均が『91点』だっただろ、お前!?
流石はテレビのカラオケチャレンジ企画で100点を叩き出した、脅威の歌唱力の持ち主である姉貴の遺伝子を受け継いだ事はあるな!!

え、「お前のカラオケ平均点数は?」だって?『平均76点』だよ、悪いか!?

胸の内で、そんな考えが沸いてくる中、先にプロテクターを装着し終えて、テントの外を見ていた葵が何かに気付いたらしく興奮気味に校言い放つ。
「おい、女子達が来たぜ!!ピンクの全身タイツ姿で!!」
「なにぃぃぃー!?」
葵の言い放った、この何気にトンでもない報告を聞いた玄田が葵と同じ様に興奮気味で食い付く。
この野朗共……、二人揃ってガソリンぶっ掛けたら、即着火して”無駄に盛大なキャンプファイヤー”と洒落込んでやろうか?
っていうか、葵……、お前はそれだからモテないんだよ……。

へ、「沙織がモテない理由?」だって?
うーん……、思いを寄せる木場の事になるとヤンデレ化するから?

女子のピンクの全身タイツ姿に興奮する葵と玄田を前にして、そんなドス黒い感情が湧いてくる中、俺も裕也&木場と共にテントの外を覗き込んだ。
すると、そこには葵の言った様にピンクの全身タイツを身に纏ってアンコウ踊りを踊るみほと会長達の姿があった。
うわぁー……、流石にアレは恥ずかしいわー……、見ている方が思わず顔を背けたくなるほどだ……。
そんな感情と共に思わず顔がカァーッと赤くなるのを感じながら、俺はみほ達に視線を向けた。
俺の向けたその視線の先では、みほと会長達が各自違った様子でアンコウ踊りを踊っている。
まず、みほだが……、無駄にバランスの取れたスタイル……、じゃなくて!!
「ふえぇぇぇ~!!」
と、言った感じに顔を着ているピンクの全身タイツと同じ色になりかねない程に真っ赤に染め、所々で踊りを間違えながらも必死にアンコウ踊りを踊っている。
「もうお嫁に行けない!!」
「仕方ありません!!」
その隣では絶望したかの様に悲痛な叫び声を沙織が上げ、秋山が吹っ切れた様に必死になって踊っている。
「恥ずかしいと思うと余計に恥ずかしくなります!!」
「………」
更にその隣でアンコウ踊りを踊る華は顔を赤くしながらも、シッカリと踊り、麻子に至っては見事なポーカーフェイスで黙々と躍り続ける。
そして、その更に隣では会長、小山先輩、河島先輩の生徒会3人組が手馴れた様子で躍っている……、っていうか会長達は経験があるのか?


