浮かび上がった疑惑と怒涛の女性教官着任す!?
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<?Said>
時は遡る事、、大洗学園で戦車道復活が発表されたその日の午後、俺は旧大洗女子学園こと現『大洗学園』内にあるオンボロ部室の一つで部室掃除をしていた。
「整理完了っ」
本棚のミリタリー雑誌を、整理し終えた俺こと巽志郎《たつみしろう》は一息つきつつ、そこに適当に置いてある椅子に座った。
両手を組み指をぽきぽきと鳴らした俺は、薄汚れた天井を見つめながら、その日の体育館であった戦車道復活のレクリェーションの事を思い出していた。
「食券100枚か……、昼飯代500円とすると……、5万も得するわけだな。値段関係なしだと5万以上の価値はあるな」
と、くだらないことをつぶやいたが、何かが頭に引っ掛かってしょうがなかった。
まず、最初に『なぜ今更、わざわざ20年前に廃止した戦車道を復活させた?』ということだ。
数年後に戦車道の世界大会が日本で行われるから、文科省が日本全国の高校・大学に戦車道に力を入れるように……と通達があったから……とツルペタ生徒会長が言っていたが。
裏には、何が隠されてるのやら……。
2つ目に、戦車道に参加した際の特典である『食券100枚、遅刻見逃し200日、通常の単位の三倍』
前者、2つはいいとしても、最後の3つ目が気になる。
”通常”の三倍の単位を与える……生徒会側が考えた特典にしては”豪華”すぎた。
よく学園側(教師陣)が許可したものだ……、普通考えてもおかしい。いくら権限が強い生徒会といえど、これにはかなり無理があると思う。
3つ目は、『文科省』という言葉だった。何故かこの言葉だけ強く頭に残っていた。
そして、4つ目……戦車道経験者の『西住 みほ』、『喜多川 龍』を勧誘していたの事。
聞いたところによると、特に戦車道の家元の西住流の家元である「西住 みほ」に対しては、執拗なアプローチをかけていたらしい。
これはなにかきっと”裏”がある。とても、大きな裏が……。
そうやって思考の海に浸っている時、誰かが部室のドアをあけて入ってくる。
「おお、部長……もとい巽殿でないかぜよ。伏殿は、まだかぜよ?」
振り向くとそこには、ぼさぼさ髪をまとめ、紋付をはおった”歴女4人組”の一人おりょうが
菓子の入った袋を持って立っていた。
「なんだ、おりょうか。まあ、中に入れよ。和樹はまだ来てないから、この前、新しい歴史本入れたから読んで待っとけよ」
「そうかぜよ!ありがとうぜよ!」
そう言って、整理したばかりの本棚へと向かうおりょうを見ながら俺はあくびをした。
俺が立ち上げたミリタリー研究会、通称”ミリケン”。
ミリ研は、戦史、兵器、軍人、戦術、諜報、技術……ETCと軍事関係なら何でもOKみたいな研究会なのか同好会なのか分からない集まりでもある。
ただの軍事オタクの集まりみたいなものではあるが……。
そのおかげなのか、どうなのかは知らないが……”歴女”とよばれる4人の女子と仲良くしている。
お互いに議論をかわしたりすることもある。そのうちのおりょうと俺が誘って会に参加した伏和樹《ふせかずき》とは、馬が合うらしく楽しそうに2人で議論(?)している事がある。
一応、このミリ研には、俺を含めて6人いる。
まず、一人目は、おりょうと仲のいい伏和樹《ふせかずき》。
こいつは、俺の同郷の知り合いで、部活が決まらずぶらぶらしているところを見つけて勧誘した。
背は高く無口そうに見えるが、そうでもないし、他のメンバーともうまくやっている。
2人目は、阿仁屋 純《あにやじゅん》。
幼馴染で同級生。大の戦車好きで一体どこで覚えたのか知らんが機械整備が得意だ。
奴曰く「メカは最高だぜ!」だそうだ。戦国好きの左衛門佐と仲が良い。
そして、3人目は、室戸 明《むろと あきら》。
こいつも同じく俺の幼馴染で、戦史や戦車好きなのだが軍事の中で”諜報”や”諜略”関係には非常に詳しい。
しかし、「コイツ絶対スパイだろう」と思わせる程どこから仕入れたのか分からない”ありとあらゆる情報”を仕入れてくる。ローマ好きのカエサルと仲が良い。
4人目は、俺の補佐をしてくれる副部長で反田 始《はんだ はじめ》。
軍隊で言うと俺の副官みたいな存在である。一見すると無表情で何を考えているか分からないところが多いが、他の連中と同じく大の戦車好きだで、戦略・戦史などに強い興味を持っている。
そのせいか、歴女4人組のリーダー(?)であるエルヴィンと凄く仲がいい。
5人目は、黒崎 透《くろさき とおる》。
最近、戦車のオンラインゲームにはまっている戦車好き。なぜか阿仁屋と同じくメカ関係に強い。
後、戦車道にも興味を持っており、時たま録画した映像を見ていることもある。
まあ、部員に関しては、こんなものである。ちょっと変わったメンバーが多いが、俺はそんな連中を気に入っている。
そう、学校も、部活も……、そしてこの学園艦も……。
そうしている内に、他の歴女達や部活のメンバーが集まってきて、ワイワイガヤガヤと騒がしくなってのだった。
「ほう、じゃあ。エルヴィン達は戦車道やるのか」
阿仁屋がポテチをつまみながら、たまげたという感じで言う。
「食券100枚というのは魅力的だけど、なぜかやってみたくなったぜよ!」
おりょうが興奮しながら楽しそうに言う。
「戦車か…20年前は結構盛んだったらしいな」
反田が腕を組みながら、何かを思い出したように口にする。
「始もやったらどうだ?きっと楽しいと思うぞ」
エルヴィンが片腕に顎を載せながら言う。
「でも、この会の運営もあるからな……」
と、申し訳なさそうに言う。どうやら、この部活の事もあって反田は迷ってるようだ。
こいつは、このミリ研の事をすごく気に入っている。
戦車道に参加すると、部活にもなかなか来ることは出来ないだろう。そのことを心配しているのだろう。
「参加するなら……、部長含めた全員でだな」
と、俺の方を向いて言いやがった。
「そうか……、じゃあ、待ってるよ」
エルヴィンが少し残念そうな顔をして言った。
「参加したくなったら、いつでもいいから来たらいいさ。」
六文銭の鉢巻をした左衛門佐が飴を手を取りながら言う。
「分かった。じゃあ、少し考えさせくれ」
そう言って俺は、麩菓子を口に放り込んだ。戦車道に参加すべきか……この時俺は悩んでいた。
なぜか胸にひっかかていた事もあり、その場は、保留とした。
「うむ、巽達ミリ研が来るのを心待ちにしているぞ。ああ、室戸よ。この前は有難う。あれは、面白かった」
カエサルが、嬉しそうな顔で言う。
「良かった。また、ローマ関係の映画が出たら教えるぜ」
そういえば、室戸がローマのお風呂映画を二人で見に行ったと言ってたな。うらやましい限りだ。
「隊長……、じゃなかった部長。今度、うちの学校が出る練習試合見に行ってみては?迫力あると思いますよ」
ゲーマーであり、戦車好きである黒崎が楽しそうに言う。
こいつ、俺の事を時々、部長ではなく隊長と呼ぶ……なぜだろうか?
この前ためしに聞いてみたら、「隊長っぽいから」と返された。変な奴だ。
「そうだ、左衛門佐よ。今度、新しい戦国ゲームが出るらしいぞ。今度、買う予定だが一緒にやらねえか」
「おお!ありがたい!」
阿仁屋と左衛門佐は、二人仲良くゲーム。伏の方はというと、おりょうと仲良く竜馬談義をしていた。
こうして、楽しい時間は過ぎていくのだった……
歴女4人組と反田・阿仁屋・黒崎・伏が帰った後、部室には俺と室戸の2人だけが残っていた。
そこで俺は奴に声をかける。
「なあ、室戸。すこしいいか?」
「ああ……、いいぜ。多分、今、俺が考えてる事とこれからお前が話す事は一緒だろうな」
そう言い終えると、俺と室戸は席に身を落とした。
「20年ぶりの戦車道復活……、何かおかしいと思わないか?」
俺は、室戸の顔を見ながら口を開いた。
「ああ、俺もそう思ってた。気になって、ちょっと調べてみた……」
コイツ、昔から動きが早いな。気になった事、怪しいことに関してはすぐに首を突っ込む。
すると室戸は、少し厳しい表情をした。奴が、こんな表情をするというのは、戦車道復活になにか裏を感じ取ったのだろう。奴の勘はよく当たる。
そして、俺は疑問に思った4つの事を室戸に口にすると、奴は、メモを取りながらも真剣に聞いてくれた。
「今挙げた疑問点で。お前が、気になりそうなところはないか?」
自分が挙げた疑問について、室戸の意見を聞いてみた。
「大ありだ。全部だがな」
「やはりな……」
腕を組みながら答えると室戸は、自分の考えを口にし始めた。
「まず俺が気になったのは、文科省という言葉だ。知ってるか最近、文科省主導の”学園艦統廃合”の動きがあるという事を……」
「いや、初耳だな……」
”学園艦統廃合”という、嫌な響きに俺は思わず眉をしかめた。
統廃合という事は、学園艦の廃艦=廃校を意味する。
「以前、陸に挙がった時に地元の新聞に小さく”学園艦の統廃合”事を読んだのを思い出してな。気になって、色々調べてみたところ…文科省がでてきた」
「おいおい…、まさか、うちの学校もその対象になっているっていうんじゃ……」
最悪の予想が、頭をよぎった。確か、この大洗学園は、女子高から男女共学で生徒数は何とか確保できたはずだったが……対象からは逃れられないみたいだ。
「まだ、分からん。それは、探っているところだ……可能性は高いだろうがな」
そして、室戸は続けて言った。
「そして、次は、生徒会による20年ぶりの戦車道の復活、戦車道の家元の西住みほと喜多川龍の2名の戦車道経験者への執拗な勧誘要請、豪華すぎる参加特典、文科省…これで何かがつながらないわけはない」
4つのバラバラの糸が1本につながった。
「2人を戦車道に参加させて、全国大会でなんらかの実績を作らせ、廃校を撤回……そんな筋書きだろうな。そして、特典は、廃校を撤回させたという学園側からのご褒美……ってとこか」
「学園側もなりふりかまってられない……ってわけだ。自分の職場が無くなるかもしれんのだからな」
そう言い終えると、俺達は薄汚い天井を再び見つめた。
「まだ、そう決まったわけじゃないが……もう少し詳しく調べてみる。巽……最悪の場合を考えておいた方がいい」
「ああ、ミリ研の戦車道参加か……だが、それまでに”準備”しておおかないとな。”いろいろ”とな……”あの人”達にも相談してみる。後、この事は、部員全員に知らせておこう。他の人間には他言無用とくぎを刺して」
俺らと仲のいい”歴女”達にいらぬ心配をさせるわけにはいかないからな。あいつらは、純粋に戦車道に興味持ってるのだから。
「分かった。忙しくなるな……」
そう言って、この日、俺達は別れた。
翌日、この事を部員全員に話したところ、皆も疑問に思っていたらしく。「やはりな…」という顔をしていたが、すんなりと協力すると言ってくれた。
俺は、それを聞いて一息を付くのだった。
…
……
………
<龍Side>
楽しい週末明けの月曜日。
「うんぁー……、自走砲なんてクソ喰らえだぁー……、んぁ?」
俺は寮の部屋で寝言をぼやきつつ、目が覚めた。
あぁ……、昨日の夜に寝る前にやった戦車ゲーム『WOP』のプレイ内容を思い出していたのか……。
色々とカオスだったからな……、M46パットンで敵さんの自走砲を狩って、狩まくっていたし。
おかげでトップガンだったな……、我ながら見事と言いたい気分だわ……。
そう頭の中で昨晩のことを思い返しつつ、ふとベッド脇においてあった目覚め時計に目を向ける。
「……マジかよ」
そして、絶句するのであった。何故かって?
時計の示す時刻が”遅刻15分前”だったからだよ!!
『天国から地獄』とはこの事を言うんだな、チクショーメェーッ!!
「ヤベェーッ!!」
そう絶叫しながら、俺はベッドから飛び起きるなり全力で身支度を整えるなり、冷蔵庫に入っていた昨日の夕飯の残りの特売ピザを加えながら部屋を飛び出すなり、学校に向けて全力疾走だ。
つーか、冷めたピザってビミョーな味だな!!
そう思いながら、一昔前の学園物の作品でよーく見かける『遅刻寸前の学生が食パン加えて全力疾走』を体現しつつ、ビミョーなピザの味をかみ締めながら学校に向かっていたときだった。
ふと50メートル先に視線を向けると見かけた後ろ姿が視界に飛び込んで来る。
その後姿をよーく見ると、その後ろ姿の正体はみほであった。
「何だよアイツも遅刻か……って、ん?」
そう呟きながら、残っていたピザを食べながらみほの後ろ姿を見つめていると俺はある事に気づく。
先を歩いてるみほの肩を借りるようにして、”もう一人の女子”が歩いていたのだから。
つーか、みほの肩借りている女子、アンタ誰だよ?
そう思いながら、俺はみほの元に駆け寄るのであった。
「よぉ、みほ」
「あぁ、龍君……、良かったぁ……」
そう話しかけた俺に対して、みほは少なからず安堵の表情を浮かべながら俺に顔を向ける、朝だと言うのに偉くグッタリした女子に肩を貸しながら。
つーか、さっきも言ったけどアンタ誰?
そんな感情が腹のそこから巻き起こる中、その女子を見つめていると当の本人は凄まじくグッタリした声でこう言い放つ。
「辛い……、生きるのが辛い……」
「何があったんだ、お前は……」
この女子の発言に思わず俺はそう言ってしまう。
だってそうだろ、普通生きていて「生きるのが辛い」と思う時はそう少なくはないと思うよ?
だけど朝から「生きるのが辛い」って……、初対面だけどお前に何があった?
すで心配になって来るんだが……、本気でその種の相談施設に電話した方が良いかな?
そう思いながら、みほの肩を借りるその女子を見つめているとみほが俺に向けてこう言い放つ。
「龍君、悪いけど手伝ってくれない?ちょっと大変だから……」
「あぁ……、分かった……」
みほの助けを求むこの言葉に俺はそう頷きながら言い放つと、みほと同じ様にそのグッタリとした女子に肩を貸し、”二人三脚”ならぬ”三人四脚(?)”で学校に向かうのだった。
今日は完全に遅刻だな……、そんな考えを胸の内で考えながら……。
…
……
………
そんでもって、予想通りに俺とみほは肩を貸した女子と共に見事遅刻。
そんな俺達に対して校門の前で待ち構えていた風紀委員の”園みどり子”が、記録ボードを右手に何かを左手にもって俺とみほの肩を借りる女子に向けてこう言い放つ。
「|冷泉麻子《れいぜい》さん、これで連続遅刻245日ですよ!!いくら成績が学年トップだからって、遅刻ばかりしていちゃ留年しますよ!!」
あぁ……、この女子の名前「冷泉麻子」って言うのか……、つーか……、遅刻245日&成績学年トップって、どーゆ事!?
そんな考えがみどり子の発言を聞くと共に湧き上がってくる中、当の麻子本人は相変わらず気だるさMAXの声でこう言う。
「朝は何で来るのか……」
えー……、なんか凄く跳躍したボヤキですね……、麻子さん……。
一応、”朝は何で来るのか?”って問いの答えですけど、前にN○Kの教育番組で『地球が自転しているから』みたいな事を言っていた様な気がしますぜ?
教育番組の内容を思い返しつつ、そう思っている側でみどり子は「えーっと……」なんてボヤキながら、ボードに書かれた俺とみほの名前を発見するとこう言う。
「喜田川さんと西住さんね?」
「「あぁ、はい」」
「今度から冷泉さんを見つけても、無視して登校して下さい」
思わず『アンタは何処の安いB級映画の悪役だよ?』と思わざるを得ないセリフを言い放ったみどり子に対して、俺とみはは揃って「「……はぁ」」と言葉を返すことしか出来なかった。
つーかさー……、今気づいたんだけど……、みどり子さんが左手に持っている物って『芸能新聞』だよな?
何でそんな物が学校に……って、んー……?
俺はふと視界に入った芸能新聞の一面記事をよーく見ると『人気アイドル神崎智明 事務所直属の後輩アイドルグループ「起きあがれ、女の子!」&「スクールアイドルμ's|《ミューズ》」+「歓待のアイドル 2-4-11・那珂ちゃん」と共に超大胆グラビア写真撮影!!』と言った記事がデカデカとカラフルな文字で書かれていた。
それを見た、俺はこう思うのだった……。
あぁ、この記事持ってきたのは裕也か……。
え、「何で裕也が芸能新聞を学校に持ち込んだ?」って?
理由は至って簡単、『記事に出ているアイドルの神崎智明が裕也の血の繋がった実の姉貴』だからだよ!!
いや、俺だって始めて親友のお姉さんがテレビに出るような”大人気アイドル”と知った時はマジでビックリしたぞ!!
そりゃそーだろ!!”3サイズ 91-59-86”の圧倒的な超ダイナマイトボディに加え、これまたチョー圧倒的な歌唱力&演技力、21歳と言う年齢が醸し出す大人の色気で一躍大人気アイドルとなった、あの神崎智明だよ!?
その血の繋がった実の弟が友人だったんだから、驚かざるを得ないぜ……。
そんなお姉さんの活躍は弟の裕也としても少なからず誇りらしく、偶にお姉さんが芸能新聞に載るとそれを買って学校まで登校……、そして風紀委員に取り上げられる……、もはや定番のテンプレート状態だ。
これは余談だが、裕也はお姉さんの関係もあってか偶にお姉さんの出演する映画にエキストラ並びにアクション要因として出演することがあり、この芸能新聞にも書かれているお姉さんの後輩アイドルグループ”起きあがれ、女の子!”&”スクールアイドルμ's|《ミューズ》とも競演したらしい……。
裕也、友人のお前に一言言わせて貰うぜ『チクショーメェェッ!!』とな!!
ちなみに裕也が最近エキストラ兼アクション要因として出演したのは『DNA研究所の事故で偶然にも誕生してしまったハエと人間の遺伝子額合わさった怪物”ハエ男”が大暴れするモンスターパニック映画で、裕也は映画のクライマックスで重要人物の刑事と共に研究所に突入し、主演のお姉さんを始めとする主人公達に襲い掛かろうとするハエ男を射殺する警視庁の特殊部隊”SAT”の隊員役』らしい。
本人曰く「うおぉぉっ!!」と叫びつつ、撮影ではH&K MP5短機関銃のモデルガンを撃ちまくっていたらしい。
あと『出演していたアイドルグループ”起きあがれ、女の子!”のセンターの子をお姫様抱っこして、助け出した(※映画のクライマックスはSAT隊員達に救助され、介抱されながら研究所を去るお姉さんを始めとした主人公達のカット)』との事……、羨まし過ぎるぜ!!