そんな考えがふと沸いてくる中、俺と裕也、木場の3人はこう言葉を交わす。
「あれは……」
「恥ずかしいな……」
「今日ほど、”男に生まれて良かった”と思った事は無いよ……」
全く木場の言う通りだ……、今日ほど男としてこの世に生まれた喜びを噛み締める日なんて二度と来ないだろう……。
あと、みほが予想以上にスタイル良かったのが地味に驚愕の真実なんだけど……。
っていうか、何を考えているんだ俺は!?葵が発生源の”未知のウィルス”にでも感染したのか!?
何だ!?「頭が偉く良くなるが、無駄に性欲が盛んになる」と言ったウィルスか!?
そんな考えがふと頭の中を過ぎる中、当の葵とその相棒である玄田は揃ってニヤけていた……、この下種の極みが……。
胸の内で俺は思いながら、大よそ答えの予想が付く問いを二人に投げかける。
「おい、お前ら何を興奮しているんだよ……」
「「いやぁー、何人かのオパーイが威勢よくバインバインと……((バキッ!!))ギャホォーッ!!」」
予想可能・回避不可能な答えを見事に決めてくれた葵と玄田の顔面に俺と裕也の拳がめり込んだ。
そりゃそうだな、セクハラってレベルじゃない発言をぶちかましているんだから……。
「はぁ……、全くこいつ等は……」
「あぁ、玄田は兎も角……、何で葵は頭脳こそ超一流なのにやる事全てが馬鹿なんだ……」
「アハハハ……」
バカコンビが2人して悶絶しているを見て、溜め息混じりに言い放った俺と裕也のボヤキを聞き、木場が苦笑していた。
そう言えば最新の現代科学で明らかになったが、人間の個性は遺伝子レベルではたったの0.1%程度しか違いが無いらしい。
喩え天才的な学者と知的障害を抱える子供でもだ。
つまり、潜在能力と言う点じゃ天才と馬鹿と凡人の差は殆ど無いそうだが、そのたった0.1%の違いが葵や玄田の馬鹿&天才振りや裕也の格闘センス、木場のイケメン振りと言った才能の差を決定付ける最大の要因だってのかね?
だとしたら世界の仕組みは想像以上に残酷で、どうしようも無く理不尽過ぎるぜ……。
ただ、この0,1%はあくまでも人間の外見的特徴の違いだそうだが、その殆ど無いも同然の違いが人間の才能や素質、スペックの有る無しを決定付け、その後の人生すら決めてるとしたら……、考えるだけでもゾッとするぜ……。
そんな感じで謎の悪寒で背筋がゾッとするのを感じていると、テントの入り口が開いてプロレスショーのスタッフが入ってくるなり開口一番こう言い放つ。
「皆、準備できた?あと30分で始まるからね!!」
スタッフはそう淡々と俺達に告げると、足早にテントを出て行く。
「「「「はぁ……」」」」
その様子を見て、裕也を除く俺達は深い溜め息を付くのだった……。





……

………



数十分後……、アンコウ踊りの行われた大洗の市街地の一角にある市民広場。
そこに設けられたプロレスショーのステージで、遂にプロレスショーが始まった。
ショーに出演する覆面レスラーの『ジャイアント|虎徹《こてつ》』はテレビで放送される様なプロレスに出る様なメジャーなレスラーじゃないが、一般人を悶絶させる程の技術の持ち主だ。
後、地方のプロレス団体に所属するレスラーとしては、ファンの間では有名な悪役だと言う……。
あー……、俺……、今日でマジ死ぬんじゃ無いのかな……。
『ジャイアント虎徹、抜き手を放つ!!入った、入った!!相手の腹に炸裂だあぁぁぁーっ!!』
「ぎゃやあああああっ!!」
そんな考えが頭を過ぎる中、待機しているテントの中にハイテンションな実況と共に1番手として出演した玄田の悲鳴が飛び込んでくる。
うひゃー……、タフさだけならメンバー1の玄田があんなに悲鳴を上げるとはな……、マジでやばい奴だこれ……。
テントの隙間から玄田がヘッドロックを喰らう見て、そう思う。
っていうか、俺だったらシャレにならない結果になりそうだな……。
一昔前のOPの「ユワッシャーァッッ!!」で有名な某アニメの雑魚キャラ宜しく「ヒデブッ!!」とか叫んで、頭から”トマトケチャップ”を撒き散らして絶命しそうだ……。
あぁ……、考えらだけでも恐ろしや……、恐ろしや……。