芸能新聞を見ながら、そう胸の内で思っているとみどり子は俺とみほ、冷泉の記録を取り終えるなりこう言い放つ。
「はい、3人共、行っていいわよ」
「「あぁ、はい」」
みどり子の指示に俺とみほはそう返しながら、相変わらずグッタリとした様子で「あぁー……」とぼやいている冷泉に肩を貸しながら、校舎へと足を向ける。
そんな時、後ろから突如として『ピピーッ!!』と言うホイッスルの音が聞こえてくる。
「な、何!?」
「さぁ……」
「んぁ……?」
この音に俺だけでは無くみほや冷泉も驚いた様に後ろを振り返り、ホイッスルの音がした方向に顔を向けた俺達3人は共に呆然とするのであった……。
理由は何故かって……?簡単だ……。
「コラぁーッ!!玄田さんと葵さん、遅刻した事を気づかれない様に策を乗り越えて学校に入らないのぉぉぉーっ!!」
「やっべぇー、見つかったー!!」
「走れ玄田、捕まったら風紀委員に説教食らわされるぞ!!」
「分かっているわ!!」
「ちょっと!!止まりなさーい!!」
「「待たん!!止まらん!!」」
……とまぁ、朝から元気良く玄田と葵のバカコンビがバカやっているからだよ!!
全く……、チームメイトがこの様とは……、朝から偏頭痛がしてくるぜ……。
そんな、みどり子と玄田と葵の鬼ごっこを見て、俺は痛む頭を抑えるのであった……。
…
……
………
そんな内容の無駄に濃い朝から数時間経った午後の戦車道の授業の時間。
俺とみほ達を含めた戦車道を履修した全生徒達が戦車倉庫の前に集まり、互いの会話を交わしつつ教官が来るのを待っていた。
「お前、珍しく遅刻したよな」
「あぁ……、寝過ごしたからな……」
今朝の遅刻に関して話しかけてきた裕也に対して、そう言葉を返すと裕也は「ふぅーん」と鼻で呟くなり、こう言葉を続けた。
「単純なミスだな」
「学校に芸能新聞を持ち込んだ、お前が言える立場かよ……」
「♪~♪~♪~……」
自分もお姉さんの出ている芸能新聞片手に学校通学した身でよく言えるな……。
そんな心内と共に恨めしい声で俺がそう返すと当の裕也は口笛を吹きながら、俺から視線を外す。
確執を付かれた小学校低学年みたいな反応するなよ……、お前……。
裕也の反応を見てそう思う俺の側では、朝っぱらからみどり子との壮絶な逃亡劇を繰り広げていた葵と玄田の二人が手帳片手に会話を交わしていた。
そんな二人の会話にふと聞き耳を立てて聞いた内容はバカコンビらしくショーも無い物だ……。
「うーん……、あの”第5柵越えルート”が持ったのは2ヶ月か……」
「前の”第4柵越えルート”より、1週間長かったのか……、今日見つからなければなぁ……、あと1ヶ月は使えたか?」
「可能性は否定できんな」
お前ら……、柵越えルートとかってさぁ……、つい結構最近に実写映画公開が決まった日本における泥棒漫画の傑作”ル○ン3世”かよ……。
なんかその内、ベトナム戦争中の北ベトナム軍並びにベトコンゲリラよろしく地下トンネルでも掘り出しそうだな……。
玄田と葵の会話を聞いて、そんな考えが胸の内を過ぎる中、ふと木場が腕時計で時間を確かめながらこう呟いた。
「それにしても教官遅いね……」
「ホントだよー……、焦らすなんて大人のテクニックだよー。ねぇ、木場君?」
「え?」
木場のぼやきに続くように沙織が言い放った言葉を受けて、木場が軽く困惑を覚えたその時だった。
突如としてキィィィィーンッ!!と言った甲高いジェット機のエンジン音があたり一面に鳴り響く。
「一体、何だ?」
「敵襲か!?」
「くーしゅーけーほー(空襲警報)?」
鳴り響くジェットエンジン音に各自が各々の反応を見せる中、俺はエンジン音を聞こえてくる上空を見上げた。
すると、俺の視界に一機の大型輸送機がこちらに向かって飛行するのが見えた。
あの輸送機は一体なんだ?しかも結構、低滑空で飛行しているぞ……。
輸送機を見てそう胸の内で思っていると、航空自衛隊の戦闘機パイロット志願にして”戦闘機・航空マニアな一面がある(※ちなみに一番好きな戦闘機はF-15J)”木場が輸送機に感づき、こう言い放つ。
「あれって航空自衛隊のC-2改輸送機じゃない?」
この木場の言葉を聴いて、改めて輸送機をよーく見ると確かに前にテレビで見たことがある航空自衛隊の輸送機”C-2改輸送機”だった。
しかし、何でこんな所に航空自衛隊の輸送機がやって来たんだ?
そんな疑問が胸の内で起こった瞬間だった。
低滑空で飛行していたC-2改輸送機の後部ハッチがゆっくりと開いていき、完全にハッチが開くと同時に”何か”が勢い良く飛び出した。
俺やみほ、裕也達を含めたこの倍にいる全員がこの光景を見て「何だ一体?」と思った瞬間、その”何か”はパラシュートを開きながら降下していく。
そして、最終的にはガッシャーンッ!!と言う凄まじい音を立てて、戦車倉庫の直ぐ隣にある駐車場に着地する。
「な、何!?」
「あ、あれは……」
沙織がこの音に驚き目を大きく見開く側で裕也が細めながら、駐車場に着地した何かに視線を向ける。
そんな裕也に続くように俺も駐車場に着地した何かに視線を向けると、そこにあった何かの正体が判明した。
それは陸上自衛隊が世界に誇る最新鋭の主力戦車”10式戦車”であった。
おいおい……、10式戦車を空挺降下させるって……。
アメリカ軍で過去に使用されていた空挺戦車のM551シェリダンじゃないんだから……。
そんな考えが一瞬胸の内を過ぎるが、黙っておくことにした。
何故かって?簡単な話だ、この戦車の空挺降下を考えたのが何を隠そう”俺の親父”だからだよ!!
そう思いながら、着地した10式戦車を見つめていると10式戦車はエンジン音を高らかに勢い良くバックする。
その際に駐車場に止まっていたフェラーリを勢い良く跳ね飛ばし……、っていうか大丈夫なのか?
フェラーリがアクション映画の様に紙くずの様に宙を舞い、ドガァーン!!と言う音と共に着地するを見てそう思う俺の側で生徒会3人組が各々の反応を見せる。
「学園長の車が!!」
「………」
「おー、スゲェー」
絶叫する小山先輩の側で開いた口が塞がらない河島先輩、そして動じる事無く平然とぼやく会長……。
3人共、個性豊かな反応を見せるな……って、今のフェラーリは学園長の車!?
後で土下座して謝罪しておこう……、提案者の息子として……。
すっかり鉄くずに成り果てたフェラーリを見てそう思う俺の側で10式戦車は勢い良く前進。
俺達の前にやってくるなり脅威の”殺人ブレーキ”で停止するなり、戦車長キューポラが開いた。
そして、開いたキューポラから……。
「こんにちはー!!」
……と、威勢よく女性教官が姿を現すのであった。
ちなみに教官、結構なべっぴんさんである。
…
……
………
さて、そんな感じでやってきた教官を前に俺達は一列に並んで河島先輩の紹介を受ける。
「紹介しよう、本日より我が校の戦車道教官を勤めてくれる陸上自衛隊 戦車教導隊の蝶野亜美1尉だ」
そう河島先輩が教官の蝶野1尉を紹介すると、当の蝶野教官は敬礼しながらこう言い放つ。
「皆さん、宜しくね。戦車道は初めての人が多いと聞いてますが、皆さん一緒に頑張りましょうね!!」
「騙された……」
そう笑顔で言い放つ蝶野教官に対して、沙織はこの世の終わりかと言わんばかりに絶望している。
お前さぁ……、一体何を期待していたんだ?そもそもお前はイケメンの木場に気があるんじゃなかった?
どす黒い負のオーラをまとった沙織を見て、そう思っていながら俺は”同じ穴のムジナ”である葵にふと視線を向ける。
その視線の先にいた葵は佐織とは正反対に女性教官の到着に「この世の春が来た!!」と言わんばかりに嬉しにし、俗にネットなどで言う『みwなwぎwっwてwきwたwww』を体現するかのように鼻息が若干荒くなっていた。
この二人の行動の結論としているのは、『お前も佐織も現金すぎるだろ……』
この一言に尽きるな、うん。
そう思いながら、沙織と葵を見つめていると教官がみほの姿に気づくき「あら?」と言いながら歩み寄っていく。
一体どうしたものか?
歩み寄っていく蝶野教官を見ながら、そう思っていると蝶野教官はみほにこう話しかける。
「西住師範のお嬢様ではないですか?師範にはお世話になっているんです、お姉さまも元気?」
「えっ……、あっ……、はい……」
教官のこの言葉にみほは少なからず困惑しながら、言葉を返した。
無理も無い……、少なからず複雑な状況に立たされているだからな……。
蝶野教官に言葉を返した後、思わず下を俯くみほを見てそう思っていると蝶野教官がとんでもない事を言い出す。
「それと喜田川龍君って、いる?」
「……はい?じ、自分ですけど……」
え?今、教官……、俺の名を呼びました?
予想もせず呼ばれた事に自分の耳を疑いながら、俺は返事を返しつつ、蝶野教官に顔を向ける。
すると、俺の存在に気づいた教官が俺の元に歩み寄ってくると微笑みながら、こう言い放つのだった。
「貴方のお父さんの喜田川秀雄一佐は私の新人時代の頃の上官なの。それで『息子を宜しく』って昨日電話があったのよね」
「はぁ……」
よーくやるよ……、親父も……、かつての部下が自分の息子に戦車道を教えるので電話かけるなんて……。
そう胸の内で思いながら、蝶野教官に返事を返していると胸の内で1つの疑問がわいてくる。
あれ……、親父……、今はアメリカで行われている日米合同軍事演習に参加していたよな……?
そんな疑問を俺は蝶野教官に問い掛ける。
「あの教官……、親父はアメリカのヤキマ演習場で行われている”日米合同軍事演習”の指揮を取っているはずでは?」
この俺の問い掛けに対し、蝶野教官は「あー、そうそう」と頷きながら言うと、こう言葉を続けた。
「それでアメリカ陸軍との模擬戦で勝利した報告次いでだったのよね」
「……そうですか、アハハハッ……、宜しくお願いします……」
マジで何やっているんだろ……、親父……。
軍事演習で世界最強のアメリカ軍を相手に模擬宣して勝利、その報告ついでに『息子を宜しく』……。
”陸上自衛隊1の奇才”といわれる理由がよーく分かるような気がする……。
そう思いながら、蝶野教官に挨拶をしながら、頭を下げると蝶野教官は「よーく見ると一佐に似ているわねー」等と言いながら、もと居た場所に戻る。
そうして、もと居た場所に戻った蝶野教官に対して河島先輩が問い掛ける。
「教官、今日はどのような練習を行うのでしょうか?」
「そうね、早速だけど練習試合をやってみましょう♪」
「「「えぇぇ~っ!?」」」
蝶野教官が練習試合をやるといった瞬間、俺やみほ達を含めた全ての生徒が困惑した様子で蝶野教官を見つめる。
そりゃ当然だろうよ。碌な戦闘訓練はおろか、基本的な動作訓練すら受けてないんだから……。
つーかさー……、こんな感じで俺の親父は最高司令官として部下を教育しているのか?
そんな考えが沸いてくる中、小山先輩が恐れ多いと言った感じの声で蝶野教官に問い掛ける。
「あのぉー、いきなりですか?」
「大丈夫よ♪」
困惑を隠しきれない表情の小山先輩に対して、蝶野教官は笑顔でそう返し、こう言葉を続けた。
「戦車なんてバーッと動かして、ダーッと操作して、ドーンと撃てばいいんだから!!」
うわぁー……、ざっくりばらんにも程がありますぜ、教官……。
って言うか、教官……、本当に親父の部下でしたね……、さっきの説明……、親父も似たような感じです……。
つーか……、こんな調子で親父の奴……、よく世界最強の陸軍であるアメリカ陸軍相手に勝てたな……。
マジびっくりなんですけどー……(※某有名食品メーカーの「ジャスティス!!」と最後に叫んでいるレトルトカレーのCM風に)。
そんな感情が胸の奥底からわいてくる中、蝶野教官は鞄の中に入れていた地図を広げつつ、こう言葉を続けた。
「それでは、この地図に示したポイントまで各自移動して頂戴」
何ともまぁ……、親父譲りの無茶苦茶ぶりだ……、まぁ、やるしかないか……。
蝶野教官の指示を聞いて、諦め混じりに俺はそう思いながら地図を確認するのであった……。
…
……
………
そんで、教官の指示したポイントに移動する為に俺達は各自の担当する戦車の前に移動していた。
なので、自動的(?)に俺と裕也、玄田、木場、葵の5人は5式中戦車の前に立っていた。
んで……、今の問題としては……、この5式中戦車をどう動かす事だな……。
目の前に置かれたドーンと置かれた5式を見て、胸の内でそう思っていると同じ事を思ったらしく裕也が問い掛けてくる。
「んでさぁ……、龍……、まず何か始めればいいんだ……?」
「……担当決めかな?」
裕也の問い掛けに対して、俺は中を見ながら少し考えた後、そう言葉を返した。
まぁ……、我ながら間違いではないと思うよ……、実際担当を決めないと動かせないしな……。
そう思いながら、裕也達に顔を向けた瞬間。玄田が「よし!!」と呟くなり、こう言葉を続けた。
「じゃあ、俺が砲手やるわ!!」
「えー……、お前……、射撃とかその種の行為下手糞だろ?サバゲーでも碌に的に当てたこと無かったんじゃ……」
玄田の砲手への立候補に対し、過去に玄田と共にサバイバルゲームに参加した事にある葵が苦言を述べた瞬間、玄田は後ろにクワッ!!と言う文字が見えかねない勢いで「うっさい!!」とブチ切れである。
確かに……、こんなに短気な性格じゃ砲手に向かないのは確実だな……。
ブチ切れする玄田を見て、胸の内でそう思っていると隣に居た木場が俺に向けてこう言い放つ。
「っていうか、経験者の龍は戦車長が良くない?」
「同意」
「「激しく同意」」
「えっ?」
木場の提案に裕也だけでは無く、今そこで口喧嘩を交わしていた玄田と葵までもが同意してきた……。
なんだろうこの状況……、マジで困惑を覚えるレベルなんですけど……。
そう胸が激しくざわめくをのを感じながら、俺は裕也達に視線を向ける。
そうして、飛び込んできたのはジーっと俺達を見つめる裕也達の姿……、これはもう腹を括るしかないですな……、もう色々とチクショー!!
「分かったよ!!」
もう半場、ヤケクソ状態で俺がそう言い返すと裕也、玄田、木場、葵の4人は「「「「おぉ~!!」」」」と歓喜するのだった。
あー……、なんか色々と辛いな……、このポジション……。
んで、こんなノリで話し合う事、約15分(結構、時間掛かってる……)。
こうして決まった5式中戦車内における俺達のポジションは”俺が戦車長、裕也が砲手、玄田が装填主、木場が操縦主、葵が副砲の砲手並びに装填主、通信主”だ。
いやぁー……、これが決まるまで地味に長かったぜ……。つーか……、戦車に乗る前から既にグッタリしてるんだけど……。
そんな感じで妙に重く感じる体で俺達は5式中戦車に乗り込んでいく。
「よし、全員乗ったか?」
「OKだ」
「こっちもOK」
「俺もだ」
「ほいほい!!」
俺の問い掛けに裕也達が次々と答えていき、全員が乗った事を確認した俺は早速、木場に向けて指示を飛ばした。
「よし、木場。エンジンを始動させてくれ。右にイグニッションがあるはずだ」
「これ?」
そう俺の指示に返事しながら、木場が操縦主席の右側にあるイグニッションボタンを押し込む。
瞬間、5式に搭載されたディーゼルエンジンがグォォォン!!と言う唸りを立てて始動する。
いやぁー……、この感覚……、約1年ぶりぐらいかなぁ……、懐かしいねぇー……。
中学生の時に乗っていたM24チャーフィーの感覚を思い出しながら、思わず感慨にふけっていると木場が少しどよめいた状態で問い掛けてくる。
「そ、それで次はどうすればいいんだ?」
「あ?あぁ……、右にあるのが右の履帯のクラッチとブレーキレバー、左にあるのも同じだから、両方のクラッチを解除したら、ギアをチェンジして、アクセルを踏み込め。前進するはずだ」
「分かった……」
俺のこの指示に木場は少し戸惑いながらも実行し、アクセルを踏み込む。
瞬間、俺達を乗せた5式はゆっくりとしたスピードながらも前進を始める。
「おっ、おぉぉ……」
「おぉ……、進んでる、進んでる」
「すげえ……」
「うひょー……」
初めて体験するこの感覚を前に裕也達が各々の反応を見せる中、俺は一回息を吸うと再び木場に向けて指示を出す。
「よし、木場。このまま教官の指定したポイントまで移動してくれ」
「りょ、了解!!」
この俺の指示に木場は相変わらずゆっくりとしたスピードながらも、確実にポイントに向かって5式を走らせるのであった……。
…
……
………
こうして5式を走らせる事、約数十分……。
俺達は何とか無事に教官の指摘したポイントまでやって来ていた。
いやぁー……、ここに来るまで溝に落下して頭を思い切りぶつけたり、エンストしたりで大変だったりからなぁー……。
そう現在までの経緯を思い返しながら、俺がキューポラを空けて外の様子を確認していると葵が通信主用ハッチを開け、こう聞いてくる。
「龍、ここで間違いなのか?」
「そうみたいだな……」
葵の問い掛けに対し、そう俺が言葉を返した瞬間だった。
5式に搭載された無線機が音を立てて、無線連絡が入った事を俺達に知らせる。
その無線に俺達が耳を傾けると無線機からは蝶野教官の声が聞こえてきた。
『皆、スタート地点には着いたかしら?それでは練習試合を始めるわよ。ルールは簡単、全ての車両を動けなくするだけ。つまりはガンガン前進して、バンバン撃って相手をやっければ良いだけ、分かった』
「いやぁー、実にアバウトだ事で……」
「そういう女性、俺は嫌いじゃないよ」
蝶野教官のルール説明に対し、木場と葵がそうボヤク側で蝶野教官は無線機越しにこう言葉を続けた。
『戦車道は礼に始まり、礼に終わる。一同、礼!!』
「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」
『それでは試合開始!!』
蝶野教官の言葉に続くように俺達が5式の中で頭を下げると蝶野教官は高らかに試合開始を宣言し、練習試合が始まるのであった。
んで……、こうして試合が始まったのは良いんだが、どうしたら良いんだか……。
そんな考えで脳が埋めされ尽くされる中、どうやら俺と同じ事を思ったらしく裕也達が俺に問い掛けてくる。
「で、どうするんだ龍?」
「とりあえず撃つ?」
「何を?」
「教官、デートしてくれないかぁー……」
最後の葵は無視するとして……、俺は裕也達の言う様に次はどうするべきか考えるべく地図を開き、周りの状況を確認しようとした、その時だった!!
ズドォオォォォーンッ!!