そんな感情がふと胸の奥底から湧いてくる中、俺と同じ様にテントの隙間から外の様子を見ていた木場がこう言い放つ。
「マジで……、あれをマジでやるの……?」
「あぁ、マジだぜ……」
到底、目の前の光景が信じられない様子で青ざめた顔で木場はそう言い放つ。
だよなー……、アレって下手したら”特殊な訓練を受けていない一般人にはやっちゃいけない物”で間違いよな……。
プロボクサーが「喧嘩で人を殴ったら罪が重くなる」とか、そんな話じゃないのか?
そんな考えが頭の中を過ぎる中、テントの中にノックアウトしている玄田がスタッフの持つ担架によって運ばれてくる。
「死ぬぅ……、腹の中の物を全てぶちまけて死ぬぅ……」
「「「「………」」」」
そんな玄田の様子を見て、俺と葵、木場は勿論、流石の裕也ですら引いている……。
「次、神崎君!!」
「はぁ……」
だが、無常にも次に出番が来たのは裕也だった……。
その出番を告げるスタッフの言葉を聞き、裕也も深く溜め息を付くと一回息を大きく吸うと目を「クワッ!!」と言う音が聞えかねない程の勢いで見開くと俺と木場、葵に向け、こう言い放つ。
「よし……、行ってくるぜ!!勝てば、アイツに勝てばお前ら戦わなくて住むんだからな!!」
裕也は覚悟を決めた様にそう言い放つと勢い良くテントを飛び出すと、リング上に”華麗”に飛び込むのだった。
「まるで敵前上陸作戦に参加する1兵士だな……、『この作戦が終わればクリスマスまでに家に帰れる』って感じの……」
「ホント……」
「噛ませ犬の癖して、無駄にアクション決めちゃって……」
その無駄なまでに華麗な飛込みを決めた裕也の姿を見て、ノックダウンしている玄田を除き、そう俺と葵、木場が言葉を交わす。


この間にも、裕也はプロレスラーと睨み合って火花を散らす。
「………」
「どうしたぁ、小僧?俺が怖いのか……?だったら、家に帰ってママのおっぱいでも……」
「どりゃああああっ!!」
そうプロレスラーの挑発に反応したのか、あるいは隙を付いた奇襲攻撃を仕掛けたのは分からない。
だが、確かなのは裕也がプロレスラーに対して全力で飛び掛ったと言う事だ。
そして、その飛び掛った裕也は思いっきりレスラーの腹に蹴りをめり込ませる。
「効きませんねぇー!!」
が、しかし、その裕也の蹴りはプロレスラーに通用しない。
そしてすぐさま、カウンターとして裕也は不敵な笑みを浮かべるプロレスラーに首根っこを捕まれる。
「フフフ……」
「ぐっ!!」
そう不敵な笑みを浮かべるレスラーに対し、裕也が苦しそうな表情をするが、レスラーは容赦なく裕也の首根っこを掴んだまま、裕也を激しくリングの床に叩きつける。
うわーっ、裕也の頭部にもろに垂直に入りやがった!!
頭部ダメージに定評あるキャラだから、言える事だけど垂直に頭部ダメージを食らうと徐々に上から下って感じで来るんだよなぁ……。
「ぐあっ!!」
「くたばれぇぇぇっ!!」
そう苦痛そうな声を上げる裕也に対し、レスラーは止めを刺すようにリングの端にあるポールに立つと思いっきりジャンプし、裕也の腹を目掛けて落下する。
瞬間、ドターン!!と言う凄まじい衝撃音と共に裕也の体が”くの字”に曲がる。
うわぁー……、下手したら胃とか、腸とか、肝臓とか……、全ての内臓がグチャグチャになるんじゃないの……、アレ……。
「1……、2……、3……、4……、5……、6……、7……、8……、9……、10!!」
そんな考えが胸の内を過ぎる中、裕也はレフリー判定によってノックアウトと判定されスタッフの肩を借りて、リングを退場する。
「うげぇ……」
「裕也さん……、喜田川さん達の為に……」
完全にグロッキーになっている裕也を観客席から見た、華は胸の内に”何か熱い物が込み上げて来る”のを感じ、己の胸に手を当てるのだった……。




胸の内でそう思っていると、当の裕也は思いっきり疲れた様子でテントの中に戻ってくる
「すまない……、俺が力不足ゆえに……」
「「………」」
この裕也の発言に対し、俺と木場は揃って呆然としていた。
そりゃな……、格闘技のプロである裕也が敗北するなんて……、どんな化け物だ……。
こんな考えが胸のうちを過ぎる中、葵の出番がスタッフによって告げられる。
「次、葵君!!」
「うぃーす!!派手に暴れて来マース!!」
葵はそう威勢よく言い放つと何の躊躇いも無い……っていうか、異常なまでにやる気マンマンでリングへと向かっていく。
多分……、「あの覆面野朗を倒せば、俺はモテモテだぜ!!」と言った小学生レベルの考えしか無いんだろうな……、今のアイツの脳内には……。
そう胸の内で思いながら、そんな葵の様子を隙間から覗き込む。
すると、そこには以上にやる気マンマンの葵が「フフフ……」と不敵な笑みを浮かべ、レスラーと対峙している光景が広がっていた。
あぁー……、何かネット上で『ボ○ガ博士、お許しください!!』とかで有名な、某70年代のクレイジー主人公が活躍する短編アニメに登場する敵のエイリアンの戦闘員みたいになりそうだな……。
葵の様子を見て、そう思った矢先には想像通りと言うべきか……、葵はプロレスラーによってブレーンバスターを喰らわされている。
『おおーっと、ブレーンバスターが決まった!!それでもジャイアント虎徹は更に止めをさす!!』
「おらああっ!!」
何とか立ち上がった物のブレーンバスターの影響で完全にピヨっている葵に対し、ジャイアント虎徹は止めを刺す様にラリアットを炸裂させる。
そのラリアットの凄まじい威力と共に葵は豪快に2~3メートル以上吹き飛ぶと、ガッシャーン!!と言う凄まじい轟音と共に”観客席に着弾”するのだった……。
「葵……、ギャグ担当キャラだからって……、そこまでやる物か?」
「さぁ……、何となくルックス的に面白いからじゃない?」
葵が吹き飛んだ方の観客席から聞えてくる「ワー!!」「キャー!!」と言った阿鼻叫喚を聞きつつ、木場とそう言葉を交わしていると……。
『ジャイアント虎徹、止まりません!!まさに立ち塞がる物を全て食い尽くす血濡れの虎!!4人目はそんな虎を止める事ができるのかぁぁーっ!?』
と言った、事実上の俺に対する出動命令が下る。
って言うか……、今も内に両親とみほ宛への遺書を書いて居た方が良かったかな……。


そう胸の内で思いながら、俺は一回息を深く吐くと隣に居る木場に向け、こう言い放つ。
「木場……、俺に何かあったらみほに宜しく頼む……」
「それって、新手の死亡フラグ……?」
あぁ、実際に死亡フラグで間違いないかもな……、生きて帰れそうに無いしな……。
と言うか……、神風神特攻隊はこんな気持ちで出撃して行ったのだろうか……。
まぁ……、どうであろうと現状として……、俺に与えれた任務は『目の前のプロレスラーと殴りあう事』……、コレを遂行しないと行けないんだ……。
胸の内でそんな複雑な感情が湧いてくる中、俺は腹を括るともう一度深く息を吸って目を見開くと一気にリングに飛び込むのだった。
そして、先にやられた玄田と裕也と同じ様に俺もリングに上がるとジャイアント虎徹と睨み合う。
うーん……、地方のマイナープロレスラーと言えど……、やっぱり凄いな筋肉とか……。
短期決戦で仕留めるべく下手に攻撃をしよう物なら、一瞬でやられる……。
そうだとしても……、プロを相手に素人の長期戦は通用しない……。
それらを考えた上で有効な戦術は……、相手の攻撃をある程度かわしつつ、隙を突き奇襲攻撃……、コレしかないな……。
頭の中でそう戦術を考える俺に対し、対するジャイアント虎徹は挑発する様にこう言い放つ。
「またガキかよ、もっと手応えのある奴は居ないのかぁーっ?」
「うっせえ、ハゲ!!」
「んだとぉ!!」
その挑発に対し、俺が思いっきり彼の挑発に返す様に挑発をし返すとジャイアント虎徹は逆切れした様に俺に対し、殴りかかってくる。
俺はその攻撃を紙一重でかわすと一気に距離を取る為に後退すると、そのまま後ろにあったリングのゴム紐を利用して思いっきり加速すると一気に距離を詰めて、一気に殴り掛かる。
「往生せいやぁぁぁぁっーーー!!」
そう何処かの”80年代警察ロボット漫画&アニメ”に登場するトリガーハッピーな警察官の様な叫びと共に炸裂した、俺の拳は勢い良くレスラーの胸に突き刺さる。
だが、その突き刺さった拳は殆どダメージを与えていない……って言うか、逆に殴った俺の方が大ダメージ受けているんだけど……。
何と言うか……、全力で鉄板を殴ったような気分だ……。
手にジンジンと伝わってくる鈍い痛みに顔の表情が思わず引きつる中、対するジャイアント虎徹は「ハッ!!」と馬鹿にした様な笑い声を上げると俺の顔面を思い切り掴む……所謂、アインアンクローって奴だ……。