この突如として鳴り響いた砲声と衝撃に俺達は成す術も無く激しく5式と共に揺さぶられる。
「うおぉっ!?」
「何だ!?」
「一体何が!?」
「うひょーっ!?」
「くっ!?」
その衝撃に激しく揺さぶられながら、各々の反応を見せる裕也達を横目で見ながら、俺は大急ぎでこの衝撃の正体を確かめるべくキューポラをあけて外を見つめた。
すると、視界に飛び込んできたのは俺達の5式に主砲を向ける野球部のラム巡航戦車の姿であった……。
時は遡る事、、大洗学園で戦車道復活が発表されたその日の午後、俺は旧大洗女子学園こと現『大洗学園』内にあるオンボロ部室の一つで部室掃除をしていた。
「整理完了っ」
本棚のミリタリー雑誌を、整理し終えた俺こと巽志郎《たつみしろう》は一息つきつつ、そこに適当に置いてある椅子に座った。
両手を組み指をぽきぽきと鳴らした俺は、薄汚れた天井を見つめながら、その日の体育館であった戦車道復活のレクリェーションの事を思い出していた。
「食券100枚か……、昼飯代500円とすると……、5万も得するわけだな。値段関係なしだと5万以上の価値はあるな」
と、くだらないことをつぶやいたが、何かが頭に引っ掛かってしょうがなかった。
まず、最初に『なぜ今更、わざわざ20年前に廃止した戦車道を復活させた?』ということだ。
数年後に戦車道の世界大会が日本で行われるから、文科省が日本全国の高校・大学に戦車道に力を入れるように……と通達があったから……とツルペタ生徒会長が言っていたが。
裏には、何が隠されてるのやら……。
2つ目に、戦車道に参加した際の特典である『食券100枚、遅刻見逃し200日、通常の単位の三倍』
前者、2つはいいとしても、最後の3つ目が気になる。
”通常”の三倍の単位を与える……生徒会側が考えた特典にしては”豪華”すぎた。
よく学園側(教師陣)が許可したものだ……、普通考えてもおかしい。いくら権限が強い生徒会といえど、これにはかなり無理があると思う。
3つ目は、『文科省』という言葉だった。何故かこの言葉だけ強く頭に残っていた。
そして、4つ目……戦車道経験者の『西住 みほ』、『喜多川 龍』を勧誘していたの事。
聞いたところによると、特に戦車道の家元の西住流の家元である「西住 みほ」に対しては、執拗なアプローチをかけていたらしい。
これはなにかきっと”裏”がある。とても、大きな裏が……。
そうやって思考の海に浸っている時、誰かが部室のドアをあけて入ってくる。
「おお、部長……もとい巽殿でないかぜよ。伏殿は、まだかぜよ?」
振り向くとそこには、ぼさぼさ髪をまとめ、紋付をはおった”歴女4人組”の一人おりょうが
菓子の入った袋を持って立っていた。
「なんだ、おりょうか。まあ、中に入れよ。和樹はまだ来てないから、この前、新しい歴史本入れたから読んで待っとけよ」
「そうかぜよ!ありがとうぜよ!」
そう言って、整理したばかりの本棚へと向かうおりょうを見ながら俺はあくびをした。
俺が立ち上げたミリタリー研究会、通称”ミリケン”。
ミリ研は、戦史、兵器、軍人、戦術、諜報、技術……ETCと軍事関係なら何でもOKみたいな研究会なのか同好会なのか分からない集まりでもある。
ただの軍事オタクの集まりみたいなものではあるが……。
そのおかげなのか、どうなのかは知らないが……”歴女”とよばれる4人の女子と仲良くしている。
お互いに議論をかわしたりすることもある。そのうちのおりょうと俺が誘って会に参加した伏和樹《ふせかずき》とは、馬が合うらしく楽しそうに2人で議論(?)している事がある。
一応、このミリ研には、俺を含めて6人いる。
まず、一人目は、おりょうと仲のいい伏和樹《ふせかずき》。
こいつは、俺の同郷の知り合いで、部活が決まらずぶらぶらしているところを見つけて勧誘した。
背は高く無口そうに見えるが、そうでもないし、他のメンバーともうまくやっている。
2人目は、阿仁屋 純《あにやじゅん》。
幼馴染で同級生。大の戦車好きで一体どこで覚えたのか知らんが機械整備が得意だ。
奴曰く「メカは最高だぜ!」だそうだ。戦国好きの左衛門佐と仲が良い。
そして、3人目は、室戸 明《むろと あきら》。
こいつも同じく俺の幼馴染で、戦史や戦車好きなのだが軍事の中で”諜報”や”諜略”関係には非常に詳しい。
しかし、「コイツ絶対スパイだろう」と思わせる程どこから仕入れたのか分からない”ありとあらゆる情報”を仕入れてくる。ローマ好きのカエサルと仲が良い。
4人目は、俺の補佐をしてくれる副部長で反田 始《はんだ はじめ》。
軍隊で言うと俺の副官みたいな存在である。一見すると無表情で何を考えているか分からないところが多いが、他の連中と同じく大の戦車好きだで、戦略・戦史などに強い興味を持っている。
そのせいか、歴女4人組のリーダー(?)であるエルヴィンと凄く仲がいい。
5人目は、黒崎 透《くろさき とおる》。
最近、戦車のオンラインゲームにはまっている戦車好き。なぜか阿仁屋と同じくメカ関係に強い。
後、戦車道にも興味を持っており、時たま録画した映像を見ていることもある。
まあ、部員に関しては、こんなものである。ちょっと変わったメンバーが多いが、俺はそんな連中を気に入っている。
そう、学校も、部活も……、そしてこの学園艦も……。
そうしている内に、他の歴女達や部活のメンバーが集まってきて、ワイワイガヤガヤと騒がしくなってのだった。
「ほう、じゃあ。エルヴィン達は戦車道やるのか」
阿仁屋がポテチをつまみながら、たまげたという感じで言う。
「食券100枚というのは魅力的だけど、なぜかやってみたくなったぜよ!」
おりょうが興奮しながら楽しそうに言う。
「戦車か…20年前は結構盛んだったらしいな」
反田が腕を組みながら、何かを思い出したように口にする。
「始もやったらどうだ?きっと楽しいと思うぞ」
エルヴィンが片腕に顎を載せながら言う。
「でも、この会の運営もあるからな……」
と、申し訳なさそうに言う。どうやら、この部活の事もあって反田は迷ってるようだ。
こいつは、このミリ研の事をすごく気に入っている。
戦車道に参加すると、部活にもなかなか来ることは出来ないだろう。そのことを心配しているのだろう。
「参加するなら……、部長含めた全員でだな」
と、俺の方を向いて言いやがった。
「そうか……、じゃあ、待ってるよ」
エルヴィンが少し残念そうな顔をして言った。
「参加したくなったら、いつでもいいから来たらいいさ。」
六文銭の鉢巻をした左衛門佐が飴を手を取りながら言う。
「分かった。じゃあ、少し考えさせくれ」
そう言って俺は、麩菓子を口に放り込んだ。戦車道に参加すべきか……この時俺は悩んでいた。
なぜか胸にひっかかていた事もあり、その場は、保留とした。
「うむ、巽達ミリ研が来るのを心待ちにしているぞ。ああ、室戸よ。この前は有難う。あれは、面白かった」
カエサルが、嬉しそうな顔で言う。
「良かった。また、ローマ関係の映画が出たら教えるぜ」
そういえば、室戸がローマのお風呂映画を二人で見に行ったと言ってたな。うらやましい限りだ。
「隊長……、じゃなかった部長。今度、うちの学校が出る練習試合見に行ってみては?迫力あると思いますよ」
ゲーマーであり、戦車好きである黒崎が楽しそうに言う。
こいつ、俺の事を時々、部長ではなく隊長と呼ぶ……なぜだろうか?
この前ためしに聞いてみたら、「隊長っぽいから」と返された。変な奴だ。
「そうだ、左衛門佐よ。今度、新しい戦国ゲームが出るらしいぞ。今度、買う予定だが一緒にやらねえか」
「おお!ありがたい!」
阿仁屋と左衛門佐は、二人仲良くゲーム。伏の方はというと、おりょうと仲良く竜馬談義をしていた。
こうして、楽しい時間は過ぎていくのだった……
歴女4人組と反田・阿仁屋・黒崎・伏が帰った後、部室には俺と室戸の2人だけが残っていた。
そこで俺は奴に声をかける。
「なあ、室戸。すこしいいか?」
「ああ……、いいぜ。多分、今、俺が考えてる事とこれからお前が話す事は一緒だろうな」
そう言い終えると、俺と室戸は席に身を落とした。
「20年ぶりの戦車道復活……、何かおかしいと思わないか?」
俺は、室戸の顔を見ながら口を開いた。
「ああ、俺もそう思ってた。気になって、ちょっと調べてみた……」
コイツ、昔から動きが早いな。気になった事、怪しいことに関してはすぐに首を突っ込む。
すると室戸は、少し厳しい表情をした。奴が、こんな表情をするというのは、戦車道復活になにか裏を感じ取ったのだろう。奴の勘はよく当たる。
そして、俺は疑問に思った4つの事を室戸に口にすると、奴は、メモを取りながらも真剣に聞いてくれた。
「今挙げた疑問点で。お前が、気になりそうなところはないか?」
自分が挙げた疑問について、室戸の意見を聞いてみた。
「大ありだ。全部だがな」
「やはりな……」
腕を組みながら答えると室戸は、自分の考えを口にし始めた。
「まず俺が気になったのは、文科省という言葉だ。知ってるか最近、文科省主導の”学園艦統廃合”の動きがあるという事を……」
「いや、初耳だな……」
”学園艦統廃合”という、嫌な響きに俺は思わず眉をしかめた。
統廃合という事は、学園艦の廃艦=廃校を意味する。
「以前、陸に挙がった時に地元の新聞に小さく”学園艦の統廃合”事を読んだのを思い出してな。気になって、色々調べてみたところ…文科省がでてきた」
「おいおい…、まさか、うちの学校もその対象になっているっていうんじゃ……」
最悪の予想が、頭をよぎった。確か、この大洗学園は、女子高から男女共学で生徒数は何とか確保できたはずだったが……対象からは逃れられないみたいだ。
「まだ、分からん。それは、探っているところだ……可能性は高いだろうがな」
そして、室戸は続けて言った。
「そして、次は、生徒会による20年ぶりの戦車道の復活、戦車道の家元の西住みほと喜多川龍の2名の戦車道経験者への執拗な勧誘要請、豪華すぎる参加特典、文科省…これで何かがつながらないわけはない」
4つのバラバラの糸が1本につながった。
「2人を戦車道に参加させて、全国大会でなんらかの実績を作らせ、廃校を撤回……そんな筋書きだろうな。そして、特典は、廃校を撤回させたという学園側からのご褒美……ってとこか」
「学園側もなりふりかまってられない……ってわけだ。自分の職場が無くなるかもしれんのだからな」
そう言い終えると、俺達は薄汚い天井を再び見つめた。
「まだ、そう決まったわけじゃないが……もう少し詳しく調べてみる。巽……最悪の場合を考えておいた方がいい」
「ああ、ミリ研の戦車道参加か……だが、それまでに”準備”しておおかないとな。”いろいろ”とな……”あの人”達にも相談してみる。後、この事は、部員全員に知らせておこう。他の人間には他言無用とくぎを刺して」
俺らと仲のいい”歴女”達にいらぬ心配をさせるわけにはいかないからな。あいつらは、純粋に戦車道に興味持ってるのだから。
「分かった。忙しくなるな……」
そう言って、この日、俺達は別れた。
翌日、この事を部員全員に話したところ、皆も疑問に思っていたらしく。「やはりな…」という顔をしていたが、すんなりと協力すると言ってくれた。
俺は、それを聞いて一息を付くのだった。
…
……
………
<龍Side>
楽しい週末明けの月曜日。
「うんぁー……、自走砲なんてクソ喰らえだぁー……、んぁ?」
俺は寮の部屋で寝言をぼやきつつ、目が覚めた。
あぁ……、昨日の夜に寝る前にやった戦車ゲーム『WOP』のプレイ内容を思い出していたのか……。
色々とカオスだったからな……、M46パットンで敵さんの自走砲を狩って、狩まくっていたし。
おかげでトップガンだったな……、我ながら見事と言いたい気分だわ……。
そう頭の中で昨晩のことを思い返しつつ、ふとベッド脇においてあった目覚め時計に目を向ける。
「……マジかよ」
そして、絶句するのであった。何故かって?