っていうか、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!!
マジでギブ、ギブ、ギブ、ギブ!!本気でギブアップですわ!!

そんな感情が激痛と共に湧いてくる中、ジャイアント虎徹は俺がギブアップを宣言するよりも先に俺をアイアンクローした状態で俺を持ち上げると、そのままリングの床目掛けて勢い良く振り落とす……っていうか、堪忍してつかぁさーい!!
胸の内でそう思った次の瞬間には、俺はビタァァーンッ!!と言う凄まじい衝突音と共に顔面&頭部を強打する……っていうか、いでええええええっ!!
そう言や……、この前の体育の時間バスケしたけど、あん時、玄田の馬鹿がダンクシュート決めようとして俺の頭にボール思いっ切り叩き付けやがったっけ。
持ち前の馬鹿力も手伝って、あん時はマジで頭粉砕されるって思ったぜ。
いきなり頭に叩き付けられた時にはまるで隕石でも降って来たのかって位の衝撃だったからな。
って言うか、ボールって鈍器にもなるんだなってあん時初めて知ったよ。
けど、それで撲殺なんて間抜けな死に方じゃあ、泣くに泣けねェよ。
あれで死んだら玄田の野郎、マジで幽霊になって呪い殺す処か一族皆末代まで呪ってやったとこだ。
けどm今回のこの一撃はマジで洒落にならん。隕石どころか彗星が頭上から落下した様な凄まじい痛みだ。
ああ、こりゃマジで死ぬかも……。
みほ……先立つ俺の不幸をどうか許してくれ……、そう思うと同時に俺の意識は深海より深い闇の底へと沈むのだった
「りゅ、龍君!!」
「ストップ、ストップ!!」
その様子を見たみほも人目を気にする事無く悲鳴を上げる。
それと同時にゴングが連続して鳴り響き、レフリーがジャイアント虎徹を制止させる。
「あんだよ!!」
このレフリーの制止に対し、不満げな様子でジャイアント虎徹が食って掛る側で俺は救護スタッフによって回収されるのだった……。





……

………



それから数十分後、意識を取り戻した俺は玄田、裕也、葵と共に救護テントの中に運び込まれスタッフによる治療を受けていた。
全く……、リングの床に叩き込まれた時は本気で死ぬかと思ったぜ……。
っていうか、顔と頭のあちこちが未だに痛いぜ……。
と、いうか……、今プレイしているFPSの主人公が「気絶している時は案外、気持ちの良いものだ……」と言うけどホントなんだな。
そんな感情と共にジンジンとした痛みを感じながら、冷却パックで患部を冷やしていると、同じ様に患部を冷やしていた葵が俺達に向け、こう言い放つ。
「いやぁー、お前らも頑丈だね~」
「「「お前もな……」」」
そう3人揃って葵に対し、俺と裕也、玄田はそう言葉を返す。
っていうか、ダメージ的にお前が一番ダメージ量は大きいはずなのに……、復活が早いってレベルじゃないぞ……。
そんな考えを俺と裕也、玄田の3人が共通して胸の内で思いながら葵を見ていた時だった。
救護テントの入り口が開き、スタッフに連れられてみほがやって来る。