時計の示す時刻が”遅刻15分前”だったからだよ!!
『天国から地獄』とはこの事を言うんだな、チクショーメェーッ!!
「ヤベェーッ!!」
そう絶叫しながら、俺はベッドから飛び起きるなり全力で身支度を整えるなり、冷蔵庫に入っていた昨日の夕飯の残りの特売ピザを加えながら部屋を飛び出すなり、学校に向けて全力疾走だ。
つーか、冷めたピザってビミョーな味だな!!
そう思いながら、一昔前の学園物の作品でよーく見かける『遅刻寸前の学生が食パン加えて全力疾走』を体現しつつ、ビミョーなピザの味をかみ締めながら学校に向かっていたときだった。
ふと50メートル先に視線を向けると見かけた後ろ姿が視界に飛び込んで来る。
その後姿をよーく見ると、その後ろ姿の正体はみほであった。
「何だよアイツも遅刻か……って、ん?」
そう呟きながら、残っていたピザを食べながらみほの後ろ姿を見つめていると俺はある事に気づく。
先を歩いてるみほの肩を借りるようにして、”もう一人の女子”が歩いていたのだから。
つーか、みほの肩借りている女子、アンタ誰だよ?
そう思いながら、俺はみほの元に駆け寄るのであった。
「よぉ、みほ」
「あぁ、龍君……、良かったぁ……」
そう話しかけた俺に対して、みほは少なからず安堵の表情を浮かべながら俺に顔を向ける、朝だと言うのに偉くグッタリした女子に肩を貸しながら。
つーか、さっきも言ったけどアンタ誰?
そんな感情が腹のそこから巻き起こる中、その女子を見つめていると当の本人は凄まじくグッタリした声でこう言い放つ。
「辛い……、生きるのが辛い……」
「何があったんだ、お前は……」
この女子の発言に思わず俺はそう言ってしまう。
だってそうだろ、普通生きていて「生きるのが辛い」と思う時はそう少なくはないと思うよ?
だけど朝から「生きるのが辛い」って……、初対面だけどお前に何があった?
すで心配になって来るんだが……、本気でその種の相談施設に電話した方が良いかな?
そう思いながら、みほの肩を借りるその女子を見つめているとみほが俺に向けてこう言い放つ。
「龍君、悪いけど手伝ってくれない?ちょっと大変だから……」
「あぁ……、分かった……」
みほの助けを求むこの言葉に俺はそう頷きながら言い放つと、みほと同じ様にそのグッタリとした女子に肩を貸し、”二人三脚”ならぬ”三人四脚(?)”で学校に向かうのだった。
今日は完全に遅刻だな……、そんな考えを胸の内で考えながら……。
…
……
………
そんでもって、予想通りに俺とみほは肩を貸した女子と共に見事遅刻。
そんな俺達に対して校門の前で待ち構えていた風紀委員の”園みどり子”が、記録ボードを右手に何かを左手にもって俺とみほの肩を借りる女子に向けてこう言い放つ。
「|冷泉麻子《れいぜい》さん、これで連続遅刻245日ですよ!!いくら成績が学年トップだからって、遅刻ばかりしていちゃ留年しますよ!!」
あぁ……、この女子の名前「冷泉麻子」って言うのか……、つーか……、遅刻245日&成績学年トップって、どーゆ事!?
そんな考えがみどり子の発言を聞くと共に湧き上がってくる中、当の麻子本人は相変わらず気だるさMAXの声でこう言う。
「朝は何で来るのか……」
えー……、なんか凄く跳躍したボヤキですね……、麻子さん……。
一応、”朝は何で来るのか?”って問いの答えですけど、前にN○Kの教育番組で『地球が自転しているから』みたいな事を言っていた様な気がしますぜ?
教育番組の内容を思い返しつつ、そう思っている側でみどり子は「えーっと……」なんてボヤキながら、ボードに書かれた俺とみほの名前を発見するとこう言う。
「喜田川さんと西住さんね?」
「「あぁ、はい」」
「今度から冷泉さんを見つけても、無視して登校して下さい」
思わず『アンタは何処の安いB級映画の悪役だよ?』と思わざるを得ないセリフを言い放ったみどり子に対して、俺とみはは揃って「「……はぁ」」と言葉を返すことしか出来なかった。
つーかさー……、今気づいたんだけど……、みどり子さんが左手に持っている物って『芸能新聞』だよな?
何でそんな物が学校に……って、んー……?
俺はふと視界に入った芸能新聞の一面記事をよーく見ると『人気アイドル神崎智明 事務所直属の後輩アイドルグループ「起きあがれ、女の子!」&「スクールアイドルμ's|《ミューズ》」+「歓待のアイドル 2-4-11・那珂ちゃん」と共に超大胆グラビア写真撮影!!』と言った記事がデカデカとカラフルな文字で書かれていた。
それを見た、俺はこう思うのだった……。
あぁ、この記事持ってきたのは裕也か……。
え、「何で裕也が芸能新聞を学校に持ち込んだ?」って?
理由は至って簡単、『記事に出ているアイドルの神崎智明が裕也の血の繋がった実の姉貴』だからだよ!!
いや、俺だって始めて親友のお姉さんがテレビに出るような”大人気アイドル”と知った時はマジでビックリしたぞ!!
そりゃそーだろ!!”3サイズ 91-59-86”の圧倒的な超ダイナマイトボディに加え、これまたチョー圧倒的な歌唱力&演技力、21歳と言う年齢が醸し出す大人の色気で一躍大人気アイドルとなった、あの神崎智明だよ!?
その血の繋がった実の弟が友人だったんだから、驚かざるを得ないぜ……。
そんなお姉さんの活躍は弟の裕也としても少なからず誇りらしく、偶にお姉さんが芸能新聞に載るとそれを買って学校まで登校……、そして風紀委員に取り上げられる……、もはや定番のテンプレート状態だ。
これは余談だが、裕也はお姉さんの関係もあってか偶にお姉さんの出演する映画にエキストラ並びにアクション要因として出演することがあり、この芸能新聞にも書かれているお姉さんの後輩アイドルグループ”起きあがれ、女の子!”&”スクールアイドルμ's|《ミューズ》とも競演したらしい……。
裕也、友人のお前に一言言わせて貰うぜ『チクショーメェェッ!!』とな!!
ちなみに裕也が最近エキストラ兼アクション要因として出演したのは『DNA研究所の事故で偶然にも誕生してしまったハエと人間の遺伝子額合わさった怪物”ハエ男”が大暴れするモンスターパニック映画で、裕也は映画のクライマックスで重要人物の刑事と共に研究所に突入し、主演のお姉さんを始めとする主人公達に襲い掛かろうとするハエ男を射殺する警視庁の特殊部隊”SAT”の隊員役』らしい。
本人曰く「うおぉぉっ!!」と叫びつつ、撮影ではH&K MP5短機関銃のモデルガンを撃ちまくっていたらしい。
あと『出演していたアイドルグループ”起きあがれ、女の子!”のセンターの子をお姫様抱っこして、助け出した(※映画のクライマックスはSAT隊員達に救助され、介抱されながら研究所を去るお姉さんを始めとした主人公達のカット)』との事……、羨まし過ぎるぜ!!