あぁ……、俺達といちいち心配して来てくれたのか……、ありがたい限りだ……。

みほの姿を見て、そう思った次の瞬間には、みほは俺達に対して心配そうな声でこう言い放つ。
「み……、みんな大丈夫?」
「あぁ……、何とかな……、心配かけたな……」「俺も」「あぁ」「左に同じく」
俺達は問い掛けてきたみほに対し、そう言葉を返す。
実際は何とかなっていないけど……、とりあえず……、みほを落ち着かせる為にも……、ね……。
「そう……、良かった……」
そんな俺達の返事を聞き、みほはホッとした様な表情になる。
あー……、何でかは知らないけど……、そんなみほの表情を見ていると何故だかホッとするわ……。
胸の内でそう思いながら、ペットボトルに入ったスポーツドリンクを一口喉へと流し込む。
それと同タイミングでテントの中に異常なまでにハイテンションな実況が飛び込んでくる。
『おぉーっと!!ヘッドロック、決まった!!これは逃げられない!!』
「ギブ!!、ギブ!!、ギブ!!、ギブ!!、ギブアップ!!、ギブアップ!!」
うわぁー……、ヘッドロックか……、頭部ダメージが多いから、分かるけど個人的には”頭部破壊3台技”の1つに入る程にキツイ技だぞ……。
実況を聞いた俺が胸の内でそう思う側で、イケメンの木場に対し敵意を持っている玄田と葵は揃って「「ざまあみろ」」と言わんばかりの表情でこう言い放つ。
「はっ、良い様だぜ!!」
「まぁ、普段はイケメンで得しているからな!!たまにゃ良い薬じゃないのか?」
まぁ、あくまで冗談……、よくWW2が舞台のFPSに登場するアメリカ兵みたいなノリなので悪気は無い。
それは二人の口調を見れば一目瞭然だ。
「おいおい、洒落にならん事を言うなよ……」
それを俺と同じ様に分かっている裕也が軽く笑いながら、そう言い放った瞬間だった……。


「何、木場君に手を出してるんだ!!おんどりゃああああっ!!」


と、言う沙織の凄まじい怒号が飛び込んでくる。
って……、なにやってるんだ、アイツは!?
俺がそう思うよりも先にテントの入り口から怒号のした方を確認したみほが、唖然とした様子でこう言い放つ。
「さ、沙織さんがリングに乱入しているんだけど!!」
「何だってー!?」
この信じられないみほの報告を聞いた俺は冷却パックを投げ捨てて、みほの示す場所を確認する。
すると、そこには確かにみほの言った様に”パイプ椅子”を武器にリングに乱入し、木場にヘッドロックを掛けていたジャイアント虎徹を殴りつける沙織の姿があった……。
『恋する乙女は無敵なのだ!!』とか言った奴が居るらしいけど、流石にコレはヤバイだろ!!
この信じられない光景が目の前で繰り広げられている事に思わず唖然としていると、実況が気を利かせたのか、こう言い放つ。
『おおーっと、ココでまさかの|JK《女子高生》が乱入だ!!彼氏が殴られる事にブチ切れたか!?』
「粋だね、この実況さん」
「この馬鹿!!そう言っている場合か、直ぐに取り押さえるぞ!!」
葵……、それはそうかもしれないけど……、今はそんな場合じゃないだろ!!
この発言に対し、胸の内でそんな考えが沸いた次の瞬間には裕也が怒鳴り散らしながら、沙織を取り押さえるべくテントを飛び出す。
そんな裕也達に続く用に俺とみほ、玄田、葵もテントを飛び出し、先にリングに上がって沙織を羽交い絞めにしていた裕也に加勢する。
「沙織さん、お……落ち着いて!!」
「離して、みぽりん!!アイツだけは絶対に私の手で倒さないと気が済まないの!!」
「お前、人生を棒に振るぞ!!」
「それでも良いのー!!それと次いでに言うけど木場君、愛してるからねぇぇぇぇーっ!!」
「それ、逆プロポーズだろ!?次いでに言う事じゃねぇだろぉぉぉーっ!?」
そう俺達の制止を振り切ってでも、殴り続けようとする沙織を、俺達は無理やりリングから引き摺り下ろす。
この際に沙織は”逆プロポーズ”とも受け取れる衝撃発言をぶちかますが……、目の前で繰り広げられる”超絶カオスな光景”を前に木場はポカーンと見つめるだけであった……。