芸能新聞を見ながら、そう胸の内で思っているとみどり子は俺とみほ、冷泉の記録を取り終えるなりこう言い放つ。
「はい、3人共、行っていいわよ」
「「あぁ、はい」」
みどり子の指示に俺とみほはそう返しながら、相変わらずグッタリとした様子で「あぁー……」とぼやいている冷泉に肩を貸しながら、校舎へと足を向ける。
そんな時、後ろから突如として『ピピーッ!!』と言うホイッスルの音が聞こえてくる。
「な、何!?」
「さぁ……」
「んぁ……?」
この音に俺だけでは無くみほや冷泉も驚いた様に後ろを振り返り、ホイッスルの音がした方向に顔を向けた俺達3人は共に呆然とするのであった……。
理由は何故かって……?簡単だ……。
「コラぁーッ!!玄田さんと葵さん、遅刻した事を気づかれない様に策を乗り越えて学校に入らないのぉぉぉーっ!!」
「やっべぇー、見つかったー!!」
「走れ玄田、捕まったら風紀委員に説教食らわされるぞ!!」
「分かっているわ!!」
「ちょっと!!止まりなさーい!!」
「「待たん!!止まらん!!」」
……とまぁ、朝から元気良く玄田と葵のバカコンビがバカやっているからだよ!!
全く……、チームメイトがこの様とは……、朝から偏頭痛がしてくるぜ……。
そんな、みどり子と玄田と葵の鬼ごっこを見て、俺は痛む頭を抑えるのであった……。
…
……
………
そんな内容の無駄に濃い朝から数時間経った午後の戦車道の授業の時間。
俺とみほ達を含めた戦車道を履修した全生徒達が戦車倉庫の前に集まり、互いの会話を交わしつつ教官が来るのを待っていた。
「お前、珍しく遅刻したよな」
「あぁ……、寝過ごしたからな……」
今朝の遅刻に関して話しかけてきた裕也に対して、そう言葉を返すと裕也は「ふぅーん」と鼻で呟くなり、こう言葉を続けた。
「単純なミスだな」
「学校に芸能新聞を持ち込んだ、お前が言える立場かよ……」
「♪~♪~♪~……」
自分もお姉さんの出ている芸能新聞片手に学校通学した身でよく言えるな……。
そんな心内と共に恨めしい声で俺がそう返すと当の裕也は口笛を吹きながら、俺から視線を外す。
確執を付かれた小学校低学年みたいな反応するなよ……、お前……。
裕也の反応を見てそう思う俺の側では、朝っぱらからみどり子との壮絶な逃亡劇を繰り広げていた葵と玄田の二人が手帳片手に会話を交わしていた。
そんな二人の会話にふと聞き耳を立てて聞いた内容はバカコンビらしくショーも無い物だ……。
「うーん……、あの”第5柵越えルート”が持ったのは2ヶ月か……」
「前の”第4柵越えルート”より、1週間長かったのか……、今日見つからなければなぁ……、あと1ヶ月は使えたか?」
「可能性は否定できんな」
お前ら……、柵越えルートとかってさぁ……、つい結構最近に実写映画公開が決まった日本における泥棒漫画の傑作”ル○ン3世”かよ……。
なんかその内、ベトナム戦争中の北ベトナム軍並びにベトコンゲリラよろしく地下トンネルでも掘り出しそうだな……。
玄田と葵の会話を聞いて、そんな考えが胸の内を過ぎる中、ふと木場が腕時計で時間を確かめながらこう呟いた。
「それにしても教官遅いね……」
「ホントだよー……、焦らすなんて大人のテクニックだよー。ねぇ、木場君?」
「え?」
木場のぼやきに続くように沙織が言い放った言葉を受けて、木場が軽く困惑を覚えたその時だった。
突如としてキィィィィーンッ!!と言った甲高いジェット機のエンジン音があたり一面に鳴り響く。
「一体、何だ?」
「敵襲か!?」
「くーしゅーけーほー(空襲警報)?」
鳴り響くジェットエンジン音に各自が各々の反応を見せる中、俺はエンジン音を聞こえてくる上空を見上げた。
すると、俺の視界に一機の大型輸送機がこちらに向かって飛行するのが見えた。
あの輸送機は一体なんだ?しかも結構、低滑空で飛行しているぞ……。
輸送機を見てそう胸の内で思っていると、航空自衛隊の戦闘機パイロット志願にして”戦闘機・航空マニアな一面がある(※ちなみに一番好きな戦闘機はF-15J)”木場が輸送機に感づき、こう言い放つ。
「あれって航空自衛隊のC-2改輸送機じゃない?」
この木場の言葉を聴いて、改めて輸送機をよーく見ると確かに前にテレビで見たことがある航空自衛隊の輸送機”C-2改輸送機”だった。
しかし、何でこんな所に航空自衛隊の輸送機がやって来たんだ?
そんな疑問が胸の内で起こった瞬間だった。
低滑空で飛行していたC-2改輸送機の後部ハッチがゆっくりと開いていき、完全にハッチが開くと同時に”何か”が勢い良く飛び出した。
俺やみほ、裕也達を含めたこの倍にいる全員がこの光景を見て「何だ一体?」と思った瞬間、その”何か”はパラシュートを開きながら降下していく。
そして、最終的にはガッシャーンッ!!と言う凄まじい音を立てて、戦車倉庫の直ぐ隣にある駐車場に着地する。
「な、何!?」
「あ、あれは……」
沙織がこの音に驚き目を大きく見開く側で裕也が細めながら、駐車場に着地した何かに視線を向ける。
そんな裕也に続くように俺も駐車場に着地した何かに視線を向けると、そこにあった何かの正体が判明した。
それは陸上自衛隊が世界に誇る最新鋭の主力戦車”10式戦車”であった。
おいおい……、10式戦車を空挺降下させるって……。
アメリカ軍で過去に使用されていた空挺戦車のM551シェリダンじゃないんだから……。
そんな考えが一瞬胸の内を過ぎるが、黙っておくことにした。
何故かって?簡単な話だ、この戦車の空挺降下を考えたのが何を隠そう”俺の親父”だからだよ!!
そう思いながら、着地した10式戦車を見つめていると10式戦車はエンジン音を高らかに勢い良くバックする。
その際に駐車場に止まっていたフェラーリを勢い良く跳ね飛ばし……、っていうか大丈夫なのか?
フェラーリがアクション映画の様に紙くずの様に宙を舞い、ドガァーン!!と言う音と共に着地するを見てそう思う俺の側で生徒会3人組が各々の反応を見せる。
「学園長の車が!!」
「………」
「おー、スゲェー」
絶叫する小山先輩の側で開いた口が塞がらない河島先輩、そして動じる事無く平然とぼやく会長……。
3人共、個性豊かな反応を見せるな……って、今のフェラーリは学園長の車!?
後で土下座して謝罪しておこう……、提案者の息子として……。
すっかり鉄くずに成り果てたフェラーリを見てそう思う俺の側で10式戦車は勢い良く前進。
俺達の前にやってくるなり脅威の”殺人ブレーキ”で停止するなり、戦車長キューポラが開いた。
そして、開いたキューポラから……。
「こんにちはー!!」
……と、威勢よく女性教官が姿を現すのであった。
ちなみに教官、結構なべっぴんさんである。
…
……
………
さて、そんな感じでやってきた教官を前に俺達は一列に並んで河島先輩の紹介を受ける。
「紹介しよう、本日より我が校の戦車道教官を勤めてくれる陸上自衛隊 戦車教導隊の蝶野亜美1尉だ」
そう河島先輩が教官の蝶野1尉を紹介すると、当の蝶野教官は敬礼しながらこう言い放つ。
「皆さん、宜しくね。戦車道は初めての人が多いと聞いてますが、皆さん一緒に頑張りましょうね!!」
「騙された……」
そう笑顔で言い放つ蝶野教官に対して、沙織はこの世の終わりかと言わんばかりに絶望している。
お前さぁ……、一体何を期待していたんだ?そもそもお前はイケメンの木場に気があるんじゃなかった?
どす黒い負のオーラをまとった沙織を見て、そう思っていながら俺は”同じ穴のムジナ”である葵にふと視線を向ける。
その視線の先にいた葵は佐織とは正反対に女性教官の到着に「この世の春が来た!!」と言わんばかりに嬉しにし、俗にネットなどで言う『みwなwぎwっwてwきwたwww』を体現するかのように鼻息が若干荒くなっていた。
この二人の行動の結論としているのは、『お前も佐織も現金すぎるだろ……』
この一言に尽きるな、うん。
そう思いながら、沙織と葵を見つめていると教官がみほの姿に気づくき「あら?」と言いながら歩み寄っていく。
一体どうしたものか?
歩み寄っていく蝶野教官を見ながら、そう思っていると蝶野教官はみほにこう話しかける。
「西住師範のお嬢様ではないですか?師範にはお世話になっているんです、お姉さまも元気?」
「えっ……、あっ……、はい……」
教官のこの言葉にみほは少なからず困惑しながら、言葉を返した。
無理も無い……、少なからず複雑な状況に立たされているだからな……。
蝶野教官に言葉を返した後、思わず下を俯くみほを見てそう思っていると蝶野教官がとんでもない事を言い出す。
「それと喜田川龍君って、いる?」
「……はい?じ、自分ですけど……」
え?今、教官……、俺の名を呼びました?
予想もせず呼ばれた事に自分の耳を疑いながら、俺は返事を返しつつ、蝶野教官に顔を向ける。
すると、俺の存在に気づいた教官が俺の元に歩み寄ってくると微笑みながら、こう言い放つのだった。
「貴方のお父さんの喜田川秀雄一佐は私の新人時代の頃の上官なの。それで『息子を宜しく』って昨日電話があったのよね」
「はぁ……」
よーくやるよ……、親父も……、かつての部下が自分の息子に戦車道を教えるので電話かけるなんて……。
そう胸の内で思いながら、蝶野教官に返事を返していると胸の内で1つの疑問がわいてくる。
あれ……、親父……、今はアメリカで行われている日米合同軍事演習に参加していたよな……?
そんな疑問を俺は蝶野教官に問い掛ける。
「あの教官……、親父はアメリカのヤキマ演習場で行われている”日米合同軍事演習”の指揮を取っているはずでは?」
この俺の問い掛けに対し、蝶野教官は「あー、そうそう」と頷きながら言うと、こう言葉を続けた。
「それでアメリカ陸軍との模擬戦で勝利した報告次いでだったのよね」
「……そうですか、アハハハッ……、宜しくお願いします……」
マジで何やっているんだろ……、親父……。
軍事演習で世界最強のアメリカ軍を相手に模擬宣して勝利、その報告ついでに『息子を宜しく』……。
”陸上自衛隊1の奇才”といわれる理由がよーく分かるような気がする……。
そう思いながら、蝶野教官に挨拶をしながら、頭を下げると蝶野教官は「よーく見ると一佐に似ているわねー」等と言いながら、もと居た場所に戻る。
そうして、もと居た場所に戻った蝶野教官に対して河島先輩が問い掛ける。
「教官、今日はどのような練習を行うのでしょうか?」
「そうね、早速だけど練習試合をやってみましょう♪」
「「「えぇぇ~っ!?」」」
蝶野教官が練習試合をやるといった瞬間、俺やみほ達を含めた全ての生徒が困惑した様子で蝶野教官を見つめる。
そりゃ当然だろうよ。碌な戦闘訓練はおろか、基本的な動作訓練すら受けてないんだから……。
つーかさー……、こんな感じで俺の親父は最高司令官として部下を教育しているのか?
そんな考えが沸いてくる中、小山先輩が恐れ多いと言った感じの声で蝶野教官に問い掛ける。
「あのぉー、いきなりですか?」
「大丈夫よ♪」
困惑を隠しきれない表情の小山先輩に対して、蝶野教官は笑顔でそう返し、こう言葉を続けた。
「戦車なんてバーッと動かして、ダーッと操作して、ドーンと撃てばいいんだから!!」
うわぁー……、ざっくりばらんにも程がありますぜ、教官……。
って言うか、教官……、本当に親父の部下でしたね……、さっきの説明……、親父も似たような感じです……。
つーか……、こんな調子で親父の奴……、よく世界最強の陸軍であるアメリカ陸軍相手に勝てたな……。
マジびっくりなんですけどー……(※某有名食品メーカーの「ジャスティス!!」と最後に叫んでいるレトルトカレーのCM風に)。
そんな感情が胸の奥底からわいてくる中、蝶野教官は鞄の中に入れていた地図を広げつつ、こう言葉を続けた。
「それでは、この地図に示したポイントまで各自移動して頂戴」
何ともまぁ……、親父譲りの無茶苦茶ぶりだ……、まぁ、やるしかないか……。
蝶野教官の指示を聞いて、諦め混じりに俺はそう思いながら地図を確認するのであった……。
…
……
………
そんで、教官の指示したポイントに移動する為に俺達は各自の担当する戦車の前に移動していた。
なので、自動的(?)に俺と裕也、玄田、木場、葵の5人は5式中戦車の前に立っていた。
んで……、今の問題としては……、この5式中戦車をどう動かす事だな……。
目の前に置かれたドーンと置かれた5式を見て、胸の内でそう思っていると同じ事を思ったらしく裕也が問い掛けてくる。
「んでさぁ……、龍……、まず何か始めればいいんだ……?」
「……担当決めかな?」
裕也の問い掛けに対して、俺は中を見ながら少し考えた後、そう言葉を返した。
まぁ……、我ながら間違いではないと思うよ……、実際担当を決めないと動かせないしな……。
そう思いながら、裕也達に顔を向けた瞬間。玄田が「よし!!」と呟くなり、こう言葉を続けた。
「じゃあ、俺が砲手やるわ!!」
「えー……、お前……、射撃とかその種の行為下手糞だろ?サバゲーでも碌に的に当てたこと無かったんじゃ……」
玄田の砲手への立候補に対し、過去に玄田と共にサバイバルゲームに参加した事にある葵が苦言を述べた瞬間、玄田は後ろにクワッ!!と言う文字が見えかねない勢いで「うっさい!!」とブチ切れである。
確かに……、こんなに短気な性格じゃ砲手に向かないのは確実だな……。
ブチ切れする玄田を見て、胸の内でそう思っていると隣に居た木場が俺に向けてこう言い放つ。
「っていうか、経験者の龍は戦車長が良くない?」
「同意」
「「激しく同意」」
「えっ?」
木場の提案に裕也だけでは無く、今そこで口喧嘩を交わしていた玄田と葵までもが同意してきた……。
なんだろうこの状況……、マジで困惑を覚えるレベルなんですけど……。
そう胸が激しくざわめくをのを感じながら、俺は裕也達に視線を向ける。
そうして、飛び込んできたのはジーっと俺達を見つめる裕也達の姿……、これはもう腹を括るしかないですな……、もう色々とチクショー!!
「分かったよ!!」
もう半場、ヤケクソ状態で俺がそう言い返すと裕也、玄田、木場、葵の4人は「「「「おぉ~!!」」」」と歓喜するのだった。
あー……、なんか色々と辛いな……、このポジション……。
んで、こんなノリで話し合う事、約15分(結構、時間掛かってる……)。
こうして決まった5式中戦車内における俺達のポジションは”俺が戦車長、裕也が砲手、玄田が装填主、木場が操縦主、葵が副砲の砲手並びに装填主、通信主”だ。
いやぁー……、これが決まるまで地味に長かったぜ……。つーか……、戦車に乗る前から既にグッタリしてるんだけど……。
そんな感じで妙に重く感じる体で俺達は5式中戦車に乗り込んでいく。
「よし、全員乗ったか?」
「OKだ」
「こっちもOK」
「俺もだ」
「ほいほい!!」
俺の問い掛けに裕也達が次々と答えていき、全員が乗った事を確認した俺は早速、木場に向けて指示を飛ばした。
「よし、木場。エンジンを始動させてくれ。右にイグニッションがあるはずだ」
「これ?」
そう俺の指示に返事しながら、木場が操縦主席の右側にあるイグニッションボタンを押し込む。
瞬間、5式に搭載されたディーゼルエンジンがグォォォン!!と言う唸りを立てて始動する。
いやぁー……、この感覚……、約1年ぶりぐらいかなぁ……、懐かしいねぇー……。
中学生の時に乗っていたM24チャーフィーの感覚を思い出しながら、思わず感慨にふけっていると木場が少しどよめいた状態で問い掛けてくる。
「そ、それで次はどうすればいいんだ?」
「あ?あぁ……、右にあるのが右の履帯のクラッチとブレーキレバー、左にあるのも同じだから、両方のクラッチを解除したら、ギアをチェンジして、アクセルを踏み込め。前進するはずだ」
「分かった……」
俺のこの指示に木場は少し戸惑いながらも実行し、アクセルを踏み込む。
瞬間、俺達を乗せた5式はゆっくりとしたスピードながらも前進を始める。
「おっ、おぉぉ……」
「おぉ……、進んでる、進んでる」
「すげえ……」
「うひょー……」
初めて体験するこの感覚を前に裕也達が各々の反応を見せる中、俺は一回息を吸うと再び木場に向けて指示を出す。
「よし、木場。このまま教官の指定したポイントまで移動してくれ」
「りょ、了解!!」
この俺の指示に木場は相変わらずゆっくりとしたスピードながらも、確実にポイントに向かって5式を走らせるのであった……。
…
……
………
こうして5式を走らせる事、約数十分……。
俺達は何とか無事に教官の指摘したポイントまでやって来ていた。
いやぁー……、ここに来るまで溝に落下して頭を思い切りぶつけたり、エンストしたりで大変だったりからなぁー……。
そう現在までの経緯を思い返しながら、俺がキューポラを空けて外の様子を確認していると葵が通信主用ハッチを開け、こう聞いてくる。
「龍、ここで間違いなのか?」
「そうみたいだな……」
葵の問い掛けに対し、そう俺が言葉を返した瞬間だった。
5式に搭載された無線機が音を立てて、無線連絡が入った事を俺達に知らせる。
その無線に俺達が耳を傾けると無線機からは蝶野教官の声が聞こえてきた。
『皆、スタート地点には着いたかしら?それでは練習試合を始めるわよ。ルールは簡単、全ての車両を動けなくするだけ。つまりはガンガン前進して、バンバン撃って相手をやっければ良いだけ、分かった』
「いやぁー、実にアバウトだ事で……」
「そういう女性、俺は嫌いじゃないよ」
蝶野教官のルール説明に対し、木場と葵がそうボヤク側で蝶野教官は無線機越しにこう言葉を続けた。
『戦車道は礼に始まり、礼に終わる。一同、礼!!』
「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」
『それでは試合開始!!』
蝶野教官の言葉に続くように俺達が5式の中で頭を下げると蝶野教官は高らかに試合開始を宣言し、練習試合が始まるのであった。
んで……、こうして試合が始まったのは良いんだが、どうしたら良いんだか……。
そんな考えで脳が埋めされ尽くされる中、どうやら俺と同じ事を思ったらしく裕也達が俺に問い掛けてくる。
「で、どうするんだ龍?」
「とりあえず撃つ?」
「何を?」
「教官、デートしてくれないかぁー……」
最後の葵は無視するとして……、俺は裕也達の言う様に次はどうするべきか考えるべく地図を開き、周りの状況を確認しようとした、その時だった!!
ズドォオォォォーンッ!!
この突如として鳴り響いた砲声と衝撃に俺達は成す術も無く激しく5式と共に揺さぶられる。
「うおぉっ!?」
「何だ!?」
「一体何が!?」
「うひょーっ!?」
「くっ!?」
その衝撃に激しく揺さぶられながら、各々の反応を見せる裕也達を横目で見ながら、俺は大急ぎでこの衝撃の正体を確かめるべくキューポラをあけて外を見つめた。
すると、視界に飛び込んできたのは俺達の5式に主砲を向ける野球部のラム巡航戦車の姿であった……。